超次元ゲイムネプテューヌ 銀陽の女神 Re;Birth 作:ミオン
Game1:終わりから始まる新たな物語
ゲイムギョウ界。それは下界と呼ばれる人間達の住む四つの大陸と遥か空の彼方に位置する守護女神が住む天界で構成された現実とは異なる異世界の一つ。空に浮かぶ四つの大陸は四人の女神達によって守護されているのだが、大陸を守護しているはずの四人の守護女神達はこのゲイムギョウ界の統一を賭けた
始まりはある日の夜のこと。彼女達が守護する四つの大陸で不思議な色の流れ星の目撃情報が上がった。女神ブラックハートが守護する重厚なる黒の大地ラステイションでは灰色と金色。女神ホワイトハートの守護する夢見る白の大地ルウィーでは水色と蒼色。女神グリーンハートの守護する雄大なる緑の大地リーンボックスでは桃色と白色。最後に女神パープルハートが守護する革新する紫の大地プラネテューヌでは銀色と薄紫色の流れ星が目撃された。
四つの大陸で目撃された流れ星。それは四人の守護女神と共に物語の担い手となる少女達の訪れ。彼女達が再び集い、力を一つに合わせる時。この世界は新たなる夜明けを迎える。プラネテューヌで目撃された銀色と薄紫色の流れ星の正体である二人の少女の目覚めに合わせる形で残る三国で目撃された流れ星の正体である少女達が目覚めた。それが新たなる物語の始まり。
最初に目覚めたのは長い黒髪に銀の瞳を持つ少女。ゲームの電源ボタンのマークが浮かぶ銀の瞳と銀色の太陽の髪飾りが特徴だ。彼女が着ているモノクロ色のパーカーワンピは少し前にあったとある戦いの影響で胸元部分が破れてしまっている。彼女の心臓に当たる部分に埋め込まれた眩い光を放つ銀色の結晶が露となっていた。
「ここは…どこなのかな?」
彼女の名前は
守護女神達と力を合わせて超次元ゲイムギョウ界を襲う脅威と戦い、世界を守るという宿命を背負った彼女に死は許されない。少し前の戦いでは強い絆で結ばれた四人の女神候補生達と彼女達の姉である四人の女神。銀と金と結晶の国を持たぬ三人の女神と力を合わせ三年間に渡る長き戦いに終止符を打つことに成功した。
「多分ですけど、プラネテューヌだと思います」
舞の隣にいるのはセーラーワンピを着た少女。薄紫色の髪と十字キー型の髪飾りが特徴だ。彼女の名前はネプギア。超次元ゲイムギョウ界を構成する四国の内の一つ、革新する紫の大地プラネテューヌの女神候補生にして、守護者である
「どうやら他のみんなとは離れ離れになってしまったみたいだね。みんなは大丈夫かな…?」
舞の肩の上に乗っているのは白色のドレスを着た小さな妖精のような少女。彼女の名前はアリア。舞を超次元ゲイムギョウ界に召喚した銀の女神で本来は舞と同じ体格なのだが、とある戦いの影響で小さい姿になってしまった。舞とは二人で一人の銀の女神で超次元ゲイムギョウ界を襲う脅威から世界を守る宿命を背負っている。
「ハード・リンクの光を可視化させてみるよ。これなら安否の確認ができる」
ハード・リンクとは守護女神達と紡いだ絆の力。共に過ごしてきた時の中で紡がれた絆の光にはお互いの心と体を結び、記憶を共有することができるという効果がある。この光を可視化させると安否の確認と居場所を把握することができるのだ。一度ハード・リンクを発現させれば、強大な力による外的な切断が行われるか、守護女神が消滅した時を除いて消えることはない。舞の体から現れた光は夜空の遥か彼方に向かって伸びている。この状況から離れ離れになった女神達との合流は厳しいことが予想された。
『ユニちゃん達、大丈夫かな…?』
『一人ではないみたいだけど、心配ね…』
舞とネプギアの手の中にあるNの形をした紫色と薄紫色の結晶から聞こえるのは
「このパーカーワンピを何とかしないと…。流石にこの状態で歩き回るのは抵抗があるよ…」
「それなら私が魔法を使って修復してあげるよ」
アリアの体から放たれた銀色の光が舞の体を包み込む。光が晴れると破れたパーカーワンピは元の状態に戻っていた。これは相方の金の女神から教わった衣服を修復する魔法。ちなみにこれを応用した物に自分がプレイしたゲームに登場するキャラの衣服を再現する魔法があったりする。
「ありがとう。ここは私達がいたゲイムギョウ界とは違う世界なのかな?」
「可能性はあるね。意識を失う前に私達が見たあの光景。ネプテューヌのことが心配だよ…」
舞達が意識を失う前に目にした四人の女神達が戦っている光景。ネプテューヌが三人の女神に天界から落とされたところで視界が真っ白に染まったので、あの後どうなったのかはわからない状況。遥か上空に位置する天界から落ちればただでは済まないのは明白だ。
「お姉ちゃん…。どうして…。あんなに仲がよかったのに…」
ネプギアは涙を流していた。ネプギアが誕生したのは四人の女神が手を取り合った後の時代。ネプテューヌ達が今代の守護女神となった頃は守護女神の力の源であるシェアを奪い合うことがあったと聞いたが、それは今の世界では禁止されている。武力によるシェアの奪い合いを禁止する四国合同の平和条約締結の式典は女神候補生として誕生したネプギアが初めて参加した式典だったので記憶に焼きついていた。
「この世界で何が起きているのかわからないけど、まずは私達にできることを探してみようか。あの光景を見たばかりで辛いとは思うけど、自分から動かなければこの状況は変わらないよ」
「はいっ…!」
涙を拭ったネプギアの瞳に輝きが戻った。現在の時刻は夜。舞達が今いるのは冷たい夜風が吹き抜ける草原。ネプギアが言ったようにここがプラネテューヌの領土内ならば、首都の西側に広がる草原地帯のバーチャフォレストである可能性が高いが、視界に映る風景は三人の記憶にある景色と違っていた。
『女神化前のわたしの存在を感じる…』
「場所はわかる?」
『ここから近いわ』
Nの形をした紫色の結晶から一筋の紫の光が伸びる。舞達は紫の光に従い草原地帯を進む。行き止まりになっている場所に着いた舞達の目に映ったのは異様な光景だった。
「ネプテューヌ!」
「お姉ちゃんっ!」
白色のパーカーワンピを着た少女が何と頭から地面に突き刺さっている。舞とネプギアは二人で力を合わせて少女の体を地面から引き抜いた。相当な勢いで落ちてきたのか、突き刺さっていた場所には大きな穴が空いている。
「守護女神だからと言っていいのかわからないけど、特に目立った外傷は無いね。気を失っているだけみたい」
「よかった…。この状況を見ると本当にあの場所から落とされたということですよね…?」
「そうなるね。何故かはわからないけど、四女神達はこのゲイムギョウ界の覇権を賭けて争っているみたい。それに途中から割り込んできたあの声…。誰かがネプテューヌ達が戦い合うように仕向けている…?」
「裏で糸を引いている奴がいるのなら、私はそいつを絶対に許さないよ」
「わたしも舞さんと同じ気持ちです! 絶対に許しませんっ!」
舞とネプギアは温厚な性格なので滅多に怒らないが親友と実の姉を傷付けられたら話は別だ。温厚な人を怒らせると大変なことになるのはどの世界においても同じこと。本気で怒ったこの二人の前には鬼も泣いて逃げ出すかもしれない。気を失ったネプテューヌはネプギアが背負い、これからどうするのかを考えることにした。
「近くに街が無いか探してみようか」
「私が空に上がって見てみるよ。銀翼の展開なら今の状態でもできるから」
舞は目を閉じて意識を集中させる。背に機械的な意匠の銀色の大翼が現れた。これは守護女神の体を守護するプロセッサユニットと呼称されるパーツの一部。守護女神としての力を最大限に発揮する女神化を行使することで現れるのだが、必要な部位だけを具現化させる部分展開と言う使い方もある。全てのプロセッサユニットを具現化させるよりかは消費するエネルギーが少ない。
実を言うと今の舞は意識を失う前にあった戦いで力をかなり消耗している状態なので、プロセッサユニットの部分展開を行うのが精一杯の状態なのだ。近場に街があれば自分の体と気を失ったネプテューヌを休ませることができる。舞は背の銀翼を使い、空に上がると周囲を見渡す。結果、ここから少し距離はあるが街を視界に捉えることができた。次の目的地が確認できたところで舞は地上に降りる。
「どうでしたか?」
「ネプギアの言った通り、ここはプラネテューヌで間違いないみたい。ここから少し距離はあるけど、プラネテューヌの首都が確かに見えたから。ただ、私の記憶にある風景とは何かが違っている気がするかな」
「と言うことは私達が今いるのは元のゲイムギョウ界とかなり近い世界ってことになるのかな?」
『それが正解だと思うわ。この女神化前のわたしは元の世界の本体とは違う別のわたしみたいだから。ハード・リンクの光が現れなかったことにも納得ができる』
『わたし達女神候補生はどうなっているんでしょうか? 最後に見た光景にはわたし達の姿は無かったみたいですけど…』
「確かにそれは気になるね。ネプテューヌが目を覚ましたら何かわかるかもしれない。バラバラになったみんなと合流するためにもこの世界の情報を集めないと。プラネテューヌの首都を目指して休める場所を探したほうがいいと思う。ここにいるとモンスターに襲われる危険もある」
夜はモンスターの活動が活発になる傾向がある。夜の暗闇に紛れての強襲などは十分にあり得ることなので、無事に首都に到着するまで気は抜けない。舞達はプラネテューヌの首都を目指して歩を進める。道中に徘徊するモンスター達の視界には細心の注意を払い、交戦を避けて進むこと十五分。無事にプラネテューヌの首都に到着した。
「流石に夜だと人も少ないね…。どこかに泊まれる場所は…」
首都の入口から少し進んだところにホテルを見つけた。運のよかったことに三人部屋が空いていたので舞とネプギアの二人で料金を支払い、チェックイン。部屋に入ると意識を失ったネプテューヌをベッドに寝かせる。残念ながら目を覚ます気配は無い。地面に突き刺さっていたということは頭に相当の衝撃を受けたと思われる。目立った外傷がないとは言っても心配だ。
「お姉ちゃん…。明日には目を覚ましてくれますよね?」
「ネプテューヌなら、何事も無かったかのように起きて来ると思うな」
部屋にはシャワールームがある。さらに同じ階には洗濯機と乾燥機があったのでこれを使うことにした。私とアリアが先にシャワーを浴び、次にネプギアがシャワーを浴びる。部屋に最初から置かれていた寝間着を着たら同じ階にある洗濯機の中に着ていた衣服と下着を入れて回し始める。
ちなみにこれらの設備を使う際には別料金がかかる。洗濯が終わったら続けて乾燥機を使う。かなり高性能な物なのか割と短い時間で衣服と下着が乾いた。乾燥機から取り出して部屋に戻ると起きたら着れるように綺麗に畳んでおいた。
「何というか、色々なことが一気に起こり過ぎてかなり疲れたよ」
「そうですね。明日からはまた大変な毎日になりそうです」
「明日は情報収集から始めようか」
『わたし達も協力するわ。違う世界の別人であったとしても、わたしである以上は無関係というわけにもいかないし…』
『一緒に頑張りましょう! みんなで力を合わせれば、きっと何とかなると思います!』
舞達の心は一つ。バラバラになった四人の女神候補生と国を持たぬ三女神が再び集結する時が来ることを願い、舞達は眠りに就いた。夜が明けて太陽が空に上がる時、一つの物語の終わりから始まる彼女達の新たな物語が幕を開ける。彼女達が最後に到達する結末はまだ誰も知らない。