バカとオレと彼女たちR   作:いくや

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 ムッツリーニ最強説。

 では、どうぞ♪




第36問

 

「おかえりなのじゃ」

 教室(中華喫茶)に帰ると、店長代理をしていた秀吉が迎えてくれた。

 

「まだ客足は遠のいている状態か…」

 がらんどうとしている教室。んーすぐには成果が出ないよね。

 

「………でも、姫路や島田があの恰好で宣伝に ー 」

「ムッツリーニよ。それ以上口に出すとお主の命の危険があるのじゃ」

 ここはどのような地域なのだ…でもあながち間違ってはいないか。鼻血で出血多量…店内でされたらたまったものじゃないな。土屋個人の心配は……秀吉に任せておこう。あれは高等技術が必要だ。まだオレには早い。

 

「あーそれと土屋、さっきから何をしているのだ」

 布と針と糸を使って何かを作っているのはわかる。裁縫をしているのだろうが…何で?

 

「葉月の衣装です! これを着て葉月も手伝うです!」

 お手伝いか~それはいいけど、今のこの教室じゃあ何もすることがないね。

 

「おーっす…まだ客は戻ってないか…」

「ただいま~なんか寂しい中華喫茶だね」

 坂本と吉井が帰ってきた。

 

「おかえり。常夏はどうした」

「取り逃がした」

「召喚大会があったからね~それも不戦勝になってしまったけど」

「………出来た」

 常夏のことは後で作戦をもう一度考えないといけないとして、土屋のほうの突っ込みを先にさせてもらおう。

 

「一応聞こう。ムッツリーニ何を作っていたんだ」

「………チャイナドレス」

「葉月の出来たです~お兄ちゃんすごいです。ありがとうです!!」

「え、葉月ちゃんのチャイナドレス?」

「何でも手伝いをしたいようじゃ」

 すまないな、こんなお客さんがあまり見えないのに…と坂本と吉井と息が通じ合ったような気がした。

 

「って、葉月ちゃん!? 何でここで着替えているの!?」

「ムッツリーニ、しっかりするのじゃ!!」

「葉月ちゃん、更衣室はあっちだからそこで着替えてきてくれる?」

「なんでですか~? 早く着たいです」

「ちびっこ、この教室が血の海になる前に、そして人が1人犠牲になる前に頼む」

 小学生に対して何という言葉の選び…間違ってないよ、間違っていないけども…

 

「はーいわかったです」

 おとなしく従ってくれてよかった。土屋の救助は秀吉と吉井の手によって行われた。これを『ムッツリーニ救助隊』と呼ぶとしよう。

 

「………これ、1枚300円」

 チャイナを作り終わって、出血多量で死ぬ間際から復活した…これだと因果関係が変わるな。とりあえずいいか。土屋がカメラを取り出し、商売を始めた。初めて商売の風景を見るな。どんな写真を売っているんだ。

 

「これってさっきのメイド喫茶の!」

「よく撮れたな岡田のあの警戒から」

「………プロをなめるな」

 お前ら、オレが目の前にいるとわかっていてその発言か。

 

「勇樹よ…諦めるのじゃ。ワシらにこれを止めるすべはないのじゃ」

「もはや犯罪に手を染めている気がしないでもないが」

「需要と供給が成り立っておるのじゃよこの学園内では。じゃから、誰であってもムッツリーニの盗撮を阻むことは出来ぬ。そのようなことをすれば自分の首を絞めるようじゃからの」

 どれだけ勢力範囲広いんだよ。盗撮されている人も、他の写真が欲しいためにそれを言えないって…誰も不幸せになっていないこのシステムがすごすぎる。それだけ土屋のカメラワークってのは信頼されているのか。

 

「………岡田もどうだ」

「オレを巻き込むな ー ってお前!!」

「………いい写真」

 そうやって見せてきたのは何とメイドの優子が写っている姿だった。恥じらいを隠せず顔を赤らめたまま接客をしている優子の姿がそこにはあった。

 

「お前…この写真誰かに見せたのか」

「………まだ。岡田が最初」

「土屋、ただの購入ではない取引をしよう」

「………話だけは聞こう」

「500円でデータごと譲れ。お前の手元に残すこと許さん」

 こんなものが出回っていると知れば発狂するかもしれない。それに加えて私的制裁を加え始め被害者が多発する可能性も否定できない。そうなる前にみんなの安全を守らないと。

 

「………安い。木下はいい被写体」

「因みにそれ以外にも何枚ある」

「………メイドだけで3枚」

「だけで、っていうと他にも以前から撮っていたのか」

 姉上にこの事実が知れたらどうなるかわからぬのうと遠い目しながら秀吉がつぶやいていたのはよく聞こえてきた。そう思っているならどうにかしてくれよ。

 

「………だが、あまりいいショットがないから売り物になりそうなのは他に2枚」

「5枚か…」

「………全てのデータごと譲るのならば5000円」

 法外な金額だな…こいつぼったくり商会か何かなのか。高校生にはとてもじゃないけど結構な大金だぞ。こんなんで儲けているからあんなに高価そうなカメラを持っているんだな。

 

「秀吉、1000円負担してくれ。頼む」

「お主は…何も言うまい。わかったのじゃ」

「土屋、お前の言う通り5000円だ。文句ないか」

 オレが4000円を取り出し、秀吉の1000円とも合わせて5000円を土屋に突き出すと、驚いた表情をしてこう答えた。

 

「………まさか本当にだすとは」

「なんだ。高い値段を言って引き下がらせるつもりだったのか」

「………ああ。わかった。お前の熱意を買った。2000円でいい。1000円は秀吉に返し2000円は岡田に返す」

「今後一切、優子の写真を撮るな」

「………それは出来かねる。そこにいい被写体がいる限り撮り続けるのが俺の役目」

 カッコいいこと言っているんだけど…内容が内容だけに…まあ仕方ないか、として終わらせたいけど…

 

「じゃあこうしよう。優子の写真を撮ってしまったらオレに見せろ」

「勇樹よ、ムッツリーニの術中にハマっておるぞ」

「………お得意様ありがとう」

「これじゃ明久と同じじゃ…誰もムッツリーニには勝てぬの」

 仕方ないだろ。これが一番平和な解決法だと思うから。

 

「ときに勇樹よ。姉上たちのクラスはメイド喫茶のようじゃったが、もしや姉上も - 」

「秀吉、お前のためを思って言う。それに言及するのはやめとけ」

「わかったのじゃ。その処分はお主にすべてを任せるのじゃ」

 怒らせたときの怖さは秀吉が最も知っているので、オレが何を言いたいかわかったらしい。

 

「………5枚のデータだ。俺の中からは全て消した」

 そういってデータをオレに渡してきた。いつの間に現像したのかデータと共に写真も5枚手渡ししてきた。

 

「土屋が裏社会を牛耳っているのが身に染みて分かった」

「………人聞きの悪い」

「これで僕たちの仲間入りだね!」

「まさかそこまで木下姉と仲がいいとはな」

 何かやつらが言っているけれど無視を決め込もう。そして大事にこの写真を保管しておかなければ。土屋の言う通り、売りに出せるレベルのショットなのは確か。土屋は将来大物になるのか? 楽しみという感情以上に恐ろしいといった感情が先に来てしまう。

 

「坂本、岡田。写真はいいが、どうもお客さんが増えてきたみたいだ。こちらに向かって歩いてきている人が結構いるぞ」

 突然話に入ってきたのは須川だった。本人も今休憩が終わって教室に帰ってきたばっかりだから、廊下の状況を伝えてくれたのだろう。

 

「姫路と島田の効果がそろそろ出てきたのか」

「召喚大会にチャイナでいたな。お前の差し金か」

「いい宣伝だろ」

「よくやった」

 どうやら坂本も同じ考えを持っていたようだ。さて、ここからはオレらの仕事ですね。

 

「明久、俺らも少し手伝うか」

「そうだね! ちょっと時間に余裕があるし」

 個人的には常夏対策とかのほうに専念してもらってもいいかなとは思うけど、坂本が自ら手伝うと言ってくれたんだ。わざわざ断ることもなかろう。

 

「いらっしゃいませ~」

 須川の言う通り、客足が戻ってきた。結構一気に訪れたため忙しくなった。

 

「いらっしゃいませ~です!」

『おお、こんなちびっこもチャイナ着てるぞ』

『あの子たちもよかったが、こっちの子もいいなあ』

 着替え終わった葉月ちゃんも助っ人で手伝ってくれる。葉月ちゃん大人気。おっさんの目によって汚されるのは忍びないが…それ以上に葉月ちゃんの純粋無垢な力があることを信じるしかないか。

 

「先の賑わい並にお客様がいらっしゃったの」

「オレら店員もフル稼働だな」

「うむ。そろそろ島田と姫路も帰ってくるころじゃろう。さらに忙しくなるぞい」

「だな。よっしゃオレらも頑張らないといけないな」

 その後、チャイナを着た島田や姫路が帰ってくるとさらに中華喫茶は盛り上がりを見せた。

 

 





 ちなみに勇樹は預かった写真をポケットの中にしまい込みました。

 私が高校生の頃って5000円とか非常に大金という感覚でしたね。大学に行き始めると授業料が年間60万円弱? お金の感覚がわからなくなってくる……高校生くらいの金銭感覚が一番平和だと思うな。

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