たとえこの身が灰になろうとも   作:マルシーズ

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参話  ルイズ

ヴァリエール領の屋敷の自分の部屋でアドリアンは歌を歌いながらピアノを弾いてた。

リズムよく陽気に弾むように鍵盤を指で叩く。

 

 

あの娘は可愛いビッチ  ♪

 

赤毛とピンクでふっくらしたほっぺが愛らしい

 

ぼくは今日決意したのさ

 

明日告白しに行こうと!♪

 

 

 

この歌はアドリアンが転生する前にいた世界で流行ってた曲だ。

けっこうな下品な内容なので(とくに年寄り)ドン引きするのも多かったが、

比較的に若い世代に流行っていた。

 

朝の10時 あの子がよく行く喫茶店に行って彼女を待つ。♪

 

胸がドキドキした、苦しくたまらない

 

助けてくれ!体が震えてたまらない!

 

恋の病でどうにかなってしまいそうだ!

 

でも彼女はなかなか現れない…どういうことなんだ!  ♪

 

夕方になってもなかなかこない…。

 

でも僕は待ったのさ!ウェイトレスに追い出されるまで!

 

ビッチ ビッチ♪ なんでこないのさ

 

ビッチ ビッチ♪ こんなに好きなのに

 

ビッチ ビッチ♪ 畜生!あのウエイトレス!その可愛いヒップが泣いてるぞ!

 

ビッチ ビッチ♪ 泣きながら帰った僕は知ったのさ。

 

隣町に行ったヤクザな彼氏を追うために家出した事を!!!!! 

 

    ♪

 

 

「うるさーーい!!!」

高い音と共に金髪の気の強そうな女が不機嫌な顔で入ってきた。

「なんだよ、エレ姉ぇ。言ったべ?俺は音楽を邪魔されんのが嫌いだってよ」

苦笑しながら入ってきた姉に言う。

 

 

エレオノール・アルベルティーヌ・ル・ブラン・ド・ラ・ブロワ・ド・ラ・ヴァリエール

ヴァリエール家の長女、年齢彼氏いない暦(自重)アドリアンより10歳年上で土の魔法の使い手にして

その実力はトリステイン魔法学院主席で卒業、現王立魔法研究所「アカデミー」の優秀なる研究員であるほどである。

容姿はアドリアンのように見事な黄金色の髪を持ち、顔立ちも美しい。

だが、美人ながらもきつい目と同様に性格もきつくおかげで今だ彼氏は(自重)

 

「なんなのですか…その下品な歌は…頭がおかしくなる…」

エレオノールは頭を指でとんとんと叩く。

「ロックロールって奴だよ。ノリがいい曲だろ」

悪びれもなくカラカラと笑う弟にエレオノールの頭痛がさらに増してくる。

「あなた…音楽やるのはいいですけど…仮にもアナタは貴族!そしてこのヴァリエールを継ぐ者だというのに…そのろっくんろーるなる平民が喜びそうな下品な曲はやめなさい!」

「はは!そう怒るなよ?綺麗な顔が台無しだぜ?」

とアドリアンは椅子から降りてエレオノールに近づき、慣れた手つきで腰を抱いて顔をエレオノールに近づけ、なあ?と呟く。

淑女が背の低い男子に腰を抱かれて誘惑されてそうな格好ははたから見れば滑稽なもんだが、エレオノールにはそれをからかったり突っ込む心のゆとりさは持ち合わせていなかった。

しかめたエレオノールの顔はさらに歪み、額に血管が走った。

 

 

私はこの子は少々苦手だ…。

家族はこの破天荒な弟にどれほど振り回されてきたか…。

貴族の立場もわきまえずに暇さえあれば屋敷の外に出て音楽を奏でたり、暴れまわったり。

どれだけ私や父、母が叱ってもまったく懲りないでいる…。

信じられない…あのお母様、「鉄の規律」を用いてマンティコア隊を率いていた「烈風のカリン」の折檻に懲りないなんて…。

この前もとんでもないことをやってしまっていた…。

貴族のパーティーの時、貴族の馬鹿息子がルイズにちょっかいかけて来た。

それを見たアドリアンは馬鹿息子をまるで年長者が子供をあしらう様に皮肉まじらせながら軽くいなした。

そこはいい、むしろ私は関心した、あの大抵の事は暴力で解決しようとするアドリアンがこういう事するのはちょっとした感動すら感じていた(てっきり殴ると思ってたから)。

だが甘かった非常に甘かった。問題はそのあと、怒った馬鹿息子は父親にそれを告げ口した。馬鹿な息子はその父親もまた馬鹿だった。

男爵の位の分際で公爵家のルイズに散々罵倒を浴びせ倒してルイズを泣かせてしまった。

私もそれを見て烈火の如き怒りその場に行こうとしたその時、冷笑しているアドリアンの顔を見てしまった…。

私はゾクっと怖気が走るのを感じ、まったく体が動けなくなった。

そしてアドリアンはルイズにいつもの笑顔で慰めながら外に連れ出した。

ルイズを外に連れ出したあと、鬼のような形相をしまっさきに男爵に襲い掛かり頭突きで男爵の鼻の骨をへし折ってしまった。

男爵が潰れたような顔で倒れたそのあと、子供と思えない怪力でテーブルを持ち上げ何度も殴りつけた。

男爵に対して抗議しようとした父や母、そして私はすっかり怒りが冷め唖然とした…、思えばあの子が本気で怒る姿を見るのはこれが初めてだった…。

いつもアドリアンは笑っているか、嫌な事を感じても皮肉に笑うかくらいで私たち家族の前では基本的に怒った姿を見せた事はなかった。

暴れ狂うアドリアンを笑って事の始終をのんきに見ていたギュンターとヴィンツェンツォもさすがにまずいと思ったのか止めに入った。

だが、平民でありながら…くやしいがそこらのメイジすらものともしない実力を持つあの二人が止めようとしても、止まるどころか勢いは収まらず、

ギュンターを投げ飛ばし、頭に血が上ったヴェンツェンツォはアドリアンと殴り合いをしでかし、返り討ちにされるしまつである。

私たち家族が総出で止めてやっとアドリアンの怒りを止めて見せた。

この騒動のおかげでアドリアンは回りの貴族から「狂犬」やら「ヴァリエールの鬼子」という不名誉極まり無い二つ名を貰うことになった。

(だけど・・・アドリアンの馬鹿は…「華やかな異名よりは脅しが効いていい」と喜んでるからさらに腹が立つ)

おかげで私はこの子は少々苦手だ…だが嫌い?と言われるとそれはNO。私たち親子は知っている、あの子の根は優しいということを。

たしかに残虐な所はある、だがそれはあくまで敵に対してだ。

実際アドリアンは貴族の嗜みの狐狩りを嫌い、何度も誘われても一切「理由のも無く動物は殺さん」と言って頑として誘いに乗らない。

そして領民の子供たちに音楽を教えたり遊んでやったりしたり、一番下の妹のルイズを可愛がっていたり(だけど甘やかしすぎ!)

二番目に下の妹、カトレアの持病で発作が起きたとき単身で危険な場所に生えている薬草を単身で取りに行って傷だらけになって持ち帰った事もあった。

だからいくら苦手でも破天荒な性格や人間離れした力で悩まされてもこの子は私の大切の弟、私たち家族の大切な家族。

でも甘やかさない、きっちりと厳しくして貴族としての自覚をもたせないといけない。

家族として、姉として!。

 

 

エレオノールは軽く杖を振る。

空中で鉄の塊が形成し、アドリアンの頭に落ちた。

「あーらよっと」

アドリアンはそれをハイキックで蹴り落とす。

「甘いぜ?姉貴、これくらいでこのアドリアン様を攻撃しようなんざ、ハムスターがカピパラに喧嘩売るくれぇ無謀てぇもんだ」

とウィンクする。

「キーーーー!この下郎!そこを直れ!今日という今日と言う今日こそ引導をわたしてくれるわ!!」

馬鹿にしたようなアドリアンの言い回しにエレオノールは顔がみるみる沸騰して怒鳴るように詠唱をすると、3Mほどの鉄の巨人が現れる。

鉄の巨人がうなるような声を出し、アドリアンにパンチを繰り出す。

「おいおい、そりゃ洒落にならねえ」

言葉と裏腹に笑いながら次々と繰り出す巨人の攻撃と次々と交わす。

「問答無用!覚悟しなさい!!!」

トマトみたいに顔を赤くして杖を振りながらキィキィ言う姉にやれやれと言いながら、巨人の手を取りそのまま投げ飛ばす。

「で?ここに来たわけはなに?別に俺の説教だけじゃねえんだろ?」

エレオノールははっとするたしかにいつまでもこの馬鹿をかまってやってる暇は無い。

そしてこほんと一回咳き込み、心を落ち着ける。

「そうでしたわね、あなたのような下劣な人間にかまってる暇はありませんでしたね…」

そう言って精一杯姉の威厳を保とうと、メガネに手をやり胸を張りながら言う。

「ルイズがここに逃げ込んだと思ったのだけど、ここにはいないの?」

「ルイズ?」

その名前を聞いて察したようにアドリアンの顔は真剣になった。

エレオノールもアドリアンが感じてる事を察し頷く。

「あの子…また魔法を失敗したのよ…それで怒ったら泣き喚いてどっかに行ってしまって…」

 

 

ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール(なんでここの貴族てぇのはいちいちこんなに長ったらしい名前してんだ馬鹿野朗 アドリアン談)

ヴァリエール家の末っ子にして3女。母譲りのピーチブロンドが特徴的でアドリアンとは一個年下の9歳。

この小さく可愛い娘もまた大きな問題を抱えていた。

ルイズは魔法が使えない、いや失敗ばかりしていた。

何百回と杖を振るおうが爆発を起こし、一向に魔法が成功する試しがなかった。

これには家族全員が頭を抱えた、貴族の血を引くものましてや始祖ブルミルの血統をもつヴァリエール家が魔法が使えないなどありえなかった。

高い能力を持つ父も母もエレオノールもこの現象はまったくわからず、色々な魔法の専門家もこれにはさじを投げ出してしまった。

アドリアンもルイズが魔法を使うところを見て魔力の流れを検証してみた。

たしかにルイズの詠唱は間違っていない、ちゃんと魔法は完成していた。ここまでは合格だ、しかし杖を振るい発動したところ何かの力で阻まれ爆発するのを感じた。

まさか呪いでもかけられているのかとアドリアンは思った、だがこのハルゲキニアにここまで高度な呪いをかける連中はいたか、むしろそんな魔法は聞いたことはあったか?。

アドリアンは家中の魔法に関係する書物を漁ったが、手がかりは見つからなかった…だが一つ当てはまることがあった。一般に使われる土 風 水 火の四系統魔法のほかに伝説と言われている「虚無」だ。

アドリアンはルイズは虚無に関係するのではないか?と結論していた。

虚無という魔法は唯一ブルミルとその弟子が使ったとされる魔法の系統でもっとも謎が多い魔法とされる。

大抵のメイジはこれを実在したかと信じていないのが多いが、アドリアンは信じている。なんせアドリアンは前世でも人では扱いきれない魔法を使っていて、人に転生した今でも魔力さえあれば使えるのだからそういうのあっても可笑しくはないと思っている。

そしてそれを父や母や姉に言っても一蹴されると感じていた。

話は逸れたが、そんな理由があってルイズは毎日魔法の勉強がある度に母や父と姉に叱られていた。

普通なら魔法なんてできなくて気にするなと言うのだろうが、このハルゲキニアの貴族はそうではない。

貴族は全員メイジで、魔法が使えることは何よりのステータスであった。

さらにルイズの血統はトリステイン王族と同じく始祖ブルミルの弟子の一人の血統を持つヴァリエールの一子であった。

そんな血統をもつルイズが魔法を使えないという事は、体の一部が消失するのと等しい。

よってアドリアンとカトレア以外の家族は焦った、どうにかルイズが魔法を使えるようにしたいと必死に指導した。

アドリアンはそんな家族を諌め様とした、だが両親もエレオノールも頑とせずアドリアンの訴えを一蹴した。

そんな家族を見てアドリアンは憎んだ、父と母と姉に絡みつく貴族魔法主義に、それを作ったブリミルに…。

 

 

「姉貴よ…そんなに怒るなや…、ルイズが魔法使えねえのはそういう体質なんだからよ…別にそれで人間の魅力が決まるわけでもねえだろが」

そう言われてエレオノールは苦渋の表情をし、爪を噛む。

エレオノールもアドリアンの言う事はわかっている、しかしルイズがこれから貴族として生きていくためには魔法が不可欠…。

だからこそ、貴族として、姉としてルイズが回りから卑下されないように魔法が使えるようにさせたいと思い厳しく指導した。

アドリアンは目を閉じる、アドリアンもエレオノール、そして父や母の心情を知っているからこそあまり強く言えない節もあった。

だからルイズにはせめて心の安らぎをとカトレアと一緒に優しく接した、魔法なんぞの為に苦しめない為に、魔法なんぞでルイズの魅力を腐らせないように。

そんな似たような思いをもちながらすれ違う姉弟は沈黙を作る。

やがてアドリアンはバルコニーに向かった。

「どうしたのですか?」

「決まってんだろ?うちの可愛いお姫様を慰めにいくんよ」

アドリアンは後ろを振り向いて寂しそうに笑いウィンクする。

「あの子がいる場所はわかるのですか?」

「ああ…、なんとなくな」

そう言って、杖を軽く振りフライと唱えて屋敷から飛び出した。

 

 

 

 

 

家の領土にある湖で私は泣いていた。

ここは私の秘密の隠れ場所、いつも叱られた時こうやって湖に行き船の上で泣いてた…。

とくに魔法の授業を受けて、私が魔法がてんでダメだと知ったとき以来ほぼ毎日…。

辛い…お父様やお母様、エレオノール姉さまに叱られるのも、

家来の哀れみの目も!魔法が使えない不甲斐ない自分も!!。

 

「ル~~イズ何してんよ?」

 

 

上から陽気で優しげな声が聞こえる、お兄様の…アドリアン兄様の声だ…。

フライで飛んできたアドリアン兄様は笑顔で私を見て降りてくる。

風が吹きアドリアン兄様のマントが舞い上がった、それはまるで天使の羽のようだった。

「ま~~たんな所にいるんか?」

アドリアン兄様は私の隣に座り、頭を撫でてくれた。

私の顔が照れながらも綻ぶ。

私はアドリアン兄様が好きだった…憧れていた…。

周りの貴族はアドリアン兄様の事を鬼だとか狂犬だとか悪口言うけど、私にとってはとても強くて優しいお兄様だ。

こうやっていつも私が泣いてると、笑顔で慰めてくれて頭を撫でてくれた。

「アドリアン兄様…私…また魔法失敗しちゃった」

ぎゅっとアドリアン兄様にしがみつく。

アドリアン兄様は私の肩を抱きながら、何も言わず頷く。

「なんで私はこう…ダメなんだろう…魔法も使えず爆発して周りに迷惑かけて…!!」

兄様を抱きしめる力が強くなるのを感じる。

「私なんて!!ダメな人間なのよ!!ヴァリエールに恥ずべきクズな人間なのよ!!!」

口から自分を呪うような嗚咽が漏れる。兄様はそんな私の頭をぽんぽんと軽く叩く。

「ルイズ、いいか?そんなクズな人間がこうやって生きていけるか?」

私は何も答えない。

「そういうクズな奴に親父もお袋も姉貴もこうやって心底心配して怒ってくれるか?」

「…」

「ルイズ、魔法が使えない事なんぞ気にするなよ?大体な魔法なんざエルフや吸血鬼にとっちゃ飯をつまみ食いする程度に使える代物なんだぜ?そんな連中からしてみりゃあ、魔法使えた使えねえくれえで馬鹿騒ぎしてる人間を見たらどう思うよ、滑稽だと鼻で爆笑されるぜ?」

とお兄様はケラケラ笑う。

私は真っ向から貴族を馬鹿にするような言葉を放つ兄様に私は言った。

「では…人間は一生エルフや吸血鬼に勝てないと言う事ですか!?」

人間はエルフに勝てない、その言葉はエルフを仇敵にする貴族が言ってはならない言葉だ。

「はは!そうでもねえよ、例えだ例え。魔法使える使えねえくれえでお前も人生左右されたかねえだろ?」

「でも…、魔法使えないと貴族じゃないって…」

「そりゃ貴族の阿呆どもが勝手に決め付けた事だ」

そう言って兄様は私の頭をワシャワシャとなでる。

「なぁルイズ、俺はなお前には魔法を使える貴族なんぞよりに「素敵なレディー」な貴族になってほしいんだ」

「素敵なレディー…」

「そう、立派なメイジなんぞ素敵なレディーに比べればチ●●スよ」

「そしていいカミさんといい母になれ、そうすりゃ魔法しか脳が無い貴族なんぞより遥かに最高な貴族になるってもんさ」

そう言って私を抱き上げる。

「そうなりゃ自然に仲間も増える、平民もお前を慕うようになる。んでいい彼氏もな」

「私は…なれるんでしょうか…」

「はは!決まってんだろ?お前は俺の妹なんだぜ?絶対なれるさ」

アドリアン兄様はいつもそうだ…こうやって笑顔をくれる…、それが嬉しくて…堪らなくて!!。

「アドリアン兄様!!!」

私の目から思わず涙がぽろぽろと零れ落ち抱きしめた。

「相変わらず泣き虫さんだねぇ」

暖かい…心地いい…。私を撫でてくれる兄様の手が…兄様の優しさが…。

私は誓う、立派なメイジになるのは諦めないけど、必ず「素敵なレディー」になる!。

アドリアン兄様の優しさに応える為に!…いや兄様だけじゃない!お父様お母様、そしてエレオノールお姉さまにちぃ姉さま!

ヴァリエール家に相応しい女になってみんなの期待に応えたい!!。

 

 

 

 

アドリアンは子犬のように泣いてしがみ付く妹を抱きしめると、目から一筋の涙が流れる。

 

 

ルイズ…すまない…。俺は兄として…何もできやしねえ…!。

俺はこいつに何をしてやったんだ!。

こんなちっちゃな体でよ…!まだ9歳の女の子なのによぉ…。歯ぁ食いしばって…心ズタズタになって耐えてんのによぉ…!。

こうやって抱きしめてやることしかできねえ!!。

俺は憎い!魔法至上主義をほざく貴族共を!それの基礎を作ったブリミルも!!

そしてルイズに何もしてやれない無力な自分自身もだ!!!。

俺は弱い…!何が狂犬だ!何が鬼だ!、こうやってルイズを慰めることしかできねえじゃねえか!!。

いくら喧嘩が強くても暴力で貴族どもを屈服させる事しかできねえ、やつらの根本を変えることができねえ!

力が欲しい!貴族どもを黙らせそして家族や仲間、領民を護る力を!権力を!。

俺は誓う、奴らを心の底から屈服させてトリステイン…いやハルゲキニアを変える為の力を得ようと!

できるかどうか俺にもわからん、しかしやらければいけないんだ!。

そしてその力が得るまで、そしていつか心底ルイズの事愛し護るナイトが現れるまでこいつを護っていこうと…。

それが雄として、貴族として兄として生まれた俺の責任だ!。

あの世で見ていろブリミルのタコスケが!!俺はきっとてめえが作った理想郷を破壊して再生してやる!!!。

 

 

 

 

 

 

そう兄妹が誓いに立て一週間後…。

ヴァリエール家が蜂の巣を突いたように大騒ぎになっていた。

「アドリアン!!アドリアンの奴はまだ帰ってないのか!!」

ラ・ヴァリエール公は顔を赤くして、騒いでいた。

「まったく!あの子ったら!また黙って出て行って!!今度と言う今度こそ折檻が必要ですね!!」

カリーヌ婦人もまた怒りを隠せず、眉をヒクヒク震えさせて杖を取り出していた。

(折檻なんぞいつもの事じゃねぇか)

とヴィンツェンツォは小声で突っ込みを入れ、隣でギュンターも軽く頷いて同意する。

「なにか言いましたか?」

カリーヌは鋭い眼光で二人を睨むと二人は苦笑いでごまかした。

「ふぇえええん!お兄様が~~!わたしに愛想つかして出ていっちゃった~~!」

「バカおちび!あのシスコンがあんたに愛想つくわけないじゃないの!!」

盛大な勘違いをするルイズにエレオノールは怒鳴り散らす。

「まぁまぁ、みなさんいつもの事ですから、しばらくしたらひょっこり帰ってきますよ」

そんな騒ぎをカトレアはにっこりと微笑み紅茶をすする。

「公爵様!!アドリアン様が帰ってきました!!!」

「なにぃ!!」

アドリアンの帰りを報告する兵士にラ・ヴァリエール公爵の目がカッと開き、それを見た兵士の心胆を冷やす。

「いやぁ~めんごめんご、家に帰る途中でよオークの群れに出くわしちまってよ。軽く遊んでやったら遅れちまった」

布に包まれた塊のようなものを抱え、頬に血をつけたアドリアンは何も悪びもせず、のん気にと歩きながらニコニコと笑顔で手を振った。

それを見たヴァリエール婦人は何も言わず、殺気を放ち問答無用のカッタートルネードを放つ。

「おわあ!!アブねえ!!!あにすんだよ!!!」

襲い掛かる竜巻を同じくカッタートルネードを使い相殺させる。

「おのれぇ~~」

「やめんか!カリーヌ!!屋敷が!これ以上やると屋敷が壊れる!!!!」

公爵は必死で夫人を羽交い絞めにして止めようとする。

これ以上屋敷が壊されるのは簡便してくれと思いながら前を見ると、夫人とアドリアンのカッタートルネードでもうめちゃくちゃだ。

ああ…また修理費が…とゲンナリしてしまう。公爵家だけであって金は湯水のようにあるが、愚息のお痛で毎回屋敷が壊されるのはごめんだ。

「そ…!それより貴様今まで何をしていた!!一週間も連絡をよこさずに!」

「ん?ああ…これを探してた」

公爵の問い、抱えてた塊のようなものに包まれている布を少し解くと、「く~~」というなにか力が抜けるような泣き声とともに可愛らしい子竜の顔がぴょこっと出た。

「まあ~~~」

「可愛い~~~」

顔を出した竜を見てカトレアは微笑、ルイズは目を輝かせ嬌声を上げる。

「あんた…まさか飛竜を飼うために家を出たのですか?」

エレオノールは心の中で「こんのがきゃ~~」と言いながら口をひくつかせる。

「そそ、ま、胸きゅんアニマルだったら何でもよかったんだけどよ」

とアドリアンは笑い、そしてルイズにその飛竜の赤ちゃんをルイズに渡す。

「え?」

ルイズはアドリアンを不思議そうに見る。

「これはお前にやる、こいつを自分の弟だと思って可愛がりな」

とルイズの頭を撫でた。

それを見た家族たちはアドリアンがなんの為に旅に出たのかわかった。

「ルイズ、貴族と平民は親と子のようなもんだ、それをよう考えながらこいつを育てな。」

そう言ってルイズの頭をぽんぽんと叩く。

「う…うんわかりました!、アドリアン兄様…」

ルイズは自分の半分もある飛竜の子を抱えじっと見つめる。

「きゅ~~」

首をかしげ、つぶらな瞳でジッとルイズを見る飛竜にルイズの頬は緩み、ぎゅうっと抱きしめる。

「おいアドリアン!勝手な事をするな」

じっと事の始終を見た公爵の口が開く。

「いいじぇねえの、こう言う事はルイズには必要な事だぜ?あのチビスケ育てりゃルイズはいい女になる近道になるってえもんよ」

「それを決めるのはワシの判断だ、そしていい加減その尊大な態度と口の利き方を改めろ!!」

公爵はアドリアンの後ろに回り、両方のこめかみをグリグリと拳で押し付ける。

「あだだだだだだだだだ!!」

「フン、まあいい。たしかに貴様の言うとおりルイズには必要な事かもしれんしな」

と公爵は夫人を見る。夫人は仕方ありませんわねと諦めたように頷く。

なんだかんだで公爵はルイズが顔を綻ばせて喜ぶ姿を見れて嬉しいのだろう。

ここの所ルイズは魔法が使えないせいであまり笑顔を見せていなかったので余計だ。

婦人としても本音はルイズが魔法を使えないと言う事を半分諦めているので、せめて子竜を通じてルイズが立派に正しく優しさを持って育つのは母として喜ばしいものだ。

「よかったわねルイズ」

カトレアはニコニコとルイズの頭を撫でる。

「この子の名前考えなきゃね」

「名前ですか~」

ルイズは親指を噛んで考える。

「なにがいいかな~、ベン…ジョン…ジェロム…ありきたりよね…」

腕を組みう~んと唸りながら、飛竜の名前を搾り出そうとする。

「ピチソワーズ!ピチソワーズがいいわ!」

ルイズの名づけのセンスにカトレア以外は微妙な空気になった。

「おチビ…、あんたねえどういうセンスしてんのよ・・・」

エレオノールは頭を抱えて突っ込みを入れる。

「ええ~~、ではお姉様だったらどうつけるんですか~~」

エレオノールの突っ込みに恐怖しながらも突っ込み入れる。

「そうねえ、飛竜だから強そうなのがいいわね、ドン・レミンゴとか」

エレオノールも大概であった。

「カッカッカ姉貴も大概やねえ、俺だったらじゅげむじゅげ…」

「適当にすぎる!!!」

とエレオノールはアドリアンの頭を叩く。

「たた・・・まあ、ルイズこいつはお前のもんだからお前の好きにすりゃあいいさ」

叩かれた頭を撫でながらルイズを撫でる。

「はい!兄様!」

ルイズは目を輝かせ、ピチソワーズと名づけた飛竜の頭を撫でる、ピチソワーズもそれに応えるようにルイズの顔を舐めた。

「あはは!ピチったら!くすぐったい」

ピチソワーズに舐めれ、くすぐったそうに笑う。

久しぶりに笑顔で喜ぶルイズを見て家族だけでは無く、家来達も微笑を浮かばせる。

それを見たアドリアンも久しぶりに家庭に明るさを取り戻しだと感じ、満足そうに頷く。

そして扇子を取り出し。

「これにていっけんらく」

「まだあなたのお仕置きはすんでいませんよ?アドリアン」

アドリアンの後ろで婦人が殺気を交えた笑顔を浮かべて立っていた。

そんな母にアドリアンは汗をだらだらかきながらギリギリときしむ様な音と立てて振り向く。

「え…とお母様?どうしました?そんなに殺気出して」

「あら、どうしました?その顔は?私は嬉しいですよ?やっと「お袋」ではなく「お母様」と呼んでくれて」

全然嬉しそうな笑顔を見せない母にアドリアンは逃げ出そうとしたが、ギュンターとヴィンツェンツォに阻まれた。

「てめえら裏切りやがったな!!」

「何、裏切るもなにも俺達はヴァリエール家の家来、そのヴァリエール家の婦人の為にアホ息子を捕まえる事は当然の事」

とギュンターはそしらぬ顔で淡々と言い放つ。

「まあ、ルイズ嬢様のためにやった事はいい事だけどよ、黙って一週間も家に帰ってこないんじゃパパやママに叱られるぜ」

ニヤニヤと笑うヴィンツェンツォにアドリアンの額に血管が走る。

「さぁ!息子よ!お仕置きの時だ!この父が優しくまろやかに教育させてやろう!」

愛娘の幸せそうな姿を見てテンションが上がった公爵はいつもの厳格な姿とは考えられない口調で、女性を模した鉄の棺をバシバシと叩く。

やばいと思ったアドリアンは笑顔でルイズとカトレアに助力を乞おうと振り向くが。

「すみません兄様…さすがにお母様とお父様に逆らえません」

「ごめんねアドリアン、さすがに私も庇えない」

と無常にも二人は悲しそうに引きつった笑みで一蹴した。

そしてアドリアンは婦人に引きづられるように連れ攫われた。

 

 

ヴァリエール家に子供の悲鳴が鳴り響く。

それを家来達はいつものヴァリエール家の風物詩のようなものだと思っているので、

なにも気にせずいつも通りに己の仕事をこなす。

そんないつものヴァリエール家の日常であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 




アドリアンシスコン伝説
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