超次元ゲイムネプテューヌ 銀陽の女神 Re;Birth   作:ミオン

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Chapter 2
Game8:重厚なる黒の大地へ


ネプテューヌの影から現れたリリムと力を合わせてマジェコンヌの撃退に成功した舞達。洞窟の最奥部の宝箱に隠されていた鍵の欠片を通じて司書イストワールと再会を果たす。残る三つの大陸にいる仲間達との再会、ネプテューヌの記憶喪失の治療、鍵の欠片の収集。旅の目的がさらに明確になったところで次の話に移る。ネプテューヌの影から現れたリリムのことである。リリムは自分が甦った理由を話し始めた。

 

「最初にネプテューヌの疑問に答えさせてもらうわね。嘗ての私はネプテューヌ達の敵だった。過去に起きた戦いに敗れて二度消滅したの。一度目は銀の女神と。二度目はネプテューヌと戦ったわ。こことは異なるゲイムギョウ界の話だから仮にネプテューヌが記憶喪失になっていなかったとしても身に覚えのない話になるのだけどね」

 

「俄かには信じ難いけど、一つだけ確認させて。今のあんたはわたし達の…ネプ子の味方ということでいいのかしら? 今は助けておいて後になって寝返るとか無いでしょうね?」

 

「復活を果たした私に与えられた役割は新たな主の銀の女神。紫の女神と女神候補生の守護。主様とネプテューヌ達に危害を加える者達は私の敵になる。この場で全てを信じてほしいとは言わないわ。この言葉が偽りでは無いことはこれから先の旅で証明してみせるから」

 

リリムの紅の瞳に宿るは力強い意志。嘗ての彼女とは違った輝きが秘められていた。

 

「肝心の私が甦った理由についてだけど、実を言うと私にもわからないの。私の意識が目覚めたのは主様とネプテューヌが出会った時よ。目覚めた私はネプテューヌの影になっていたわ」

 

「まさにあらゆる過程をスルーした感じだよね? わたしもリリムが影から出てきた時に何て声をかけたらいいのか思いつかなかったよ。主様って舞のこと?」

 

「何故、私が新たな主になるの? あなた達の主は…」

 

「それが私達に与えられた最後の命令だからよ。ネプテューヌ達に敗れて肉体を失った私達の魂は深い闇の中にあった。私達に語り掛けて来たのが元の主様の声。かなり微かな声だったけど」

 

彼女の声が六人の少女達に伝達した最後の命令は二つ。一つ目は銀の女神を新たなる主とすること、二つ目は自分が願いを託した女神を守護すること。元の主からの最後の命令を受け取った彼女達が最後に見たのは一片の穢れの無い緋色の光だったと言う。リリムは二度目の戦いでネプテューヌに願いを託していた。主の姿で暗躍を続ける邪なる存在を倒して本物の主を助けてほしいと。

 

「私達は緋色の女神の魂を救済することができたのかな?」

 

「最後に聞いた主様の声は今までとは違った声色だった。あの声と穢れの無い緋色の光は本来の主様の物。緋色の女神の肉体と魂を喰らった女神喰いが討伐されたことで魂が救済されたのだと思うわ。これは私の予想に過ぎないけどね」

 

緋色の女神スカーレットハート。それがリリム達の元の主の真名。国民達に認められなかった女神は時の中で巡り合った邪なる存在に肉体と魂を奉げた。自らが守護する大地と国民を手始めに玩具とした彼女の尽きることの無い欲望の矛先は世界に向けられ、当時のゲイムギョウ界を震撼させた大戦争を引き起こした。この大戦争がリリム達の一度目の死。大戦争を戦い抜いた四人の守護女神の力によって彼女の野望は打ち砕かれたのだが、彼女は再び今代のゲイムギョウ界に復活する。

 

女神の亡霊ファントムハート。彼女はアリアから搾取した銀の女神の力を舞の体に強引に転写した。舞は人間から守護女神に昇華。記憶の消去と感情の操作を受けた操り人形となる。それが女神達が世界と一人の少女の運命をかけて死闘を繰り広げた悪夢の夜の開幕。手始めに守護女神の相手をさせるためだけにリリム達を復活させる。大戦争の際に六魔将と呼称された彼女達の実力は守護女神と対等に渡り合うことができる。復活した六魔将は新たな力を得たネプテューヌ達の手で全員が倒された。これが二度目の死となる。

 

捕らわれていた舞はネプギアを筆頭とした四人の女神候補生の活躍で救出された。奪われた物を全て取り戻した舞は緋色の大地の教会でファントムハートとの決戦に臨む。彼女が舞の記憶から作り出した強大なる四体の敵をネプテューヌ達は見事に打ち破り、闇の中で暗躍を続けていたファントムハートは舞とアリアの手で倒された。

 

「リリムさん。他の六魔将の人達は同じように女神の影になっているということですか?」

 

「その可能性は高いわね。他の女神に会った時には体から出ている影を見れば何かわかるかもしれない。主様との出会いが覚醒の鍵になっているみたいだから」

 

「その人たちはわたし達や女神様の味方になってくれるですか?」

 

「主様からの命令は絶対だから、味方にはなるわよ。ただ、六魔将は全員が特別な事情を持っているから、受け入れてほしいというのが私からの意見ね。私の場合はこういう物があるから、普通の生活が送れなかった」

 

リリムの背中に先端に鋭い鉤爪が付いた黒い翼。頭に歪に曲がった黒の双角が顕現する。リリムの体内には人間の血と悪魔の血が流れている。リリムは家系の中に存在していた悪魔と交わった者の血を特に強く受け継いで生まれた。悪魔の翼と角はそれが原因で現れているのだ。悪魔の角と翼が無ければ普通の少女と変わりない。

 

「今は自在に消せるから問題は無いけどね。私の話はこれでお終いよ。この旅が終わりを迎える頃には色々なことが明らかになっていると思うわ。この先に何が起きるのか、何が待っているのか予想のできない旅にはなるでしょうけど、私達は主様とネプテューヌ達に協力させてもらう。それが償いの初めの一歩だと思うから」

 

全員で力を合わせて進めば真実は明らかになる。リリムの話が終わった時に部屋の壁にかかっている時計を見るとお昼の時刻を示していたので先に昼食を取ることに。部屋のテレビを点けるとお昼のニュース番組が放送されていた。各地に突如として現れたモンスターの被害による報道が殆ど。

 

裏で暗躍を続けるマジェコンヌの悪行を放置しておけば、被害の拡大は避けられない。昼食を済ませたら旅の準備に取り掛かることになった。長期間部屋を留守にすることになるので、昼食には冷蔵庫にある食材を全て使用。昼食と片付けを済ませたら必要な物を纏めて部屋を出る。

 

このゲイムギョウ界は浮遊する四つの大陸によって構成されている。アイエフとコンパによると大陸同士の陸地が接した際には教会で手続きを取ることで接岸場と呼ばれる場所から別の大陸に渡ることができるという。今日は丁度ラステイションの陸地がプラネテューヌの陸地と接しているようなので、次の目的地は重厚なる黒の大地ラステイションになった。

 

元のゲイムギョウ界だと四国間を行き来する際にはプロセッサユニットを使って空を飛んでいたが、ここは別のゲイムギョウ界。こちらの世界のルールに従うことになった。舞達は手続きを済ませるためにプラネテューヌの教会に向かう。

 

「今日もぽかぽかあったかいにゅ…。渋いお茶でも飲みながらのんびりするに限るにゅ」

 

呟いたのは猫耳を模した明るい黄色の帽子を被った小柄な少女。舞はこの少女のことを知っていた。少女に声をかけてみることに。

 

「こんにちは。ちょっといいかな?」

 

「誰かと思ったらマイにゅ。いつの間に成長したにゅ? 変な薬でも飲んだにゅ?」

 

「それは無いかな。ブロッコリーの知っている私は小さいの?」

 

「ブロッコリーと変わらない大きさにゅ。写真は残念ながら無いにゅ。でも、ブロッコリーが言ったことは本当にゅ。この世界にもマイがいるとは思わなかったにゅ。あっちと違って大きいから何だか新鮮な感じがするにゅ」

 

このゲイムギョウ界を含めて次元空間上には無数の世界が存在している。ブロッコリーの言葉は他のゲイムギョウ界にも神奈 舞が存在しているということを表していた。

 

「小さい私はどんな感じなの?」

 

「プラネテューヌの教会の女神の部屋でゲームしてることが多いにゅ。あの見た目で教会の仕事までやってるから逆にこっちが驚かされてばかりにゅ。たまにネプ子と一緒に虫捕りと鉱石採掘に行ってることもあるにゅ。ネプ子が虫捕りでマイが鉱石採掘を担当してるにゅ。あいつら二人とも揃ってゲーム脳にゅ」

 

「色々と凄い生活を送っているみたいだね…。できるなら会ってみたいけど…」

 

「生きていればいつかは会えるにゅ。もしかしたら近い内に巡り合うこともあるかもしれないにゅ。ブロッコリーの感が告げてるにゅ。ところで大きいマイはこんなところで何をしてるにゅ?」

 

「実は…かくかくしかじかで…」

 

「まるまるうまうまにゅ。色々と大変なことに巻き込まれてるみたいにゅ。他の大陸にもブロッコリーと同じようにこの世界に来ている奴らがいるにゅ。見かけたら話しかけてみるといいにゅ」

 

「わかったよ。それじゃ、また会おうね」

 

「頑張るにゅ。何か困ったことがあれば声をかけるにゅ。ブロッコリーが知っていることなら教えるし、できることなら協力するにゅ。最後に出会った記念にこれをやるにゅ」

 

ブロッコリーから受け取ったのは紫色の鉱石。これは別次元にいる小さな舞が採掘してきた鉱石の一つ。轟雷石と名付けられたそれは過去に別次元のプラネテューヌを襲った大落雷が生み出した鉱石だと言う。内部には強力な雷の力が宿っていた。

 

「ありがとう。大切にするよ。元の世界に戻ることがあるなら、小さい私にありがとうと言っておいてほしい」

 

ブロッコリーは舞達が元のゲイムギョウ界を旅していた際に出会った仲間の一人。実は彼女はこの世界とも元いた世界とも異なる別次元のゲイムギョウ界の住人。舞は会話をしながらそれを察していた。小さい舞がいるというゲイムギョウ界を旅する時もいつかは来るかもしれない。舞は小さい自分と出会える時がいつか来ることを願い、ブロッコリーと別れる。

 

「ごめん。待たせたね」

 

「ブロッコリーさんと何を話してたんですか?」

 

「後で教えるよ。私としても実に興味深い話だったから」

 

「舞さんとギアちゃんのお知り合いですか?」

 

「はい。元のゲイムギョウ界ではわたし達の旅に協力してくれたんですよ」

 

「協力も取り付けておいたから、有事の際には力を貸してもらうつもり」

 

舞達はプラネテューヌ教会の中に入る。

 

「わたし達の世界の教会とはまた違った内装ですね。職員のみなさんの格好は同じみたいですけど、ここの窓口で手続きをすればいいんですか?」

 

「何か必要な物とかあるの?」

 

「特には無いわよ。簡単な書類を書けばそれで終わりだから。ギルドカードを作る時の手続きに近い物ね」

 

窓口にいるプラネテューヌ教会の職員に話しかける。

 

「ラステイションの渡航手続きをお願いできるかしら? わたしは前に済ませているのだけど、一緒の友達がまだなの。五人分ね。それと、これがわたしの許可証よ」

 

「アイエフさんだね。確かに確認したよ。それじゃ、初めてのお友達はこの書類の必要事項を記入してここにサインをしてほしい」

 

舞達は書類の記入を進める。全て記入し終えて最後にサインをしたら職員に渡す。

 

「確かに受け取ったよ。神奈 舞さんとネプギアさんとコンパさんに、リリムさんとネプチューヌさんだね。許可証を作らせてもらうから少し待ってもらってもいいかな?」

 

「むー。お兄さん、わたしの名前を間違ってるよ。ネプチューヌじゃなくてネプテューヌだよ。言いづらいのはわかるけどさ…。さすがのわたしも目の前で名前を間違えられたら傷ついちゃうよ?」

 

「ああ、すまない。僕としたことが君の様な可愛らしいロリっ子の名前を間違えてしまうなんて…」

 

(最近プラネテューヌ教会に入った職員かしら…。プラネテューヌ教会に長いこと務めている職員ならば、わたしの名前を間違うことは無い。実際わたしがプラネテューヌの守護女神になったばかりの時に名前を間違わなかったのはいーすんと幹部クラスの職員だけだったから…)

 

元の世界のパープルハートの脳裏に過去の思い出が甦る。適当な仕事をして赤字を出してその度にイストワールに立て直してもらったのは何度あったことか。今は舞とネプギアのおかげで仕事を真面目にするようになったので昔のようなミスは起こることは殆ど無いと言ってもよい。元の世界の自分は今頃何をしているのだろうか。気になるところではあるが、現状では元の世界と交信する手段が無いのでどうしようもない。

 

「ネプテュースさん…。ネプティーヌさん…」

 

「無理なら諦めてもいいよ? 人間、諦めが肝心って言うでしょ?」

 

「そんなことはないさ…。今日はたまたま滑舌の調子が悪いだけで…」

 

「不思議な物よね? 私は普通にネプテューヌと呼ぶことができるのだけど」

 

「呼びづらい名前の一種なのかもしれないわね。わたしもネプ子って呼んでるわけだし」

 

「わたしもねぷねぷって呼んでるです。プラネテューヌなら言うことができるんですけど…」

 

「と、ともあれ。これで手続きは完了さ。この許可証があれば今後はプラネテューヌとラステイションの間を自由に行き来することができるよ。最近はモンスターによる被害も増えているみたいだから、街の外に出る時は気を付けた方がいい。風の噂では他の大陸の女神様達は自分が守護する大陸に降りてきていて、モンスター退治を率先してやっているみたいだけどね。パープルハート様は今頃どうしているのだろうか。パープルハート様の身に何も無ければいいんだけど」

 

「大丈夫だと思うよ。あなたのように女神様のことを信じている人達の思いが女神様の力になるから。パープルハートのことを信じ続けてあげてほしい。私達も信じているから」

 

「ああ。この教会に入ったのもパープルハート様のお役に立ちたいって思ったのが理由だからね。引き留めて悪かったよ。君達に女神様の加護があらんことを」

 

舞達はプラネテューヌ教会を後にして接岸場に向かう。目の前のゲートを抜けた先は重厚なる黒の大地ラステイション。舞はゲートを抜ける前にハード・リンクの光を再び具現化させる。舞の体から現れた光は黒色と金色。それは黒の女神候補生と金の女神の輝き。確認したところでゲートを抜ける。これが終わりから始まる再誕の物語を彩る旅の始まりの一歩となった。

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