超次元ゲイムネプテューヌ 銀陽の女神 Re;Birth 作:ミオン
コンパが住んでいるアパートの部屋で今後の計画についての話し合いを行った舞達。話し合いの結果、プラネテューヌで活動する際はこの部屋を拠点として使わせてもらうことになった。同じ部屋で暮らす人数が増えたこともあって、コンパの負担を増やさないように家事は全員で協力して行うことに。
迎えた次の日の朝。仕掛けられたNギアの目覚まし音が部屋の中に響き渡った。現在の時刻は午前七時。カーテンの隙間からは太陽の光が差し込んでいる。最初に起きたのは舞。ネプギアとコンパが舞の後に続き、最後にネプテューヌが起きた。ネプテューヌに至っては舞が起こしたと言うのが正しいのだが。全員が起きたところで新しい一日が始まる。
「ん…。いい朝だね…」
舞に起こされたネプテューヌはとても眠た気な表情をしている。朝を苦手とする人は多いとは思うがこの場にいる四人の内、ネプテューヌ以外は早起き特化型。コンパは一人暮らしの為、朝食の準備から洗濯を家を出るまでに済ませなければならないので早起きには慣れている。ネプギアと舞は元のゲイムギョウ界で朝練を行うために早起きしていたのでこの時間に起きるのは普通なのだ。
「ほら、ネプテューヌ。プリンだよ。口開けて」
「ん…? プリン…? どこ…?」
ネプテューヌは口を開ける。舞が冷蔵庫から取り出したのは昨日の夜に作ったプリン。スプーンで一口掬い、それを寝ぼけ眼のネプテューヌの口に入れると変化が起きる。半開きだったネプテューヌの瞳が一気に開き、元気に満ち溢れたいつものネプテューヌに戻った。
「美味しいー! これで今日も一日頑張れるね!」
舞とコンパの手作りプリンの効果は抜群だった。昨日の話し合いの際に明らかになったのだが、こちらのネプテューヌはプリンのことを知らなかった。最初は記憶喪失の影響かと思われたが、他の食べ物の名前は覚えていたので本当に知らないだけだった。おやつとして冷蔵庫に入っていたプリンを食べさせたところ大絶賛だったので、夕方の買い出しで材料を多めに買い込み、舞とコンパで作ることにしたのだ。
ネプテューヌが完全に目を覚ましたところで全員で協力して家事を行う。ネプテューヌが担当するのは洗濯。コンパの部屋には高性能の全自動洗濯機がある。ネプテューヌは洗濯物入れに入った洗濯物を洗濯機の中に放り込み、洗剤を入れた。最後に蓋を閉めてNのマークが入った白いボタンを押すと洗濯機が回り始める。
ネプギアはテーブルを拭き、人数分のコップを用意。冷蔵庫からお茶を取り出してコップに注いだら、お茶碗にご飯を盛って準備を整える。続いて朝食を作っていた舞とコンパが人数分の目玉焼きを軸にした盛り合わせを持ってきた。これで朝食の準備は完了。
朝食と後片付けを済ませたら、顔を洗って歯を磨き髪を整える。最後に洗濯が終わったら洗濯機から洗濯物を取り出す。しわを伸ばして洗濯物を干したら朝に行う家事は全て完了となる。次は寝間着から普段着に着替えなければならない。
「今日の服はこれにしようかな」
寝間着を脱いで下着姿になった舞は一枚のカードを自分の目の前に掲げる。カードに描かれているのは青と灰色の配色が特徴的なパーカーワンピ。カードから放たれた光が舞の体を包み込むと舞の服装はカードに描かれた服装になっていた。カードに描かれているのはバーチャルスタイルと呼ばれるパーカーワンピの色違い。昨日の買い出しの際には食料品だけでは無い、衣服や下着類も併せて購入している。
「コスチュームカードはいい感じに機能しているみたいだね」
このカードを開発したのはアリア。このカードは衣服を粒子に変換して取り込む機能がついていて使用することでカードに描かれた衣装に即座に着替えることができる。一枚のカードで取り込めるのは一つの衣装だけだが、専用のカード入れがあるのでこれにカードを収納することで複数の衣装を手軽に持ち運ぶことができるのだ。
「アリアさんが開発するアイテムって面白い物が多いですね?」
ネプギアの服装はモノクロ色のセーラーワンピ。ネプテューヌがモノクロ色のパーカーワンピ。コスチュームカードは昨日購入した新しい衣装の数だけ開発したので、現時点では数が少ないが、面白い衣装を手に入れた時には随時開発するということになった。
「他には何か無いの?」
「またの機会に見せてあげる。楽しみにしておいて」
今のアリアはアイテムの開発を中心に舞達をサポートしている。舞の心の世界にはアリアが過去に集めた素材が収納されている特殊な空間が存在していて、様々な物を企画しては開発を進めているとのこと。アリアのことは昨日の話し合いの際にネプテューヌとコンパに紹介しているので、二人はアリアの事を知っている。
「今日はこれからギルドに向かうですか?」
コンパの服は青色のセーター。舞達の服装は昨日着ていた衣装の色違いだが、見た目と雰囲気は昨日とは一味違っている。今後は様々な衣装を着た舞達の姿が見られるかもしれない。着替えが完了したところで今日の流れを改めて整理することになった。
「今日は汚染門番蟲が逃げ込んだ穴の奥に向かおうと思う。ギルドに何か情報が入っているかもしれないから、昨日のクエストの達成報告のついでに見に行ってみようか」
「昨日の夕方の時点で噂になってましたよね…」
それは昨日の夕方のこと。話し合いを終えて四人で街に買い出しに出かけた時に二人の男達の噂話が偶然耳に入って来たのだ。自然公園の地下に発見された洞窟の中には物凄い数のモンスターがいると言う。ネットの掲示板ではあの洞窟が最近プラネテューヌの近辺に現れ始めたモンスター達の巣窟なのではないかとの噂まで立っているらしい。
ギルドには既に調査依頼が出ているようだが、優れた実力を持つ冒険者達の数も限られてきてしまうので人手不足の状態。モンスターの脅威はこのプラネテューヌだけでは無い。他の国でも猛威を振るっているようで守護女神が先頭に立ってモンスターの退治に当たっているとのこと。不穏な空気が漂う中でプラネテューヌの守護女神であるパープルハートが姿を現さないことに国民達は一抹の不安を感じているようだった。
舞達はギルドに向かう。最初に昨日のクエストの達成報告を行い、クエスト掲示板を確認。緊急クエスト掲示板にクエストが一件上がっていた。クエスト名は魔窟探索依頼。魔窟と言うのはモンスターの巣窟という意味合いで名付けられた物なのだろうか。目的は魔窟内の調査という大雑把で単純な一文となっている。
今回のような未知の領域を調査するクエストの目的はマッピングとモンスターの討伐の二つに分かれる。クエストの受注にかかる制限は特に設けられてはいないが、未調査地域は何が起きるかわからない。故に相応の実力は自然と要求される。舞達は受付で魔窟探索依頼を受注。バーチャフォレストの門番蟲が出てきた穴がある場所に向かう。現地に到着したら舞とネプギアが翼のプロセッサユニットを部分展開。ネプテューヌとコンパを抱えて穴の中に突入した。洞窟内には蒼い光を放つ結晶が複数存在しているので仄かに明るいのだが、奥に進むにつれて光を放つ結晶の数は減る。闇が徐々に広がり始めていた。
「この奥に巨大なモンスター反応があります。多分、昨日のモンスターですね」
ネプギアの手にあるのはNギアと呼ばれる様々な機能が詰まった万能デバイス。余談ではあるが、ネプギアが持っているNギアはネプギアの手によって魔改造が施されていて、市場に出回っている物の性能を遥かに凌駕している。現在使っているのはマッピングと索敵を同時に行う自作アプリ。これを起動した状態で歩き回るだけでマップデータがNギアの内部に保存される。索敵機能は画面に表示されるマップの範囲内にモンスターがいれば赤い点で表示され、範囲外の場合はモンスターがいる方角に赤い孤のラインが現れる。大型モンスターの反応を感知した際には本体が小刻みに振動すると共に画面に警告の文字が表示され、危険を知らせる仕組み。
「今度は絶対に討伐するよ。他のモンスターにも影響が出始めてるみたいだから」
その証拠に内部に巣食っているモンスターの中には既に汚染されたモンスターが何匹か混ざっていた。奥に潜んでいる元凶の汚染門番蟲を討伐しない限りは汚染の拡大は止まらない。舞を先頭に奥に進むが、広がる暗闇に視界が徐々に遮られる。先頭を歩いていた舞が何かにぶつかったのか突然尻餅をついた。
「舞さん、大丈夫ですか!?」
「大丈夫だよ。誰かとぶつかったみたい」
「痛ったぁ…! 誰よ! ぶつかってきたのは!」
薄らとではあるがぶつかった相手の姿が視界に映り始めた。舞と同じように尻餅をついていたのは茶髪の少女。トレードマークとも言える緑の二葉リボンにサイズが大きめの青いコートを羽織っている。
「ごめん。前を見ていなかった私の不注意だよね。怪我とかしてない?」
「わたしは大丈夫よ。あんたの方は大丈夫なの? というか、何であんた達みたいな子どもがうろついているのよ」
「私の体は頑丈にできてるから大丈夫だよ。その質問の答えはこの場所の調査依頼を受けたからと言わせてもらおうかな。正確には奥にいるモンスターの討伐だね。昨日の戦いでこの洞窟の中に逃げられたの」
「なるほどね…。先に調査に入った冒険者達が正体不明の大型モンスターに襲われて撤退を余儀無くされているみたいだったから警戒はしてたけど…。あんたはそいつを倒せるだけの力を持ってるってわけ?」
「私一人の力では無理。でも、みんなの力を合わせれば行けると思うよ。ここで会ったのも何かの縁かもしれない。よかったら協力してもらってもいいかな? 色々な場所を旅して相応の実力を持っていると見受けるけど」
「そう言うあんたも只者じゃないわね。瞳に浮かぶ特徴的な印…。実物を自分の目で見るのは初めてだけど、その印は守護女神の証だと言う話を聞いたことがあるわ」
「博識だね。流石は世界を回って色々な物を見てきている…と言ったところなのかな? 確かに私は守護女神だよ。と言っても守護する国は持っていないけどね」
「国を持たぬ守護女神ね…。色々と気になるところはあるけど、先に自己紹介をさせてもらうわ。わたしの名前はアイエフ。ゲイムギョウ界を駆ける一陣の風とでも名乗らせてもらおうかしら」
「私は神奈 舞。守護女神としての真名はシルバーハート。アイエフの自己紹介に合わせるなら、ゲイムギョウ界を照らす銀の太陽とでも名乗らせてもらおうかな」
銀の太陽と一陣の風が再び巡り会った瞬間だった。バーチャフォレストで出会ったコンパと同じでアイエフのことを舞とネプギアは知っている。元の世界の彼女はプラネテューヌの諜報部という部署で働いていて、プラネテューヌは勿論のこと、他の国の事情にも精通している。話を聞かせてもらったところ、現在はギルドの仕事で生計を立てながら世界を旅しているとのこと。
「話したいことはいっぱいあるけど、先にあれを片づけてからかな。今度は絶対に逃がさないよ」
舞は洞窟の天井に視線を向ける。天井にいたのは禍々しい紫色の体を持った蜘蛛型のモンスター。視線が合った瞬間に洞窟内に響き渡る咆哮を放つと舞達の前に降り立つ。昨日の戦いで逃した汚染門番蟲の登場だ。
「特殊女神化発動…!」
舞は目を閉じて集中力を高める。ネプギアもそれに合わせて目を閉じて集中力を高めると数秒後に何かが弾け飛ぶような音が響き渡った。舞の髪は黒色から銀色に変化、ネプギアの瞳に女神の印が浮かぶ。プロセッサユニットは現れない。これが体内でシェアの力を爆発させることで発現させる特殊女神化。プロセッサユニットは現れないが、身体能力は通常の女神化時と同様に跳ね上がる。力を外に放出しない分、通常の女神化と比較して消費するシェアエナジーの量が少ない。今回は不測の事態に備えて戦いながらギアを徐々に加速させるという戦術を取る。
舞とネプギアの特殊女神化だけでは終わらない。二人の女神化の発動に合わせる形で始まる新たな覚醒の鼓動。ネプテューヌの頭の中に再度映像が流れ込む。黒と紫を基調とした鎧を纏った紫色の髪の女性が三人の女性を相手に戦っている姿。彼女が振るっている武器は自分の手に握られている紫の太刀と同じだった。映像が終わると同時にネプテューヌは体の底から湧き上がる不思議な力を感じ取る。
「またあの人…? 誰なのかな?」
『力を解き放てばわかるわ。使いなさい。わたしがサポートするわ』
紫の太刀が光を放つと、元のNの形の結晶に戻った。仄かな温かみを帯びた結晶をネプテューヌは自分の胸に当てる。結晶が体に入り込むと、紫の光がネプテューヌの体を包み込む。
「ま、眩しいです!? 何が起きてるですか!?」
「真打登場ってところかな? 随分といいタイミングでの覚醒だね」
「そうですね。これ程心強い味方はいないですよ」
光の中から現れたのは紫と黒を基調とした鎧を纏い、紫の長髪を三つ編みにした女性。彼女の蒼い瞳に浮かぶのは舞とネプギアと同じ女神の印。頭・肩・腰・足には機械的なパーツが装着され、背中には桜色の翼が顕現した。手に握られているのは紫電を帯びた紫の太刀。
「これがわたしなの…?」
「舞と同じ瞳に紫の光…。まさか…!」
「ねぷねぷの姿が変わったです! あの時の舞さんとギアちゃんと同じです!」
『あの時の舞とネプギアのように名乗りをあげる時よ。ここは誰が守護する大地なのかをあなたの目の前の愚か者にわからせてあげるといいわ』
一度は失われた自らの真名がネプテューヌの頭の中に流れ込む。取り戻したのはそれだけだが今はこれでいい。彼女は目の前の敵をしっかりと見据えて力強く言い放つ。
「革新する紫の大地プラネテューヌの守護女神、パープルハート! ここに見参!」
真名を取り戻した紫の女神は銀の女神と紫の女神候補生と並び立つ。それは同時に二度目の戦いの幕開けとなった。