バカとオレと彼女たちR   作:いくや

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 病室でのこと。

 では、どうぞ♪




第43問

 

「は、なんて?」

 思わず医者の診断にタメ語で聞き返してしまった。

 

「しばらくは入院です」

 もう一度聞いたが、オレの耳に異常はなかった。にゅういん? そんな馬鹿な。

 

「車いす生活がいっとき続きますね」

「そんなにひどかったのか…」

「ええ。明日の学園祭は残念ながら ー 」

「そこを何とか!! 車いすでもいいので」

「我慢しなさい。安静にしておかないと」

 どうして医者じゃなくて優子が答えるんだよ。

 

「諦めなさい。西村先生・曲直瀬先生、彼の保護者への連絡は ー 」

「既に連絡は取ってあります。父親は仕事ですぐには来ることが出来ない距離にいるみたいですが、20時ごろにはこちらに着くということでした」

「母親は連絡つかなかったです。留守電には入れましたが」

「あーおかあ……母は仕事中は一切携帯に出られないくらい忙しいですからね。それも夕方の4時間くらいですが」

 大体16時から4時間は連絡がつかないんだよねいつも。

 

「そこで私からまた説明します」

「ありがとうございます。彼はどのくらいで学校に行けるようになりますかね」

「早くて2週間はかかるでしょう」

「わかりました」

 にしゅうかん……なんという長さでしょう。

 

「では、私たちは学校のほうに戻りますので、お願いします」

「わかりました。利光はどうするんだい」

「僕も一度学校に帰るよ」

 あ、この担当してくださった医者が久保の父だったんか。どうりで似ているわけだ。

 

「木下さんは ー 弟君にでも荷物を届けるように伝えておくね」

「ありがとう」

 優子がそう伝えると西村先生・曲直瀬先生・久保の3人は病室から去っていった。

 

「では、岡田くん絶対安静にしておいてくださいね。また20時頃になったら伺いますので」

「わかりました」

「彼女さん、しっかりついてあげててください」

「はい、ありがとうございます」

 この『彼女』っていう言葉に深い意味はないのだろうか…?

 

 そんなことを考えていたら病室に二人きりになった。他の病人怪我人? ここは個室だ。

 

 壁に掛けられたアナログ時計の針の音がカチッカチッと響き渡る。ベッドに付き添うように椅子に座っている優子を見てみると下を向いていた。何を思っているのか…とんと見当もつかぬ。

 

 刻一刻と時は過ぎていく。時計をずっと見つめているのもあれなんで(どれなんだろう)慣れない病室の観察をすることにしよう。

 白い壁、遮光カーテン、狭い廊下、そこに申し訳程度にある椅子、水回りの場があるであろう場所、そして10時間1000円で専用のカードを購入することで見れるテレビ、ベッド……と優子。どうして何もしゃべってくれないんだろう。オレがしゃべりだすのを待っているのか…う~む、空気が重い。

 

「2週間かあ…」

 ようやく絞り出した言葉がこれである。もうちょっとマシな言葉はなかったのであろうか。

 

「……そうね」

 再び沈黙の時が流れる。何から話していいものやら。

 

「予想はついていたとはいえ、なんだかなあ…」

「命に別条がなくてよかった」

「ポジティブに考えればそうだが」

 ここまでの大怪我だと気が滅入るよな。今まで病院にお世話になったことなんてほとんどなかったのに。

 

「ごめんなさい」

 再び沈黙の流れかと思いきや、ふと優子が紡ぎ出した言葉の意味が最初わからなかった。

 

「アタシが ー アタシたちが誘拐されなかったら怪我することもなかっただろうに」

「何言ってんだ…あいつらのせいで怪我しただけだ。優子たちは関係ねえよ」

「でも ー 」

「たまには ー 」

 感情的になってきた優子の言葉を遮って、両手で優子の肩を押さえながら言葉を紡ぎ出す。

 

「たまにはさ、オレにだってかっこいいところ見せさせろよ」

「……なにそれ」

「いっつもいっつも、優子はオレのヒーローだった。秀吉のあの時だってお前がいなけりゃオレは行動すらできなかっただろう。他にもあるさ ー 」

「そこはヒロインっていうところじゃないのかしら」

 そんなのはどっちでもいい。

 

「とにかく、だ。オレだってやれば出来るだろ?」

 なーにかっこつけてんだか。本当は怖がって出て行くのが遅れたくせに。

 

「っ……遅いのよ。アタシたちがどれだけ不安だったのか分かってんの?」

 涙を流しながら語る優子。その姿を見て、頭で考えずともオレがすべきことは体が分かっていた。優子を抱き寄せ、耳元でささやいた。

 

「ごめん。怖かったな。遅くなってごめん」

 次の瞬間、優子が号泣した。あの強気で勝気な優子が、人前でここまで大泣きをすることがあっただろうか。泣くな、なんて言わない。言えないだろ。オレには黙って抱きしめるしか出来ることはなかった。

 

 

   ☆

 

 

「おーい優子~」

 しばらくして泣き止んだかと思ったら、規則正しく『すーすー』と聞こえるので何事かと顔を覗き込んでみると、寝ていた。オレに抱き付いたまま寝ていた。呼びかけるも返答なし。よくもこんな体勢で寝れるものだ。気を張っていたから相当疲れていたんだろうなあ。

 

「んーどうしよう」

 お互いが妙な体勢なんだよなあ。オレも脚は固定されて動けないし…

 

 オレの体に手を回して寄りかかっている優子をそのまま腕の力だけで抱えあげベッドに運んだ。その足を使えないって相当ツライな。他に負担がかかりすぎる。そしてこの後どうしよう。そのまま寄りかかる体勢で楽な姿勢が出来るんじゃないか。うん。大丈夫だなこれで。

 

 

 

   ☆

 

 

「…あ、あれ?アタシいつの間にか寝て ー って何よこの状況!?」

「姉上、起きたかの」

「秀吉!? いつからそこに?」

「つい先ほどじゃが、病室に入るなりこの状況じゃったから声をかけづらくての」

 ベッドに勇樹と姉上が重なって寝ていたら声をかけることも出来ぬじゃろう。

 

「……ん? あれ、オレもいつの間にか寝て……優子、どうした顔真っ赤にして」

「な、な、なんで…アンタのべべベッドでアタシが ー 」

「いろいろあってだな」

「勇樹よ、語弊が生まれるぞい。姉上が処理を出来ぬようになっておる」

 顔を真っ赤にして口をパクパクして焦っている姿もまた、いつも見られない優子の姿。眼福眼福。

 

「勇樹、早めに姉上をどかすべきじゃな」

「どういう意味だ」

「正気に返った時に一発顔面にもらうぞい」

「なるほど。秀吉、椅子に座らせるのを手伝ってくれ」

 優子は本能的に右手を顔面に食らわせるだろう。そうなったら誰も得をしない。危険性を避けるために先にこちらが手を打たないと。

 

「ってなにやってるのよ!!」

「何もやってねえよ」

 椅子に座らせた後にタイミングよく正気に戻った優子は、オレを殴らずにただ、言葉で攻撃を開始してくる。

 

「何であんな体勢になっていたのよ!!」

「優子が寝たから」

「覚えてない…アタシ泣いて ー 」

「無理して思い出さなくていい。やましいことは何もやってないから安心しろ」

 ここまでは考えてなかったな。精神状態が普通に戻ったのはよかったけれど新たな火種が生まれたような。

 

「……それで、秀吉はどうしてここに?」

「久保に頼まれて姉上と勇樹の荷物を持ってきたのじゃ」

 そんなこと言ってたなそういえば……オレの荷物はそこらへんに置いていてくれ。オレの望んでいることが視線でわかったのか、椅子に荷物を置いてくれた。

 

「いつの間にこんな時間になってるのよ」

 携帯を取り出し時間を確認した優子が驚く。

 

「オレの携帯取ってくれ」

 ズボンの中にいれていたはずだが、多分病院の先生が取り出したのだろう。テレビ台のところにおいてあった。その場所を指さすと優子がとってオレに渡してくれた。時間を確認してみる。

 

「もうすぐ20時よ」

「結構寝てたみたいだな」

 かれこれ2時間近くは。

 

「そろそろ勇樹のご両親が来るわね。それならばアタシたちはお暇しないと」

「もう帰るのか」

「なに、さみしい?」

「お、おま、何を!」

 さみしくないと言ったらウソになるけれど、その言い方はないぜ。次の言葉を発しようとした時、優子が頬に口づけをした。

 

「これでさみしくないでしょ」

「っ…それもズルいぜ…」

 顔が真っ赤になっていくのがわかった。優子も恥ずかしかったのか同じように真っ赤になってる。

 

「アツアツじゃのう。2人ともワシがおるの忘れてはおらぬじゃろうの…」

「ひ、秀吉。帰るわよ」

「もうイチャイチャタイムはよいのかの」

 秀吉の言葉に対し優子は無言の圧力を加えていた。あー後でお仕置き確定だな秀吉。

 

「ありがとうな優子、秀吉」

「じっとしておきなさいよ。先生のいうことを聞いて」

「お母さんかよ…」

「言っておかないとすぐに出歩くでしょ」

 言われても出歩くかもしれませんが。

 

「また来るわ」

「楽しみだ」

「お大事に」

 2人はそういうと病室から出て行った。と同時に入れ替わりに先生が入ってきた。

 

「初々しいね」

「どこから見てたんですか」

「何の話かな」

「もういいです」

 わかったような口ぶりをして…

 

「そろそろご両親がみえるころだね」

「ええ。退屈です」

「話が噛み合ってないよ。そんなにベッドの上は退屈かい。でもダメ」

「わかっています。すぐにでも治しますよ」

 医者の見込みより早く退院してやる。部屋に閉じ込められていたら憂鬱になって仕方がないからな。

 

 その後、親が来て先生からいろいろ説明してもらった。怪我の原因をオレから話すと母親はバカじゃないのかとか泣きながら言っていたが、父親は無言で見守っていた。オレの覚悟が伝わったことだろう。

 

 その両親も帰った後、1人取り残された部屋でボーっとしていた。暇だ。優子のキスを思い出したりしてしまう。恥ずかしくなる。そういう時は寝よう。と思っても今日の出来事が頭の中をよぎって寝れねえ。いつかは寝れるだろう。いろんなことがあったなあ。

 

 

 

 

 

 

 

 





 8.24.10:50に編集しました。増やしました。

 2000字足らずの文章じゃ足りないと思ったので、付け足しました。

 私は怪我で入院は経験がない(病気ならある)ので全く想像はつかなかったですが…そういうところはあまり突っ込まない方向でお願いしますね。

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