Memoria.   作:ねぴ

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あらすじ。
のどかと明日菜のアーティファクト確認→尾行→エヴァと茶々丸が二手に分かれる


03

「ちょっ……待ってくださいよ!」

 

 午後六時ちょうどの時計台前。時計台の鐘が鳴り響く中、ネギたちは茶々丸を建物の影から監視していた。

 

「三人とも何考えてるんすか!? 油断させて返り討ちにするための擬態に決まってるっすよ!」

 

 茶室からここに来るまで、茶々丸の善行――川に飛び込み流されていた猫を助け、服が汚れたまま野良猫に餌を与える――を目の当たりにしてきた彼らは、彼女の行動にほだされてしまっていた。カモを除いて、ではあるが。

 

 もともと少なかった戦意が完全に消えてしまったネギたちを見て、カモは慌てて彼らを説得している。

 

「そ、そんなに人を疑うのは……いけないと思いますよ、カモさん」

「お嬢……! い、いやいや、例えあれが本性だとしてもですぜ、ネギの兄貴はあいつに襲われてんですよ!?」

「それはそうだけどさぁ」

「それに、最初はあいつを倒す計画だったのを捕まえるだけに変えたんすから、ちょっとくらいは我慢して下せえ!」

 

 もともとカモが提案した作戦は、茶々丸がひとりになった時、三人がかりで撃破してしまうものだった。しかしカモ以外から大反対を受け、破壊から捕縛に作戦が変更になったのだ。

 

「ここで何とかしないと兄貴の勝ち目はほぼないっす!」

 

 そして、カモの必死な姿に折れたのは明日菜だ。ため息ひとつ、カモに混じりのどかを説得する。ネギもそれに加わった。

 

「ま、しょうがないわね。本屋ちゃん、茶々丸さんに怪我させる訳じゃないんだし、やりましょう?」

「のどかさん、なるべく傷付けない様に頑張りますから」

「……分かりました」

 

 渋るのどかだったが、ネギがカモ側に付いたためか、のどかも結局頷いたのだった。

 

■■■

 

 時計台の鐘が鳴り止む。

 

 茶々丸は餌をやり終え、膝をついて空になったトレイをビニール袋に入れていた。周囲には野良猫が数匹、寝転がり毛づくろいをしている。

 

 ゴミを片付けたと同時、茶々丸は人の気配に気づいて立ち上がった。

 

「……こんにちは。ネギ先生、神楽坂さん、それに宮崎さん」

 

 彼女の視線の先には、杖を持ち彼女に向かい合っているネギ、その両脇に立つ明日菜とのどかがいた。

 

 いつの間にか、周囲に人影がなくなっている。ネギが人払いの結界を展開したためだ。傍らにいた野良猫も、茶々丸が立ち上がったことで走り去っていた。

 

「油断しました。でも、お相手はします」

 

 彼女は、後頭部に取り付けられているゼンマイを外す。

 

「茶々丸さん、あの……僕を狙うのは止めていただけませんか?」

「申し訳ありませんがネギ先生。私にとって、マスターの命令は絶対ですので」

「……分かりました」

 

 ただ茶々丸は、エヴァに与えられた命令に従うまで。いくら他人が乞うても、どうにもならない問題だ。

 

 頭を下げ、手にしたビニール袋とゼンマイを後方に放り投げた彼女。その意思を感じ取り、彼は杖を握りしめた。

 

「では、いきます」

「ごめんね」

「……ごめんなさい」

「全力で、どうぞ」

 

 明日菜はネギをかばうように前へ、宮崎のどかはカモを肩に載せて後ろへ。ネギは杖を構え、そして――戦闘が始まった。

 

「|契約執行三十秒間《システィス・メアエ・パルテース・ペル・トリーギンタ・セクンダス》! ネギの従者(ミニストラエ・ネギィ)神楽坂明日菜(カグラザカアスナ)宮崎のどか(ミヤザキノドカ)!」

アデアット(来れ)!」

「あ、アデアット(来れ)!」

 

 ネギの詠唱後、間髪入れずに明日菜とのどかはアーティファクトを顕現させた。明日菜はハリセンを上段に構え、のどかは本のページを開く。

 

「アーティファクト!?」

「みなさんお願いします!」

「任せて下せえ兄貴!」

「はい!」

「やぁぁ!」

 

 ネギ、のどか、カモは、左から茶々丸を中心とした円を描くように駆けていき、明日菜は茶々丸に向けて弾丸のように飛び出す。明日菜のアーティファクト(ハリセン)に何か感じるものがあったのか、彼女は目標を明日菜に設定する。

 

 足のブースターを用い、明日菜のハリセンを押さえようと飛び出し左手を伸ばす茶々丸。

 

 しかし、明日菜が『まるでその事が解っていたかのように』身をかがめたため、茶々丸の手は宙を切った。

 

「避けた!?」

「ごめん!」

 

 思わぬ事態に茶々丸の思考回路が停止、そのまま明日菜は懐に入り、そのままの勢いで彼女に肩をぶつけた。軽自動車が衝突したかのような威力に、茶々丸の体は宙に浮く。

 

  ――攻撃が重い!

 

「それに速いっ」

 

 その最中、ネギは茶々丸を追いかけつつ呪文詠唱を開始。のどかは依然としてネギの背後に陣取り、本を注視していた。

 

「ラス・テル・マ・スキル・マギステル――」

「いいぜ姐さん、そのまま畳み掛けろ!」

「えぇい!」

 

 攻撃が直撃した茶々丸はそのまま後方に吹き飛ばされるが、背部ブースターの姿勢制御により倒れこむことはなかった。

 

 足が止まった茶々丸の目の前では、明日菜が姿勢を低くしたままハリセンを下段に構えて突進してきている。茶々丸は明日菜を上から押さえつけることにする。右の拳を肩の高さまで振り上げ、彼女を迎え撃つため大地を蹴った。

 

 至近距離。

 

 スピードを落とさず直進してくる明日菜を無力化するため、茶々丸は腕を振り降ろした。

 

「ここね!」

 

 瞬間、明日菜の体がブレ、茶々丸の視界から消えた。

 

「どこへ――」

 

 振り降ろした右手は空を切り、今度こそ茶々丸はバランスを崩し、たたらを踏む。無防備になった彼女に、間髪入れずネギの魔法が迫る。

 

「しまった!!」

魔法の射手・戒めの風矢(サギタ・マギカ・アエール・カプトゥーラエ)!!」

 

 ネギの魔法の射手が、茶々丸に直撃する。茶々丸がタイミングを崩した瞬間の出来事だった。

 

■■■

 

「……どうやら、昨日か一昨日に仮契約を結んだようですが、急造のパーティにしては中々の連携でした、ネギ先生」

 

 戦闘自体はほんの十秒。

 

 ネギの召喚した十一の風の精霊はひとつとなり、青白い鎖となって茶々丸の体を拘束する。それに動きを封じられ、茶々丸はネギ達の前に立っている。

 

 首を少し動かし、背後を見る。そこには、制服についた土を払いつつ立ち上がる明日菜の姿。手にハリセンはない。明日菜の突進は、初めから茶々丸の隙を突くためのブラフだった。

 

「……それに、明日菜さんも。陽動のそぶりは見られませんでしたが、騙されてしまいました」

「素直にありがとうって言った方がいいのかしら」

「ご自由に」

 

 茶々丸は焦った素振りを見せず、ただ推測を述べるのみだ。その茶々丸を前に、ネギは真剣な表情で話しかける。

 

「……皆そうですけど、僕は茶々丸さんを傷つけたくありません。だから、しばらく動かないでください」

 

 一呼吸。

 

「もう一度聞きます。僕を狙うのを止めてもらいませんか?」

「私の意志は変わりません。例え、私が機能停止したとしても」

 

 動きを封じられてもなお、茶々丸の答えは変わらない。

 

「兄貴!」

 

 カモがネギを急かす。それによって改めてネギは茶々丸を見据え、言った。

 

「分かりました……しばらく茶々丸さんには眠ってもら、」

「ネギ先生は甘い」

 

 しかしその言葉は、茶々丸の言葉によって遮られた。キョトンとするネギに、茶々丸は続ける。

 

「私がこの程度の束縛で動けなくなると……本当に思っているのですか?」

「え?」

 

 その言葉と同時に、茶々丸の頭部アンテナが展開された。

 

「これ……先生危ない!!」

 

 のどかの警告も時遅く。

 

 機械の駆動音が響き、鎖が瞬く間にひび割れ束縛が破壊される。

 

「うそ!?」

 

 驚き動きを止めていたネギに、茶々丸は一瞬の内に彼の右側に移動。右手で首筋に手刀を打ち込んだ。悲鳴を上げる暇もなく、ネギは意識を失い膝から崩れ落ちる。

 

「ネギ!」

 

 ネギが倒れ込んだことを確認した茶々丸は、全てのスラスターを展開、多量の煙を出して飛び上がった。その煙に、明日菜たちは咳き込み、目を細めた。

 

 茶々丸はその上空でホバリングし、三人に聞こえるように告げる。

 

「ネギ先生に伝言を。私を何とかするには、私を破壊することしかないと。では、また」

 

 そしてそのまま。さらに上空へと飛び去っていった。

 

「あ、兄貴、大丈夫っすか!?」

「……大丈夫みたい。気を失ってるだけだわ」

 

 煙が晴れ、咳が収まったカモが最初に声を上げた。

 気を失い地面に伏したネギを、明日菜は担いで時計台へと続く緩やかな階段に持っていく。

 

 時計台は広場の西に面しており、そこは日陰になっていた。明日菜はネギを、その階段の中程で寝かせる。彼女はその段に腰を掛け、のどかはその横に。カモは一段上に陣取り、ネギの様子を心配そうに見る。

 

「障壁があったからこれだけで済んだっす……」

「『あれ』もぶっつけ本番でなんとかなったし、後、ちょっとだったんだけどね」

「段落無しの細かい文字でしたから、明日菜さんに伝えるのが大変でしたけど」

 

■■■

 

 時間を少し遡る。

 

 エヴァ達についての現在知りうる情報を交換した後。そして彼女たちを尾行する前。

 

「あ」

 

 (アーティファクト)の表紙裏をじっと見つめていたのどかが、不意に声を上げた。

 

「ん、どうしたの? 本屋ちゃん」

 

 問いに、本を膝の上に置き片手を口元に当て、独り言も混じりながら暫く思考する。そしてようやく、のどかが声を発した。

 

「えっと……明日菜さんのそれと、私のこれで連携ができないかと思ったんです」

「連携?」

「茶々丸さんの思考をこれで見て、それを明日菜さんに伝えることが出来れば……」

 

 そこまで言い、苦笑する。

 

「でも、一々そんな事言っている暇は無いですよね」

「そんなことはないぜ、お嬢! まだ言ってなかったけど、そのカードには念話機能があるっす。それを使えば、カードと、そのカードのコピーを持ってる人同士で通信ができるんだぜ」

 

 言葉による意思疎通でのタイムラグは戦闘において致命的。のどか苦笑したはそういうことだ。

 

「でも、それだったら僕と明日菜さんか、僕とのどかさんの二通りしかありませんね」

「いやいや、大丈夫だぜ兄貴。契約を司る俺っちなら、俺っちを中継にふたりを念話させることくらい朝飯前っすよ」

「ふ~ん……じゃあ、やってみてよ」

 

 いまいち信用していないような明日菜。彼女はカモに、今すぐやるように言う。

 

「んじゃあ今からコピーを作るっすから……兄貴、オリジナルを」

「うん、いいよカモ君」

 

 ネギは、ポケットに仕舞ってあった二枚のカードをカモに渡す。それを両手で抱え、カモは円陣の中心に陣取り、作業を開始した。

 

 ネギたちが茶々丸との戦闘に用いたのは、言わばカンニングだ。

 

 まず、のどかが茶々丸の思考を読み取る。読み取った思考を、カモが中継し、明日菜に伝える。明日菜がそれを元に行動する。

 

 カモの提案した念話を用いる意思疎通により、口頭での伝達のラグを辛うじて解消。今回の戦法として使用できたのである。

 

「ん、ようし出来た!」

 

 カモの眼前の中空には、同じカードが二枚ずつ、計四枚のカードが浮遊していた。オリジナルをネギに返し、カモはのどかに指示を出す。

 

「じゃあ、のどか嬢。カードを額に当てて、何か言うことを思い浮かべて」

「私はいいの?」

「カードを使うのは送信者だけでいいっす」

「あ、そう」

 

 カモはコピーの二枚を両手に持ち、その表を向かい合わせる。そのやり取りの間に、のどかは準備を終え。額にカードを当て目を閉じていた。

 

「こ、こうですか~?」

 

 直後、明日菜の体が軽く跳ねた。

 

「お、おー聞こえる。聞こえるわよ本屋ちゃん」

「僕も聞こえますね」

 

 どうやら、カモを中継地点にし、従者同士の念話を行う実験は成功したようだった。

 

 彼らの感想にカモは嬉しそうに声を上げた。

 

「おっし、これで意思疎通はオッケー! あとは配置を考えればいいっすね」

「のどかさんは、完全に後衛タイプの従者ですから、僕の後方にずっとついていれば攻撃を受けずに済むと思います」

「ま、それは兄貴が契約執行すれば、体力のないのどか嬢でも何とかなるはず」

「私は前衛よね。じゃあ、カモはどうするの?」

「そうっすね……ネギの兄貴の方でも良いけど、のどか嬢の方に乗るんなら、中継が途切れることはあまり無いと思うっす。お嬢……これでいいっすか?」

「あ、はい。大丈夫ですよ」

「それじゃあ復習してからエヴァンジェリンのいる茶道部の近くまで行きやしょう。まずは――」

 

■■■

 

 そして時刻は元に戻る。ネギが気絶してから十分弱。ようやくネギが意識を取り戻した。

 

「んん……」

 

 うっすらと目を開け、辺りを見回す。その様子を最初に感じたのはのどかだった。のどかはネギに優しい声で声を掛ける。

 

「あ、先生、起きました? 明日菜さん、カモさーん、先生が起きましたよー」

 

 その声を聞き、少し離れた位置にいた明日菜たちはネギの寝ている位置へと移動する。視界に入った二人を見て、ネギは起き上がろうとする。

 

「……あれ、僕……いたた」

「あ、駄目ですよ。まだ寝ていて下さい」

 

 ネギは首筋に痛みを感じ、顔を顰めた後また頭を『枕』に沈めた。

 

「? 柔らかい……?」

「おはよ、ネギ。まだ痛い?」

「明日菜さん……えぇ、まだちょっと、痛いです」

「そう……あんたが枕にしてるの、本屋ちゃんの上着なんだから。後で洗って返しなさいよ?」

 

 ネギが枕にしていたのは、くるまれた、のどかのベストだった。明日菜の言葉に、のどかが慌てて断る。

 

「良いですよ、これぐらい。そんなに汚れたという訳でもないですし」

「ま、障壁があったっすからね……怪我といっても、首にちょっと青い痣が出来てるぐらいですぜ、兄貴」

 

 ネギは頷き、尋ねる。

 

「茶々丸さんはどうしましたか?」

「空を飛んで、逃げちゃいました」

「そうですか……」

 

 のどかの答えを聞き落ち込むネギに、カモは慌ててフォローする。

 

「あいつには逃げられたけど、別に兄貴が悪いわけじゃないですぜ? まさか、あんな物持ってるとは夢にも思わなかったっすから」

「あんな物って?」

「魔法効果を無効化するような機械っすよ、たぶん。あれのせいで兄貴の『戒めの風矢』が破られたんす。まぁ、あれが起動するまでの間だけは足止めを出来るようですけど」

 

 溜息を一つ。ネギは暗い顔だ。

 

「どうしましょう、これから」

「うーん……ひとまず今日は寮に戻りましょう」

「もうすぐ暗くなりますし、私もそれが良いと思います」

「そうすね、日中は襲ってこないと思いやすし。夜間だけ気をつけてれば良いでしょう」

「ネギ先生、もう立てますか?」

「あ、大丈夫だと思います」

 

 ネギはのどかの手を借り、立ち上がる。そして、その場所を後にした。

 

■■■

 

 しばらく無言で歩いていたネギたち。太陽は山の際まで降りてきており、周囲は既に暗く、人通りも全くなかった。通りの電灯が、横一列で歩く彼らの影を濃く、地面に投射している。

 

「なぁに? 深刻そうな顔して」

 

 深刻な顔をして下を向き歩いているネギに気付いた明日菜は声を掛けた。

 

「い、いえ。何でもないですよ」

 

 問いに、慌てて首を横に振る。その様子に半目でネギを睨む。

 

 追い討ちをかけるように、のどかが口を開いた。

 

「茶々丸さんを傷つけたくない、ですよね?」

「え、何で分かったんですか?」

「あんたみたいなお子ちゃまの考えてることぐらい、誰だってすぐ分かるわよ」

 

 言って、明日菜が一歩前に出た。そのまま振り返らず、言葉を続ける。

 

「実を言うと、私も」

「え? ……うん、そうですよね」

「実際、絡繰さんが逃げてくれてよかったと思ってる。カモに言いくるめられちゃってたけど、絡繰さんも、エヴァちゃんも、同じクラスの生徒だもの。やっぱりこういうのは……ダメよね」

 

 咳払い。振り返った明日菜の顔は、心なしか赤かった。

 

「ま、とにかく! ひとりで思いつめないで、ちゃんと相談しなさいよ? 私もいるし、本屋ちゃんだって、なんならカモだっているんだからね?」

「ひどくないすか!?」

 

 横を向き、彼女達の顔を見る。二人とも、ネギの顔を、笑みを浮かべて見ていた。明日菜の顔を見て、また微かに笑うネギ。

 

「あと、私たちが傷付くのが嫌だからって、ひとりでエヴァンジェリンに戦いを挑まないこと」

 

 しかし、続く言葉に、その笑顔が凍った。

 

 

□□□

 

 

「――――、――ギ! ちょっと、ネギ!」

「あ……え?」

 

 ふと気付くと。明日菜の顔が、ネギの目の前にあった。

 

「えっ、て……あんた一体どうしたの? いきなり」

「あれ、僕、何かしましたか?」

 

 気絶していた時とは比べ物にならない程の心配した表情を浮かべ、明日菜、のどか、そしてカモが彼の顔を覗き込んでいる。

 

「……何もしなかったのよ、いきなり立ち止まって。声掛けても返事はないし、目の焦点は合ってないしで。本屋ちゃんなんて、心配して泣きそうになってるでしょうが」

 

 ネギが視線を動かすと、確かに。のどかはその様な感じでネギを横から見つめていた。

 

「だ、大丈夫なんですか?」

「え、えーっと。大丈夫だと思うんですけど……ごめんなさい心配かけて」

「何だよその返事は。ほんとに大丈夫なのかい、兄貴?」

「大丈夫ですって。大丈夫」

 

 心配そうな彼女たちを安心させる為なのか、ネギが無理して笑顔を作っている様に、のどかたちは感じた。

 

「あ、そうだ。僕、職員室に荷物置いてきたままですから、先に行きます。みなさんは寮に行っててください」

「ちょっとネギ!」

 

 そして、怪訝な顔をした彼女たちを振り払うかのように。ネギはひとり、校舎に向けて走っていった。

 

「一体、何だったんでしょうか?」

「さぁねぇ。姐さん、兄貴に何言ったんだ?」

「そんな事言ったってね……別に悪口も何も言ってない、と思うんだけど。言ってないよね?」

「うーん……」

 

 腕を組み、明日菜は回顧する。

 

 

「私、ネギになんて言ったっけ……?」

 

 

 明日菜は、その言葉を思い出すことができなかった。




このあたりの話を書いていたのは9年前で、今になって見返すとくどい描写が結構ありますね。不要な描写を大分削ったりしています。
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