超次元ゲイムネプテューヌ 銀陽の女神 Re;Birth 作:ミオン
ホテルの部屋のベッドで眠りに就いた舞達。夢の世界に旅立った舞達の意識は奇妙な空間に飛んでいた。どこを見渡しても広がっているのは暗闇だけ。ひとかけらの光も見えない。自分達の服装は何故か普段の服装に戻っている。何が起きているのかわからない状況だったが、一人の少女の声が暗闇の静寂を打ち破った。
「ここどこー? 真っ暗で何も見えないよ?」
声が聞こえた方を振り返ると舞とネプギアの視界に一人の少女の姿が映る。映ったのは薄紫色の髪に白のパーカーワンピを着ている少女。髪につけた二つの十字キー型の髪飾りが特徴的な少女の名前はネプテューヌ。革新する紫の大地の守護女神でもある彼女は舞の親友でありネプギアの自慢の姉である。
「ネプテューヌ…!」
「お姉ちゃん!」
「おお! 誰かは知らないけど、ぼっちはこれで回避できたね! さすがのわたしもひとりぼっちは堪えるところだったよ。ところで、ここがどこなのか二人は知ってる?」
「残念だけど私達にもわからないよ。気が付いた時にはここにいたから」
「そっかー。誰かの部屋の中でブレーカーが落ちて停電にでもなったのかなぁ? それにしてはわたし達の体って立ち絵に蛍光塗料を塗ってやったぜ!的なくらいにはっきりとしてるよね? はっ! まさかこれは主人公の輝き!?」
「わたし達のことを知らないことを除けばいつも通りのお姉ちゃんですね…」
「そうだね。多分だけど、ここは夢の世界だと思うよ。現実世界の私達の体は眠っているけど、意識だけがこの空間に飛ばされたと言ったところかな? ここで立ち止まっているのも何だから、適当に歩き回ってみる?」
「それは危ないんじゃないかなぁ? 君の言う通り、ここが夢の世界だとしても初回仕様のパッケみたいに足で踏みつけたら後で大変なことになる物が色々と落ちてるかもしれないよ? こんなわけのわからないところじゃ何が落ちていても不思議じゃないと思うなー」
「なら、一緒に手を繋ぎながら進んでみませんか? それならお互いに安心できると思いますよ」
「いい案だと思うよ。このまま何もしないで待ち続けるのは性に合わない」
ネプテューヌの左隣に舞が、右隣にネプギアが立つ。三人で手を繋いだ。
「君達の手…あったかいね…。これなら安心して進めるかな!」
手を繋いだ舞達は歩き出す。自分達の視界に映る光景は相も変わらず暗闇。どこに何があるのかもわからないので、ただ真っ直ぐに進んでみることに。
「ねぷっ!? なんかぐにゃっとした物を踏んづけちゃったよ!?」
舞とネプギアはネプテューヌの足元を見るが何も無かった。念の為に靴の裏も見せてもらったが、何もついていない。踏みつけた物が何であれ、夢の世界ならば多分大丈夫ということで結論付けると舞達は再び歩き始める。ある程度進むと頭の中に女性の声が語りかけてきた。声の主は語りかけるのが遅れて申し訳ないと謝罪する。
「この声はまさか…」
「もしかして、この天の声の人とはお知り合いとかだったりするの?」
「声だけを聞いた限りではそうなりますね。あの、お名前を教えてもらってもいいですか?」
「はい。私は司書イストワールと申します。このような場所にお呼びして申し訳ありません。下界に落ちたネプテューヌさんにお願いしたいことがありまして…。こうして呼びかけているのです」
「えっ? 死書…?」
呟いたネプテューヌが震え出した。どうやら勘違いをしているようなので解いてあげることに。
「ネプテューヌ、字が違うよ。イストワール、ここは夢の世界で現実の私達の体は眠っているということかな?」
「はい。ネプテューヌさんは気を失ったままで、お二人は普通に眠っている状態ですね」
「よかったぁー。それなら安心だよ。もし、死んでたりとかしてたらHDDのデータの消去と詰みゲーの消化という未練を残したまま、旅立つところだったよ。わたしの秘蔵コレクションを無断で見ようとする人がいたら化けて出らざるを得ないかなー」
「誤解が解けたようで何よりです。それと、ネプテューヌさんと一緒にいるお二人は私のことを知っているようですが、どこかでお会いしましたか?」
「いーすんさん、わたし達のこと忘れちゃったんですか? 誰かに記憶を消されたとか、そんなことはないですよね?」
「そのようなことは無いですね…。過去にお会いしたのであれば忘れるということは無いはずなのですが…。何故でしょう。お二人とは初めてお会いした感じがしません。詳しいお話を聞かせていただきたいところではありますが、残念ながら時間がありません。本題に入らせていただいてもよろしいですか?」
舞達の知るイストワールは超次元ゲイムギョウ界を構成する四国の内の一つであるプラネテューヌの歴史の記録者。プラネテューヌの初代女神によって生み出された人工生命体でもある彼女は遥か昔の時代から守護女神達のことを見守り続けていて、守護女神達が紡いできた歴史を記録している。だが、語りかけてきたイストワールは舞達のことを知らなかった。このことから舞とネプギアは一つの結論に辿り着いたが、今は自分達に語りかけている彼女の話に耳を傾けることにした。
「いいよー。天の声さんはわたしに何をお願いしたいのかな? 主人公のわたしに不可能はないけどね。というか、二人と天の声さんはどうしてわたしの名前を知ってるのかな? もしかして、私のファンだったりする? サインなら何枚でも書いてあげるよ?」
「ファンと言うのは違うかもしれませんが、あなたのことを心から信頼していると言わせていただきましょうか。お願いというのは、私に力を貸していただきたいのです…」
「それは別にいいけど、何をすればいいの?」
「お願いです。彼女を…マジェコンヌを止めてください…」
「マジェコンヌ!?」
「どういうこと…?」
マジェコンヌ。それは舞達がいた超次元ゲイムギョウ界では世界を破壊する犯罪神と呼ばれる存在だった。犯罪神を信仰する犯罪組織の勢力によって四国を守護する四女神が幽閉されて三年が経過。ゲイムギョウ界は犯罪組織の魔の手に落ちる一歩手前まで追い込まれたが、銀の女神によって召喚された舞と妹の四人の女神候補生と旅の中で出会った仲間達の力で四女神は無事に救出された。それからは厳しい戦いの連続。
犯罪組織マジェコンヌの四天王。銀の女神を捕まえていた女神の亡霊ファントムハート。女神の救済を受けることができなかった六魔将。世界を賭けた激しい戦いを乗り越えた守護女神達は最後に残った脅威である犯罪神マジェコンヌの元に到達。世界を守りたいという全員の思いの力を一つに束ねてマジェコンヌを打倒し、三年以上に渡る長き戦いに終止符を打つことに成功した。
「あなた達が数百年に渡って争い続けてきた
「
「そうなるね。この世界で何が起きているのか見えてきた気がする。どうやら、私達の戦いはまだ終わらないみたいだね。ネプテューヌ、現実世界で目を覚ましたら私達と一緒に行こうか。一人では無理でも、みんなで力を合わせればどんな困難も乗り越えられる」
「そうですね。ここに来るまで色々なことがありましたけど、みんなで力を合わせて乗り越えて来ました。大変だとは思いますけど、きっと大丈夫だと思います」
「おお…! 何だかすごい説得力があるね…!」
「本当に頼もしい限りですね…。ありがとうございます…」
「あれ? いーすんさん。何だか声がだんだん小さくなってきていませんか?」
「申し訳ありません…。どうやら時間のようです…。どうか、この世界と女神達のことを…」
イストワールの声は聞こえなくなってしまった。それと同時に舞達の意識は現実の体に引き戻される。寝る前に仕掛けたNギアの目覚ましの音が鳴り響き、舞とネプギアは目を覚ました。
「うーん…。うるさーいっ…!」
隣のベッドで寝ているネプテューヌはこの目覚まし音の発信源を探しているようだ。あの手にNギアが捕まれば、問答無用で叩き潰されるに違いない。舞は目覚まし音を止めると、ネプテューヌを起こす。
「ネプテューヌ、起きて。起きないとプリン作ってあげないよ?」
プリン作ってあげないという言葉は舞が中々起きてこないネプテューヌを起こす時に使う手段の一つ。基本的に最初は優しい声からのプリン作ってあげるから始まるが、後五分などと言って抵抗を続けるようであれば少し声のトーンを落としてからのプリン作ってあげないという言葉に変わってしまうという物である。ちなみに日によってはいきなりプリン作ってあげないから入ることもある。今回のパターンがそれだ。舞の言葉を聞いたネプテューヌは飛び起きる。
「あれ…? 無意識に反応しちゃったけど、プリンってなに? というかここはどこ?」
「おはよう。数時間前の夢の世界以来だね?」
「おお! 君達はあの時の! えーっと、名前は何て言うんだっけ?」
「そう言えば、自己紹介してなかったね。私の名前は
「わたしはネプギアです。あの…大丈夫ですか?」
「薄紫色の髪の子はわたしと同じで頭にネプってつくんだね! すごい親近感を感じるよ! 大丈夫ってなにが?」
「ネプテューヌは地面に頭から突き刺さってたんだよ。意識を失う前に何があったか覚えてる?」
舞の問いにネプテューヌは難しい顔をしながら唸る。
「舞とネプギアと会う前のことが何も思い出せないよ…。わたしはなにをしてたのかな?」
「記憶喪失か…。何かのきっかけで元に戻る可能性はあるね。ここがプラネテューヌなら、残る三国も同じように存在しているはず。それらを見て回れば何か答えが見えて来るかもしれない」
「みんなとも合流しないといけませんし、それが最善手になりますよね。最初はプラネテューヌで情報を集めてみますか? 色々とわからないことがあるのはわたし達も同じですから」
今は情報を集めなければならない。この世界で何が起きているのか。元の世界と何が違うのか。これから本格的に行動を始めるにあたって知らなければならないことは沢山ある。また長い旅にはなる気はしたが、悪い気はしない。世界を回れば色々な人達と出会えて色々なことを知ることができるのだから。
「ネプテューヌはどこか行ってみたい場所とかある?」
「わたしが突き刺さっていた場所に行ってみたいかなー。捜査の基本は現場からって言うし、何かわかるかもって思うんだ。どうかな?」
「いい考えだと思います。今から行ってみましょうか 舞さんもそれでいいですよね?」
「いいよ。そのついでと言っては何だけどギルドでクエストを受けてもいいかな? 受付の所に街の地図があった気がするからそれを見ながら向かう形にはなるけど」
このプラネテューヌは舞とネプギアが知っているプラネテューヌとは違っている。元の世界と同じ場所に同じ建物があるとは限らない。
「ギルド? クエスト? 何それ?」
「ごめん。混乱させちゃったね。詳しいことは後で話すよ。まずは朝ご飯を食べに行こうか。お腹空いてきたし…」
三人のお腹から情けない音が鳴ったのは同時だった。舞とネプギアは寝間着から普段着に着替える。部屋を出たら、一階に降りる。余談ではあるがこのホテルの朝食はバイキング形式で追加料金は発生しない。受付の際に貰えるチケットを使用すれば無料で食べられるのだ。
朝食を済ませた舞達は再度部屋に戻ると顔を洗って歯を磨き、髪を整えて準備を済ませる。部屋に忘れ物をしていないか確認したら鍵をかけ、受付に鍵を返してチェックアウト。受付に置いてあった持ち出し自由の街の地図を持ってホテルの外に出る。
「アリア、起きてる?」
舞は自分の中にいる小さな銀の女神に呼びかけた。アリアの寝床は舞の心の世界。現実世界で舞と一緒に寝ることもあるが、舞の心の世界で寝ていることの方が多い。舞の心の世界は雲一つ無い青空に銀色の太陽が輝いている世界。舞とハード・リンクで繋がっている女神ならば自由に立ち入ることができる。
(ごめん…。起きてるには起きてるけど…。昨日、デルフィナスとこの世界について調べてたらいつの間にか現実世界が朝になってて…。眠気が限界だから寝させてほしい…。わかったことは舞の頭の中に送るから…)
アリアの言葉と同時に舞の頭の中に情報が流れ込む。
「なるほどね…」
「誰かと話してるの?」
「まあね。端から見たら独り言に見えたかもしれないけど…。ネプテューヌには次の機会に改めて紹介させてもらうよ」
「アリアさん、どうかしたんですか?」
「朝までこの世界のことについてデルフィナスと調べてくれていたみたいでね。寝てないから寝させてほしいって。昼頃には起きると思うよ。早速ギルドに向かおうか。地図を見るとここから近いみたいだから」
舞達はギルドに向かう。記憶を失った紫の女神との冒険の旅が始まりを告げた。この旅の先には様々な出会いと戦いの日々が待ち受けているに違いない。みんなが幸せになれる