僕は今、ちひろと2人で帰っている。
右手にちひろの左手を掴んで。
因みに、ちひろの右手にはたい焼きが握られていた。
「ん~、美味い!」
「そうか、よかったな。」
「うん!」
ちひろはこれ以上ない笑顔を振りまいていた。
そんな美味いのか?たい焼きが…。
僕にはわからんな。甘い物など邪道!
「桂木はたい焼き食べないの?」
「ああ、甘い物は好きじゃないからな。」
「へぇ~、そうなんだ。」
もぐもぐと口を動かすちひろを横目でみながら、これからの事を考えた。
これからの事というのは朝に歩美に頼んだ、『ちひろを彼女として紹介』することだ。
現在の時刻は5:20。6:00に僕の家の喫茶店に集合になっている。
そして、考えている事…というのは、
『いかに傷付けずに僕の事を諦めさせるか』だ。
正直、僕にはどうしたらいいのかわからない。こんなENDはギャルゲーにもないからな。
「ねぇ、桂木。」
「ん?どうした」
「桂木はさ、その…攻略した人って…何人いるの?」
来たか…この疑問が。
勿論、遅かれ早かれ、この疑問は解いてやらないと思ってた。
だが、まさかこんなに早くにその時が来るとは…。
けど…ここは誤魔化しては駄目だ。
「ちひろも合わせて16人だ。」
「じゅ、16!?桂木、それ本当なの!?」
「ああ、こんな時に嘘をつくつもりはない。」
しばらく重い空気が漂った。
それはそうだろう…
元カノが15人いると言ってるようなもんだからな。
もしかしたらこの場で、振られてしまうかもしれない…けど、それは受け止めなければならない。それが僕の責任だ。
「……………桂木」
俯きながら話しかけてくるちひろ。
あまりいい雰囲気はしない。
とその瞬間、僕にキスをして来た。
更に、ちひろの口から何かが僕の口に流れてきた。
「な、なな、何を!って甘!?これあんこか!?」
「ばーか!ざまあみろ!」
目を閉じ、拳を両手に握り締め、
舌を限界まで出してべーーっとするちひろ。
「私を16人分幸せにしてくれないと許さないからなーーーー!ばーーーか!」
耳元でそう叫ばれた。
僕は何を考えていたんだろうか…。
そうだったな…。
ちひろはこういう奴だった…だから、僕はちひろに惹かれたんだ。
「言っとくけどね!私も不安なんだからね!あまり私を不安にさせんな!」
そう言えば歩美も言ってたな…。
ちひろは傷つきやすくて乙女だって。
僕はあまりこういう事をしたくなかったんだけどこの際仕方が無い!
「ちひろ、好きだ」
ちひろの耳元でそう囁いて流れるように頬にキスをした。