ちょっと長め。
では、どうぞ♪
頭の中でストーリーを描いてそれを反芻してうなずく。
危険な賭けだが…やるしかない。今まで吉井や坂本・土屋とは別行動をとり続けていたからこそできると思うんだ。
3人が話術によって時間稼ぎをしてくれていたが、それも限界だ。吉井が何回も暴発しかかっている。というか暴発している。今まで人質が傷つけられていないのはおそらく先輩に残る良心のかけらだろう。悪役に徹しきれていない、ということか。
秀吉や久保が去ってから3分くらい経っただろうか。オレは体育館のもう一つの入口、対角線にある入口のほうに近づく。同じところからでもよかったが、違うところから入ることによって何か動揺させられたらな。
『悪鬼羅刹、最後通牒だ。こいつらに傷つけられたくなかったら明日の召喚大会に負けろ』
『ふん…脅し方がまるで雑魚だな』
『そもそも誘拐までしている先輩方の言うことなんて信用できないですからね』
『そうか。それならば今から実力行使をするしかないな。俺らもこういうことするのは良心が許さないんだが』
『………良心があるやつはこんなことをしない』
『黙ってろ、じゃあ俺はこの女の子から行こうか』
『手を出すな!!』
とうとうどうしようもないところまでやってきたみたいだ。もうこれ以上突入を遅らせるわけにはいかない。何を怖がっているんだ。あいつらは果敢に突入したではないか。バカの一つ覚えみたいに突っ込んだって何も変わりゃしねえってのは言い訳に過ぎないだろう。自分が行動起こせないことに対する合理化。いつまで逃げ続けているんだ。そうやって中の様子をうかがった時だった。やつらの手が優子に襲い掛かっているのが見えた。冷静でいられるフリはもう限界だ。
『な~んか面白そうなことやってんな~』
体と口が動いていた。さあ、オレの本能よ。台本通りにいや台本以上のことをしてくれよな。
『だ、誰だお前は!』
『岡田! いつまで待たせる気だ!!』
『遅すぎる。限界だよもう!!』
『なんだ、こいつらの仲間か…』
『この娘たちがどうなってもいいのか!?』
脅しをかけてきているらしいが今のオレには無効だ。なぜかといえば。
「何を言っているんだ。オレも混ぜてくれよ」
『なにっ?』
「簡単に言うと、オレはあんたたちの味方だってこと」
脅しは味方には聞かないだろう?
『お、おまっ!? 何を言っているんだ岡田!?』
『あんな屑たちの味方をするっていうの!?』
『………どうしてそんなことを!』
誘拐犯と優子たちを挟んで反対側から猛烈に聞こえてくる坂本たちの声。すまないな、もう少しでお前らを楽にできるからな。
「いわゆる、敵の敵は味方ってやつだよ。オレはあいつらの敵。つまりあんたらの味方ってわけ」
『なるほどな。お前にもいろいろと事情がありそうだな』
『俺らはあいつらには個人的恨みはないから、手を出すには忍びなかったがお前は使えそうだな』
「わかっていただいてなによりだ。犯罪に手を染めるのが怖いのならばオレに任せてくれよ」
今までにないくらいの悪人顔して優子たちに近づいているのだろう。あんなに気が強かった面々が涙目となってこちらに嘆願をしてきていた。ごめん、こんな感じになって…オレは……。
『坂本、お前らが信頼していたはずの仲間がこちらについたぞ』
『もう降参しな。今ここで明日負けるといえばいいだけだからな』
『その代わり、保険のために召喚大会が終わるまではこの女子たちは俺たちが預かっておくがな』
『ゲス…なんてゲスなんだ』
「ははっ。いいねえその顔、お前らのその苦悶に満ちた顔が最高だよ」
既に誘拐犯の目の前、優子たちの目の前に来ていた。みんなの顔を見ると怒りに満ちた目と本当に何もしないよねという目と助けてという目と……。そんな目を見てしまうと…動揺してしまう。
「さてと…じゃあ早速だがいただいていいのかな」
『見せつけてやれあいつらに』
『後悔させてやるんだ』
「そうだな」
誘拐犯の一つの輪を抜け、固められた人質の目の前に来た。誘拐犯はオレの動向を確認するために全員がこちらに目を向けた。そして、そいつらが求めているようなことをしていく。
「怖いだろう。あいつらのせいだと思え」
左手で半ば強引に優子の顎を持ち、顔を近づける。口元はガムテープでふさがれているからキスは出来ない。だから首元をなめるような感じで持っていく。
(ごめんな。みんな。もう少しの辛抱だから我慢してくれ)
フリだけをして誘拐犯には聞こえないように、人質にしか聞こえないように耳元でそう言った。その意味がまだ全員分からないのか、恐怖に満ちた表情を浮かべていた。
その様子を見た誘拐犯は、少し満足したのか、坂本たちのほうを見てこういった。
『ざまあみろ。お前らの意地っ張りのせいで大切な子たちが汚されていくぞ』
『俺たちも手を汚さないっていうのはよかったな』
「誰だっ!!」
オレは突然大声を張り上げ、注目をわざとこちらに引き寄せる。さて、“演技”も終盤にかかってきたぞ。最後までバレないように…
『どうした』
「オレの後ろを誰かついてきたみたいだ。あそこのドアから人影が見えたぞ」
『何っ。おい、ちょっと3人見てきてくれ』
10人だった監視の目が一時的だが7人に減った。3人は恐る恐るこちらから離れ体育館の入口のほうに近づく。この距離なら全力で帰ってきても間に合う。戦える。
「坂本おっ!!」
『なんだよ』
「どうしてオレがこういうことしているのかわからないようだな」
『お前がとっている行動に意味なんざ考えたくねえよ』
そう言った瞬間、坂本はオレが言った言葉に意味を見出したのか、一瞬で吉井と土屋と連携をとって、一呼吸ののち、こちらのほうに襲い掛かってきた。
『くたばれええええっ!!』
『限界なんだよおおっ!!』
『………抹殺』
どうやらわかってくれたようだ。オレが単身相手方についたふりをして、内部から切り崩していくという。これほどの演技をするのには覚悟がいった。そしてそこまではうまく成功した。最後は、守るだけだ。
『こちらには人質がいるんだぞ!』
『正気か!?』
『おい、お前も手伝 ー 』
坂本のほうに全員が目を向け、一瞬だけオレの監視の目が空白になった。その少しの気のゆるみが今のオレにはありがたい。背後から近づき振り向いてオレを参戦させようとしたやつをぼこる。
『なっ!?』
『まさかこいつ!?』
『てめえ俺たちを騙してやがったか!!』
仲間が殴られたことでようやく気付いた他の連中は、真っ先にオレめがけて殴り掛かってきた。金属バットで殴り掛かってきたやつ、カッター振りかざして襲ってきたやつ、キレさせるとまずい奴らだったかなと一瞬思ってしまったが、それはもう後の祭りだ。
『しねえええっ!!』
『こいつは許しておけん!!』
5人で一斉に襲い掛かってきた。1人はオレがぼこった時のダメージが大きかったのかまだ伏していた。残りの1人は人質を再確保するために、手っ取り早くそいつから最も近くにいた優子を掴もうとした。
「させるかっ!!」
伸ばしてきた手を右手一本でひねりあげ、そして振り下ろされてきたカッターを左手で振り払い、バットは左足で食い止め、殴打と蹴りは体で受け止めた。
ひねりあげた手はそのまま相手をひっくり返らせ、カッターはあらぬ方向に飛んでいき、バットはオレの左足を一撃で使い物にならなくした。そして軸足だった右足に飛んできた蹴りもダメージを受け、みぞおちと顎を同時に狙われたオレは立っていることすらままならなかった。
「ごはあっ……」
思わず、優子たちの集団に後ろから倒れてしまった。立ち上がらなけらばみんなの身が危ないと思い立ち上がろうとするも、急所を狙われていたために体が動かなかった。もうこれまでかと諦めかかったころに聞こえてきたのは野太い声だった。
『お主らは何をしているんだっ!!』
声の主はオレがやってきたほうの体育館の入口から入ってきた。この声の主は西村先生なのか、どうやって駆けつけてきたんだ…おかしい。こんなことがあっているって知らなかったはず。
『鉄人!?』
『まじか!』
『さすがにかなわないぞ!!』
様子を見に行っていた3人は、オレの反乱を見たときにすぐに取って引き返し始めていたが、距離が距離だけにまだ戦闘には参加できていなかった。その上、背後から聞こえてきた西村先生の声。戦意喪失したのは当然だろう。
『よそ見してもらっちゃ困るな!!』
『僕たちの怒りを食らうんだ!!』
『………死ね』
西村先生の声に動揺しなかった3人(正義は自分にあるというのがこの3人の信念にあったから、怯む必要もなかったのだろう)は、先ほどの声に一瞬怯んで攻撃の手が緩んだ誘拐犯を一瞬で3人吹き飛ばした。
『そこ、逃げるなあっ!!』
再び聞こえてきた西村先生の声。先ほどの人影は人を引き付けるためのウソだったんだが、あれは本当に西村先生がやってきていたのか。この学園に西村先生の怒鳴り声を聞いて止まらない人間はいない。誘拐犯は再び動きが止まった。その隙を狙ってか坂本たち3人はさっき吹き飛ばせなかった3人を一息で殴り飛ばした。そのついでに突っ伏していた1人を蹴飛ばし人質から距離を取らせた。
「ナイスだ岡田。まさかあそこまで捨て身で行くとは」
「一瞬でも疑ったのは許してね」
「………あとは鉄人をどうするか」
わずか2発ずつで誘拐犯をノックアウトしてきた3人は、口々に倒れこんでいたオレへ向かって言い放った。
「おぬしら、よくやったのじゃ」
西村先生がいたほうの入口からこのようなことをいいながら姿をあらわしたのは秀吉だった。
「「「秀吉っ!?」」」
「まさかさっきの声は秀吉が」
「そうじゃ」
事実を暴露し、さっきの声はハッタリだったのかといまだ生き残っている誘拐犯は騙されたといいながら、秀吉のもとへ殴り掛かりに行った。やばい。秀吉は戦闘力がなかったはず。
「ただ殴られるわけにはいかぬぞい」
あんなに機敏な動きが出来たのかとびっくりするくらい、3人の攻撃を避け、オレらのもとへ合流した。そのころ、ダメージが回復したのかぶっ倒していた7人は立ち上がり、先ほどの3人と合流し、10人でこちらに襲い掛かってきた。先ほど以上に頭を使ったのか、一点から攻めるわけではなく、包囲する形で迫ってきた。
「岡田はそのまま休んでろ! 明久、ムッツリーニ!」
「了解!」
「………承知した」
ほんのちょっとの間でこの3人も陣形を整えた。いまだ動けない人質+オレを囲み守るように位置取り、相手の包囲網に備えた。秀吉は自分が戦闘に参加できないことをわかっているのか、坂本が何も言わなくても何をすべきか分かったように背後からサポートする感じに態勢を整えた。
『人数では勝っているんだ!!』
『ゴリ押しするぞ!!』
『てめえらなんか雑魚に俺が負けるとでも思っているのか!!』
『指一本触れさせるものか』
オレらの2mくらい離れたところに坂本たちは円を作り、反撃に備えていた。人数差からして反撃に備えていたという表現にしたが、どうも攻勢なのはこちらのほう。こいつら喧嘩つええ。
『貴様らは何をやっているんだっ!』
聞きなれた声が聞こえてきた。またしても西村先生の声!? 思わず秀吉のほうを見てしまったが、こんな近距離にいるのだから言葉を発していないのはわかる。声の方向はさっき秀吉がやってきたほうの入口ではなく、最初に坂本たちが突入したほうからだ。
「本物の西村先生じゃな」
秀吉の一言で、思わず全員が戦闘をやめ声の方向を見た。確かにあの体つきは西村先生だ。
『これはやばい、逃げるぞ!!』
『おうっ!』
逃げ足とその決断だけは早かった。西村先生がやってきたほうでない入口へ走っていき、外に出た。
『逃げるなお前ら!!』
誘拐犯を追っかけようとしたものの、こちらの救出を優先と考えたのか体育館に残されたオレらのほうにやってきた。
「大丈夫かお前たち」
「鉄人、どうしてここに」
「僕から説明したほうがいいかな」
「久保くん!?」
鉄人こと西村先生の後ろからやってきたのは、秀吉と同じように仕事を頼んでいたはずの久保利光だった。
「岡田くん、先に言っておこう。君が頼んだことは既に解決している。手ぶらで帰るのもいかがなものかと思ったから西村先生にご同行を願おうと思った次第」
「そ、そうか…」
「詳しくは聞いていないが、お前らが襲われていると聞いたのでな。にわかには信じられなかったが、久保が言ってきたとなるとウソではないと思って駆けつけたのだ」
日ごろの行いってとても大事だね。他の人だったら笑止に付すところだっただろう。
「まず、解放してやらねばな。ところで、岡田はどうして木下に寄りかかっているのだ」
「へ……え……?」
指摘されるまでまったく気づいていなかったが、倒れた拍子に優子に寄りかかっていたらしい。
「ご、ごめん優子!」
だからさっき倒れこんだ時に衝撃がそこまでなかったのか。優子をクッション代わりにしてしまったとか…怒られるで済むかな。そう思いながら立ち上がろうとするも、足に激痛が走り再び優子に寄りかかってしまった。
「ちょ、ちょっと待ってね優子…」
早くどいてほしいといった目をされた。それはわかっている。わかっているんだけど…
「あ、あははは……」
立ち上がれない。あれ、これシャレにならない怪我だったんじゃない。
「勇樹、お主怪我しているんじゃなかろう」
「………怪我していないほうが不思議」
「耐性がついていない人があんな攻撃食らったら…」
「鉄人、岡田を運んでやってくれ」
殴られるのに耐性って…普段どんな生活を送っているんだ吉井は。
「怪我しているのならば先に言え。すぐに保健室に行くぞ」
「保健室はいいですから、まずこの縛られているみんなを解放してやってください」
「坂本、俺は岡田を保健室へ運ぶから、お前は解放してやってくれ」
「わかった」
だから保健室はいいから、この子達のガムテープを早く解いてあげて。
「そしてそのあと、全員で保健室に来い。話を聞く」
「…わかった。学園長を保健室に呼んでおいてくれ」
「学園長…?」
「ああ。全てわかるはずだ」
そういうと坂本は土屋に目配せをして、さっきオレが振り払ったカッターナイフを取りに行かせた。
「いいだろう。お前らも怪我しているのなら俺が運ぶが」
「「「「いえ、結構です」」」」
「そうか。それならそこの霧島たち全員を救出した後、責任もって保健室に連れてこい」
「「「「わかりました」」」」
恐ろしいほどのシンクロ率だな。とか感じていたら、突然体が持ち上げられ、いつの間にか西村先生の肩に担がれていた。
「おおおっっええっっ!? こんな恰好で運ぶんですか!?」
「けが人は黙ってろ!」
「いやいやいや、ちょっとこれ恥ずかしいですって」
「保健室に行くぞ」
有無を言わさず西村先生はオレを肩に担いだまま体育館を去った。
この流れは結構前から決めてました。
書いてみたはいいけれど、何か見覚えのあるシーンになってしまったなあと…
気づいた人は多分同じファミ通文庫から発売されているあのラノベを見ているかアニメを見たかでしょう。そう、ココロコネクトのワンシーンです。
完全にパクったわけではなく、自分なりのシーンも加えているつもりです。というかそっちのほうが多いはず。
んーアクションシーンというかなんというか…
あまり書きたくないものですねえ。心がさみしくなるというかむなしくなるというか。平和なシーンがいいなあ。
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