とある英雄の伝説大戦(レジェンドウォーズ) 作:マッスーHERO
未だに忙しい日々が続き、投稿が遅れております。
今週の平日の間にもう一話と設定集を後日投稿してフューチャー編は完結となります。
リクエスト遅れ、非常に申し訳ありません。
あの戦いの後、上条が意識を取り戻すとそこには倒れた浜面の姿しかなく、一方通行と藤岡の姿はなかった。すぐにでも2人を探すべきだと思ったが目の前に倒れた人がいるのを見過ごせる上条ではなく、彼を支えながら病院へと向かうことを選んだ。そして病院へと辿り着き、浜面を看護師に預けて自身の治療も終わった直後にストレッチャーで手術室へと運ばれる駿河の姿を彼は目撃した。
「駿河!」
駆け寄る上条だが、ストレッチャーの側にいた伊達に阻まれる。抗議しようとする上条だったが、伊達の凄まじい眼差しとオーラによって制されてしまい、黙って彼らを送り出すことしかできなかった。
手術室の中では数人の看護師とカエル顔の医師、伊達、クゼ、安達、そのほか数名の医師が麻酔薬で深く眠っている駿河を取り囲んでいる。重々しい空気の中、カエル顔の医者はゆっくりと宣言した。
「これより脳内腫瘍の切除を開始する。メス!」
「はい!」
看護師から渡されたメスを受け取るカエル顔の医師。光り輝くその刀身がゆっくりと皮膚へと沈み込み、赤い鮮血がわずかに漏れだす。無影灯の光が照らす中、彼らの戦いが静かに始まった。
自分が待つがわになるとは思わなかったと、上条は手術室の前のベンチに座って掌を組みながら手術中と書かれた看板を見つめていた。自分を待つ御坂やインデックスもこんなふうにあの赤く輝く看板を見つめていたのかとしみじみ思っていたが…横の廊下に病院食を運ぶカートが通るのを見て、がっくりと肩を落とした。
「あいつはいつもじっと待ってるわけじゃないんだろうな…」
それからしばらくたって、上条はふと懐に手をいれてあるものを取り出した。さきほどの戦いであの男から授かったアポロスイッチ。それを上条は眺めながら、さきほどの戦いを振り返る。
「こいつがなかったら負けていたかもしれない…でもこいつがなくてもあんなやつに勝つことはできたのかもしれないな…」
アポロスイッチを右手で軽く握りながら彼はそう思った。強がりではない、おごりでもない…フォーゼの力を手に入れる前はずっとこの右腕一本で強敵と戦ってきたのだ。フォーゼ、そしてスーパー戦隊の力をもった今の彼にとって藤岡は本当に強敵だったのか…今となっては疑問に感じてしまう。そんななか、急に彼の背筋に悪寒のようなものがはしった。
「なんだろう…なにか大変なことを忘れているような…」
その悪寒にいやなものを感じ、すぐさまマグフォンを取り出して土御門にあることを確認しようとする上条。しかし、取り出したマグフォンはズタズタに破壊されていてとても通話が出来る状態ではなかった。すぐに外へと飛び出して土御門を探しに行こうとする上条。だがそのとき、手術中の看板が消灯したことが目に入った。上条に緊張が走る。カエル顔の医師でさえ難しいと語っていた手術…はたして無事に終えることができたのか…。不安に染まる上条を余所に手術室のドアがゆっくりと開き始めた。
「…」
最初に現れたのはカエル顔の医師だった。見たこともないほど憔悴し、疲れ果てたその顔にはたまのような汗がとめどなくあふれている。ついで伊達や看護師たちとともにストレッチャーに乗せられた駿河が現れた。頭には透けた帽子を被せられた彼の顔には安堵の表情が浮かんでいる。
「手術は…成功だよ…」
心配する上条にマスクを取ったカエル顔の医師はわずかに笑って語りかけた。憔悴して口調すら崩れているが、はっきりとした言葉でそう彼に伝えたのだ。
「せ、成功って…」
「奇跡だよ、まったく…開けてみたら腫瘍がちっちゃくなってたなんてさ…」
「おかげで安全に切除することができた…それでもかなりの難手術だったけどね」
「こんな大手術…あっちでは経験したことがありませんよ…」
狼狽する上条に伊達、クゼ、安達が代わる代わる言葉をぶつけていく。その中の奇跡という単語に上条は強く反応した。
「奇跡…そうか、あの歌が…駿河にも…奇跡を!」
あの時の歌が、きっと駿河にも届いていたのだ。彼女たちの父の意思を継ぐ彼を救うために彼女たちが届けたのだ。そんな思いが上条の身体を凄まじい勢いで駆け巡る。さきほどまでの悪寒が身体から吹き飛び、喜びが体に溢れていく。
「ありがとうございます、先生!!」
「ああ…」
上条の礼を微笑みながらうけたカエル顔の医師はどこへともなく去り、上条もまた看護師によって運ばれていく駿河に付き添い去っていく。
「大変な手術でしたね、伊達先生」
「専門外のあんたにまで協力を求めるはめになっちまって申し訳ないね、伝通院先生」
伊達から伝通院と呼ばれた医師はマスクを外して、顔の汗をふくと上条たちの消えた廊下の方を再び見つめた。
「あれが、上条当麻…この世界の戦士の1人ですか」
「ああ、なかなか見所のある青年さ」
「彼を見ていると天馬に近いものを感じますよ。私の左手の紋章もしきりに彼に反応しています」
そう言いながら伝通院はゆっくりと左手の手袋を外す。その手の甲には双子座のマークが刻まれていた。
「グランセイザー…超古代文明の大いなる遺産か…」
「我々は復活したニューボスキート調査のためにあなたたちに充分な協力も出来ていない。だからせめて彼の治療と…超新星キーの完成だけは全力で協力させて頂きます」
「いつも世話になってる先生のために一流の腕を持った医者が1人でも多く必要だったんだ。急な呼び出しにこたえてくれて本当に感謝するぜ」
礼とともに差し出された伊達の左手に伝通院は紋章の刻まれた左手で答え、二人は固く握手を交わした。
それから暫くたって、ある病院の一室でベットへと寝かされた駿河がゆっくりと目を開けた。
「駿河、大丈夫か?」
ベットの傍らに立っていた上条がいまだに麻酔によって意識のはっきりとしていない様子の駿河へと声をかける。目が焦点の合わない様子だったが、それでも上条がいることを認識した駿河はわずかに微笑んでそれに答えた。
「手術は成功したぞ!奇跡が起きたんだ!これからもお前は夢を追いかけることができるんだぞ!」
「…」
意識がはっきりしていないとわかりながらも必死に彼の全快を伝えようとする上条。それに対して駿河はなにも反応することはない。しかし、少し経つと彼の右腕がぴくりと震えるように動いた。彼の右腕が少しずつ上へと伸ばされていくのを見た上条はその意図を察して自身の右腕でその手を強く握る。麻酔が効き、意識が朦朧としているはずの駿河だが、上条の右腕を握り返すその力は強いものだった。
「駿河…」
「…」
彼の右腕から自身の右腕を通して、彼の思いを感じとる上条。そこにあるのは上条への感謝と謝罪、そしてこれからも夢を追いかけるために生きていくという意思…それ以外の様々な意思がどんどん上条へと流れこんでいく。
「…」
「…」
しばらく黙りこんで腕を握り合っていた2人だったが、やがて駿河の握る力が弱くなったのを感じた上条はその手をゆっくりと離した。話された手はベットへと落ち、駿河は再びその意識を手放して深い眠りについた。その穏やかな表情を上条はしばしの間見つめていたが、なにかを思い懐からあるものを取り出す。それは藤岡のとの最終決戦で切り札となった真レギオンメモリ。彼はそれをベット横の机の上に置くと静かに病室から去り、土御門を探しに向った。
後日、アンチスキルとTPCの綿密な調査によりフューチャーの悪事がすべて洗い出されたが、駿河秋がそれらに関係していたという証拠は見つからなかった。さらにフューチャーによる施設等の被害をすべてTPCが補完するという発表をしたため駿河秋は大きな罪に問われることはなかったという…彼が自分の夢を叶えるのはそう遠くない未来なのかもしれない。