全体的に強化してみたハイスクールD×D 赤龍帝とブラコン弟   作:空騒

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第一章 兵藤一家のトラブルメーカー
lifa.1 兵藤家のエロ兄弟


 夕暮れの公園に響き渡る少年の慟哭。あまりに悲痛で、憎悪にまみれた叫び。

 胎動していた物語は動きだし、形を変えて誕生する。

 

 

▼△▼

 

 

「……はぁっ!……はぁっ!」

 

 春の肌寒さを感じることが少なくなり、夏の気配が強くなり始める頃。日も沈みだした夕暮れの街道を、ツンツン頭の少年が笑顔で疾走していた。

 少年の名は兵藤一誠。学友からは『イッセー』と呼ばれている性欲の権化だ。

 

「……くくくっ……ふははっ……あーはっはっは!!」

 

 運動部を凌駕しかねない速さで疾走しながら三段階の高笑いすらする余裕を見せる一誠。端から見たら完全に不審者なことなど毛先程も考えずに家へと走る。

 その表情は歓喜に彩られている。それも当然だ。何故なら、この日一誠は天野夕麻と名乗る美少女に告白され、晴れて彼氏彼女の関係となったのだ。

 あまりの歓喜に打ち震えいる所を友人達に見つかり、締め上げられている内に放課後になってから中々の時間が経ってしまった。この嬉しさをいち早く弟に伝えるべく、一誠は走っていた。

 見慣れた自宅を視認した途端、更に速度を速めた。流石に息切れをしながら玄関に入り、脱ぎ捨てるように靴を脱ぐと同時に叫ぶ。

 

「ただいまっ! 一実ぃいいいいっ!」

 

 「おかえりー」という母の声に返事を返しながら、弟の名前を叫んで階段を駆け上る一誠。

 笑顔で自室の隣にある弟の部屋に繋がる扉を開いた。

 

「居ないっ!」

 

 出鼻を挫かれたと思う一誠の耳に、「こっちだぞー」という声が隣の自室から届いた。なんだそっちか、と呟きながら自室の扉を開いた。

 

「どした兄貴。いつもより遅い帰宅だな」

 

 扉の先には、一誠のベッドに座り、ビニール袋から何かの箱を取り出している弟の兵藤一実がいた。口元に笑みを作っており、兄ほどではないが嬉しそうな表情を作っている。

 

「一実っ! 聞いてくれよ、俺、彼女出来た! おっぱいのおっきい彼女出来た!」

「おう。兄貴、そんなことよりも新しく目覚まし買ったけどどうする」

 

 一誠の言葉を妄言と断じているのか、一実は一誠の発言に軽く相槌を打つと手に持った箱を一誠に見せた。箱には『萌え萌え目覚まし時計』と可愛らしくデザインされていた。

 

「嘘じゃないんだよ! 本当だっ」

 

 欠片も信じていない一実の様子に、一誠はポケットから取り出した携帯電話から、彼女から貰ったメールアドレスと、一緒に撮った写真を表示すると、一実に詰め寄って見せ付けた。凄まじいドヤ顔で。

 証拠を提示された一実は、手に持っていた『萌え萌え目覚まし時計』の箱をベッドに落としてショックを受けていた。

 そして、一回、二回と瞬きをすると一誠に声を掛けた。

 

「……これ、マジ?」

「マジもマジ。大マジだぜ。ビビっただろ?」

「しかも超美人……だと」

 

 写真の中で一誠の隣で微笑む少女。一誠は彼女を天野夕麻と紹介した。黒髪でスレンダーな体型をした完璧な非の打ち所ね無い美少女。一実は、夕麻の姿を見て軽い違和感を覚えたが、それもすぐに霧散した。

 一実はその場ですくりと立ち上がると、特徴的なアホ毛を揺らしながら手を振り上げた。

 

 バチンッ、と音を立てて二人の手が組まれる。

 

「やったなっ! 兄貴!」

「おうっ! 遂に、遂に彼女が出来たぞ一実!」

 

 肩を組み、喜びを分かち合う二人。その場でぐるぐると肩を組みながら回転する。しばらくじゃれ合うと二人はベットに腰掛けて話し合った。主題は一誠の彼女の事。

 どちらから告白したのか、いつ会ったのか、何処まで やったのか、少しおっぱいがデカ過ぎる。一実の質問に一誠は笑顔で答え、最後の質問で乱闘に発展しそうになったが、彼女持ちの風格を纏う一誠が余裕を持って対処した。

 そして話題は時計の話に移った。

 

「ところで一実。この時計どうしたんだ?」

「ああ、兄貴が前に使ってた時計あったろ。アレを調べてみたらパチモンだって事が分かったんだ」

「はぁっ?! あれ高かったのにパチモンなのか?!」

 

 一誠の叫びは最もだ。一誠が愛用している『萌え萌え目覚し時計』は人気商品であり、手に入れるのに苦労したのだ。それをパチモン等と言われたらショックを受けてしまう。一実は箱から時計を取り出すと、枕元に置かれた一誠の時計と比べるように並べた。

 

「な、見た目だけでもこんだけ違うんだ」

「確かに……こっちの方がデザインに凝ってるな……細部の色使いも丁寧だ」

 

 並べられた二つの時計。一実が買ってきた時計を見ながら一誠が呟く。一見違いは無いように見えるが、二人の目には全くの別物として写っていた。

 鮮やかなピンクを主体とした本体。文字盤に描き込まれた、細部まで技工を凝らしたイラスト。時計の短針と長針の先端は小悪魔の尻尾の様な造りをしている。音声が出るスピーカー部分も、全体の雰囲気を壊さないように隠され、しかし音声を遮らないようにされている。

 時計一つに注ぎこまれる熱意は、思わず息を呑むほどに強烈だった。

 

「……一実、幾らしたんだコレ」

 

 恐る恐ると値段を尋ねる一誠。細部へのこだわりを感じるデザインと、パチモンでは真似できない萌えへの熱意。そして、箱の商品説明欄に記載されいた台詞、それはパチモンとは違い、萌え属性への理解が感じられた。しかもパターンが個別で数十種類存在している。

 そんな一品が、安いはずがない。一誠の質問に対して、一実は森羅万象を悟った聖人の如き表情……果てしなくウザいドヤ顔で宣言した。

 

「税込二万七千円だ」

「っ!」

 

 それは、パチモンの実に約二倍の値段であった。この手の時計にしては中々高額だが、一誠の驚愕はそこではなかった。

 

「そんな、そんなに安いのかっ……! このクオリティでっ!」

「ああ、しかもだ兄貴。コレを見ろ」

 

 一実が箱に付属していた袋を破り、一誠に見せる。小さめのカードに見えるそれには『えっちな声で起きたい貴方のための妹ボイス』と、大文字で記載されていた。

 時計内部に挿入することで、ボイスを変更できる。しかも破られた袋には別バージョンの存在さえ書かれていた。圧倒的なまでのこだわりを感じずにはいられない。

 

「俺は、俺はこんなにも素晴らしい物の存在を知らなかったのかああああああ!」

 

 パチモンなど、足下にも、いや、同じ土台にすら届いていなかった。

 自分の無知に嘆く一誠に、一実は笑顔で言った。

 

「兄貴、これは兄貴のだ。オレのはもう部屋にある」

「か、一実ぃいいい。お前は本当に自慢の弟だぁぁぁぁ」

 

 笑顔の一実が、一誠には天使にすら見えた。

 だが、一誠は少し引っ掛かるところがあった。一実は基本的にお小遣いを無駄に浪費する性格ではない。一誠に何かお土産を買ってくる事は良くあるが、今回のように高額な買い物は初めてだ。それに、いつもより機嫌が良いことに今更ながら一誠は気が付いた。

 

「なぁ一実、お前なんか良いこと有ったろ」

「お、流石兄貴。分かっちゃうか?」

「流石にな」

 

 一誠のあまり良くない頭でも、一実の様子から考えれば自然と答えは出てくる。しかも一実がつい上機嫌に浪費してしまう程に喜ばしいことに、一誠も少し気になってくる。

 

「何があったんだ?」

 

「ふふふ、実はな、小猫ちゃんが漸くオレと一緒に弁当を食べてるときに喋ってくれたんだよ! 凄くね? めっちゃ凄くね?」

 

 心底嬉しそうに話す一実。それもその筈。一実が入学して一日目から一目惚れした、学校のマスコット的存在である塔城小猫に対して行っていたアピールがやっと実を結んだのだ。

 積極的に話し掛け、何とか話題になるキーワードを見つけ出し、お菓子作りにすら手を出した。誰の目から見てもゾッコンであり、それは兄の一誠もよく知っていた。

 それ以前に一実の学校の話題は九割小猫に関する事であり、もはや耳にタコが出来るレベルであった。いつも一緒につるんでいる友人の一人にロリコンがいるため、小猫の幻影で見えそうになるほどだ。

 そんな事はさておき、一実の進展に一誠は素直に喜んだ。

 

「やったじゃねぇか! 食事中は無視られるっていつも言ってたもんな」

「うん。やっと、少し気まずい空気で弁当を食べる必要がなくなるぜ」

 

 茶色のアホ毛を尻尾のようにブンブンと振って喜びを表す姿は犬のように思えて、見ていると一誠も何だか嬉しくなってくる。

 「このまま順調に行けば……むふっ」と怪しさ満点で呟いていた一実が、ブンブンと激しく振っていたアホ毛を突然ピンッと立ち上がらせ、思い付いたとばかりに一誠に言った。

 

「なあ、兄貴。夕麻さんとデートに行く予定は勿論あるよな?」

「ん? ああ、行けるなら行きたいな。初めての彼女だし、大事にしないとな」

「じゃあ、一緒に考えようぜ! オレもいつか小猫ちゃんと一緒に行くときの参考にしたいし」

 

 楽しそうに笑顔で話す一実。妄想で小猫とのデートまで言ったのかと呆れを覚えるが、一誠としても有り難い申し出に了承の意を伝えた。

 

 二人はその後、母に夕飯だと呼ばれるまで話し合い、食後もデートの計画で会話に花を咲かせた。

 

「ラブホは確定だよな」

「いや待て一実。俺は洋服店とかの方が良いと思うぜ」

「じゃあ、小物とかは? 後、スウィーツバイキング的な場所もいったりしたら退屈しなさそうだな」

「お、良いな。んじゃーーー」

 

 二人の『デート成功作戦』会議は両親に怒られるまで続いた。

 

 一実は、夕麻の写真を見て覚えた違和感など、この時には完全に忘れてしまっていた。

 

「てかさ、一実……」

「どした改めて」

「俺さ、彼女とか初めてだからどんな態度で接したらいいか分かんねぇ」

「オレに聞くな喧嘩売ってんのか。兄貴は兄貴らしく、兄貴っぽさを演出すれば大成功だろ」

 

 投げやり気味に言ったこの言葉が、本当に効果があるとは、一実のブラコンセンサーをもってしても予想外であった。




初投稿につき、至らない点も御座います。不備を見つけた際はご気軽にご報告お願い致します。
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