超次元ゲイムネプテューヌ 銀陽の女神 Re;Birth 作:ミオン
舞の体を器とした
「ねえ。これって序盤のボス戦なの? 口調が変わった舞に、わたしの影からいきなり出てきた女の子に、悪趣味なメイクのオバサン…。全員がバランスブレイカーに見えるのはわたしだけ?」
お互いの攻撃がぶつかり合う度に凄まじい力の余波が発生している。それは離れた場所から見ているだけでも感じ取ることができる程の強力な物。ゲームで言う序盤のボス戦とはあまりにもかけ離れた戦いが自分達の目の前で行われているのだ。
「わたしも同じよ。特にあのオバサンは見かけによらないわね。口調が変わった舞とネプ子の影から出てきた女の子を含めてみんな相当な実力者よ。明らかに並の強さを凌駕しているわ。悔しいけど、わたし達が入って行っても即刻退場させられるのがオチね」
「ねぷねぷ。あの女の子は知り合いですか? ねぷねぷのことを知っているみたいですけど…」
「わからないよ…。それ以前に登場の仕方が予想外過ぎてかける言葉が出てこなかったから…」
「あの人も相当な実力だよ…。デルフィナスさんとリリムさんを相手に互角に渡り合うなんて…」
ネプギアは舞と一緒に日頃から鍛えてはいるが、デルフィナスのように女神の力を奪う能力に対抗する手段が無い現状ではあの戦いに割り込むことは難しい。今は二人の勝利を願い、ネプテューヌ達を守ることが自分にできることだった。
一方で魔女との戦いを繰り広げるデルフィナスとリリムはまだ決定的な一打を入れることができていない。デルフィナスは銀の大剣、リリムは黒と白の長剣の二刀流で攻めるが、魔女は得物である先端に鋭い突起物が付いた杖を使って二人の連撃を巧みに受け流す。さらに体の周囲には非常に強度の高い障壁が展開されているようで、仮に受け流されなかったとしても防がれてしまう。お互いに目立ったダメージを受けてはいないのが現状だった。
「これだけの力を持ちながら、何故女神の力を求めるのかしら?」
「同感だな。過ぎた力は手に余る。力は制御できなければ意味がない。仮に女神の力を手に入れたとして、お前は何をするつもりだ?」
「貴様らが知ることではない。全ては私の悲願の為。邪魔をするのであれば消えてもらうまでだ」
魔女の杖の先端に魔力が収束する。禍々しい紫光を放つ強烈な闇属性の魔力なのだが、デルフィナスはそれに混ざっている別の力を感じ取った。
「負の力…。それを自らの力にしている点も嘗ての我と同じか」
魔女の杖の先端に収束した闇属性の魔力と負の力が魔力弾となってデルフィナスとリリムに襲い掛かった。回避には成功するが着弾点から負の瘴気が発生。二人の視界を一時的に遮ると魔女は強烈な魔力砲撃を連続で叩き込む。瘴気が晴れるとデルフィナスとリリムが姿を現した。幸い防御には成功したので二人の体に傷はついていない。
「無傷だと…! 馬鹿な…!」
「この体を使わせてもらっている以上は傷をつけるわけにはいかないのでな」
「今度は私達の番。これが今の私達の最大の一撃よ。受けてみなさい」
デルフィナスとリリムは手を繋いで魔力を収束させる。犯罪神の残滓と魔神の烙印の力が混ざった魔力の塊が二人の目の前に現れた。二人は同時に手を突き出して力を解き放つ。
「「ネフィリムブレイカー!」」
二人の声と同時に特大の収束砲が放たれる。軌道は目の前の魔女に向かって一直線。
「この力は…!」
光を飲み込む闇の如き特大の砲撃は魔女のいた場所を通過。背後の壁には大きな穴が空いていたが、魔女の姿は既に無かった。
『まさかこれほどまでの実力を持っているとはな…。だが、運命は既に私の味方だ。貴様らが何をしたところでこの世界の運命は変わらない。鍵の欠片は貴様らに預けておいてやる。次に戦うときはこうはいかぬぞ!』
どこからか響き渡る魔女の声。いつの間にか彼女の気配は完全に消え失せていた。今回の戦いは撃退に終わってしまったが、次に戦う時にこちらも更なる強さを身につけておかなければならない。デルフィナスは目を閉じると舞と意識を入れ替える。再び目を開けると舞の瞳は元の銀色に戻っていた。リリムもそれに合わせる形で力を解除。悪魔の角と翼が消えて普通の少女の姿に戻る。
「あの人を止めるにはまだ力が足りない…か。他の女神は大丈夫なのかな?」
「ネプテューヌの力の奪取に失敗した以上は他の女神の力を狙う可能性は大いにあるわね」
『早急に奴の能力を防ぐ術式の構築を進めておこう。アリアよ。手伝ってもらって構わないか?』
『勿論だよ。術式を完成させたらセレナ達にはハード・リンクで伝わるようになる。ネプテューヌには私達がついているから大丈夫だけど、残る三女神が特に心配だね。詳しい話は街に戻ってからにしようか』
舞達は離れた場所に退避していたネプテューヌ達と合流する。
「無事でよかったわ。あのおばさん何者なの? ネプ子のことを狙っていたみたいだけど…」
「ネプ子ってわたしのこと?」
「ネプテューヌだと呼びづらいから、こう呼ばせてもらうことにしたわ。あんたもわたしのことをあいちゃんって呼んでるんだからこれでお相子よ」
「ふふっ。可愛い呼び名じゃない。いいセンスを持っているわね」
「あーっ! わたしの影から出てきた新キャラだ!」
「この場は初めましてと言わせてもらうわ。私の名前はリリムよ。あなたの影から現れた理由は後で説明させてもらうわ。あの魔女のことだけど、主様は既に正体に気づいてるでしょう?」
「うん。あの人がネプテューヌが記憶喪失になる原因を作った人。私達がこの世界で倒さなければならない相手だよ。ネプギア、ここまで言えばわかるよね?」
「あの人がマジェコンヌですか…! それならあの実力の高さにも納得がいきますね。お姉ちゃん達を争わせて何をするつもりなんでしょう…?」
「わからない。何を企んでいるにせよ、私達が倒さなければならない相手であることには変わりないよ。これで目的は達成できたから街に戻って休もうか」
舞達は魔窟を後にしてプラネテューヌの街に帰還した。コンパの部屋に戻る前にギルドに寄ってNギアで取得した魔窟内部のマップデータを提出する。それに加えてアイエフが先に収集していた内部に生息しているモンスターの情報と採取物の情報。最後に発生源となっていたモンスターディスクの情報も併せて報告しておいた。発生源のモンスターディスクは破壊したが、内部のモンスターの数は多いため完全に討伐しきれてはいない。今後は正式な討伐クエストが出されると思われる。報告を済ませた舞達はコンパの部屋に集まった。
「まさかモンスターがディスクから生まれていたとは思わなかったわ。あのディスクの情報がギルドを通して各国に行き渡ればモンスターの被害もある程度は抑えられるはずよ」
「ですね。モンスターさんの出所がわかったのは大発見です。ディスクを壊したら後はみんなで協力して退治していけば平和になると思うです。ねぷねぷのことを狙っていたあの人がディスクを仕掛けた犯人です?」
「間違いないと思う。門番蟲もマジェコンヌが差し向けたモンスターだったみたいだからね。マジェコンヌは門番蟲のことをガーディアンと呼んでいた。門番蟲はあの宝箱がある場所にたどり着かせないための番人で閉ざされた宝箱は保険と言ったところかな。どちらも突破できたからよかったけど。鍵の欠片というのがこのアイテムの名前みたいだね」
「鍵の欠片の中には少量ですけど特殊なエネルギーが蓄えられていますね。今の状態では何も起きないみたいですけど、エネルギーの不足を補うことができれば何かに使えるような気がします」
「なるほど。試しに私のシェアエナジーを鍵の欠片に入れてみようか。不足しているエネルギーの代わりになるのかどうかわからないけど」
舞の右手から暖かい銀色の光が放出されて鍵の欠片の中に入る。鍵の欠片が薄らとではあるが光を放ち始めた。
『これはシェアエナジー…? 今までに感じたことのないほどの強力な物ですね…』
鍵の欠片から聞こえる女性の声。初日の夢の世界で聞いた声と同じだった。
「おお! どこかで聞いたことのある声かと思ったらあの時の天の声さんだ! それにしても働いた後のプリンは格別だよね! おかわりはある?」
天の声との再会を喜ぶネプテューヌの右手にはプリン。
「随分と呑気な女神様もいた物ね」
「ねぷねぷ。食べるのは構わないですけど、お腹を壊さないようにしてくださいね?」
「主様、プリンは冷蔵庫の中にあるのかしら?」
「冷蔵庫に作り置きがあるよ。新しいプリンを持ってきてあげて」
「わかったわ。本当にプリンが好きなのね。ここまで美味しそうに食べる人は初めて見るわ」
舞の指示を受けたリリムが冷蔵庫の中からプリンを取り出してネプテューヌに渡した。
「わーい! ありがとう!」
ネプテューヌは二個目のプリンを食し始めたところで話は元に戻る。
「イストワール。あの夢の世界以来だね?」
『そうですね。この強力なシェアエナジーと鍵の欠片があれば、あなた達のことを影ながらではありますが、見守ることができるかもしれません。改めて自己紹介をさせていただきますね。わたしは司書イストワールと申します』
「いーすんさん。この鍵の欠片は何に使う物なんですか?」
『鍵の欠片はわたしに施された封印を解除するための鍵の一つです。今のわたしの置かれている現状なのですが、ある人によって身動きが取れないように封印されている状態なのです。鍵の欠片はこのゲイムギョウ界を構成する四つの大陸に一つずつ隠されているので、今回プラネテューヌに隠されていた物を見つけていただいたことで残る鍵の欠片は三つとなりました』
「ある人というのはマジェコンヌのことかしら? 彼女なら鍵の欠片が隠されていた洞窟で会ったわよ。ネプテューヌの力を狙っていたわ。撃退できたから被害は無かったけど」
『彼女と出会ったのですね。彼女の目的はこのゲイムギョウ界を守護する四女神の力を手に入れることです。四女神達が
「記憶喪失であることを除けば特に問題は無いかな。今回の戦いで女神化が発現したからネプテューヌがこのプラネテューヌを守護する女神であることは本人を含めてこの場にいる人はみんな知ってるよ」
『夢の世界でお話をさせていただいた時に
「いいよ。私は何をすればいいのかな?」
『残る三つの大陸に隠された鍵の欠片を見つけ出してわたしの封印を解いていただきたいのです。相応の危険が付きまとう形にはなりますが…』
「いいよ。実は私達も四つの大陸を巡る旅に出るところだったからね。仲間と一緒に探してみる」
『ありがとうございます。お礼と言ってはなんですが、この鍵の欠片を通してわたしの力を一部ではありますが使えるようにさせていただきますね。また、封印を解いていただいた際にはネプテューヌさんの記憶喪失はわたしが責任を持って治します』
鍵の欠片から放たれた暖かい光が舞の中に入る。力の使い方が舞の頭の中に書き込まれた。
「確かに受け取ったよ。イストワール。絶対にあなたを助けてみせるから。マジェコンヌの野望も阻止してみせる」
『頼もしいお言葉ですね。そういえば、あなた達のお名前をお聞きするのを忘れていました。教えていただいてもよろしいですか?』
舞達は自己紹介を済ませる。イストワールはこの鍵の欠片の中に蓄えられたエネルギーを使って舞達に話しかけているため本来であれば時間制限があるのだが、舞が自分のシェアエナジーを少量ではあるが鍵の欠片に供給する回路を作ったことでその制限は無い物となった。これによってイストワールも影ながらではあるが舞達を見守ることができるようになり、会話も常時とはいかないができるようになった。
「旅の目的が決まったところだけど、今度は私から話をさせてもらってもいいかしら? と言っても私自身も理解ができていないところがあるから、今の時点で話せることは少ないけどね」
「構わないよ。わかる範囲でいいから教えてほしい。何故、あの夜にネプテューヌに倒されて消滅したあなたが再び甦ってこの世界のネプテューヌの影から現れたのかを」
「それはわたしも聞きたいかな! というか、わたしに倒されたってどういうことなの?」
二個目のプリンを食べ終えたネプテューヌが話に加わる。続いて語られるは