超次元ゲイムネプテューヌ 銀陽の女神 Re;Birth   作:ミオン

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Game22:舞が一番に嫌うもの

水面下でコンベルサシオンの陰謀が進む中で街を出た舞達は目的地のエムエス山岳に到着した。ここの山道は勾配が激しい場所は殆ど無いのだが、慣れていないと険しいと感じてしまう。

 

このエムエス山岳で確認できたモンスターの情報だが既にラムとシオンから得ている。顔にブーメランが刺さった小さい人型の『ブーメラン』。どこかの魔法少女アニメで契約を持ち掛けて来る生物に似た姿を持つ『電球天使』。バーチャフォレストにいたチューリップの色違いの『アベルドーン』。緑色の箱型の体を持った犬の『ハコイヌ』。怒ったような顔をした男性の顔から生えた手という特徴的な体を持ち蒸気を吹き出している『WDヘッド』。以上の五種に加えて危険種は『ドルフィン』が確認されている。

 

「かなり歩いたと思うんだけど、後どれくらいなのかな…? ネプ子さん、ちょっと疲れてきたかも…」

 

「わ、わたしも…疲れたですぅ…。休憩できるところはないですか?」

 

「まだ半分を過ぎたくらいだけど…。私も最初はこんな感じだったからネプテューヌさん達がこうなるのは仕方ないわよね」

 

『残念だが、休憩所のような場所は無いな。休息を取るならば周囲の警戒は我がやっておこう』

 

「シオンだけに任せるのは負担が大きいから、探索魔法を併せて発動するね」

 

女神龍であるシオンの感覚は人間とは比較にならない程に強い。妙な動きをする存在があれば即座に感知できる。さらにセレナの探索魔法が加わることで索敵範囲は大幅に拡大されるのだ。

 

「わたしはまだ平気だけど慣れてないと確かに疲れるわね。シオンとセレナのお言葉に甘えて少し休憩してから先に進みましょ」

 

『むっ…。何者かがこちらに近付いて来ている…。人数は一人だな』

 

シオンの言葉の後に舞達の前に現れたのは一人の青年だった。特に目立った印象のないどこにでもいるような感じ。

 

「君たち、ちょっといいかな?」

 

「ねぷ? もしかして、お兄さんナンパ? 美少女ばかりのパーティだから声をかけたい気持ちはわかるけど、ごめんね? わたし達の色々な物語を携帯とかパソコンで見てるお友達のためにもお受けできないんだー。特にわたしのファンってモブキャラとは言っても男の人と話をするだけでも嫉妬する純粋な人達ばかりだからさ」

 

「確かに美少女ばかりのパーティで素晴らしいとは思うけど、君の予想は残念ながら外れだ。君たちに声をかけたのは少し聞いてほしい話があるからさ」

 

「それならここを抜けた先の町でしませんか? わたし達、丁度ここを抜けた先にある街に向かう途中なんです。それにここはモンスターも多いですし…」

 

「そうね。ネプギアの言う通りだと思うわ。どうしてもここでしないといけない話なの?」

 

「そんなに時間は取らせないから。君たちは魔王ユニミテスを知っているかな?」

 

魔王。それは名の通り魔物達の頂点に立つ存在なのだが、女神が守護するゲイムギョウ界では殆ど存在は認知されていないと言ってもいい。一部の地方には過去にあった守護女神が無き空白期の時代に魔王が存在したという伝承が残されている程度。リリムのように血を受け継いでいる者達が生き残っていると言われているが、それは極少数である。

 

「ユミニテス…? ユニミテス…? あれ? どっちが正しいのかな?」

 

「魔王なんて私は初めて聞いたわ。他に誰か聞いたことある?」

 

「バルサミコスさんなんて名前の魔王さんは聞いたことがないです」

 

「魔王なら何人か心当たりがあるけど、初耳かな。何か名前を聞いた限りでは小物感が強い気がするけど…」

 

「まさかダンジョンの中で布教活動をしてるの?」

 

「そんなところだよ。流石に街中で堂々とやると教会に目をつけられるからね。偶然君達を見かけたから声をかけたのさ」

 

「守護女神がいるのに魔王崇拝なんか広めてどうするのよ」

 

「あいちゃんの言う通りです。わたしはパープルハート様を信仰しているです!」

 

「私は四人の女神の中だとブラックハートかな。それと名前は伏せるけど別に信仰している女神がいるよ。正直興味ないかな。アリアと一緒に空白期時代に戦った魔王達は別だけど」

 

「私が信仰しているのはホワイトハート! それに魔王は悪い奴らでしょ? 前に図書館で借りた本に書いてあったわよ?」

 

「みんな守護女神を信仰しているわけだけど、それを知った上で魔王の話をしたいわけ?」

 

口には出さないがこのパーティには銀の女神(舞とアリア)金の女神(セレナ)紫の女神(ネプテューヌ)黒の女神(ノワール)紫の女神候補生(ネプギア)黒の女神候補生(ユニ)白の女神候補生の妹の方(ラム)結晶の女神龍(シオン)で守護女神が既に九人いる。この魔王の使いと名乗る青年は自分が九人の守護女神を相手に魔王崇拝を広めていることには気が付かない。

 

「そんな魔王様を邪険にしないでよ。女神信仰は確かにいいと思うけど、魔王崇拝も楽しいよ。ここで君達と会えたのは魔王様の導きに違いない。記念にこれを受け取ってほしい。魔王ユニミテスのグッズセットを。これをどうするかは君達に全て委ねるよ。使ってくれてもいいし、気に入らなかったら捨ててくれて構わない。中に入っている物の説明は時間をかけてしたいところなんだけど、僕は次の勧誘の予定があるからこれで失礼するよ。君達に魔王様の加護があらんことを!」

 

魔王の使いの青年は紙袋を舞に押し付けると逃げるように去って行った。

 

『舞よ! その紙袋を手放せっ!』

 

シオンの警告を受けた舞は紙袋を手放した。紙袋の中から光が溢れ出すとモンスターが現れる。

 

『彼奴め…。我らを最初から罠にかけるつもりで近付いて来たようだな…』

 

「危なかった…。ありがとう。シオン」

 

『気にするな。さて、邪魔な貴様らには即刻退場してもらうとしよう』

 

舞達は武器を呼び出して戦闘を開始する。モンスターの数はそれなりに多いが、現れたのはエムエス山岳に生息しているモンスターばかりで危険種はいなかったため、舞達の敵ではなかった。

 

「次のが出て来る前に消し炭にしてやるわ!」

 

アイエフの髪の色が金色に変わると火属性の魔法が発動。グッズとモンスターディスクが入った紙袋は強烈な炎に包まれ一瞬で灰となって消滅した。

 

『ここに来て我らを標的としてきたということは…。裏で糸を引いているのは彼奴以外には考えられぬな…』

 

「マジェコンヌ…。あの青年が舞に紙袋を渡したってことは舞を標的にしているみたいだね」

 

「上等だよっ…!」

 

これがマジェコンヌの仕業だと理解した舞の銀色の瞳が一瞬だが鮮血のような赤色に染まる。

 

その一方で舞にモンスターディスクの入った紙袋を渡した魔王の使いの青年は宣教師コンベルサシオンと合流していた。

 

「あの…これでよかったんでしょうか?」

 

「成功です。ユニミテス様も喜んでおられるでしょう」

 

「で、では…! 約束どおりこのスタンプカードにスタンプを!」

 

青年がスタンプカードをコンベルサシオンに差し出した次の瞬間に一陣の風が吹き抜けた。

 

「…」

 

青年が突然意識を失ってその場に倒れる。コンベルサシオンは意識を保っていたが、その体は震えていた。

 

「これはっ…! この私が恐れを抱いているだと…! これが…お前の本当の力だと言うのか…! だが、私の悲願を邪魔するお前は絶対に排除してやる! どんな手段を使ってもな!」

 

コンベルサシオンは気絶した青年を抱えてその場を後にする。

 

「舞さん。今のは…」

 

「ごめん。少し腹が立って怒りを抑えきれなかった。まだまだ精進が足りないよね」

 

神奈 舞という少女が一番に嫌う物。それは裏で暗躍をする者である。自らは手を汚さず、目的のために他者を利用する。自分の好きなゲームではそのような悪役は大勢見てきたが所詮それはゲームの話に過ぎない。ゲイムギョウ界に来てから現実で直面したのはこれで二度目だ。

 

超次元ゲイムギョウ界の根幹を成す特異点の器である舞を怒らせることは超次元ゲイムギョウ界その物の怒りを買うことと同義なのだ。先程離れた場所にいた青年を気絶させたのは怒りによって解き放たれた力の一端に過ぎない。

 

「みんなを怖がらせちゃったね…。本当にごめんなさい。教会に戻ろうか」

 

「そうだね…。魔王崇拝なんて物がこの国で蔓延っているなんて一大事だよ。教会に報告してグリーンハートに何としてでも会わせてもらおう」

 

来た道を引き返してリーンボックス教会に戻る。水面下で蠢いている陰謀。片鱗を見せた舞の怒りの力。この先にどのような罠が仕掛けられているのか、何が起きるのかはわからない。雄大なる緑の大地を吹き抜ける風は不穏な音色を響かせていた。

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