テーブルに置かれたコーヒーが2つ。
それと向かい合って座ってる私と桂木。
周りには誰もいない。
理由は桂木の家の喫茶店が休みで、その場を利用したからだ。
「私があんたの家に来るの…4回目だね。」
1回目はあの日、私が独り言の様に告白をした日。
2回目は良くわかんないけど連れてこられて。
3回目はギターをとりに。
「ああ、そうだな。」
いつの間にか桂木に恋して…それに気付いていなかった。
その気持ちに気付いた私は、何を思ったのか…告白をしてしまった。
私はこんな底辺最低ゴキブリ男だと思ってた奴に3回も恋をしていたのだ。
「砂糖…入れるか?」
「あ、うん。3つお願い。」
いつもならコーヒーに砂糖はいれない。
でも、今日は砂糖を入れる気分なのさ。
そんな時、桂木が真剣な顔で見つめたと思ったら、頭を下げてきた。
「ギターのピック…もう1度僕にくれないか?」
私は砂糖を入れたコーヒーをかき混ぜる。
「……ごめん、ちひろ。大事に持ってたつもりなんだ。けど、なくしてしまった…。僕の落ち度だ。本当にごめん。」
違うよ。桂木。それ、私がとったんだ。
歩美との結婚式のあの日、繋いだ手と手が離れたあの時、怖かった…。心細かった…。
でも、そんな私を抱き締めてくれた時…嬉しかった。心強かった。
でもね、それ以上に嬉しかった事があるんだ。
その時、あんたの左胸に…私とお揃いのピックがあったこと。
それが、私にとっては…本当に嬉しかったんだ。
それでね…私は、あんたの事が好きだから、私とあんたが仲良かったあの印が私には必要だったのさ。
私の初めて恋をした記憶をずっと忘れない為に。
「それって、これじゃない?」
私はあのピックを出す。
今の私にこれはもう必要ない。
だってさ、まだ、私の初恋は終わってないんだから。
「ちひろ!?なんでそれを持ってる!」
「あはは、私。あんたからそれ奪ったんだ。」
「い、いつだ!ライブの時にはもうなかったぞ!」
当たり前じゃん。
あのライブで、このピック…使ったんだよ?
それにしても…そんなに大切にしてくれてたんだね…。嬉しいよ。
「いつだっていいじゃん。それよりさ、私。あんたに話しがあるんだけど」
コーヒーを混ぜるのを止め、
真っ直ぐに桂木をみつめる。
「……………………」
目の前にいる桂木の顔は、
私の大好きな真剣な顔だった。
「…………私と…付き合って下さい。」
私は無言で抱き締められ、少し強引にキスをされた。
いいんだよね。桂木。私…本気だからね?
照れくさかった私は桂木から離れて、コーヒーをとって口に入れる。
………ぬるっ!?ってか甘っ!?
まぁ…でもいっか、だって…こんなにも幸せなんだから。