とある英雄の伝説大戦(レジェンドウォーズ) 作:マッスーHERO
「藤岡虎斬、藤岡…ありました!」
初春が興奮気味にモニターを指さした。そのモニターを御坂や佐天たちが覗き込む。フューチャーのリーダー藤岡虎斬の演説から一時間後、御坂、黒子、佐天、初春の四人は第一七七支部で藤岡なる人物についてを調べていた。
「『藤岡虎斬』、年齢は17、元長点上機学園所属、能力レベルは4…」
「長点上機学園…なるほど徹底した能力至上主義校にふさわしい生徒ですの」
黒子が皮肉気味に言う。長点上機学園は学園都市でも五本の指に入る名門校で能力開発ナンバーワンの超エリート校…なのだが、影には黒いものがうごめいており、御坂たちもそれに巻き込まれた経験がある。
「あそこにはあんまりいい思い出がないんですよね…」
「確かに…」
佐天と初春も言う。御坂はさらに藤岡のデータを閲覧していく。
「能力名は『念動力』…長点上機を七月上旬に退学」
「停学や補導が何度もあり…そのほとんどが低能力、無能力者への暴行やその指示…そのほとんどがなぜか不起訴処分になっていますの」
「おかしいわね…」
「なにがおかしいんですか?御坂さん」
御坂に佐天が質問する。
「いや…いっちゃ悪いけど、これだけのことをして二年まで昇級したり、不起訴になったのはなにかしらの力が働いているはず…なのに能力が念動力っていうのは…」
「確かに、そこまでこいつを庇うのはおかしいですの」
「もしかして、書庫のデータが改竄されているってことですか?」
「前にもあったよね、そんなこと」
御坂はしばらく黙り込むと、どこかへ電話をかけ始めた。
「本当の能力とか人柄とか、もっと情報がほしいですの」
「でも、長点上機学園に問い合わせても、はぐらかされそうですね」
「『黒いゲートウェイ』の時も酷かったもんね」
いくら能力者絶対主義の学校とは言え、あんな大胆に犯罪者宣言し、しかも退学になった人間について快く教えるわけがない。暗礁に乗り上げてしまったと暗い顔をする三人だったが、電話をきった御坂は明るい顔で三人をみた。
「大丈夫、綱はまだ切れてないし、二本もあるわよ」
「綱?2本?」
「ええ、心強い友達がね…」
数時間後、御坂と黒子は学園都市第一〇学区のある施設の前に来ていた。
「なるほど、彼女も元長点上機学園在籍の生徒でしたわね」
「あの人なら藤岡について知ってるかもしれないでしょ」
二人が来ていたのはなんと少年院の前だった。 御坂が先ほど電話をしていたのはこの少年院だったのだ。二人は門を通り、施設の中へと入っていく。
「知っていると思いますが、彼女の能力は暴走すればとんでもないことになります。くれぐれも彼女を刺激しないように」
「わかっています」
「はいですの」
「まあ、彼女は模範囚だから、そんなことするとは思えないけど」
女性刑務官から忠告を受けた後、彼女たちは面会室へと通された。やがてガラスの向こう側のドアが開き一人の少女が刑務官とともに現れた。
「お久しぶりですね、御坂さん、白井さん」
「久しぶりね、相園さん」
相園と呼ばれた少女は御坂と黒子の正面に座った。彼女の名は相園美央、しらない人も多いかもしれなのでここで少しばかり彼女と御坂たちの因縁についてを話すことにしよう。夏休みの後半、硲舎佳茄(御坂が鞄を探してあげた少女)が『空き地のカミキリムシ』という都市伝説の被害にあい、それを捜査していた御坂たちは、その事件を無事に解決するも、そのあと次々に『制裁指導』『死神カキコ』などの様々な事件に巻き込まれる。そしてすべての事件を裏で操っていたのがこの相園美央だった。彼女の目的は自身の在籍する長点上機学園の保護者や学年主任たちのせいで大けがを負ったスクールカウンセラーの敵をとることで、そのためにホテルをもやし、最後には衛星兵器で地下に避難した保護者たちを吹き飛ばそうとしたのだ。元暗部であり、その能力は強力で御坂も苦戦した。しかし最後には復讐をあきらめ、御坂と共に衛星兵器の攻撃を阻止し、行方不明になっていたスクールカウンセラーを御坂とともに救出した後、自らアンチスキルに出頭したのだ。
「いつも差し入れをありがとうございます。今日はどうしたんですか?」
「ええ、実はこの男についてちょっとね」
御坂は藤岡の写真を相園に見せた。写真をみた相園の表情は一瞬驚きのものへと変わり、そしてすぐに憎悪を抱く表情へと変わった。
「こ、こいつは…」
その時、御坂の写真を持っていた右腕のブレザーの袖がドロドロと黒い液体へと変わった。その姿に黒子が慌てるが、御坂はそれを制した。
「相園さん、落ち着いて!」
「はっ!す、すいません」
刑務官の言葉で正気を取り戻した相園。それと前後して御坂のブレザーの袖も元に戻った。
「(油性兵装(ミリタリーオイル) は健在ね…)」
相園美央の能力、油性兵装は油分の分解と再構築を自在に行う事ができる能力で自分の服や周囲から集めた石油を分解・再構築し、液体と固体の区別すら曖昧な特殊複合装甲を装備して戦ったり、高速移動やナパームのような攻撃が可能である。
「面会を続けられるかしら?」
「ええ、もう大丈夫です」
心配する刑務官に頭を下げた後、相園は再び写真を凝視した。
「(お姉さま、彼女がここまで取り乱すということは…)」
「(間違いなく西東先生関連ね)」
御坂の言う西東先生とは、行方不明になっていた長天上機学園の元スクールカウンセラーのことである。彼はかつて暗部にいた相園に手を差し伸べ、彼女を助けた経験があり、そのことから相園が学園都市を消滅させるほどのテロ行為をするほどの恩を持つ人物である。
「相園さん、話したくないなら話さなくてもいいのよ…」
「いえ、あいつがあんな演説をしたときから、御坂さんたちが私を尋ねてくるかもしれないと思ってましたから…覚悟はしてました」
そういうと相園はすこし深呼吸をして気持ちを落ち着け、話始めた。
「藤岡は学内でも相当な悪でした。気に入らないやつは上級生だろうと教師だろうと汚い手で排除していましたし、なによりも汚かったのはそれを自分ではなく他人にやらせる。自分の手は決して汚さない男でした…」
「他人というと…派閥とかをもっていましたの?」
「ええ、確か灰田とかいうのと…煙田というやつを筆頭に何人もの生徒を常に引き連れて、まるで王様気取りでしたよ」
相園の言葉に黒子が手元の資料を見る。それは藤岡と同時期に長天上機学園を退学もしくは自主退学した人間の資料だった。その中には『有馬(ありま) 瞬(しゅん)』という男と『煙田(けむりだ) 灰人(はいと)』という男の資料も入っていた。
「やっぱり、こいつらもフューチャーとかいう組織に関係がありそうですの…」
「ねえ、相園さん…その藤岡って男は聞いた限りではとてもカリスマ性のある男とは思えないわ…それってつまり…」
「御坂さんの考えた通り、藤岡がそこまでの地位を築いていたのは奴の能力によるものです」
「それって一体どんな能力なの?」
「奴の能力はレベル5にも匹敵するといわれたとんでもない能力です。それは…」
同じころ、学園都市第七学区の第一七七支部では初春と佐天がパソコンにカメラをつないで、だれかと通話を行っていた。
[Indeed(なるほど)、それで私に連絡をしてきたわけね]
「はい、そうなんです」
「なにか藤岡について知っていることはありませんか?」
彼女たちが通話しているのは現在海外の研究機関にいる『布束砥信』だった。彼女もまた特殊な事情を抱えていたが、御坂たちに救われた経験があり、そして元長天上機学園所属の学生でもあったのだ。
「藤岡は私より一年下の後輩、でも彼のことはよくしっているわ。Because、彼のやっていたことは上記を逸していたから…」
それから布束が語ったのは相園と同じような藤岡についての悪評だった。そして話はついに藤岡の能力のことへと移った。
[And、そんな彼をそこまで好き放題させるほどの絶対的な能力は…]
「「ゴクッ」」
核心を喋ろうとする布束、緊張からか二人が息を飲む。その時…
[しのぶ!だれと電話してるの?]
[あ、こらフェブリ!]
[ああ、るいことかざりだ!]
布束のよこから一人の金髪の少女が顔を出した。この少女の名は『フェブリ』。彼女もまたある事件で御坂たちに助けられ、布束とともに海外の研究機関へと旅立った少女だった。
「フェブリ!久しぶり!」
フェブリとの再会に佐天もすこし興奮している。この二人はかなり仲がよかったのだ。
「ジャーニーはどうしたの?」
「おねえちゃんは寝てるよ」
『ジャーニー』とはフェブリの双子の姉のことである。二人がいろいろとはなすせいで話は完全脱線してしまった。初春は興奮する佐天をおさえ、肝心な話を聞こうとする。
「布束さん、それで藤岡って人の能力は一体…」
「ああ、そうだったわね。彼の能力は…」
「なるほど学園都市に反旗を翻すだけあって、なかなか大層な能力を持ってるものね」
「悪事をいろいろと揉み消してでも藤岡を自由にしていたのはこの能力のためでしたのね」
御坂と黒子は少年院から第177支部への帰路についていた。
「あんな能力を持ってるから、自分を神かなにかと勘違いしてるのかもね」
相園から教えてもらった藤岡の能力はレベル5の御坂でも驚くものだった。もしそれが事実ならフューチャーは思った以上に強大な敵となり得るかもしれない。
「黒子、有馬や煙田のように藤岡と同時期に長天上機をやめてる人間は他にいる?」
「ほかには五人いますの。その中には藤岡の近縁者である人間も…」
黒子が全てを言うことは出来なかった。なぜならその直前に二人の足元に弓のようなものが突き刺さり爆発したからだ。爆発の直前、黒子は御坂と共に近くのビルの屋上にテレポートしていたため無事だったが、地面のアスファルトがえぐれ、小さいクレーターが出来ていた。
「噂をすればなんとやらってやつね」
「ええ、そうですわね」
黒子はなんの考えもなくビルの屋上にテレポートしたわけではない。弓のようなものの着弾角度からこのビルの屋上に弓を放った主がいると 推測し、ここへと転移したのだ。そして案の定、給水タンクの上に二体の怪人の姿があった。一体は先程、飛行船の上にいた女性型の怪人、もう一体は、大きな弓をもつ怪人である。
「困るなあ、俺のことをへんに探ってもらっちゃあ…なあ学園都市第三位、御坂美琴さんよ」
弓をもつ怪人が体内からガイアメモリを取りだし、人の姿へと戻る。その姿を御坂は今日、いやと言うほど見ていた。
「私のことを知ってもらえてるとは光栄ね…藤岡虎斬!」
「そりゃあ、あなたは有名人だからな。ぜひとも我がフューチャーにあなたを迎えたい」
「あいにくと規模の大きい派閥ごっこに付き合うつもりはないわ」
藤岡の誘いをきっぱりと断り、オーズドライバーを取り出す御坂。それを見た藤岡の顔に驚きはまったくない。
「そうか、それは残念だ…そちらの白井黒子さ「私も興味はありませんの」」
黒子も誘いを断り、SPライセンスを構える。
「決裂か、それじゃあ仕方ないな…邪魔物には消えてもらおう」
[Archery]
笑みを浮かべつつ藤岡は再びガイアメモリを首元に突き刺した。ゆっくりと藤岡の体は先ほどの弓を持った怪人『アーチェリードーパント』へと変貌する。そしてアーチェリードーパントはさらにホロスコープススイッチを右手に握る。
「レベル5相手だ…これもつかわせてもらうか…」
スイッチが押されるとともに黒い影がアーチェリードーパントを包み込み、射手座の光が瞬くとアーチェリードーパントの体は胴体にいて座のサインがあり、頭部には12個の宝石が散りばめられた頭飾りをつけ、全体に炎のような模様を持ち、背中に長い洋弓と矢を装備した『アーチェリーサジタリウスゾディアーツ』へと変貌した。
「瞬、あのジャッジメントは任せるぞ」
「はい。はあ!」
竜巻と共に黒子と女性型怪人が姿を消す。その姿に御坂はわずかに顔をしかめた。
「心配しないのか?大切な相棒を?」
「ふん、黒子はあんたたちなんかに負けるほど弱くはないわ」
オーズドライバーを腰に巻き、懐へと手をやる御坂。
「(あんな弓をぶら下げてるってことは確実にあいつは遠距離型…なら)」
「オーズ最強の姿、タジャドルコンボか、あれなら遠距離でも戦えるし、飛行能力ならこの弓を避けられるからな」
「!」
この時、御坂はたしかに三枚の赤いメダルを掌に握りこんでいた。しかもアーチェリーサジタリウスゾディアーツはタジャドルコンボの特徴を事細かに言い放っている。まるで、一度戦ったかのように…
「(こいつの能力…聞くよりも精度が高いみたいね)」
御坂は悩みつつもそのまま赤いメダルをベルトにセットする。手の内がわかっているなら、これ以上相手に情報を与えるべきではないと判断したからだ。それに彼の能力をもっとよく知るには実際に体験してみるべきだと考えたのだ。
「わかってるなら、このコンボの恐ろしさも知ってるわよね…この勝負どっちが勝つのかしら?」
「それは自分の眼で確かめるべきだな」
にらみ合い、動きを止めるふたり…御坂は静寂を打ち破るかのようにオースキャナーを構えた。
「変身!」
[タカ!クジャク!コンドル!タージャードルー!]
[仮想BGM:Time Judged all]
「はああ!」
タジャドルコンボへと変身したオーズが翼を羽ばたかせて飛翔し、アーチェリーサジタリウスゾディアーツへと挑む。
そのころ、オーズの戦うビルのとなりのビルの屋上には黒子と女性型怪人の姿があった。
「く、私を転移させるなんて…凄まじい能力ですの」
「これがホロスコープススイッチ…おとめ座の力です」
女性型怪人の口から漏れた男性の言葉に黒子が怪訝な顔をする。
「…なるほど、あなたが有馬 瞬さんですの?女装とは大層ご立派な趣味ですの」
「おとめ座だからなのか、女性のようなデザインとなってしまって…これも『ヴァルゴゾディアーツ』の特徴の一つなんです」
ロディアという杖を黒子へ向けるヴァルゴゾディアーツ。黒子のSPライセンスを持つ手に力が入る。
「早く、貴方を倒して、お姉さまをお助けしますの!エマージェンシー!」
デカイエローへと変身した黒子は2本のディースティックを両手に握り、テレポートでヴァルゴゾディアーツの後ろへと周る。しかしそれを予期したヴァルゴゾディアーツはロディアでディースティックを防ぎ、逆に押し返した。
オーズ=御坂美琴対アーチェリーサジタリウスゾディアーツ=藤岡虎斬の戦いがついに火蓋を切った。
恐るべき藤岡の能力とは何か?後篇へ続く。