全体的に強化してみたハイスクールD×D 赤龍帝とブラコン弟   作:空騒

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lifa.2 怪しい彼女とストーキングミッション

 兵藤一実には兄がいる。

 

 エロ猿で、性欲の権化で、犯罪一歩手前のスケべ行動に青春を費やす。

 一実が通う駒王学園では、女子生徒の比率が高い。数年前まで女子校であったからそれも仕方のないことだ。

 故に、そんな環境でスケべ行動をした場合どうなってしまうかは火を見るより明らかだ。一誠は蛇蝎の如く嫌われており、評判はあまり良くない。だがそれも最早名物扱いになっている側面もある。一誠が陰気な性格であったなら、イジメやら嫌がらせやらを受けた可能性もあるが、彼の明るい性格によりそんな問題はなかった。

 

 兄弟に有名人である一誠を持つため、一実も入学当初は話題になった。勿論、「変態が増える」というマイナスな方向でだが。

 一実に不名誉な噂が飛び火した事で、一誠と愉快な二人が謝罪をした事件は駒王学園では一種の伝説となっている。当の一実は一目惚れした小猫の追っかけに全力を注いでいた為にそんな事は毛程も気にしていなかったという事は、兄弟の間ではもう笑い話だ。

 

 一実は、そんな兄が大好きだ。いつも笑い合って、背中を押してくれる兄が。いつも辛い時に手を伸ばしてくれる兄が。

 泣いていると必ず助けてくれる兄を、一実は心の底から敬愛している。

 

▼△▼

 

「こんにちは、一実くん」

 

 一誠に彼女が出来た数日後の休日。両親が仲良く出掛けた、昼を少し過ぎた頃の兵藤家に彼女は現れた。

 

「あぁ、どうも初めまして。兵藤一実です。兄がいつもお世話になってます」

「貴方のお話はいつもイッセーくんから聞いてるわ。とってもいい子だって」

「そんな事はありませんよ。うちでも夕麻さんの自慢を良くしています」

「ふふ、愛されてる実感が持てて幸せだわ。イッセーくんを好きになれて良かった」

 

 柔らかい物腰で会話をする一実と夕麻。その横で一誠は恥ずかしげに頬を掻いている。

 

「あっ、お茶も出していませんでしたね。すみません、今用意しますから、兄と一緒に座っていて下さいね」

「ええ、分かったわ。わざわざありがとうね」

「か、一実、お茶ぐらいなら俺が」

「兄の彼女と二人きりとか気不味くて泣くわ。いいから座ってなって」

 

 お茶を用意するために立ち上がる一実に、自分が変わろうと声を掛ける一誠。その言葉をばっさり切るとさっさと台所へと向う一実。

 

 台所の戸棚から茶葉を取り出し、急須に入れる一実の後ろで、一誠と夕麻の会話が聞こえる。「一実が」という単語が聞こえる為、一実の事を話題にしている事が分かる。

 楽しそうな声音をバックに、一実は思考していた。思考しているのは、兄の彼女である天野夕麻についてだ。

 柔らかい物腰と、随所に見える兄を立てるような言葉。見た目は、写真よりも美しく、一実にとっては残念な事だが胸はそれなり以上に豊満だった。これだけなら、いい彼女に巡り合ったと喜ばしく思えた。

 だが、一つだけ気になる点が存在した。

 

「……あの目」

 

 一実と一誠を見る、目。言葉にするのがひどく困難だが、一実にはとても不快であり、会話するのも息苦しかった。だから、自分からお茶の用意を建前に一度戦略的撤退をしたのだ。

 

 オレは好きになれない。

 

 それが、一実が天野夕麻に抱いた率直な感想だった。

 一実は、熱いお茶の入った急須と三人分の湯呑みをお盆に乗せると二人の居る和室へと歩き出す。

 今は巧く隠しているが、どうせいつかボロを出して破局するだろう。兄には悪いが、これも勉強になるだろう、と夕麻から向けられた目を性格の悪さを隠しているのだと解釈した一実はそう断じた。

 

 襖を開くと、夕麻と一誠が笑顔を向けた。夕麻から感じる不快感を兄の笑顔を見る事で噛み潰しながら、一実は笑顔を作った。

 

 

 

 天野夕麻は夕方には帰宅すると、入れ違いに両親が帰宅し、そのまま夕食になった。

 

「なあ、一実。夕麻ちゃんに会ってどうだった?」

 

 モゴモゴと口に白米とおかずのハンバーグを詰め込みながら、少し聞き取りづらい声で一誠は一実に訪ねた。

 

「イッセー、食べながら喋るのはお行儀が悪いわよ」

「そうだぞ兄貴、てか何言ってんのかよく分かんねぇ」

 

 即座に母と弟に指摘され、米とハンバーグを飲み下した。改めて発言しようとした瞬間、しっかりと一誠の言葉を聞き取っていた父が疑問を投げ掛けた。

 

「イッセー、夕麻って誰だ? 新しい友達か?」

「あれ? 言ってなかったっけ。俺の彼女だよ」

 

「は?」

 

 何気なく言い放たれた言葉に、一実以外の二人が固まった。

 無意識に爆弾を投下してしまった事に気付き、一誠があっ、と声を漏らした時にはもう遅い。再起動した両親が鬼気迫る表情で詰め寄ってきた。

 

「イッセーっ! それは本当か! 誰だ! 知り合いか! 俺達が会ったことあるか! 顔は、性別はどんなだ! 美人なのかっ! お前の妄想じゃないよなっ!!」

 

「イッセー! 何処の出身か聞いた! 性格はどうなの! 詐欺だったらお金ないから払えないわよ! 家柄は! 身元調査は済ませた?! 貴方の妄想じゃないわよね!」

 

 テーブルから身を乗り出した両親の質問攻めを受けて、目を回す一誠。ついでに質問内容が一実に比べて悲惨だ。特に母は詐欺被害の可能性まで指摘している。そして二人共一誠の妄想だという疑いを忘れない。

 

「ひでぇよ! 妄想なんかじゃねえよ!!」

「分からんぞ母さんっ! もしかしたら性欲の暴走で幻覚を見たのかもしれない」

「えぇ、一誠に彼女が出来るなんて夢物語到底信じられないわ!」

 

 状況は更に悪化する。

 一誠の肩を掴んでガクガクと揺らす二人。一誠はある意味厚い両親の信頼を感じて、本気の涙が零れそうになる。

 頼みの綱である一実も、三人の様子を眺めてケラケラと笑いながら気楽に食事を進めている。薄情な弟の姿を見て、強引に巻き込んでやろうと声を出した。

 

「疑うんなら一実にも聞いてくれよっ! 今日こいつに会わせたんだ」

「何だと。本当か一実」

 

 突然話を振られ、矛先は一実に向けられた。さあ、無実を証明してくれ、と思う一誠の視界に一瞬意地の悪い笑みを浮かべる弟が映った。

 

「何の事だか理解に苦しみますな」

 

 信頼する弟から発せられた裏切りの言葉。

 そして、さっさと自分の食器を片付け、ついでに使い終わった食器も下げると、一実はぱっぱと部屋から出ていった。

 

「一実ぃぃいいいいいい」

 

 兄の叫びを背中に感じながら一実は階段の手摺りを掴んで二階へと上がった。

 登り切って見える、兄の部屋の隣にある自室の扉を開いて電灯のスイッチを点けた。

 勉強机とベッド、その他細かな家具のある一般的な男子の部屋。ベッドの枕元に置かれた『萌え萌え目覚し時計』が妙に異彩を放っているのが特徴的だ。兄にプレゼントした物とは色違いであり、こちらの方が少し高価だったのは愛嬌だろう。

 一実は、勉強机に置かれたノートパソコンを開くと、椅子を引いて腰を下ろした。

 パスワードを入力してロックを解除し、ホーム画面からインターネットに接続繋げると通販サイトとメモ帳機能を表示する。

 タカタカとしばらくキーボードを室内に叩く音を響かせると、一階から一層大きな声が響き渡った。

 

「一実ぃいいいいカムバァアアアアック!!」

 

 救助を求める兄の叫びに、苦笑いを浮かべて一実は椅子から腰を上げた。面白そうだとしらを切ったのは一実であるため、一実はベッドに充電したまま放置してあるスマホを取ると、部屋の扉を開いて階段を降りた。

 

 一実の予想通りに、両親の説得に苦労している一誠の姿に大笑いして一誠の援護の為に一誠と夕麻、そして一実で一緒に撮った写真を両親に見せてやっと実在の人物であると信じてもらえた。

 しかし、その後別の意味で狂喜乱舞する両親を宥めるのに苦労するのは、流石に予想外だった。

 

 兵藤家のいつも通り平和だった

 

▼△▼

 

 太陽が登り始めて少しした、まだ薄暗い時間帯。朝早いどころではなく、いつも人が溢れている休日の街道も今はジョギングする人や部活に熱心な学生しか歩いていない。

 そんな時間に、一実は早朝から開店している喫茶店で朝食を摂っていた。

 基本的に休日は自宅で筋トレか読書を行う一実が、まだ寝てすらいない時間帯に外出しているのには理由がある。

 

「兄貴、緊張しすぎだろ……やっべ、超眠い……」

 

 モソモソと注文したサンドウィッチを食べながら見守っている兄が外出の理由である。

 この日は前々から計画していた一誠と夕麻の初デートの日だ。初めての彼女との初めてのデートともあり、緊張し過ぎたのか、一誠は五時に起床し一時間費やして身支度を整えると急いで待ち合わせ場所に向かった。お陰でまだ待ち合わせに三時間も猶予を残している。

 

「……あと三時間もあんじゃん。……本でも読むか」

 

 欠伸を一つ零すと、スマホのアラーム機能を三時間後に設定して、一実は小さいショルダーバッグから本を一冊取り出した。

 少し遠くに見える兄に目を向けると、一実は本へ視線を落とした。

 少し大きいサイズの分厚い本には、『樹木神話』と金糸で書かれていた。

 

 

 三時間後、暇と緊張を持て余した一誠が目の前を通るメガネっ娘を数えて三桁に突入し、一実が本を半分まで読み進めた頃になって、天野夕麻が到着した。

 アラームのバイブレーションでようやく気が付き、この日為に通販で秘密裏に購入した、側面に取っ手のついたオペラグラスで二人を見る。

 

「うしうし。『俺も今来た所だよ(大嘘)』クリアだな。テンプレはしっかりやらないとな」

 

 お約束な台詞を言う夕麻に、一誠もお約束な台詞を返す。初々しい一誠に一実は思わずほっこりした。

 二、三言葉を交わして歩き出す二人。一実は素早く会計を済ませると、長居したお礼を口にして二人を追った。

 

 一実がデートを尾行しているのには勿論理由がある。

 一つは、初デートでヘマをする兄を見て、帰宅後にそれを指摘して兄を弄り回そうと思ったこと。

 もう一つは、天野夕麻の一誠と一実に向けた目が気になり、兄が心配になったからだ。

 主目的は兄が初々しく気遣う姿に癒やされながら、いつか絶対にする小猫とのデートの参考にするため。

 順調に進むデートに軽い違和感を覚えながら、一実は人混みを避けて二人を一定の距離を保ってストーキングする。

 

「あ、すみません」

 

 突然、誰かとぶつかり反射的に謝罪を口にする。視線を向けると、フードを目深に被った人物と目が合った。実際には合ったかどうか分からないが、一実には不思議と合っているように思えた。

 

「……」

 

 フードの人物は無言でチラシを差し出している。どうやらチラシ配りをしているようだ。軽く内容を見るが、怪しいことこの上なかった。

 肩がぶつかってしまったため、断り辛く一実はチラシを受け取った。

 

「あっ……」

 

 チラシ配りの人は、一実がチラシを受け取るとさっさと人混みに紛れて消えていった。

 一瞬、何だったのだろうと思うが、自分の目的を思い出して即座に周囲へと視線を巡らせた。幸いなことに、兄の姿はブラコンセンサーで即座に見付かった。しかし、結構な距離が開いてしまっている。

 

「っ! やっべ、急がないとっ!」

 

 一実は素早くチラシをバックに詰めると、人混みを掻き分ける様に早歩きを始めた。

 カバンに「貴方の願い叶えます」と書かれたチラシを入れて。

 




基本的に進行はゆっくりとしていきます。ぱっぱとストーリー進めろタコぉ……と思われた方は申し訳ありません。
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