とある英雄の伝説大戦(レジェンドウォーズ)   作:マッスーHERO

96 / 101
いまだにものがたりの根幹にたどり着けていない…
今回ははやめに終わらせるつもりだったのに…


先生、生きて…(中編)

「や、やめろ!やめてくれ!?」

 

「ふふふふふ、あなたも諦めてください!」

 

[UMA]

 

学園都市のとある路地裏。そこで一人の少年が諦めた。生きることを…

 

「いいぞ、中途半端な力をもつ汚れた能力者など根絶やしにしてくれる…」

 

その光景を見つめる異形の使徒…青いボディにところどころ天使の装飾を備える堕天使。かつて護星天使たちと戦った怪人…名を『救星主のブラジラ』という。

 

「そのためにも、働いてもらうぞ…幽魔ども」

 

目の前で広がる惨状に満足したブラジラは自身のもつ箱のようなものをゆっくりと開いた。刹那、箱から邪悪なる魂達が噴き出し、学園都市へと散っていく。新たなる戦いの始まりはこんなに静かに誰にも知られず幕を開けた。ただひとり…ある男を除いて…

 

 

 

 

 

「学園都市…まさか生きてここに戻ってくるとはな…」

 

その男の姿は異様だった。足首まで届く白いコートはこの冬場ゆえまだわかる、だが顔を覆うフルフェイスヘルメットは彼をこの世界から明らかに孤立させている。しかし、彼はそれを自分から望んでいた。顔を隠し、己を偽り、自分を殺し、それでも彼にはすべきことがあった。だからここへ戻ってきたのだ。すべきことを果たすために…。

 

 

 

 

「…なんだにゃあ、今のフルフェイス?」

 

「ハロウィンには遅すぎるしな…」

 

「日光アレルギーとか重大な病気かもしれんぜよ」

 

「そんなのあるのか?こええなあ」

 

横を通り過ぎていくフルフェイスマスクの男に不信感100%の目で見送るのは我らが上条当麻と土御門元春である。しかし、あれよりも酷い格好の人間と触れ合うことが日常茶飯事な彼らはさして気にも止めずに再び帰路につく。

 

「ところで上やん、あれからスイッチの方はどうなんだにゃあ?」

 

「ああ…修理が終わってるのもあるんだけど、ステイツチェンジ用の4つはまだ時間がかかりそうなんだよな」

 

「そうか…あれだけ派手にぶっ壊れたら時間もかかるか…」

 

「まあ、フューチャーも倒したし当分は大丈夫だろ。残ってる武器でも充分敵は倒せるさ」

 

「…」

 

楽観する上条を見て土御門はあることを迷っていた。あのスイッチが紛失したことと黒幕の存在を上条に伝えるかどうかについてだ。しかし、そのことを彼に伝えれば、彼はまた宛もない探索や余計な心配をしかねない…そのことを考えて土御門は今日までそのことを彼には伝えていなかった。

 

「(もうすこし、俺の手で調べてみる…上やんに伝えるのはその後でも遅くないはずだ)」

 

「土御門?どうかしたのか?」

 

「あ…いや、なんでもないにゃあ」

 

「ならいいけど…おわ!?」

 

土御門との話に集中しすぎていた上条は何かにぶつかり地面へと倒れこんだ。勢い良くアスファルトの路面に後頭部をぶつけてふらふらの上条のぼやける視界に何かの影が写り込む。

 

「す、すみません…ああ、不幸だ」

 

それが人だと思いこんだ上条は謝りつつもある違和感を覚える。影が大きすぎるのだ。自分の身長が170センチ弱だから相手はそれよりも一回り以上大きい。一瞬、あの不良神父のことが頭を過るが体格が違いすぎる。60キロ弱の上条がぶつかったというのに相手は微動だにしていないし、大体ぶつかった時の衝撃が強すぎる。まるで止めてある中型バイクに激突したような衝撃だった。混乱する上条の視界の中で影が何かを振り上げる。警棒?バット?いや、そんなものよりはずっと長く太い、まるで鬼の持つ棍棒のような…

 

「避けろ!上やん!!」

 

漠然としていた上条を土御門の叫び声が覚醒させた。そこから横に転がって棍棒を避けたのは流石上条と言える。しかし空振った棍棒は地面を砕き、地下に埋葬されていた様々な配線や水道管をアスファルトごと粉砕し、地面に大きな亀裂を作った。

 

「くっそ、なにものだ、お前は?」

 

「ビッグフットの…筋グゴン…不幸だ…不幸だ。不幸だ!」

 

ようやく上条の視界も正常に戻り、目の前の巨大な影の正体が見え始めた。藍色の体毛が体中から生え、2メートルを超える巨体と凶暴な顔、蜘蛛を思わせる意匠、そしてその巨体に負けないほど巨大な棍棒を持つ、名乗りが本当なら『ビッグフットの筋グゴン』という怪人のようだ。

 

「ビッグフット?」

 

「アメリカのロッキー山脈一帯で目撃されてる猿人の生き残りと呼ばれている未確認生物…つまりUMAの1種だ!」

 

上条の疑問に土御門が瞬時に答えた。『UMA』とは『Unidentified Mysterious Animal』の略でいわゆる未確認生物のことである。(ただしUMAは日本人の造語)なかでもビッグフットはかなり有名な種で猿人の生き残りと呼ばれるほどの巨体と凶暴性を持ち、人を襲ったという例すらある。目の前の筋グゴンは、まさにそのイメージあう怪人だった。

 

「殺す!殺す!殺す!!」

 

「どうやらやる気みたいだぞ、上やん!」

 

「見た目通りの脳筋ってわけか、くそ!」

 

棍棒を避け、蹴りを入れる上条だが体重200キロオーバーの筋グゴンにはまるで効果がなく、逆に弾かれてしまう。2人は棍棒の届く範囲から退避して各々変身アイテムを取り出した。先ほどの会話でも言っていたことだが、右腕のソケットが破壊されていたドライバーは完全に修理が完了しており変身する分には問題もなさそうだ。しかしそんな2人に筋グゴンの放った火炎弾が迫り来る。

 

「変身!」

 

[3・2・1]

 

「一筆奏上!」

 

迫っていた火炎弾を変身時の噴射と水のモジカラで弾きつつ変身した2人は、筋グゴンへと突っ込んでいく。まずシンケンブルーのシンケンマルが上段が振り下ろされるが…

 

「うお…かってえ…にゃあ…」

 

右肩に直撃したはずのシンケンマルだが傷をつけることはかなわなかった上、逆にシンケンブルーが握っていた腕に痛みを感じている。

 

「これならどうだ!」

 

[Hammer On]

 

パワーにはパワーとハンマーモジュールを筋グゴンの頭部に叩きこむフォーゼ。しかし…

 

「うお…かったあ…」

 

殴った瞬間、あまりの硬さにフォーゼの全身が震える。しかも同時にハンマーモジュールの先の一部が欠けてヒビがはいっている。体が金属というわけではないのだが文字通り鋼の筋肉を前に生半可な武器ではダメージが通らないのだ。

 

「(こりゃ厄介だな…能力で反射したり、バリアとかを貼っていた奴はいたけど…こういうタイプとはあんまり戦った経験が全然ないんだよな…)」

 

純粋に硬い相手というのは幻想殺しも役に立たないし、他の武器も明確な決定打にならない。今はステイツチェンジも使えないためかなりの苦戦を強いられそうだ。

 

「死ね!死ね!死ね!」

 

戦法に悩む2人をよそに筋グゴンは地団駄を踏んだ後、すぐさま棍棒を振って2人に襲いかかった。

 

 

 

 

2人が筋グゴンと戦闘を開始したころ学園都市各地でも怪人による襲撃が起きていた。

 

「シャーシャシャー!ツチノコのト稀ヅ!」

 

様々なヘドロ状の毒で人々を溶かしていくツチノコのト稀ヅ。

 

「ミイラのゼイ腐!」

 

全身の白いムカデで人々を包帯に変えていくミイラのゼイ腐。

 

「ごっつぁんです…河童のギエム郎!」

 

エネルギーを送って人々を河童に変えていく河童のギエム郎。

 

「ケサランパサランのペサラン挫ぞな!」

 

無数の毛玉で人々の恋心を吸い取り無気力にしてしまうケサランパサランのペサラン挫。

 

「ネッシーのウオボ渦!」

 

長い舌で人々の影を奪っていくネッシーのウオボ渦。

 

「スカイフィッシュのザイ粉!」

 

人間の体温を異常なまでに上昇させる特殊な火の粉を撃ち出していくスカイフィッシュのザイ粉。

 

「天狗のヒッ斗!」

 

特殊なひょうたんで笑う人々を吸い込んでいく天狗のヒッ斗。

 

「獏のエルムガイ夢!」

 

人々から夢を奪っていく獏のエルムガイ夢。

 

 

 

これらの怪人たちが学園都市の生徒たちを無差別に襲い始めたのだ。フューチャー事件のすぐ後であったこともあり、人々は油断していた。そのため各地での被害は甚大であり、学園都市は阿鼻叫喚の地獄と化している。その光景をあるビルの屋上でブラジラは満足気に見つめていた。

 

「ふふふ、いいぞ。思う存分暴れるのだ。幽魔獣ども」

 

「なにを勝手なことをしている、救星主のブラジラ」

 

背後からかけられた声に振り向くブラジラ。そこにいたのは黒いローブを羽織った人物…そう件のFであった。

 

「F…といったかな?」

 

「質問に答えろ。いまドクター真木とイマジン、そして災魔…彼らが様々な作戦を立てて、その下準備を進めているというのに、勝手な行動は慎んでもらいたい」

 

「ふん、奴らが何を考えていようと知ったことではない。私は私のやりたいようにやらせてもらう」

 

「そんな勝手は許さん…」

 

[Eternal]

 

「変身」

 

話し合いは無駄だと考えたのかFはエターナルへと変身、エターナルエッジをブラジラへと向ける。一方のブラジラも電撃を放つ剣・ダークサーベルを構えて臨戦態勢をとった。

 

「貴様のような小物に救星主である私が倒せると思うか!」

 

エターナルを襲うブラジラの激しい剣撃。突き、横薙ぎ、振り下ろし…しかしそのどれもをエターナルは見事に受け流す。途中に入れる蹴りも電撃もエターナルの足やマントに防がれ、ダメージを与えることはできない。

 

「ぬう…なかなかやるな!」

 

「…」

 

ブラジラの上段から斬撃をエッジで防ぐエターナル、そしてブラジラの空いた腹を凄まじい勢いで蹴り飛ばす。そのまま屋上の落下防止フェンスに激突させられるブラジラ。

 

「ぐう…」

 

「救星主である貴様を倒すにはこのメモリが相応しいかな」

 

[Gaogaigar]

 

ブラジラにトドメを刺すべくエターナルは緑色に輝く1本のメモリを取り出した。響くガイアウィスパーはかつて別次元の地球を救った勇気ある戦士の名。なにものをも粉砕する破壊神。

 

[Gaogaiger Maximum Drive]

 

「ヘル…アンドヘブン…まあ、お前が行くのは地獄だ。残念だが、昔のシーイックとランディックの仲間と再会はできんよ」

 

マキシマムドライブとともにエターナルの右腕に破壊のエネルギーが、左腕に守護のエネルギーが集まり、光り輝いていく。

 

「ゲム…ギル…ガン…ゴー…グフォ…ふん!!」

 

呪文のようなものとともにエターナルが両腕をあわせた。すると破壊のエネルギーと守護のエネルギーが1つに交わり、膨大なエネルギーの渦がブラジラを拘束する。

 

「なあ…う、動けん…」

 

「動けるわけがない…地球を救った真の勇者の力…きさまのような似非勇者には破れん!!おおおお!!」

 

合わせた両腕を突き出し、エネルギーのトンネルの中を滑るようにブラジラへと突進していくエターナル。1つとなった膨大な破壊と守護の力をぶつけられればいかにブラジラといえども一環の終わりだ。しかしブラジラはエネルギーの渦から逃れることができない。2人の距離がどんどん狭まっていき、そして…

 

「うおおおおおお!!!」

 

膨大なエネルギーを纏った両腕がついに胴体を貫いた。エターナルの両腕には怪人の肉と体液がこびりつき、貫かれた当人は苦悶の声を漏らす。

 

「ぬう…」

 

「…なんの真似だ、バスコ」

 

「ははは、まあまあ」

 

エターナル懇親のヘルアンドヘブンはブラジラに届いていなかった。エターナルが胴体を貫いたのはダブルを思わせる赤と青のツートンカラーの怪人。そして横の給水タンクの上にはニヤニヤと笑うバスコの姿がある。どうやらこの怪人はバスコが差し向けたようだ。怪人が盾となり、ブラジラは無事だった。

 

[Cho Ryujin]

 

爆散した怪人の体からボディと同じツートンカラーのメモリが排出され地面へと落ちた。同時にエネルギーの渦も止まり、ブラジラの体が解放され地面へと崩れ落ちる。エターナルはブラジラへの興味を無くし、代わりに地面に落ちたメモリを拾う。

 

「…超竜神メモリ、ないと思ったらお前がくすねていたのか…」

 

「大当たり!面白いよね、イレイザーヘッドってエネルギーは使えば減る…それを高速でやってやればどんなエネルギーの武器でも無力化できるんだから」

 

「勇者をとめるには勇者というわけか」

 

変身を解除したFは超竜神メモリを懐に戻し、ローブに隠れた目から鋭い眼光をバスコに向けて放った。しかし眼光を受けたバスコはまるで動じず、いつもの飄々とした態度で給水タンクから降りると倒れていたブラジラに肩を貸して介護する。

 

「俺たち、目的は違えども同じ組織の一員、こんなとこで喧嘩してる場合じゃないでしょ」

 

「そいつのせいでグレムリンも潰された。あそこのトップには利用価値があったものを…しかも、その理由は自分以外の創造主を気に入らないというくだらないものだったんだぞ…」

 

「それについては、危惧してたジュウレンジャーの力の持ち主が分かったんだからプラ・マイ・ゼロ!ってことになったじゃない」

 

「…はあ、今回だけは見逃してやろう…バスコに免じてな」

 

ローブかぶり直すとバスコたちに背を向けるF。その背に向けて意識も絶え絶えのブラジラは吠えた。

 

「ふざけるな!貴様こそ…なにをする気だ…エルレイの匣から数体の幽魔獣がいなくなったのも貴様の…う…」

 

そこまで言ったところでブラジラは意識を失う。そしてFは背を向けたまま屋上から去っていった。

 

「ははは…いい具合に人間やめてるね、あいつもさ」

 

その姿を薄笑いで見つめながらバスコはブラジラとともに銀色のオーロラへと消えた。

 

 

 

 

「…さっきの戦い、なぜあそこまでガオガイガーのメモリが…」

 

ある疑問を抱いたFは再びあのガオガイガーのガイアメモリを取り出す。メモリーは先程よりも光を増し、眩く光り輝いている。Fの抱いた疑問とはさきほどの戦闘でこのメモリの力があまりにも強くなりすぎていたことだった。

 

「…なにに反応している。私にこれだけの輝きを出せるほどの勇気はない…何かがこの世界に迫っているのか?」

 

ガオガイガーのメモリは持ち主の勇気に呼応してその輝きを増す。それはかつてこのガオガイガーという戦士が人の勇気を力に変えて戦ったことに由来する。しかし、この戦士のメモリは正義や悪の力にも敏感に反応し、輝くという特性があるのだ。

 

「…見定めなければな、それが正義だろうと悪だろうと…」

 

Fはガオガイガーメモリを懐に戻すと銀色のオーロラの中へと消えていった。

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。