バカとオレと彼女たちR   作:いくや

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 気づいたら5,000文字近くなっていた。
 いつもの分量2倍です。

 しかも一騎打ち一戦のみ。
 ちゃんと描けてるかなあ。

 では、どうぞ♪




第8問

 

 優子とオレが『試獣召喚(サモン)』と同時に唱えると、2人に中央に魔法陣のようなものが出てきて、しばらくして召喚獣が現れた。

 優子の前には西洋騎士風のランスを持った召喚獣が出現し、オレはというと……

 

 『素手?』

 『あの軽装はなんなの?』

 とてもしょぼい…いやしょぼいという言葉で表現できているかどうかはわからないが、明らかに雑魚。七分袖に七分ズボンを身につけた(それだけである)召喚獣。手には何も持っていない。申し訳程度に腰には短い刀が差してあった。

 

 「……岡田君。あれだけな見栄を張っておいてソレ?」

 明らかにオレの召喚獣を見ながら言ったな。侮辱するな。

 

 『ねえ雄二』

 『何もいうな明久…』

 という後ろから聞こえてくる悲壮感漂わせた声が心に来る。お前ら見た目で判断するなよ。確かに攻撃も守備もできなさそうだけど機敏な動きは出来そうだろ。

 

 

 A木下優子vsF岡田勇樹

   108      23

 

 

 召喚獣の点数が現れた。

 

 リスニングだけ点数の出され方が特殊なんだよね。特殊と言っても、基準が他の教科に比べて1/4になっているだけである。要するに腕輪は他の教科では400点以上でないと使えないが、リスニングにおいては100点がそれと同等の意味をもつ。つまりだ。逆に考えるとリスニングで100点超えている優子の召喚獣は特殊能力の腕輪が使えるってことだ。

 

 腕輪持ちをいきなりに相手にするのか…特殊能力は何なのだろうか。5倍の戦力差とか想像以上だったけれども、戦わねば。

 

 「さてと。いっちょやりますかね」

 弱みを見せたらだめだ。ハッタリでもいいから、何か秘策がある節を見せておかないと。

 

 「強がり? まあいいわ。さっさと終わらせてあげる」

 そういうと同時に召喚獣の腕輪が光る。腕輪を早速使いやがったのか。どのような効果かわからないから召喚獣が消えないギリギリの場所まで逃げる。様子見だ。

 

 「っ? どこ!?」

 腕輪が光っている一瞬の間に死角を利用して、優子の視界に入らないところに逃げ込む。軽装備なのはこういう時に役立つよなあ。っとと…集中集中。

 

 『もう終わったの?』

 『バカかお前は。対戦相手ですら見失っているということは攻撃されてねえってことだろうが』

 『そうだよね。…それならば腕輪の効果ってなんだったんだろう?』

 

 後ろから吉井と坂本の会話が聞こえてきた。確かにそれが気になるんだよな。それがわからない限りむやみに近づけねえし、近づかれたくもねえ。なんたって軽装備だぞ? 脇差(小太刀)をガードに使っても、相手はランスなのだからほぼ無意味なんだよ。たぶん。いやリーチ的に。それとパワー的に。

 

 「どこに隠れているわけ!? 堂々と勝負しなさいよ!!」

 と面と向かってオレに言われた。そんなに難しいところに隠れてねえぞ? ただ優子からは見えない位置にいるだけで。きょろきょろしている一瞬の隙に狙いたいのはやまやまなんだが…特殊能力がこえーよな。初見の相手にそのようなバカげた行動はとらない。

 

 「何を言っているんだ。腕輪の能力を明かさないほうが堂々としていないんじゃないか?」

 完全な詭弁。だが、優子は乗ってくる。自信がある。正々堂々と正面から勝利をおさめないと気が済まないタイプだから、いくら本人が気にしなくてもこう言われたら乗ってくるんじゃないかと。

 

 「そこまで言うのなら言おうじゃないの! アタシの召喚獣の腕輪の能力は『毒槍(ポイズンコート)』よ。この状態で攻撃を食らったら、1分間にアタシの点数の1/10ずつあなたの点数が減るわ。もちろんその間も通常攻撃が可能だから気を付けるのね」

 チートかよ。1/10ということは、10.8点 ー 四捨五入と考えても11点ずつ減るということは、攻撃を食らったらそのダメージが1でも、今のオレの点数だと2分後には死ぬということになるんだな。恐ろしい。

 

 「ほら姿を現しなさい」

 腕輪の能力が分かったからと言って勝算があるのかと言われたらない。しかし、もう時間を引き延ばして焦らすのもキツイ。そろそろ本気で逃げ回らないと。おいおい戦うんじゃなくて逃げ回るのかよ。

 

 「それならばオレからも1ついいことを教えてあげるよ」

 「なによ」

 「この召喚獣が手ぶらなのには理由があるってこと」

 そういいながら、優子の死角から姿を現す。まだリーチの届く範囲でないが、いつ攻撃されるかわからないのでかわすことは忘れないようにしないと。

 

 「手ぶらな理由? 腰の武器が使えないからでしょ?」

 「いいや違うね」

 「じゃあなによ……もういいわ。実際に見せて教えてもらうわ!!」

 言葉の勢いが上がるとともに召喚獣が動き出した。そして一気にランスの攻撃範囲内にまで入ってくると、一歩思いきり踏み出し、ランスを繰り出した。

 ランスという武器はその見た目上、突くことが本来の使われ方のように思われがちだが、実は叩く・薙ぎ払うという方がメインだったりする。そのため、ランスが突いてきたところをかわして懐に潜り込むってのは相当自分に自信がないとやらないほうがいい。ランスの餌食にあうだけだ。

 

 だからまず、優子のランスの使い方の癖を見極めるべく、全力で逃げ回った。攻撃範囲内に入り攻撃のアクションを起こす段階で逃げた。ダサい?そんなのどうでもいい。弱い戦力が強い戦力相手に正攻法で勝てるとかいう幻想はやめろ。

 え? テスト教科を選ぶ時と言っていることが矛盾しているだと? 分かってないな。テストの点数は自分のプライドがかかっているが、その後の試召戦争は戦争だ。いかなる手を駆使してでも勝たねばならない。この違いわかるか。いや本人にもわからねえよ。

 

 「うろちょろと逃げ回りすぎなのよ!!」

 「あんな腕輪の能力を聞いた後に正面切って戦えるかよ!」

 武器ないし。正直なんでこんな能力値に設定したのか学園長を問いただしてみてえわ。また雑草魂がどうのこうのみたいなことを言われそうだから勘弁しておくが。

 

 「こまごまとっ!!」

 「疲れてきてんじゃねえの? そんな重いもの振り回すからさ」

 むやみやたらに逃げ回ってるのではなく、出来るだけ相手に体力を使わせながら、そして自分の体力を温存しながら逃げているんだ。ガキの頃、足が速い奴相手によく鬼ごっことかしていた成果がこんなところで出るとはな。あー言っておくが、鬼ごっこってのは足が速いほうが有利だが勝てるとは限らねえよ。追い方・逃げ方ってのがあるからな。

 

 「相変わらずっ……逃げ足だけは速いわねっ!」

 「だけとか言うな」

 かけっこは苦手だったが、鬼ごっこは得意だったからな。悪さばっかりして逃げ回ってたとかそんなんじゃねえぞ? ちゃんと鬼役の時も速い奴相手に互角だったからな。

 

 「いい加減にっ! 諦めなさい!!」

 「余裕がなくなってきたな。どんどん大振りになってきているぞ」

 挑発しているが、実のところ逃げているこちらも余裕がない。そんなもの最初からない。危ない橋を最初からわたっているんだ。綱渡り状態。

 

 『ねえ雄二。普通、こんなに細々操作できたっけ?』

 『いいや…明久ほど精密な動きではないが、どう見ても素人の動きには見えねえ』

 『だよね。手馴れているように見えるんだ』

 『しかしよくもまああのプレッシャーの中、かわし続けている』

 『ミスが出てもおかしくないのじゃがのう』

 『………軽装じゃなかったら攻撃当たってる』

 『今回はそれがよかったってわけね!』

 『すごいです岡田くん』

 

 何か後ろから聞こえるなあ。応援してくれてんのか何なのかは知らんが、内容を聞き取れる余裕なんぞねえよ。久しぶりに何か必死にやっているなあ。楽しい。

 

 「ふうっ………」

 ラッシュが途切れた。優子が攻撃の手を緩めたのだ。その瞬間に攻撃できればいいんだが、あいにく同じくらいこちらにも限界が来ている。

 

 「どうした。もうギブアップか。スタミナ切れか」

 「それはこっちのセリフよ。あなたこそ大丈夫なわけ」

 「ははっ…お互い大丈夫そうじゃねえな」

 「これで終わりにしましょう」

 これ以上長引かせるのは不可能。足がついてこなくなってきている。いつランスがあたってもおかしくない。となると、相手が最高の一発を繰り出してくるその瞬間しかもう残されていない。

 

  カウンター

 

 弱者が強者に勝つための常套手段。相手の力を利用する。そうでもしないとパワー不足のこの召喚獣はあの重装備を破れねえ。

 

 「もうおしまいよっ!!」

 「いっけえええっっ!!」

 これ以上ないのではないかというランスの突くスピード。その突っ込んでくるスピードを逆に使い、重装備の隙間を小太刀を抜きながら突進する。

 

 それは一瞬のうちだった。

 あまりにも一瞬であったために、どちらがとどめを刺したのかは見えなかった。だが、オレは確実に仕留めた感覚があった。

 

 「ウソ……」

 優子のつぶやきが聞こえてきた。あちらには手ごたえがなかったのか。どうやらオレのか ー 。その時、召喚獣の頭に光る点数が見えた。2つとも光っているだと!? まだ、どちらも死んでいない、のか。

 

 A木下優子vsF岡田勇樹

   17      9

 

 「間一髪ね…」

 「くそっ!!」

 「こちらの攻撃も当たっているようね」

 「あの一撃で死なねえのかよ」

 乾坤一擲のカウンター。とどめを刺せなかった。今からとどめを刺そうにももう体力が残っていない。オレの軽装召喚獣は腕から血を流し、膝をついていた。どうやらほんの数ミリかすっていただけだったようだが…まさか致命傷になるとは。

 

 「まさかここまでアタシも追い詰められるとはね」

 優子が勝ち台詞を放つと、それに呼応してかオレの召喚獣は毒が全身に回り点数が0になって消滅した。

 

 『勝者、Aクラス木下優子!』

 高橋先生の名乗りが聞こえてきた。終わったのか……負けたんだなあ。

 

 「いつでも勝負受けて立つわ」

 そう言って歓声の上がるAクラスの集団のほうへと帰っていった優子。勝者の余裕ってか。悔しい。悔しい。悔しい悔しい悔しい!! ちくしょう。またあいつには勝てねえのかよ。

 

 「お疲れ様なのじゃ」

 片膝をついてうなだれていたオレのもとに秀吉がやってきた。

 

 「同情はよせよ。またしても優子にコテンパンにやられてしまったな」

 「姉上と互角に戦えるだけでも立派じゃ。負けたとはいえワシらは感動したぞい」

 何を言っている。負け続けだぞオレの人生。何度負けりゃいいんだよ。

 

 「お主は最後うなだれておったから姉上の顔を見てはおらんじゃろうが」

 「ああ」

 「姉上のあのような顔は久しぶりじゃったわい」

 オレに立つように促しながら秀吉はこう言った。立ってFクラスの集団に戻りながら、秀吉の話の続きを聞く。

 

 「どんな顔だったんだ」

 「何とも嬉しそうな顔じゃった」

 「そりゃそうだろ。勝ったんだから」

 「そのような顔ではない」

 嬉しそうな顔なんだろ。勝った嬉しさじゃないのか?

 

 「充実感に満ち溢れていた顔じゃった。久しぶりに再会したライバルと戦えた喜びというのかの」

 「なんだそれ…」

 「落ち込むでない。お主は何度も何度も姉上に負けながらも立ち上がってきたではないか」

 七転び八起き。それがオレの人生なのか。ただ実際問題。転び続けたら諦めたくはなる。

 

 「それに、お主は負け犬の名をつけられたままでよいのかの」

 「ふざけるな。そんなの許せるか」

 「そうじゃその意気じゃ」

 しまった。のせられた。秀吉はこういう心情をくみ取るのが上手なんだから…

 

 「もっと堂々とせい。お主の戦いはワシらに希望を与えておる」

 「はあ?」

 顔を上げると、目の前に広がる光景は笑顔拍手笑顔拍手。全然気づかなかった。

 

 「自分を誇りに思っていいんじゃぞ」

 「秀吉…」

 「岡田、お疲れ様。いや、まあなんだ。想像以上のものをみせてくれた」

 「………負けられない」

 「後は休んでていいよ」

 Fクラスの集団に帰ってくるともみくちゃにされた。サヨナラホームランの気分を味わっている感じだ。負けたのに何かおかしいな。まあいいか。次だ次。

 万年2位だかなんだか知らないが…負け犬としてそれが評価されるのは嫌だ。最高の補佐役とかいう意味「永遠の二番手」とかいや違うな。 ー 例えば伊達政宗における片倉小十郎とか、上杉景勝における直江兼続とか ー でつかわれるのならそれはありがたい。とにかく必ず見返してやる。今日はとりあえず休もう。疲れた。

 

 





 負けるシーンとか前作で描いたことあったっけな?

 優子の腕輪の能力ってどこにも出てきてないよね。オリジナルで考えてみた。
 派手さには欠けるけども、使い勝手はいいんじゃないかな。

 リスニングが1/4なのはセンター準拠。
 いやはやセンター試験とか懐かしい。リメイク前の小説書いてた頃は確か高校2年とかだから全く気にもしてなかったが…もう1年半経っちゃった。時が経つのは早いですねえ。未だにリスニングだけ全国平均以下だったのは悔やまれます。

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