超次元ゲイムネプテューヌ 銀陽の女神 Re;Birth 作:ミオン
リーンボックスに到着した舞達はハード・リンクの輝きを頼りにラムとシオンと合流。無事に合流できたところでリーンボックス教会に向かったが、この大陸の守護女神であるグリーンハートに会うことはできず、教会を後にして再び街に戻ることになった。
「わっ…。ごめんなさい。怪我は無い?」
対面から走ってきた人物が先頭を歩いていた舞とぶつかる。その人物は黒いコートとフードで顔を隠していて、一見するだけでは男性なのか女性なのか区別がつかなかった。
「いえ…。こちらこそすみません。急いでいたもので注意を怠っていました。それでは、失礼しますね」
声を聞いたところでは女性。その人物はリーンボックス教会の方向に走り去って行った。
「今のは…」
「舞さん、どうしたんですか?」
「何でもないよ。それにしても、あの格好を見ると最初にセレナと会った時のことを思い出すよ」
元のゲイムギョウ界でセレナは舞達に正体を明かす前は先程舞とぶつかった人物のような格好でクロという偽名を名乗って舞達を陰ながらに支えていた。
「そんな時もあったね。何だか今となっては随分昔の話に感じる。私も年かなぁ…」
守護女神は外見こそ変化しないが、数百年は優に越える時を生き抜いて来ているとも言われている。シェアが尽きない限り半永久的に存在できると言っても、その道は決して楽しいことばかりではない。
「えっ…。女神って何百年も生きてるってこと…? なら、わたしたちって実はBB…」
「それ以上は言ったら駄目だよ。口を縫い合わさないといけなくなる」
「本当にこの子は…。すぐに余計なことを言うんだから…」
舞がネプテューヌの口を塞いで止める。ノワールも呆れを隠せない。口は災いの元とはよく言ったものである。
「落ち着いたところで、ギルドに何かクエストがないか見に行ってみようか。お手頃な物があれば、特訓で習得した新しい力も試せると思うから」
現状、パーティーの方針として空いている時間があれば、基本的にクエストを優先することにしている。お金と様々な素材の獲得は勿論のこと、舞達守護女神にとっては力の源であるシェアの上昇に繋がるからだ。
こちらのゲイムギョウ界を守護する女神達のシェアの状態だが、マジェコンヌが世界にばらまいたモンスターディスクで下界に現れたモンスター達の影響で低下している。守護女神戦争の裏で暗躍するマジェコンヌを倒すためにはシェアの力を取り戻して、四つの大陸の守護女神が力を合わせなければならない。舞達は早速ギルドに向かう。
「クエストで経験値を稼いで限界までレベルアップしたらあのオバサンをワンパンで倒せるようになったりとかしないかな?」
「流石にそれは無理かな…。宝玉で再現できる最強クラスの相手とか変遷時に稀に現れる超接触禁止種と連戦したら強さは一気に上がると思うけど、戦いに絶対はないからね」
戦いというのは何が起こるか予測できない。こちらが仮に有利な状況であったとしてもそれが覆されるようなことだって起こり得るのだ。舞はクエスト掲示板を確認する。
「討伐クエストが二件上がってる…」
依頼書を手に取って確認。エムエス山岳というダンジョンのモンスター討伐。プラネテューヌのバーチャフォレストの魔窟。ラステイションの廃棄された倉庫と同様にモンスターの住処となっているようでここを根城とするモンスターの影響で離れた町同士を行き来する馬車などの交通網が特に被害を被っているとのこと。
「確かこのダンジョンを抜けたら隣街に行けたはずよ。実は前に来た時にその隣街には紅茶とカフェが美味しいって評判のカフェがあるって聞いたわ。一度は行ってみたいと思ってたからそこに行くついでっていうのはどうかしら?」
「いいね。どうせベール…。グリーンハートに会うのはまだ先になると思うし。元のゲイムギョウ界だったら舞が行けば確実に会うことができるけど、ここではそれが通用しないからなぁ」
元のゲイムギョウ界のベールなら舞とアリアが教会に来た時にはゲームと言う名の公務をしていたとしてもそれを止めて出て来てくれる。仮に本来の仕事中であったとしてもそれらを高速で片づけて時間を作るようになっている程だ。ちなみにこれはノワールとブランについても同じことが言える。それは舞との時間を大切にしたいという意志の表れでもある。
受付にてクエストを受注。早速目的地であるエムエス山岳に向かおうとしたその時に舞の視界に見知った顔が映る。彼女もまた少しの間ではあるが共に戦った仲間の一人である。
「ネプテューヌさんに大きい舞ちゃん。この大陸に来てたんだね。会えて嬉しい」
「私も嬉しいよ。この場合は初めまして…になるのかな? 鉄拳」
「どうなのかな? 私は小さい舞ちゃんとはよく遊んでるというか特訓してるから…。そのうち舞ちゃんに格闘技で追い抜かされるって思ってるよ。現に神次元のネプテューヌさんには負けちゃったから…」
「流石にこんなのでも女神様だからそれは仕方ないんじゃないの?」
「神次元のネプテューヌさんは女神様ではないから…。あの強さは本当に凄いの一言だよ。どんな特訓をしたらあれだけの強さになるのかわからない…」
「おお! その小さい舞がいるって世界にもわたしがいるんだね? そっちのわたしって奇妙な立ち方でわたしは人間を辞めるぞノワールッ! みたいな感じの台詞を言ってなかった?」
「小さい舞ちゃんのお母さんに特訓を受けた後は本当に言ってたよ? 正確にはわたしは人間を辞めたぞ! だったけど…。神次元のネプテューヌさんは別の世界にいるお母さんに代わって小さい舞ちゃんを守ってるよ」
舞はラステイションで出会った楓から得た情報を思い出す。舞の母親である神奈 奏は始次元ゲイムギョウ界と呼ばれる世界から今この時も舞のことを見守っているということである。しかし、小さい舞がいるというゲイムギョウ界は神次元と呼ばれていることから二人はお互いに離れた状態にあるという結論に辿り着いてしまう。どのような過程があって現在の状態になっているのかまではわからない。
「これからクエストに行くんだよね? 忘れない内に小さい舞ちゃんからのプレゼント、渡しておくね」
舞は鉄拳から一つの鉱石を受け取る。受け取ったのは緑色の鉱石。内部には強力な風の魔力が封じ込められていた。プラネテューヌで出会ったブロッコリーとラステイションで出会ったMAGES.からも同じような鉱石を貰ってはいるが、現状では用途がわからない。ファルコムから貰った白金色のシェアクリスタルも同じ。
「何でも強風が常に吹いてる場所で取れるんだって。吹き飛ばされないように鋼鉄のブーツを履いて取りに行って来たよって言ってた」
「もう突っ込む気力が起きないかな。その辺りは小さい私と会えた時にでもゆっくりと聞かせてもらうよ」
「そうだね。そこまで遠い未来の話じゃないと思う。私は当分はこの大陸にいるから手が足りない時とかは声をかけてね。その時は協力するから」
「ありがとう。その時はお願いするね」
鉄拳と別れた舞達は街を出て目的地のエムエス山岳に向かう。
舞達が街を出たのと同時刻に先程舞とぶつかった謎の女性はリーンボックス教会に来ていた。
「おや、来客の方ですかな? 如何様なご用件で?」
「はい。私はルウィーの宣教師、コンベルサシオンと申します。実はホワイトハート様の命によりグリーンハート様に大至急伝えて頂きたい情報をお持ちしまして…。グリーンハート様にお会いしたいのですが…」
「先程の少女達と同じでお主も素晴らしく運が無いな。既に今日の面会時間は終わってしまっておる。代わりにワシが伺うことになるが…」
「それで結構です。グリーンハート様には後で伝えて頂ければ。それで今回お持ちした情報についてですが、魔王崇拝についてなのです」
このゲイムギョウ界には舞達が元いたゲイムギョウ界と同じ四人の守護女神がいて、国民達は自分達が住む大地の守護女神を信仰している者が殆どである。中には住む大地とは違う大地の守護女神を信仰している者も見られるが、女神信仰に当て嵌まらない場合が存在する。それが守護女神ならざる存在を信仰しているというものだ。
「それが魔王崇拝か…。噂では聞いたことはあるが…このリーンボックスでは実在は確認されていないぞ」
「外からそれを持ち込む者がいるとしたら…どうでしょうか? 魔王信仰を布教している者が既にこの国に入り込んでいるとしたら…」
「まさか…既に入り込んでいると言うのか…?」
「そのまさかです。私の方で掴んでいる者達は何人かいるのですが…。先程この教会に神奈 舞という少女が来なかったですか?」
「うむ。近頃の若者にしては非常に礼儀正しい少女だったな」
「実は彼女は魔王崇拝者にして魔王崇拝の布教者…。魔王ユニミテスの使いなのです」
「な、何じゃと!? 俄かに信じ難い話だが…。証拠はあるのか?」
「はい。彼女は数日前に訪れたラステイションで女神の信仰が地に堕ちているのをいいことに魔物達を呼び出して街の一角を破壊し、人々に恐怖心を植え付けることによってその信仰心を魔王に向けるように仕向けたのです。証拠ですが、現地の住民の方の証言を記録した映像があります。こちらをご覧ください」
『信じられないとは思いますが、私は確かにこの目で見たんです! 神奈 舞と名乗った少女が魔物達を呼び出し、街を破壊していくのを! 自分は悪い夢でも見ているのかと思う程の物でした…! その姿はまさに魔王の使いでした。いや、彼女もまた魔王ユニミテスと同様の魔王なのかもしれません! 思い出すだけで震えが止まらない! 本当のことです! 信じてください!』
コンベルサシオンが見せた映像に映し出されていたのはラステイションで舞達を罠にかけ、キラーマシンとデウス・エクス・マキナを使って下町を襲撃した張本人であるアヴニールの社長補佐のガナッシュであった。
「今のはラステイションの大企業アヴニールの社長補佐からの証言です。彼はアヴニールに入社して以来、身を粉にして働き会社に尽くし続けたことで、社長補佐という重役まで上り詰めた青年です。嘘をつくような者ではないことはその経歴が証明しています」
「確かに…。だが、突然現れてそのような情報を信じろと言われてもな…」
「ルウィーの諜報部で秘密裏に調査を行った結果、彼女はこのゲイムギョウ界に存在するどの大陸にも住んでおらず、どこからやってきたのかすらわからないという始末…。彼女の身元調査に派遣した部下達は誰一人として戻って来ておりません。普通の人間ではないことは間違いないかと」
「むう…。だが、やはりワシには信じられぬ。せめてワシの目で実際に見るまではな」
「ならば、決定的な証拠を後程お見せしましょう。現在は私の部下が彼女を尾行していますが、私もそれに合流する予定です。魔王崇拝をこれ以上拡大させないためにもどうかグリーンハート様にこのことをお伝えください」
宣教師コンベルサシオンはリーンボックス教会を後にする。舞達の知らない水面下で邪悪な陰謀が動き始めていた。
銀の書 Re;Birthにて読者様から提供を受けた舞の新しいイラストを公開しています。よろしければ見て行っていただければと思います。