(相手はエルカーエス最強のマギ…最初から出し惜しみ無しで行くわよ!)
そう判断したパメラは早々に聖剣の解放を行う。
「
大剣と化したヴァイスジルバーを構えスピリティアに鋭い一閃を放つ。
「もぅ~!なんで毎度毎度誰も話を聞いてくれないのかな~!?」
その一閃を紙一重でかわしたスピリティアは、そんなことを嘆きながらパメラと距離を取る。
「逃がさないわよ!」
そんなスピリティアを逃がすまいと追いすがるパメラだが、唐突にスピリティアが反転して肘打ちを放ってきたことには面食らう。
その肘を何とか回避したパメラだが、スピリティアはその動きを予測していたかのように後ろ回し蹴りを仕掛ける。
「くぅっ!」
その一撃を咄嗟にガードし、魔法陣を潜り抜けてスピリティアとの距離を取る。
(瞬間移動…!)
「炎よ!」
スピリティアが体勢を立て直している隙に、距離を取ったパメラが炎を生み出して攻撃する。
(…どうやら状況に応じてあの魔法陣が発現する効果を色々と変える事が出来るみたいだね…結構厄介、かな)
炎をかわしつつスピリティアはそう分析する。実際にパメラの魔法は、聖剣で中空に魔法陣を描き、様々な奇蹟を顕現する魔法だ。この辺りの理解力は流石に実戦慣れしているといっていい。
「舞え、
パメラが無数の魔力の刃を生み出し縦横無尽に飛び回らせる。スピリティアがそれらを掻い潜りつつパメラに向かって一気に距離を詰める。
「甘いわよ!」
再びパメラが魔法陣の中に姿を消し、今度はスピリティアの背後に現れ聖剣を一閃する。
「お見通しだよ!」
しかしその一閃を回避すると、その勢いのままにパメラに浴びせ蹴りを食らわす。逆に不意を突かれたパメラは後頭部に強烈な蹴りをもらう。
「ガハッ…!」
たまらずによろめくパメラ。頭が下がったところにスピリティアがさらに掌底を叩き込もうとするが
「…シッ!」
パメラが咄嗟に放った斬撃に距離を取らざるを得ない。バックステップの反動でまたパメラとの距離を縮めようとするが、すでにその場にパメラの姿はなかった。
「足元がお留守よ!」
今度はスピリティアの足元に現れ彼女の足を払う。
「うわっとっとぉ!」
その斬撃を何とかかわしたスピリティアは、軽業師のようにバク転を繰り返しつつ距離を取る。
「ふぅ、今のはびっくりしたよ」
何とか避けられたことに安堵の溜息を漏らすスピリティアだったが、パメラはこれまでの攻防にかなり苛立っていた。
「…ローゼンベルク!なぜあなたは魔法を使わないの!私を侮辱するつもり!?」
「侮辱しているつもりはないんだけど…」
パメラの問いにスピリティアは困ったように頬を掻く。彼女としてはあまり事を荒立てたくないので、できれば魔法を使わずに制圧したかったのだ。
(…でも、そんなこと言ってる場合じゃないかも…この人、すごく強い。実行部隊のみんなと互角か、あるいはそれ以上かも…魔法を使わずに勝つのは正直無理っぽい、かな)
そう判断したスピリティアは、自分の手に周囲の魔力を集め始める。
「どうやらその気になったようね…!」
スピリティアのその姿にパメラは改めて聖剣を構え直す。そのうちにスピリティアの魔法が完成した。
「ゼーレゲヴェーア!」
パメラに向かって巨大な魔力弾を放つ。パメラはその攻撃を回避し距離を詰めようとする。
「そんな大技をそうそう喰らうと…!」
そのパメラの言葉は途中で遮られた。巨大な魔力弾の陰からさらに四つの魔力弾がパメラの動きを追尾してきたからだ。
「この威力の魔力弾を連発!?そんなことが…!」
回避しきれないと判断したパメラは魔法陣で障壁を張りその攻撃を受け止める。その隙にスピリティアが突っ込んできてパメラの額に肘を叩き込んだ。
「痛ったぁ…!」
また追撃をかけられたらたまらないと、パメラはまたも瞬間移動で距離を取る。しかしスピリティアはパメラが現れると同時に、小型の魔力弾を猛烈な勢いで連射し始めた。
「くそっ!」
パメラもすかさず魔力の剣を生み出し応戦する。しかし連射速度が速すぎて相殺しきれない。
(速すぎる…!これじゃあ間に合わない…!)
相殺しきれなかった魔力弾がパメラを襲う。防御陣も間に合わず直撃を喰らってしまった。
「きゃああああ!」
襲い来る衝撃にパメラの頭が眩む。一瞬で意識ははっきりするものの、その隙にスピリティアは既にパメラの懐に潜り込んでいた。
「しまっ…!」
「ごめんね。しばらく大人しくしててね!」
そう言ってスピリティアは零距離から魔力弾を叩き込もうとする。…が
「っ!」
嫌な気配を感じ咄嗟にその場を飛び退く。次の瞬間、スピリティアがいた位置に巨大な雷が落ちてきた。
「パメラ!無事か!?」
「ラクサス!来てくれたのね!」
そこには、何者かの戦闘音を聞いたラクサスが駆けつけていた。
~~~~~~~~~~
(新手…!?こんな時に…!)
新たに表れた相手にスピリティアも警戒を露わにする。その間にラクサスはパメラの近くに駆け寄って尋ねた。
「パメラ、あいつは何モンだ?」
「あいつはエルカーエスの実行部隊の一人よ…!こんなところで兵を集めて何をしてるのかは知らないけど、こいつらの好きにさせちゃいけないわ!」
怒気を含んだ声音でパメラがそう吐き捨てる。その言葉を聞いてラクサスも臨戦態勢だ。
「いやいやいやいや!だからそれは誤解なんだって!」
スピリティアが改めてそれを否定するが、ラクサスもまた怒りを秘めてこう言った。
「事情はどうあれ、お前は俺の仲間を攻撃してたんだ…落とし前はつけさせてもらわねぇとな…!」
(あ、だめだ。この人も話聞いてくれそうにないや)
そんなラクサスの様子を見てスピリティアは一瞬遠い目をする。
「ラクサス、この女はとんでもない強敵よ…卑怯だろうとなんだろうと、ここは二人がかりで打ち倒すわよ!」
「もとより正々堂々なんてするつもりはねぇ…仲間を傷つけてくれた礼はきっちり返すぜ!」
ラクサスとパメラが同時に動き出す。パメラは魔力の刃でラクサスの動きを援護し、それを受けてラクサスもまっすぐスピリティアの下へ向かう。
(あーもう!とにかく切り替えないと…!)
スピリティアは片手で小型の魔力弾を連射して魔力の刃を相殺しつつ、もう片方の手でラクサスに巨大な魔力弾を放つ。
「…ふん!」
それを回避したラクサスはそのままスピリティアに雷撃を放つ。スピリティアはそれを回避しながらラクサスから距離を取る。
「もらった!」
そこにいつの間にか現れていたパメラがスピリティアに斬撃を放つ。
「うひゃあ!」
予期せぬ不意打ちを喰らったスピリティアは咄嗟にその場を飛び退く。
「レイジングボルト!」
その機を逃さずラクサスが強烈な雷を落とす。避けきれないと判断したスピリティアは腕に周囲の魔力を集めてそれを受け止めた。
(俺の雷を受け止めやがった…!)
予想外の事態に驚愕するラクサス。しかしパメラはそれにも構わずスピリティアに積極的に攻撃を加える。
「っと…!」
パメラの斬撃を回避したスピリティアはそのままパメラに膝を打ち込もうとするが、その前にパメラは魔法陣を潜り抜け別の場所に現れる。
「大地よ唸れ!」
パメラが地面に魔法陣を描くと、岩の波ともいえるものがスピリティアを襲う。スピリティアは慌てずに巨大な魔力弾でその岩を粉々に砕く。
「俺を忘れてもらっちゃ困る…!」
そんなスピリティアの背後にラクサスが現れ
「雷竜の顎!」
雷を纏った両拳をスピリティアに思い切り叩きつける…が
「…ごめんね、忘れてたわけじゃないん、っだ!」
その一撃さえも受け止めたスピリティアは、そのままラクサスに強烈な魔力弾を叩きつけた。
「ぐおぉっ!」
たまらずに吹き飛ばされるラクサス。即座にパメラがスピリティアの足元に現れ足を払おうとするが
「同じ手はそう何度も喰らわないよ!」
逆にスピリティアからカウンター気味に膝を喰らい、その場でたたらを踏んでしまう。直後に魔力弾を叩き込まれて吹っ飛ばされる。
「ぐはっ!」
「パメラ!大丈夫か!?」
吹き飛ばされたパメラをラクサスが受け止める。パメラはそれに軽く笑みを浮かべて応えた。
「…えぇ、まだまだ余裕よ」
その言葉でまだ平気そうだと判断したラクサスはパメラを降ろす。
「しかしなんだあいつは…俺たち二人をこうまで圧倒するなんざ、ジジィやギルダーツのおっさんにもできねぇぞ…」
「私も知らないわよ…確かに相手はエルカーエス最強のマギだけど、ここまで出鱈目な強さをしてるなんて思ってなかったもの…」
「闇雲に攻めても勝率は低そうだ…何とか奴の体勢を崩して、その隙に二人同時に大技を叩き込むぞ」
「わかったわ」
そう言って二人は散開する。そして遠間から小技を連発してスピリティアの気を削ぐ
(二人とも攻めてこなくなった…何を考えてるの?)
スピリティアそれを軽く捌きながら二人の狙いに思案を巡らす。と、唐突にパメラの姿が消えてスピリティアの背後に現れた。
「だから同じ手は喰らわないって…!」
慌てずにそれを迎撃しようとしたスピリティアだが、パメラはこちらに攻撃することなく再び姿を眩ます。意表を突かれたスピリティアの眼前にラクサスが現れ拳を構える。
(フェイント!?でもこの位なら…!)
そのラクサスの動きにも合わせて魔力弾を叩き込む…がその直前にラクサスの姿が雷となって掻き消える。
(こっちもフェイント!?なら本命は…)
スピリティアがそう思案した直後
「大地よ!」
パメラの声と共に大地が大きく跳ね、スピリティアを空中に投げ飛ばす。
「まずっ…!」
投げ飛ばされたスピリティアは視界にパメラとラクサスの二人を捉える。二人とも非常に魔力が高まっており、同時に大技を叩き込むことは明らかだ。
「白銀に…」「雷竜の…」
パメラの聖剣がさらに巨大化し、ラクサスも大きく息を吸い込み
「散りなさい!」「咆哮ぉ!」
二人同時に渾身の一撃を放つ。その二人の攻撃は溶け混ざり合い、巨大な雷の斬撃と化してスピリティアを襲う。
(これって
予想外の事態にスピリティアは戦慄する。回避しようにも空中では身動きが取れずに
「きゃあああああ!!!」
その魔力の奔流に飲み込まれた。
~~~~~~~~~~
「ハァッ…ハァッ…これでどうだ…?」
ラクサスが荒い息をつきながらそう尋ねる。
「ハァッ…流石にいくらなんでも…やったでしょっ…!」
パメラもまた荒い息をつきながらそう答える。…しかし
「痛たたた…今のは結構効いたよ…」
そんな声が響き渡り二人は戦慄する。そこにはスピリティアが平気な様子で尚も佇んでいた。
「マジかよ…!俺たち二人の全力攻撃が『結構効いた』で流されちまったぞ…!」
そんなラクサスの驚愕の声に答えているのかいないのか、スピリティアは語り始めた。
「いやほんと、あなたたち二人ともすごく強いよ」
そう言うスピリティアの魔力の質が大きく変わり始める。
「正直言って、手加減しながらじゃ勝てないから…」
スピリティアの髪の色が金から橙に変わっていき…
「ここからは………本気で行くよ!」
そう言って面を上げたスピリティアの顔は、これまでの困惑交じりの表情から一転して、強い意志と決意を秘めた表情となっていた。
「ルストアーテム!」
周囲の空気が急速にスピリティアの手に集まっていき、圧縮された空気弾となってラクサスに向かって放たれる。
「ぐほぉっ!」
超高速で飛んでくる空気弾は消耗した体では回避しきれずまともに喰らってしまう。
「ラクサス!?くそっ!」
パメラがスピリティアに向かって斬りかかっていく。スピリティアの髪が橙から紫に変わっていき
「グロールシュヴェート!」
その手に赤黒い魔力の刃を生み出してその斬撃を防ぐ。そしてそのままパメラを弾き飛ばすと
「絶技開眼!」
そう叫びながら刃を振るう。とパメラの周囲から無数の剣閃が現れパメラを襲う。
「きゃあっ!」
防ぎきれずにいくつかをもらってしまい、片膝をつくパメラ。その脇からラクサスが現れ
「雷竜方天戟!」
スピリティアに向かって雷の戟を投げつける。今度はスピリティアの髪が黒に変色し
「ガイスターヴァンド!」
周囲に現れたビットのようなバリアがその雷を掻き消してしまう。間髪入れずに髪の色が青に変わり
「クラーゲハルニッシュ!」
ラクサス達の足元から水の竜巻が生まれ二人を天高く投げ飛ばす。
「クッ…!これはまさか…!」
二人がスピリティアの方を見ると髪の色が赤と金のグラデーションとでもいうように変わっており、その手には先ほどとは違う、白銀に輝く魔力の刃が握られている。
「そんな…!まさか…!」
パメラが驚愕するのもつかの間、その魔力の刃が巨大化し
「目覚めよ……ヴァイスジルバー!」
先ほどパメラが放ったのと同質の剣閃が放たれる。と同時に大きく息を吸い込み吠えた。
「雷竜の……咆哮!」
「反則だろそれ…!」
ラクサスが思わずそんなことを口にしてしまう。スピリティアが放った二つの魔法は先ほどと同じく巨大な雷の刃と化してラクサス達を飲み込んだ。
「うおああああああああああ!!!!!」
もはや抵抗することも叶わず、二人はそのまま地面にたたきつけられてしまった。
「…ぐっ…パメラ…生きてるか…?」
倒れ伏したままラクサスはそう問いかける。パメラも同じような姿勢のまま答える。
「…な…何とか…でも…もう動けない…」
そんな二人の前にスピリティアが歩み寄る。その髪の色は元の金髪に戻っている。
「勝負あり、だね」
そう勝利宣言をするスピリティア。実際スピリティアはここまでしても息一つ乱れておらず、まだまだ余力を残していた。
「威力は抑えておいたからすぐにダメージは回復すると思うよ。ちょっと手荒なことになっちゃったけど、とりあえず話はそれから、ね?」
そう言って微笑むスピリティア。実にきれいな笑顔だったが、二人の目にはそれが悪魔の微笑みに見えた…
ノリノリで書いてたら戦闘シーンだけでえらく長くなってしまった…誤解が解けるのは次回に持ち越しとなります。
ティアをちょっと強く設定しすぎたかなぁ…でもティアは設定上なんぼでも強く出来るし、この位へーきへーき。