とある英雄の伝説大戦(レジェンドウォーズ) 作:マッスーHERO
しかも中編が続いてしまったことも重ね重ね申し訳ありません。
先日堕落天使さんがこの小説とのクロスオーバー小説をpixivとハーメルンに投稿してくださいました。こんご、こちらからの視点での特別なお話も投稿しますのでお楽しみに。
同じ頃、科学アカデミアは各地に現れた怪人たちの対応に追われていた。
[学園都市各地に幽魔獣が出現!各自、メガゾード修繕作業を停止して警戒態勢をとれ!]
「幽魔獣ってなんですの?」
「以前天装戦隊ゴセイジャーと戦った怪人組織の1つだ。でもゴセイジャーによって完全に滅ぼされて…その後復活した例はないんだがな…」
「リュウジさん!今暴れてる幽魔獣の解析結果がでました!」
リュウジの元に紫色のフレームのメガネをかけた若い女性が数枚の紙の資料を携えてかけてきた。すぐさまその資料を受け取って目を通すリュウジ。
「なるほど…この幽魔獣たちは操り人形…いや、前もって命令されたロボットみたいなものか」
「じゃあ、目的もなくただ暴れてるだけってことですか?」
初春の問いかけに頷くリュウジ。もしもそうならどんな作戦でリベンジャーは怪人たちを放ったのか…4人の頭に疑問が浮かぶ。それを感じ取ったのかリュウジは懐から電子端末を取り出し、ある怪人のデータを表示して4人に見せる。そこに表示されていたのは先ほどの怪人『救星主のブラジラ』だった。
「救星主のブラジラ…おそらくこんな馬鹿げたことするならこいつだろうね。TPCの怪人危険度ではSランク。まあ実力もそうなんだけどそれ以前に思想がね」
「思想って?」
「まあ、この世界は汚れているから正しい自分が人々を導いてやろうってところかな涙子ちゃん。でも、そのための犠牲を厭わず…自身の仲間を殺し、さらにはこの世界が救えないと勝手に思い込んで世界を滅ぼそうとした奴さ」
「そんな勝手な…」
「そういう怪人も多いだよ美琴ちゃん。まあ…間違ってはいないかもしれないけど、導くほうも間違ってちゃ救いようがないんだよね」
「じゃあ、この世界も滅ぼそうとしているわけですの?」
「ああ、でもリベンジャーはこの行動をよく思ってないだろう…やつらはこの世界がほしいだからこの世界を滅ぼそうとすることは防ぐはず…でも静止しないってことはこの機になにかを企てているのかも?ブラジラはただの思想家ってだけじゃなくかなり思慮深い一面もあるし、これで終わりとは思えない」
リュウジの説明の通りなら、まだブラジラが何かを起こす可能性とリベンジャーがこのドサクサのなかで何かをしている可能性の2つがあるということだ。どんなことを起こすかはわからないが、どちらもかなりの危険をはらんでいることは間違えない。
「狙いは科学アカデミア!?」
「いや、それなら科学アカデミアの周囲には怪人がでてないはずだ…そうしないと周囲にヒーローがきてしまって陽動にはならないからね」
御坂の考えをリュウジは否定した。確かに幽魔獣は学園都市全域で確認されており、第七学区にも2体出現している。これでは科学アカデミアを狙うための陽動にはならないはずだ。なら敵の狙いはなんなのか?
「とにかく戦いましょう。黒子!初春さん!佐天さん!いくわよ!」
「さっきも言ったけどいま使えるロボはスターファイブだけだから注意してくれ!」
走り去る4人に向けてリュウジは叫んだ。使える巨大メカが限られる中、幽魔獣たちを相手に戦うことへの不安を感じながらも4人はあらたなる戦いへと向かっていく。
「破壊だ!破壊だ!破壊だあ!!」
「のあ!?」
筋グゴンの金棒がシールドモジュールを粉砕し、その反動で吹き飛ぶフォーゼ。鋼の筋肉をもつ筋グゴンに対して2人は相変わらず決定打が打てないでいた。
「くっそ…こうなったらアポロでいくか…」
懐からアポロスイッチを取り出すフォーゼ。ステイツチェンジのできない今、切り札であるアポロをそう安々と使うわけにはいかないのだが、そうも言っていられない状況なのだ。そう考え、シールドに変わってアポロスイッチを装填しようとするフォーゼだったが…。
「させるか!させるか!させるか!!」
「うおあ!?」
なんたる不幸、いつもならすぐに終わるスイッチ交換がそのときだけは妙にもたついてしまい、その隙に筋グゴンの一撃を喰らってスイッチは明後日の方向へと飛んでいってしまった。
「し、しまった!?」
スイッチを取りに行こうとして背中を向けるフォーゼ。しかしそこに筋グゴンの追撃が決まり、彼もまた明後日の方向へ野球の打球のように吹っ飛んでいく。激突した衝撃で大きく曲がる街灯を杖代わりに立ち上がっるフォーゼにまたもや筋グゴンの魔の手が迫る。
「おおおおおおおおお!!!」
迫り来る筋グゴン…スイッチまでの距離はわずかに数メートル…素早く横っ飛びしてスイッチへと手を伸ばすフォーゼ…しかし、またもや不運が彼を襲った。なんと筋グゴンのあるく衝撃でスイッチが排水溝のなかへとポトリと落ちてしまったのだ。
「のおおおおお!!!最近忘れてたけど、やっぱり俺って不幸だあ!!」
排水溝の隙間に指を入れてスイッチを取ろうとするフォーゼだが、その姿は周りから見るとあまりにも滑稽だった。当然とれるわけもないのだが、それでも無謀なチャレンジを続けるフォーゼに筋グゴンの金棒が迫る。
「死ね!死ね!死ね!」
「上やん!」
もう避けるのは間に合わない。シンケンブルーの悲痛な叫びがこだまするなか、金棒がフォーゼに向けて振り下ろされた。
「うお、不幸だああ!」
「グオオオオオオオオ…」
迫る金棒を避けることもできずに悲鳴を上げるフォーゼ。だが、筋グゴンは突如として雄叫びを止め、同時に金棒は力なくフォーゼのすぐ横を通って地面に振り下ろされた。驚くフォーゼが見ると、筋グゴンの背後にメガロッドが突き刺さり、倒れていたシンケンブルーの横にメガブラックの姿があった。どうやらメガブラックの投擲したメガロッドが偶然にも筋肉の隙間を通って突き刺さり筋グゴンに致命傷を与えたようだ。さらにふらついて金棒をおとした筋グゴンの腹にフォーゼの蹴りがクリーンヒットし、背後へと吹き飛ばす。
「一気に畳み掛けるぞ!」
[Rocket Drill Limit Break]
「おっしゃ!バトルライザー!」
「おお、龍ディスクセット!」
倒れた筋グゴンを倒すために3人は一気に必殺技の体制に入る。3人が息を合わせて同時に飛び上がると同時に筋グゴンは立ち上がるとメガロッドを背中から抜きとりドラミングをするように胸を叩くと両腕を大きく広げて三人を威嚇するかのように吠えた。それまでは傀儡のように精気のない目をしていた筋グゴンだが、今は先程とは明らかに違い炎のような輝きを宿している。ひょっとするとその叫びは最後の彼の維持だったのかもしれない。
「おおおおおおおおおおおおお!!!」
「ライダーロケットドリルキィック!」
「01モード!ライザーパンチ!!」
「水流の舞!」
3つの必殺技が筋グゴンのボディに突き刺さるが、それでも鋼鉄のボディをもつ筋グゴンはそれを耐えている。しかし、背中に受けたメガロッドの傷から血が吹き出して、やがて片膝をついた。それと同時に3人は技の出力を上げ、ついに鋼鉄のボディに3つの技が突き刺さる。筋グゴンは数秒間悶えた後、最後はわずかに微笑して爆発四散した。
「…」
後ろでハイタッチをするシンケンブルーとメガブラックを余所にフォーゼだけは天に舞い上がる爆煙をただ黙ってみつめていた。
「どうしたんぜよ、上やん?」
「いや、あいつ最後に笑ってたような気がして…あ!アポロスイッチ!」
筋グゴンの笑みに何かを感じとり、感傷に浸っていたフォーゼだったが、排水溝に落ちたスイッチのことを思い出してすぐにそれを探し始めた。程なくして泥だらけスイッチを排水溝から発見したフォーゼはウォーターモジュールで丹念に汚れを落として、エアロモジュールで乾燥させていく。こんな姿をサジタリウスゾディアーツノヴァが見たらブチ切れてアポストロスを連射してフォーゼは蜂の巣となっているだろう。新品のスイッチがこんなに早く汚れ物になろうとは…
「それにしても…あの猿みたいなやつ…なんであんなすがすがしい顔してたんだろ」
スイッチをようやく元通りピカピカにした後、再び筋グゴンの亡骸からあがる噴煙を見つめるフォーゼ。なぜ彼は最後にあんな笑みを見せたのか?フォーゼ=上条当麻には彼の表情の意味がよくわからなかった。
「…」
なぜかその意味を必死に考えてしまっている自分に戸惑うフォーゼ。しかし、神は彼に戸惑う時間を与えてはくれなかった。突如として2体の巨大怪人が出現し、学園都市のビル群を破壊し始めたのだ。
「ま、マズイで!ギャラメガもデルタメガもまだ出られへんで!」
「いや、シンケンオーならいける。あの戦いには出てないからな!」
「よし!やってやる…か?」
折神を取り出して臨戦態勢をとり直すシンケンブルーとメガブラック。それに続こうとするフォーゼだが、あることに気づき、動きを止める。
「どしたんや、上やん?」
「…悪い、2人で行ってくれ」
「え、おい上やん!何処行くんや!?」
メガブラックの静止を振り切り、フォーゼは何処かへ駆けて行ってしまった。巨大怪人が暴れている中追うわけにもいかず、呆然とする2人。だが、怪人たち暴れている。一刻も早くいかねば。
「…と、とりあえずいきましょか…土御門くん」
「ああ…まあ2人でも3人でも一緒かな…折神大変化…」
漠然としないまま2人は巨大怪人との戦いへと向かっていった。
同じころ、学園都市某所で御坂たちはゴーカイジャーへと変身、幽魔獣たちを次々に撃破していた。しかし最後の2体であるツチノコのト稀ヅと河童のギエム郎をゴーカイガレオンバスターで倒したところを黒い鳥か虫のような化け物によって巨大化復活されてしまったのだ。
「やっぱり巨大化しちゃうんですね…」
ゴーカイガレオンバスターを携えたゴーカイイエローが2体の巨大化怪人を半ば呆然と見上げている。普段なら声高らかにロボを呼ぶかウルトラマンたちがきてくれるのだが、ロボ軍団は先述の通り修復作業の真っ只中であり、メビウスとコスモスもフューチャー戦でのパワーアップの余波なのかエネルギーが思うように貯まらず変身不能状態であり戦闘はできない。
「しかたないわ…リュウジさん!スターファイブを!」
ゴーカイレッド=御坂がメモリーディスプレイに叫ぶと応答からしばらくして学園都市上空に銀色の宇宙船が出現した。ゴーカイジャー状態の5人はコクピットに乗り込むと2体の巨大化怪人へと向かっていく。
「初春さん、いけそう?」
「ええ…操縦系統はジェットガルーダに似てますけど…所々古いんで…」
ゴーカイピンク=初春が困惑するのも無理はない。もともとスターキャリアは宇宙空間での長距離航行や強化パーツへの分解を目的としたマシンで個体としての戦闘能力はあくまでも身を守るためのものでしかない。星川達ファイブマンはこのロボで幾多もの怪人と戦っているが、その戦績は操縦技術に支えられたものが大きく戦闘能力は高いとは言えないのだ。
「まあ何とかなりますよ。ねえ、初春」
「佐天さんの自信はどこからでるんですか?…御坂さん、変形コマンドは『変形スターラウンド』です!」
「了解!行くわよ、変形!スターラウンド!」
ゴーカイレッドのコールとともにスターキャリアが変形していく。やがて真っ赤なボディの胸に黄色いVの字が刻まれたスーパーロボット『スターファイブ』が完成、2つの足を別々のビルにのせる形で着地して2体の怪獣を見下ろした。
「…って、早速こんなところに着地しちゃったじゃん、初春!」
「いや、操作マニュアルに『最初はビルの上に立て』って」
「それにしても、こんな大きなロボが乗っても壊れないビルって一体何ですので?」
「そんな事言ってないで、いくわよ!」
巨大化怪人たちに向けて2丁のレーザー銃『スターガン』を構えるスターファイブ。遅れてシンケンオーも到着し、壮絶な巨大戦の火蓋が切っておろされた。
「…確かこのあたりだったんだが…見間違えかな」
一方、フォーゼは先ほどの場所からそう離れていない路地裏にいた。
「いや…やっぱりあれは先輩だったはずだ」
なぜ彼がこんなところに来たのか…それはシンケンブルーが折神をだす直前、外がこんな状況だというのに一人の女性が路地裏へと入っていくところを目撃し、それが知り合いの雲川芹亜ではないかと感じたフォーゼは彼女の後を追ってこの路地裏へとやってきたのだ。
「…くっそ、みつからないな」
諦めて自分も巨大戦に向かおうとするフォーゼ。だがそこで彼は異様な気配を感じとった。暗闇の中からこちらに向けて殺意と銃口を向けられていることに気づいたのはさすが上条当麻といったところだろうか。
「誰だ!姿をみせろ!」
薄暗い路地裏に響く叫び声にしばらくの間は返答がなかった。しかし、しばらくして女性の笑い声が辺りに響き渡る。直後に明らかに人間とは違う姿をもった怪人がフォーゼの前に現れた。
「さすがは700万の賞金首…あのころのタイムレンジャーと同じくらいは実力があるみたいね」
赤く大きな目と体を覆う葉のようなもの特徴的な女性型の怪人は特殊なレーザーガンを右手で弄びながら妖艶な笑い声を挙げながらフォーゼを睨めるように見つめる。その姿にフォーゼは瞬時にファイティングポーズをとって臨戦態勢をとる。
「お願いだから早く倒されてくれないかしら…あんたは2000万超えのレジェンド共を狩る前の前座に過ぎないんだから」
「レジェンド?健太先生たちのことか!?」
「ふふ、伊達健太にも興味はあるけど…私が一番撃ち落としたいのはこの世界に唯一いるあの男…今は未来戦隊なんて名乗ってる奴らの一人…ふふふふふふ」
笑みとともに右手のレーザーガンの銃口が光り輝く。同時にフォーゼは体をひねってレーザーを避けた。常人ならばできぬ動きだが、フォーゼ=上条当麻だからこそその動きが出来たと言えよう。次々に撃ちだされるレーザーを避け続けるフォーゼ。それを撃ち殺さんとする女性怪人。上手をいったのは女性怪人のほうだった。
「そんなところにいると、危ないわよ」
「なに!?」
彼女の警告からほとんど間もなく、フォーゼの頭上から鉄鋼や瓦礫が降りかかる。レーザーを乱射していたのは周囲の建物を壊して落下させるためだったのだ。レーザーをよけた直後の隙を狙われ、フォーゼには瓦礫を避けきることはまずできない。
「うおおおお!?」
女性怪人の思惑通り、大量のがれきがフォーゼを押しつぶすようにのしかかり、フォーゼの姿は完全にきえてしまった。その姿に女性怪人は満足げに笑う。
「ふふふ…ウォーミングアップにもならなかったわね」
「それはどうかしらスナイパー・レイホウさん」
「!?」
突如として響く声に女性怪人スナイパー・レイホウは狼狽しながら周囲を見渡した。すると予想外なものを発見する。それは瓦礫の山の横でうずくまるフォーゼの姿だった。フォーゼはあの時瓦礫の山の中に沈んだはず…それが何故と考えるレイホウの目の前に1つの影が出現する。それは声の主と思わしきピンク色のスーツを着た戦士だった。
「お前は…タイムレンジャー!?」
「代理のね、あなたたち再脱獄犯の逮捕をオリジナルから委託したものよ」
戦士の名はタイムレンジャーの一人・タイムピンク。先ほどのフォーゼも彼女がアクセルストップを使用して助けていたのだ。
「なるほど…再脱獄したロンダーズファミリーを次々に捕まえていたのはあんただったわけね…」
「まあね、なかなか骨がおれたけど」
「(…けど?)」
立ち上がったフォーゼはタイムピンクの放った言葉に既視感に近いものを感じ、目の前にたつタイムピンクを凝視する。タイムピンク、いやタイムレンジャーといえば上条もタイムレッドの力を誰かから借りており、それが元でレギオンレオゾディアーツとの戦いでの窮地を避ける事ができた。ということは彼女が上条に貸し与えたということになる。
「まさか…」
彼女の正体についてレギオンレオゾディアーツ戦後、上条はあれこれ考察したことがあった。戦隊の能力を他の人間に貸すにはある程度の接触が必要である。あの戦いの直前に上条と接触した人間は駿河秋や土御門元春を除くと一人だけ、そして今の口調、そもそもなぜ彼がこの路地裏へとやってきたのか…それらの理由を総合するとタイムピンクの正体が見えてくる。
「…先輩なのか?」
「もうすこし早く気づいてくれてもいいはずだけど…やっぱりあなたは鈍感なのね」
フォーゼの問をタイムピンクは肯定するように答える。フォーゼが先輩と呼ぶ人物、そうタイムピンクの正体は上条の高校の先輩『雲川芹亜』だったのだ。
「教えてくれればいいのに」
「教えたおもしろみがないでしょ」
「誰がタイムピンクかは関係ない。ヒーロー一人狩れば700万。あんたとそこの坊やで1400万。まさに飛んで火に入る夏の虫よ」
スナイパー・レイホウは再び2人にレーザーガンを向けた。臨戦態勢をとり直すフォーゼだが、タイムピンクはそんな彼に小声で耳打ちする。
「ここは私が引き受けてあげるから、あなたには1つやってほしいことがあるの」
「え?」
「窓のないビルの近くに強力な敵が現れる。ソイツとちょっと戦ってきてほしいのよ」
「でも、なんで…」
「いいから、私だって人の姉。不肖の妹をすこしは思っているんだけど」
タイムピンクの言っていることの真意がフォーゼにはすこしわからなかったが、この先輩のいうことに間違えがあるとは思えない。フォーゼは2人に背を向けるとすぐさま窓のないビルへと向かい、それを阻止せんとするレイホウの前にタイムピンクが立ちふさがった。
「ちっ、まあいいわ。あんたを殺して確実に700万をいただくとしますか」
「あなたにはそんなことできないけど…まあ相手してあげるわ」
レイホウのレーザーガンに対してタイムピンクはダブルベクターを構え臨戦態勢をとる。それからまもなく路地裏に甲高い音が響いた。
それからしばらくたち、マッシグラーを駆るフォーゼは窓のないビルの近くへとたどり着いた。
「先輩…窓のないビルの近くに強敵がでるなんて言ってたけど…いったいどこにいるんだ、そんな強敵?」
巨大怪人の出現に街中は当然の如く人気は殆ど無く、周囲は4体の巨人の戦闘音が響くのみで生活音や車の走る音もない。少しまえまでは街中パニックだったというのに住民たちも慣れたものだ。こんな状態の街を歩くものなど上条たちを除けばそれこそ雲川以外には…
「ん?」
…いた。フォーゼの視線の先に黒い髪を縦ロールにした若い女子学生が人気のない道を窓のないビルに向って走って行く。ただ不思議なのはその学生の格好だ。蛍光カラーのコルセット、ミニスカート、足にはホルスターとおもちゃの銃のようなもの、ウサギの形の名札のついたメイド服…見るからに胡散臭いなんちゃってメイドという感じ格好をみたフォーゼはしばらくの間思考停止状態へと陥る。あんな格好でなどこの非常時は愚か、普段だって歩きたくないという女性は多いはずだ。
「あれが…妹?いや、そんな馬鹿な」
雲川とはイメージがまるで合わないが非常時にこんなところを走っているのは危ないと感じたフォーゼはマッシグラーを発進させて彼女を追った。しかししばらくして彼女はバイクの入れない路地に入ってしまい、しかたなくフォーゼはマッシグラーを停車して徒歩で再び彼女を追跡する。彼女は女性にしてはかなりの俊足でようやく開けた空き地のようなところでフォーゼは彼女に追いついた。
「…」
「…」
空き地にいたのは彼女だけではなかった。彼女の向かい側にはもう一人、お団子ヘアの少女が顔をうつむかせ気味のまま立っている。まるで彼女の道を塞ぐようにたつ少女の表情をみたフォーゼは戦慄した。瞳孔は開き、目は焦点があっておらず、半開きの口からはよだれを垂らしているが、その表情は笑みを浮かべており、首からかけた大量の壊れた携帯端末がぶつかり合ってカチャカチャと音をたてている。
「おい!大丈夫か!?」
正義感から少女のもとへと駆け寄るフォーゼだが、少女の取り出したものを見てその足は止まった。それは『D』の文字が刻まれたガイアメモリ。
「ふふ、ふふ、ふふふふふ…」
[Dummy]
「君…それは!」
電子音とともにメモリを差し込んだ少女の体は凹凸のないつるつるとした感じの怪人『ダミードーパント』へと変身した。その姿を見たフォーゼは距離を取り直して臨戦態勢を取って、先ほどのメイド服の学生を守るように前にたつ。しかしメイド服の学生はフォーゼを押しのけるようにしてその前へと立った。
「おい!危ないぞ、逃げろ!」
「…あなたが上条?なるほど確かに正義感の熱血ロケット男って感じね」
フォーゼを一瞥したメイド服の学生はホルスターから銃を取ると、さらに懐から電池のようなものを取り出す。
「そいつは…まさか!?」
それらを見て、漸くフォーゼは思い出した。あの銃を使って戦う戦士のことを…かつてストラウスとの戦いで途中参戦してフォーゼたちを助けた戦士のことを…
「ブレイブ、イン!」
[ガブリンチョ!ドリケラ!]
「行くわよ、キョウリュウチェンジ!」
専用銃『ガブリボルバー』に5番目の獣電池『ドリケラ』を装填したメイド服の学生はシリンダー部を回転させる。するとガブリボルバーからサンバのようなメロディーが流れ、それに乗って彼女は突然ダンスを始めた。
「ファイヤー!!」
ダンスが終わるとともにガブリボルバーを天に掲げ、トリガーを引くと同時にピンク色のトリケラトプスのオーラが発射され、彼女のもとへと振りかかる。オーラはスーツとマスクに変換されて彼女に装着、ピンクカラーの戦隊戦士へと変身した。
「角の勇者!キョウリュウピンク!」
「やっぱり、あの時の…」
「お久しぶりですわね、ご主人さま」
悪ふざけっぽくフォーゼに挨拶するキョウリュウピンク。しかし彼女はすぐさまダミードーパントへと向き直り、ガブリボルバーを構える。
「なかなかプライドを傷つけてくれそうな相手だけど…いま、私忙しのでそこを通してもらえますか?」
文面こそやさしいがすこしばかりドスの聞いた恐喝がダミードーパントへと向けられる。一方、銃口を向けられているダミードーパントはきみのわるい笑いを続けながら2人を見つめ、そしてこうつぶやいた…
「…そ、ウだよねエとうまおにイちゃん…上條…冬馬…いやかめんらいだー4-ぜならそうするよね…」
「お、おれの名前を知ってるのか?」
一瞬、記憶喪失前の自分の知り合いなのかと焦るフォーゼだが、その焦りはすぐさまふきとぶ。なぜならダミードーパントは体を変質させていき、白いボディとロケットのような形のマスクを持つ…そう、仮面ライダーフォーゼと同じ姿へと変身したのだから…。
「へ、変身した…フォーゼと同じ姿に…」
「ダミー…偽装や替え玉。いろんな姿に化けられるみたいね」
ダミードーパントが変身したダミーフォーゼはいつものフォーゼのように頭を一度なでて右腕の握りこぶしを2人へと向ける。そしてあのセリフを言い放った。さっきほどよりも流暢に、本物と同じように…
「仮面ライダーフォーゼ!お前の幻想を殺させてもらうぜ!」
「ロケット頭さん。私とても急いでいるので、協力してくれません?」
「ああ…俺もあいつは倒さないといけないようだからな…仮面ライダーフォーゼ!こっちこそお前の幻想を殺させてもらうぜ!」
「私も荒れるわよ。止めてみな!!」
決め台詞が交錯しあう中、激しい戦いの火蓋がここでもきられた。
なぜ、こんな戦いが起こってしまったのか…このきっかけをつくりだしたブラジラの狙いとはなんだったのか…その答えの終着点が窓のないビルの屋上にあった。
「ふふふ、素晴らしい。みんなが諦めていく…ふふふ」
「相変わらずだな…木原病理。吐き気がするほどに…邪悪だ」
壊れゆく街を眺める車いすに座った女性に声をかけたのは先ほどのフルフェイスヘルメットの男だった。
「…戻ってきたんですか、この街に」
「ああ…決着をつけるためにな…お前との!」
男はフルフェイスを脱ぎ捨て、横へと投げ捨てる。そのマスクの下にあったのは整った顔をした男性だった。しかしその顔は怒り一色に染まっており、鋭い眼光を木原病理へと向けている。
「ふふふ…それだけの覚悟なら私がこの力を持っているということはわかっているんですよね」
[UMA]
木原病理は懐からあのガイアメモリ取り出して体へと挿入する。すると彼女の体は変質し、体はビッグフットのように巨大化、頭はリトルグレイと言われるような大きなものとなり、左腕には鞭にヒレのついたような気味の悪い生物のような形へ、そして右腕は鋭利なキバをもつチュパカブラとよばれるUMAの口のような形となり、長い尾を携えた怪人『ユーマドーパント』へと変身した。
「…お前らしい醜悪な姿だ」
「褒め言葉と受け取っておきますよ。さあ、見せてください…あなたの力を。木原加群」
木原加群とよばれたフルフェイスの男はその言葉に対して答えるかのように懐からバックルのようなものを取り出し、目の前へと突き出した。バックラーの中央にはメダルのようなものがはめられており、そのメダルにはもみじのようなマークが刻印されており、その周囲にはこう書かれていた…『ZYURANGER』と…
「…ダイノ…バックラー」
その言葉とともにバックラーが上下に開き、激しい光を放った。そして光が収まるとともに緑色のスーツを身にまとい金色のアーマーを装着した戦士が出現していた。
「復讐の戦士…ドラゴンレンジャー、ベルシ…」
2本の剣を携えたドラゴンレンジャーとユーマドーパント…この戦いの命運をわける戦いがいま始まろうとしていた。