遅くなってすいません。
リアルが忙しいっていうありふれた言い訳をしてみます。
では、どうぞ。
桜の花びらがひらひらと眼前を舞う。
時期的には今がまさに最盛期。つまり満開である。
今日、文月学園に入学し二度目の春を迎えた。そんな自分を祝福してくれるかのように咲き誇る桜の木。そんな桜の咲く道で。
そこで俺は―――――幼馴染の少女に鎖で引き摺られていた。
随分と画期的な登校の仕方があったもんだ。思わず自嘲気味に笑ってしまう。
不幸中の幸い、というべきか始業式まで時間的に余裕があるため奇異の視線に晒されることは無い。
だが―――――
「なぜ、こんな状況の隣を平然と歩いていられるんだ雄二」
「慣れた」
コイツは許せん。そう、俺―――霜月 祭(しもつき まつり)は、幼馴染の少女―――霧島 翔子(きりしま しょうこ)と、坂本 雄二 (さかもと ゆうじ)と共に登校している。二人とは小中高と同じ学校に通っていて極めて良好な関係…なはずだ。きっと…多分、おそらく……め、めいびー。現状を見ると不安しか残らないのだが。
「…そもそも、祭が爆睡しているのが悪い。昨日、一緒に登校すると連絡したはず」
「いや、こんな早くだとは思わないだろ」
「俺には時間もちゃんと伝えられたが?」
「…祭りにもしっかり伝えたはず」
「マジでかッ」
よくよく思い出してみれば、そこはかとなくそんな記憶がある。
だがしかし。しかしだ。
「それでも、だ。朝から鎖で引き摺られる必要は無いと思うんだが、そこのところはどう思うよ?」
「…躾はしっかりしないと」
「だ、そうだ」
「いや、躾って何だよ!?とりあえず俺の扱いについて小一時間ほど議論したいんだが」
「却下に決まってんだろ?」
「…着いた」
翔子の言葉で顔を上げる。が、しかし、目の前に見えるのは俺が引きづられてきた跡のみ。後ろ向きに引き摺られているんだから仕方ない。そして後ろから唐突に声がかかる。
「おはよう、早いな幼馴染三人組」
「…おはようございます」
「その野太い声と背を向けていても分かる暑苦しいオーラは……鉄人か?」
「なんだ、鉄人か」
「挨拶は人の顔を見てキチンとしろ。そして西村先生と呼べ」
ゴツンッ
「ッ…、痛ってぇぇえええ!!? 」
後頭部に衝撃が走る。あまりの痛さに堪らず地面を転がる。
相変わらずの鉄拳制裁だな、この野郎ッ
「そうだぞ、祭」
「お前もだ、坂本」
ゴツンッ
「ぐぉぉおおお、頭が…ッ!」
「というかこの状態でどうやってその暑苦しい姿を拝めってんだよ!」
「もう一発必要らしいな」
ゴキッ
「グギャァッ!?」
痛すぎる。もう音からして可笑しいんだが。殴ってこんな音は出せないはずだろ。ゼッテーたんこぶできてるぞこれ。
「まぁ、とりあえず霧島。その鎖は校則違反だぞ。残念なことだが霜月から外せ」
「……そうですか、残念」
「まったくだな」
「その発言についての真意は?」
「「「そのままの意味(だが)?」」」
「なんだお前らッ!?」
渋々、といった感じがありありとわかる動作で鎖を解かれる。そして鉄人。お前は教師としてそれでいいのか。
ズボンについた土埃をポンポンと払い、ようやく立ち上がる。なんだか久しぶりに視線が高くなった気がする。
そのまま鉄人たちと向き合うために身体を反転させる。
うん。オーラに違わず暑苦しい。
「で。鉄人はなんで朝っぱらからその暑苦しい姿を衆目に晒しながら突っ立っているんだ?公共の迷惑とか考えようぜ?」
「本来ならばその顔が二倍に腫れ上がるほどに教育的指導を施してやるところなんだが、朝のお前を相手にしていると話が進まんので見逃してやろう」
「……朝の祭は口が悪い。でもそんなところも良い」
「テンション低いなお前。てか普通に考えてクラス分けの結果だろ」
朝はテンションが低くなるのは仕方ないんだ。自分低血圧なんで。そして翔子。恥ずかしいから止めておくれ。
てか、クラス分けの結果なら張り出せば良くね?めんどくさいだろ、いちいち生徒に配るの。
「そういうわけにもいかんのだ。いかんせんこの学校の変わったやり方の一環だ」
「……目と目で会話が成立できるのは夫婦の証」
「ついに口も開かなくなったか」
へー。まぁこっちにはあんまり影響ないからいいけど。そして翔子。そしたらオレは鉄人とも雄二とも夫婦になっちまうんだが?やめてくれよ、気色悪い。
「んじゃ渡してくんね?」
「ほれ」
鉄人が差し出してくる封筒を受け取り、その場で開く。翔子と雄二もそれぞれ受け取って開いている。
『霧島 翔子……Aクラス』
『坂本 雄二……Fクラス』
『霜月 祭………Aクラス』
お互いに開いた紙を見せ合う。結果はまぁ予想通りだったと言えるだろう。雄二だけ違うクラスだがむしろワクワクしているみたいだ。こいつの野望からすりゃ当然のことだが。それにFクラスにはおそらくアイツ等がいる。なかなか面白いクラスになるはずだ。できるなら俺もそっちに行きたかったんだけどなぁ。
「見たか?それと霧島と坂本はそれぞれクラス代表。霜月は次席だ」
「……分かりました」
「ハハッ。楽しくなってきやがった」
「次席は別にどうでもいいや」
翔子はいつもの冷静、というか無表情で。雄二は野望への第一歩に向けて楽しげな表情で。かくいう俺はテンションが低いながらも微妙に笑ってたと思う。
ここから俺たちの非日常的な日常物語が始まるわけだ。
―――――テンション上がんねぇ訳ねぇだろ?
「……ところで霜月」
「なんすか?」
「ズボンが破けてるぞ」
「……今日はお気に入り?」
「ハート柄だな」
「もっと早く言いやがれッ!」
あぁ、締まらないな。