今回は割とシナリオ通り進んだかな?というのが率直な感想です。
ではどうぞ。
コツリ、コツリ、コツリ…
暗くて気味の悪い通風口に、乾いた足音が響く。
出来ることなら今すぐ逃げ出したいが、既に私の体は私の思い通りには動かなくなっている。
この後にさせられることも分かった上で、犠牲が少ない事を心から祈りながら。
コツリ、コツリ、コツリ
暗い通風口で歩みを進める。
サラに無線で連絡してきたのは、今では一年に数回会う程度になってしまった、MSF隊員養成学校の第1期生時代の友人だった。
が、普段と違ってその口調は焦りを帯びていた。
「サラ総隊長、MSF隊員養成学校が、突然現れた正体不明の魔獣によって学校を中心として半径2キロの円で包囲されたわ。しかも包囲網はどんどん狭まっていってる。早く対処しないと生徒達が…」
サラはその当たりまでしか冷静に聞き取ることは出来なかった。なぜなら…
「MSF隊員養成学校!?そこってちょうど今日ロキが編入したところじゃない!」
ロキに危害が及ぶことを考えてしまったからである。
同時に、普段の心の壁を表していた丁寧な口調はどこかへと消え去った。
他の人の事など二の次にして、ロキの事を考えてしまっている自分に気づいたサラは、自らを恥じた。
任務に私情を挟むなど、MSF隊員としてもっての外、ましてや総隊長がしていいことではないからである。
そして同時に、疑問が湧いてきた。
私は「あの」一件以来、周りの人に非情だ、冷酷だ、と言われるほどの冷静さを保ち続けていたではないか。
それが何故だ、何をこんなにも焦っているのだ?
“たかが”1人の民間人の事ではないか。
しかもあちらは七聖剣の使い手だ。
自分では勝てなかったオズリーにも手負いの状態で勝ってみせたほどの実力者ではないか。
何を心配することがある?
そこでサラは気づいた。
否、元から気づいていたのに目をそらしていたのかもしれない。
ロキが“あんな”風になる事をサラが恐れているということを。
「総隊長、サラ総隊長!?」
その時サラは、はっと我に帰った。
「とにかく出動を要請します。第1分隊以外の隊は既に連絡がついて、こちらに急行しています。既に数隊が到着していますので、急いでください。」
「了解。」
そう言って無線での通信を終わり、サラは第1分隊の隊員達を率いて、対策本部へと向かうのであった。
対策本部についたのは、サラたち第1分隊が最後だった。
その到着を皮切りに、作戦会議が開かれる。
それを仕切るのは総隊長でもあるサラだ。
「あれから包囲網の半径はどのくらい縮まったの?え!?今は散らばってて特定の包囲網はないどころか、学校に既に突撃しようとしてる個体もチラホラ出てきてる!?今考えられてる案は?校内の生徒、及び教師と包囲網の内外から挟み撃ち!?却下!!多少訓練されてる程度の一般人と訓練途中の生徒達にそんなことはさせられない!」
と、そこで女の情報官が、
「総隊長、上空を飛来する魔獣が確認されました。」
と報告する。
「何!?MSF空戦部隊の最大出撃可能人数は?150人!?全っ然足りない!戦闘機は?100機!!今のところ地上を進軍する予定で戦闘機の操縦、もしくは空戦が出来る者の人数は?80人!!空戦最大人員は合計で230人!!敵数は?約500体!!?なんて分の悪い!え!?飛翔するヤツ抜きで!?飛んでるのは何体いるの?約200!?ほんとにどうするの!?」
といった風に口調はもはや相当ぞんざいに、けれどもそれとは裏腹に、的確に状況を把握していく。
「避難は済んでるのよね?じゃあ空の事は
そして数刻待って手を挙げる者がいないのを確認してから、
「無いようなのでこのまま私が指揮するわ。そうしたら、まず私の極大凍結魔法でヤツらを氷漬けにしようと思うの。それが一番手っ取り早くて威力があるから。ただ、その術の準備をしている約十分の間私は動けない。だから足止めと時間稼ぎをお願いしたいのだけれど…」
「ならば我らが第2分隊がその役を引き受けましょうぞ。」と名乗り出たのは第2分隊長、市民出身で努力を重ねて登り詰め、「泥竜の繰り手」の二つ名を持つグラウンである。
隣で「御意。」と同意を示したのは、その実の弟で、第2分隊の名物兄弟のもう1人、「岩獣の駆り手」という二つ名の第2分隊副隊長のグロウンである。
サラはMSF最強の魔術師だと言われている。
実際、最強の名に恥じない強さである。
しかし、このグラウン、グロウド兄弟は二人で連携することによってサラに匹敵するほどの力を発揮する。
別段普通以上に目立って優れた部分はあまり目立たない。
しかし、彼ら二人に限って言えば、1+1の答えは2ではなく、3よりも大きな数字のうちの何か、なのである。
それが4なのか、はたまた10なのかは分からない。
ただハッキリしていることは、彼らが二人で連携すれば常人では太刀打ちできないほどの強さになるという事だけである。
しかし、流石の彼らにも不可能は存在する。
わずか40人程度の第2分隊を率いて500体の魔獣を足止めすることはその不可能なことの中に含まれている。
それを見越してサラは、10ある分隊のうちの5隊の指揮を彼らに委ねることとした。
これで足止めが出来るといいが…
当のグラウンは、「10分持たせれば良いのだな?」という確認だけして5隊を率いてグラウンは泥で出来た竜に、グロウドは岩で出来た猛虎のような獣に乗って進軍していった。
グラウン、グロウドの二人が率いる、第2、第7、第8、第9、第10分隊が「キメラ」と名付けられた魔獣の侵攻している地区に入ると、空を覆う飛翔型のキメラのせいで陽光が遮られて暗くなった。
第2分隊ツートップの兄弟が攻め入り、キメラを殴り、裂き、砕くと、周りのキメラたちがこっちを向いて、動きが止まった。
グラウンが
グラウンは泥竜を崩す直前に空高くジャンプしており、上からキメラを見下ろして、泥の波がすべてのキメラを巻き込んだタイミングで「
MSF隊員養成学校を中心として敷地の境界線に張られた半球状の障壁のおかげで、MSF隊員養成学校に泥の被害は及んでいない。
さらにそのタイミングでグロウドは「
それらは硬い地盤にあたって砕け、更にグラウンによって固められ、地盤の一部となる。
グロウドが降らせ、グラウンが固める。
キメラの動きは完全に止まったかに見えた。
一体のキメラが、自らのタコのような足が傷つくのも構わずに厚い地盤から足を引き抜く。
その時に生じたひび割れを利用して地盤を砕き、全身を抜く。
それを見ていた他の個体も体を地盤から抜き、脱出する。
「クソっ!破られたか!」
「立腹」と、腹立たしそうな口振りではあるが、強敵と戦う楽しさが表情には現れている。
次の策を試そうと、グラウンが割とながい術式の詠唱を始めた時だった。
「極大魔術、準備完了です。指定の安全圏へ離脱してください。」
というサラの指示が通信回線から聞こえる。
「チッ!もう撤退か。」
「残念」と、2人は名残惜しそうにしながらも撤退指示を出し、兼ねて指示されていた安全圏へと離脱するのであった。
To be continued…
はい。今話は、サラを含めたMSF隊員回になっています。次回にはいよいよロキとサラが合流する(予定)です。楽しみにしていてください。
そして思ったのです。
サラ、出番少なくね?と。
ロキと別行動してるからなのは分かりますがもう少し出番を増やしてもいいかな?と思います。
それでは、see you next time…