ただの馬鹿ですね、はい。
「1階にいるのは…見た感じだと3人、しかも銃を持ってる、か…あー、やっぱデバイス作っておけばよかったなー…」
意気込んで入ったのはいいけど、入口と違って警備が厳しく、隠れて様子を伺っていた。あれぐらいなら楽だと思ってたんだけど…
(どうする?鉄パイプだと頭をしっかり殴らないと気絶しないだろうし、かといって魔法を使うのもダメ…ん?)
僕は自分の隠れていた箱の中にあったものをみて、いい考えが浮かんだ。余談だが、この時の僕はきっと「いい笑顔」を浮かべていただろう。
「ったく、うちのボスはなんだってこんな怪しい依頼を受けたのかねぇ」
「ただのガキ一人をさらうだけでバカみたいな金が手に入るとかどう考えてもおかしいのにな」
「別にいいだろ。ボスの良く分からない考えなんて今に始まったことじゃねぇんだからよ」
「そりゃそうだ」
『ガッハッハッハ!!』
「楽しそうなところ悪いんだけど、ちょっとすいません」
『あ?なんだてm「秘技!シュールストレミング投げ(開封済み)!」ギャァァァァ臭ぇぇぇぇぇぇ!!』
シュールストレミング…それはスウェーデンで作られた発酵食品であり、まあ説明がめんどくさいので省くけど、要はとてつもなく臭い食べ物である。そんなものを相手の顔に投げたらどうなるか…考えたくもないなー(ゲス顔)
「はい、ちょっと眠っててねくださいねー」
「ガッ!」「グゲッ!」「ギョッ!」
「…ギョ?」
「あべし!」「ぶげら!」「メメタァ!」
「……なんなのこの人達?ただ後頭部叩くだけでこんな声出るの?」
シュールストレミング投げで4階まで来たが、叩く人全員が聞いたことのない声を出して気絶していった。あ、銃もちゃんと回収しました。中身ゴム質弾だったけど。
「さてと、外から見たときは5階だったから、次の階が最後なんだろうけど…どうしよう」
そう、ここで問題が発生したのだ。僕や黒服だけならまだいいんだけど、次の階にはアリサとすずかがいるのだ。確かに助けるのも最優先だけど、女の子にこんな訳のわからない匂いをつけさせたくない。でも時間は限られてるわけで…
「……銃、いけるかな?」
どれだけの反動なのか分からないし、使ったこともなくて照準のつけからすら分からないけど、それでもシュールストレミングを使うよりはよっぽどいいだろう。
そう考えているうちに、5階の入口まで来た。が、僕はそこで足を止めた。
(真正面からはいるのは危険すぎる。最悪アリサたちが人質にされてそこで終わりだ。なにか策は…)
と、辺りを見渡すと、少し高いところに通気口があった。しかも椅子もすぐ近くに置いてある。
(え?なにこれ?罠?罠なの?それともただ無用心なだけ?……でも、他に方法がないんだ。行くっきゃない)
「うんっ…」
目が覚めるとそこは全く知らない場所だった。何があったんだろう…確か、今日はすずかと一緒に出かけて、帰り道に黒い服の人達に囲まれて、それで…っ!そうだ、すずかは!?
「んっ…アリサちゃん…?」
「っ!すずか!大丈夫!?どこか、怪我とかしてない!?」
「わっ…だ、大丈夫だよ、アリサちゃん!どこも怪我なんてしてないよ」
「そう…よかった…」
「…あれ?ところで、ここ何処?」
「あ、それは「気がついたかね?お嬢さん方?」っ、誰!?」
急に声がしたのでそちらをみると、黒い服を着て、気味の悪い笑顔を浮かべたやつがいた。すずかもそれを見て、何があったかを思い出したらしい。
「誰よ、アンタ!早く離しなさいよ!」
「ふむ、自己紹介がまだだったかな?そうだな、ジャックとでも呼んでもらおうか。解放する件についてだが、こちらとしても君らのような子どもをさらうなんてことはしたくはないのだが、これは依頼でね。依頼主の命令がない限り、私にはどうすることもできんのだよ」
「何が、目的なんですか?」
「お金だったら、すずかは関係ないはずよ!早くすずかを離しなさい!」
「だから私ではどうすることもできないと言っているだろう。それに、金目的ではないようだしな」
あーもう、こっちの要求が通らない!
「依頼主の目的は、そっちの月村とかいう少女らしいからな」
『え?』
「せまいっ…しかも全然進まない…」
良く考えたら、アリサたちの場所を全く知らないのに通気口に入ったところで、すぐにたどり着けるとは限らないことに今更気づいた。誰だ!通気口に入った方がいいとか思ったやつ!あ、僕だ。
「どういうことよ!すずかが目的だったって!」
「お?」
真下の出口から声が聞こえた。姿は見えないけど、この部屋にいるのだろう。
「いや、私に聞かれても答えられんよ。先ほどから言っているが、依頼主しかわからんのでな」
「なによ、さっきから依頼主依頼主って。あんたの頭にはそれしかないの!」
「…さすがにそこまでうるさくされると私もそろそろ怒るぞ」
「ひっ!?」
あ、あかんパターン入った。そろそろ行くか!
「呼ばれてないけどジャジャジャジャーン!」
「は?」
「え…ゆう、と?」「ゆうとくん?」
「おう。正真正銘、悠斗だよ」
「なんだ貴様。どこから入ってきた?なぜここにいる?」
「どこって、入口から。この階だけは通気口から来たけど」
「嘘をつくな!だとしたら、下の見張りはどうした!」
「ああ、それなら鼻がイカレて後頭部に強い衝撃がかかって倒れてるよ。いやー誰がやったんでしょうねー(棒)あ、ここにいる理由は大の大人が小さい女の子を泣かせようとしてたから、ですかね?」
「貴様…!」
「ジャックくん、もういいよ。下がってなさい」
「チッ…!」
いやー、なんか煽るの楽しくなってきた。…あれ、僕ってこんな性格だったっけ?で、なんか新しいやつ出てきたけどなんだろ
「え?誠人おじさん?」
「やあ、すずかちゃん。久しぶりだね」
「え!?すずか、知り合いなの!?」
「すずかの知り合いなら挨拶しておかないと。こんにちは。悠斗・フロー「何あんたは挨拶してんのよ!明らかにこいつが犯人でしょ!」え!そうなの!」
「いいから、あんたは黙ってなさい!」
…(´・ω・`)
「なんで…おじさんが?」
「ふむ、何故、か。月村の遺産、と言えばわかるかね?」
「え?なんで、それを…?」
「な、なによ、あんた。何言ってるのよ」
「ああ、君たちにもわかるように説明しなければね」
そういうと、誠人という人は気味の悪い笑顔を浮かべながら話し出した。
「君たちは知らないだろうが、月村というのは昔から名のある家でね。もちろん、莫大な遺産があるのだよ。私は以前、その遺産を盗むのに後一歩というところまで行った。だが、そこにいるすずかちゃんの姉の忍というやつに気づかれてしまってね。結局、月村の遺産を手に入れることは出来なかったんだ」
「それとこれと、なんの関係があるのよ!」
「少し考えればわかることだろう?人質だよ、人質。誘拐の理由は大体が人質として使うことじゃないか。ああ、そういえばそこの君は関係なかったね。どうだい?すずかちゃんを見捨てて逃げるというのなら、今すぐ解放してあげてもいいんだよ」
「なにバカなこと言ってんのよ!大事な友達をおいていくわけないじゃない!」
「大事な友達?クハッ、ハハハッ、アーッハッハッハッハッハ!」
「な、なによ。何がおかしいのよ!」
「キヒッ、いや、すまない。まだ言ってなかったのかと思うと、ついね」
「…何が言いたいのよ…」
「知りたいのかい?なら教えてあげよう」
「やめておじさん!それ以上は言わないで!」
「そこの少女はな…」
「やめてぇぇぇぇ!!」
「化け物なんだよ」
「あ…ああ…うぅ…」
「な、なによ…それ。訳わかんないこと言ってんじゃないわよ!」
「ああ、説明不足だったな。月村家というのは、吸血鬼の家なんだよ。人の血を吸い、とてつもない力を持つ、人ではない存在。そんなものを、化け物と呼んで何が悪い?」
「……本当なの?すずか?」
「っ…」
コクッと、本当に小さくだけど、すずかは頷いた。
「何よ、それ…ふざけんじゃないわよ、すずか」
「あ、ありさ、ちゃん…」
「『そんなこと』で、私が友達やめるとでも思ったの!?」
「…え?」
「なめないでよ。何?ちょっと人と違うとこがあるからって、私達が離れていくと思ってたの?」
「っ…それ、は…」
「なのはだって、アミタだって、キリエだって、みんなきっと同じこと言うわ。なんでそんな大事な事、自分たちに言ってくれなかったのって」
「っ…」
「ねぇ、すずか。あんたにとって、私達って友達じゃなかったの?」
「っ!そんなことない!私だって、みんなのこと、友達だって思ってる!」
「なら頼りなさいよ!抱えてること全部私達に言いなさいよ!全部受け止めてくれるって、信じなさいよ…」
「あ、ありさちゃん…ごめ、ごめんなさい…」
最後の方は、二人とも泣いていた。アリサは、信用されるに至らなかった自分に対して。すずかは、みんなを信用しきれてなかった自分に対しての申し訳なさからだろう。
「チッ…そこのさっきからずっと黙ってる君。君はどう思う?化け物なんて、気味が悪いだろう?」
「あ、あんたねぇ…!」
「…」
「さあ、どう思うんだい?」
「…」
「ちょっと悠斗!黙ってないで、なんとか言いなさいよ!」
「…あ、喋ってもいいの?」
『は?』
「いやだって、さっき黙ってろって」
「そんなん空気読んで話なさいよ!もうとっくにそんなん終わってるわよ!」
「うえぇぇぇ!?」
そ、そんな…いろいろ言いたいことあったのに、もう黙ってる時間終わってるなんて…
「…それで、君はどう思うんだい?」
「…まあ、とりあえず一言」
「そ れ が ど う し た ? 」
「なっ…」
「人より力が強い?超能力とかで力が常時強くなるのが発動してるとか、そんなんなら探せばいるでしょ。血を吸う?お前、毒が傷から入り込んだ時に血と一緒に吸い出してるんだぞ?それを見てお前は一々化け物とでも言うのか?」
「貴様っ…」
「それに第一、すずかは一度でも自分から進んで人を襲ったことがあるか?殺したことがあるか?」
「僕は吸血鬼なんて知らない。僕が知ってるのは、大切な物を取られてもオロオロするだけだったり、本を読んで笑ったり、猫をかわいがって微笑んでる月村すずかっていう女の子だ」
「……まさか、こんなバカがいるとはな。もういい、ジャック君、出番だ。死なない程度にそいつらを痛めつけるんだ」
「…本来ならこんなことはしたくはないのだが、依頼主からの命令だ。悪く思うなよ」
「っ…」
「アリサちゃん…悠斗くん…」
やっぱ、怖いよな、二人とも…まあ、僕だって怖い。けど…
「大丈夫、アリサ、すずか」
大切な友達がいるんだ。ここでびびってちゃ、男じゃない。
「二人は怖がらなくていいよ。僕が絶対に守ってみせるから」
あ、あれ?戦闘描写が何一つない…
ち、違うんですよ…前の話の時点ではあったんです…
でも、戦闘の知識ないのに無双なんかしてたら違和感バリバリだし、書いてておかしいなと思ったんですよ…
はい、ただの言い訳ですね、すみません。次回こそはちゃんと戦闘に入ります。
※この作品を読んでシュールストレミングを食べたくなったなどで実際に購入し、「鼻がおかしくなった」や、「めちゃくちゃまずかった」など思われても、作者は一切の責任を取りません。予めご了承ください。
いいか、買うなよ!絶対に買うなよ!買うなら覚悟しておけよ!(買ったことのないやつの台詞)