超次元ゲイムネプテューヌ 銀陽の女神 Re;Birth   作:ミオン

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Game16:仕掛けられた罠

夜が明けて次の日の朝。昨日の雲一つ無かった夜から一転して天候は生憎の曇り空。予報では雨が降る確率も高めの数値を示していた。

 

「昨日の話し合いで今日もアヴニールの依頼を受けるって話になったわけだけど、肝心の依頼はあるのかしら?」

 

「昨日の夜にギルドに行って確認してきたよ。ご丁寧に舞宛ての特定人物指定クエストで来てる。内容はモンスター討伐みたいだけど。待ち合わせ場所はアヴニールの第三重機倉庫と書いてあるね。結構街から離れた位置にあるみたい」

 

特定人物指定クエストとは名の通り依頼人が指定した人物のみに受注権が与えられる特殊クエストの一つ。ギルドに名の通った実力者に出されることが多いクエストで総じて難易度の高い依頼が多い傾向がある。

 

「あの周辺には他にも廃棄された工場とか倉庫があってモンスターの住処になってる場所もあるわ。また昨日みたいなモンスターが出なければいいんだけど…」

 

「どんなモンスターが出てきてもわたし達なら楽勝だって! 改めて思ったんだけどさ、わたし達のパーティーはゲームに例えたら強くてニューゲームしてるような物だよね」

 

元のゲイムギョウ界で厳しい戦いを乗り越えて来た舞とネプギア達に加えて守護女神に匹敵する戦闘力を持つ六魔将がいるのでネプテューヌが言っていることも強ち間違いでは無いと言える。まだ合流できていない結晶の女神(クリスタルハート)白の女神候補生達(ホワイトシスターズ)に加えて残る四人の六魔将が加われば戦力はさらに高まるのだから。

 

「舞、こいつを持って行ってくれ。昨日お前から貰ったフィードバックを参考にしてカートリッジロードを行った時の負担の軽減と威力増加の改良を加えてある。後はこれで試行錯誤を繰り返して行けば完成形に近づけるはずだ。また帰って来たら色々と話を聞かせてほしい」

 

シアンから改良型のアルマッスを受け取る。

 

「それにしても昨日の今日でそこまでやるとは思わなかったよ。寝てないよね?」

 

「まあな。嬉しかったんだよ。自分の作った武器が使われてそれを預けた奴が無事に帰って来てくれたことが。武器の力を殺さずにお前にかかる負担を減らすためにはどうしたらいいのかを考えてそれを実行してたら気が付いた時には朝になってた。その剣と仲間達と一緒に無事にここに帰ってきてくれ。それが私からのお願いだ」

 

「わかった。本当にありがとう。さて、準備ができたところで早速ギルドに向かおうか。ネプギア、昨日話した通りにお願いするね」

 

「わかりました! 気を付けてくださいね」

 

「あれ? ネプギアは来ないの?」

 

「今日は舞さんから別のことをお願いされてるから、ここに残らないといけないんだ」

 

「クエストに向かうのはネプギアとユニ、リリムとヒナを除いたメンバーだよ。この四人には別にやってもらいたいことがあるから今回は一時的に抜ける形になるね。リリム、ヒナ。二人のサポートは任せるよ」

 

「了解したわ。それと主様、セレナの影の中にいるあの子の様子はどうなのかしら?」

 

「まだ眠っているみたいだね。今は待つしかないかな。二人の分は私とセレナで頑張るよ」

 

リリムが言ったあの子というのは同じ六魔将の一人であり、セレナの教え子でもある少女のことだ。セレナの影の中にいるのだが、残念ながらまだ目覚める気配が無い状態。こればかりは現れる時を待つしかない。

 

「黒曜の魔導書の蒐集も進めないといけないね。あの子が出て来た時のために」

 

黒曜の魔導書はセレナが持つ二つの魔導書のうちの一冊。六魔将との戦いがあったあの夜に再会を約束した彼女から託された魔導書。弱らせたモンスターを蒐集することで蒐集したモンスターを配下として召喚したり、モンスターが特異な能力を持っている場合は魔導書を介してその能力を使うことができるという力を持つ。その気になればゲイムギョウ界に生息する全てのモンスターを配下にすることも夢ではないかもしれないと言われている。

 

現在はセレナがクエストでシェアを高める過程の中で蒐集を進めているが、かなりの時間と労力が必要なので進み具合はいまひとつと言ったところではある。残る六魔将との再会はそれ程遠い未来の話ではないと思われるので彼女と再会した時のためにもセレナが言ったようにある程度は蒐集を進めておかなければならないのだ。

 

ネプギア達に下町の防衛を任せて舞達はギルドに向かった。クエスト掲示板にあるアヴニールからの特定人物指定クエストを受注。ギルドからアヴニールに連絡を入れておくとのことなので先に現地に向かっておいてほしいと言われた。

 

「あれ? 舞ちゃん?」

 

道中で声をかけて来たのは赤髪のいかにも冒険者と言った感じの身なりをした少女。

 

「あなたは…」

 

「大きい舞ちゃんとは初めましてだね。まさかこっちの世界に来てすぐに会えるとは思わなかったよ。あたしはファルコム。駆け出しの冒険家なんだ。小さい舞ちゃんから渡してほしいって言われてる物があるの」

 

ファルコムが取り出したのは仄かな温かみを帯びた白金色の結晶。

 

「シェアクリスタル…! 小さい私は守護女神なの?」

 

「うん。ネプテューヌさんと一緒に暮らしてるよ。持ってるといいことが起きるって言ってた。これが小さい舞ちゃんの写真だよ」

 

写真に写っている小さい舞の髪は黒色で瞳は白金色。瞳には女神の印が発現している。

 

「確かに受け取ったよ。あっ、そうだ。ファルコム。お願いしたいことがあるんだけど、いいかな?」

 

「いいよ。舞ちゃんが困ってる時は声をかけてくれれば力になるからね。それで、お願いしたいことって?」

 

「実は…」

 

舞はこれまでの事情をファルコムに説明する。

 

「なるほどね。事情はわかった。協力するよ。舞ちゃんも気を付けてね」

 

「ありがとう。ネプギアには私から連絡をいれておくから」

 

舞がファルコムにお願いしたのはネプギア達が下町で張っている防衛線に参戦してもらうこと。ネプギア達はこの世界では十分過ぎるほどの強さを持ってはいるが、カバーできる範囲には限界がある。相手がどのような手で攻めて来るかはわからないので少しでも防衛に当たる人数を増やしておくに越したことはない。

 

ファルコムと別れた舞はネプギアに連絡を入れて今回の事情を伝えると待ち合わせ場所の倉庫に向かう。そこで舞達を待っていたのはアヴニール社長補佐のガナッシュであった。

 

「まさかこれほど早く依頼を引き受けていただけるとは思いませんでした。前回のお会いした時とチームの人数が少ないようですが…?」

 

「都合が付かない人が何人かいてね。今日は私達だけでここに来させてもらったよ。早速だけど、今回の依頼の説明をしてもらってもいいかな? 前と同じモンスター退治とは聞いているけど」

 

「そうですね。皆さんの目の前にあるこの倉庫。見た目以上に年数が経っていまして、既に廃棄された倉庫なのですが、実は必要な資材の一部が内部に取り残されたままになっておりましてね。今回はその資材の回収をお願いしたいのです」

 

「あれ? それだとモンスター討伐じゃなくて採取クエストになるんじゃないの?」

 

「確かに資材の回収だけならネプ子の言う通り採取クエストになるでしょうけど、討伐クエストで出して来たってことはこの倉庫の中にモンスターが住み着いていると言ったところかしら?」

 

「お察しの通りです。あなた方の先日のモンスターの討伐は見事な成果でしたからね。社長からのご指名がありまして特定人物指定依頼と言う形で依頼させていただきました」

 

「それで、回収しなきゃいけない資材って言うのは何なのよ?」

 

「とある鉱石です。我が社ではラステライト鉱石と呼んでいる鉱石なのですが、これがたった一グラムでゲーム機を一万年動かせるほどのエネルギーを秘めた常軌を逸した鉱石なのですよ。厳重に保管してはいましたが、その強大なエネルギーに引かれてモンスターがやって来たようでしてね。モンスターの襲撃を受けこの倉庫から撤収した際にその一部が内部に取り残されてしまったというわけです」

 

「ふーん…。一グラムでゲーム機が一万年動かせるなんて凄いね。携帯ゲーム機だと死ぬまで充電無しで延々と続けられる」

 

「遂にACアダプターの呪縛から解放される時代が! これは革命だよ!」

 

「そんな鉱石があるなんて情報は聞いたことないけど…。最近になって見つかった鉱石なの?」

 

「私も初耳だわ。ラステイションには長いこと住んでるけど」

 

「ここ最近になって発見された鉱石でしてね。採掘と情報は我が社が独占しており外部に漏れないように規制を敷いています。ですが、今回の依頼の報酬として僅かではありますが用意させていただいています。最近のモンスターの増加の影響があって採掘量が減少しておりましてね。我が社としては少しでも数を揃えておきたいのですよ。私からの説明は以上です。早速ではありますが、回収の方、よろしくお願いします」

 

「わかった。みんな、行こうか」

 

舞達は倉庫の中に入るが、直後に入口の扉が閉まる。

 

「なにっ!?」

 

「何でいきなり入口が閉じるのよ! ガナッシュ、どういうこと!?」

 

「いやーすみません。手違いで閉まっちゃいました。…と言うのは冗談でこちらの都合で閉めさせていただきました。あなた達にはこの中でモンスターたちの餌食になっていただきます」

 

「どうしてこんなことをするんですか?」

 

「ほんとだよ! こんなことするのなら取ってきてあげないよ!」

 

「この状況でどうしてそのような間の抜けた発想に繋がるのか…。ゲーム機が一万年も動く鉱石なんてあるわけないじゃないですか。全てはあなた達をこの工場に閉じ込めるためです。あのモンスターを倒すほどの実力。我が社に逆らわれては障害になりかねないので早めに摘み取っておけとの社長からのご命令なのですよ。実際あなた方はあの下町の人間達と協力して我が社に逆らおうとしていたようですしね。それでは時間が惜しいので私はここで失礼させていただきます」

 

ガナッシュは立ち去ったようだ。入口の扉は強固に閉じられていて開かない。

 

「わたしたち…どうなってしまうですか?」

 

「それは…」

 

「もー! なに辛気臭い空気出してるのさ! こんな雰囲気はわたし達のパーティには必要ないよ! まだここから出られないって決まったわけじゃないし。諦めないでみんなで出口を探そう! みんなで探せばきっと見つかるって!」

 

「ネプテューヌ…」

 

「それにさ、舞とセレナはさっきからずっと冷静にしてるけど、何か策があるんじゃないの?」

 

「ふふっ。ネプテューヌの言う通りだよ。実はある人から情報をもらってね。私と舞はこうなることを初めから予測してた。こうなった時のための布石は用意してある。そうだよね? 舞?」

 

「そういうこと。ネプギア、聞いた通りだよ。私達も可能な限り早く合流できるようにするから」

 

舞のNギアの画面にはネプギアが映し出されていた。

 

『それではこれから下町の防衛任務に入りますね。舞さん、気を付けてください』

 

「ネプギアの方もね。何かあったらすぐに私かセレナに連絡して」

 

『わかりました!』

 

ネプギアとの通信を終了する。

 

「ネプギアが言ってた舞からのお願い事ってこのことだったんだね?」

 

「敵の策を初めから読んでいたなんて驚きだわ…。これだけ大きな倉庫なら別の出口があるはずよね。誰があいつの思惑通りにモンスターの餌食になってやるものですか」

 

舞達の存在を感知したのか倉庫を住処にしていたモンスター達が奥から現れる。

 

「行こうか。みんなで生きてネプギア達が待つ下町に帰るよ。ネプテューヌ、ノワール。女神化はできる?」

 

「ふっふーん。待ってましたー!」

 

「行けるわ!」

 

ネプテューヌとノワールの体が光に包まれる。光が弾け飛び、紫の女神(パープルハート)黒の女神(ブラックハート)が降臨した。

 

「私達はこっちの女神化だね。早いところ通常の女神化の持続時間を延ばしたいところだよ」

 

舞とセレナは特殊女神化。舞の髪は銀色に。セレナの髪と瞳が金色に。完全なる形ではないが銀の太陽と金の月が揃った。全員が得物を構えて奥から現れたモンスターの群れと向き合う。

 

「さて、私達の邪魔をするなら斬り捨てるのみだよ。みんな、行くよっ!」

 

苦境に立たされたとしても全員で生きて帰る。誰かが欠けるなどと言った結末を認めるわけにはいかない。舞の言葉を合図に現れたモンスター達との戦闘が開始されたのだった。

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