黒十字と雷の妖精   作:ジェネクス

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スピリティア VS シェラハ

「痛つつ…何だったんださっきの奴は…」

 

投げ飛ばされた衝撃に顔をしかめつつラクサスが起き上がる。どうやらかなり遠方に飛ばされたらしく周囲にパメラたちの気配がまるで感じられない。

 

「どこまで投げ飛ばされやがった…あの女、なんて馬鹿力してやがるんだ全く…本当に女だったのかあいつ…」

 

一瞬見えたシルエットから下手人は女だと判断したラクサスだったが、その女が発揮したとてつもない怪力にその推測をつい否定したくなってしまう。

 

「とにかくさっさと合流しねぇとな…一人でうろついてんのはまずい…しかしパメラたちは一体何処に居るのか…!」

 

異様な気配を感じてラクサスが振り向く。そこには先ほど仕留めた合成獣(キメラ)とは違うタイプのものが4体ほどこちらを睨んでいた。

 

「…フン、さっきとは違うタイプのようだが、どの道俺の敵じゃねぇよ!」

 

そう言ってラクサスが雷撃を放つ。その雷は確かに合成獣(キメラ)たちを直撃したのだが、先ほどとは違いどの合成獣(キメラ)も平然と佇んでいた。

 

「…チッ、雷耐性を持つ合成獣(キメラ)かよ…また厄介なもんを持ち出してきやがったが…」

 

そう呟いたラクサスの魔力が膨れ上がる。その威圧感に敵意を剥き出しにしていた合成獣(キメラ)たちも怯んでしまう。

 

「その程度で俺をどうにかできると思ったら大間違いだ…!」

 

竜の如き牙を剥いて、ラクサスは合成獣(キメラ)たちへ切り込んでいくのだった。

 

 

 

~~~~~~~~~~

 

 

 

「舞え、(シュヴェート)!」

 

パメラの放った魔力の剣が合成獣(キメラ)たちの体を斬り刻む。図体の大きい合成獣(キメラ)には致命打にはならないが、その攻撃は確実に合成獣(キメラ)の動きを削いでいた。

 

「…ハァッ!」

 

パメラは動きの鈍った合成獣(キメラ)の首を一閃で落としにかかる。異形の怪物といえども首を落とされれば絶命するらしくピクリとも動かなくなる。

 

「まったく、面倒くさいわね…!一撃で仕留められれば楽なんだけど…!」

 

合成獣(キメラ)を屠りながらパメラが愚痴る。パメラの魔法は基本的に何でもできる代わりに威力は特筆するほど高くはない。大剣状態ならば威力は上がるが、大剣状態になると魔力の消耗が激しくなるので、終わりの見えない戦いにおいてはあまり使いたくない。そのためパメラは通常モードで合成獣(キメラ)の体力をちまちまと削っているのだ。

 

(それにしても…さっきの女、どう見てもシェラハだったわよね…あんな馬鹿力の女なんて他にいるはずもないし…)

 

合成獣(キメラ)の相手をしながらパメラは先ほどの闖入者に思いを巡らす。シェラハはパメラにとっても元同僚なのでどうしても気になってしまう。

 

(まさかあいつ、ギドってやつに味方してるんじゃ…!相変わらず何考えてんのよあの女は…!)

 

元同僚とは言え元々パメラとシェラハは仲が悪かった。正確には碌に任務を果たそうとしないシェラハに対しパメラが一方的に苛立っていたのだが、そんな関係のためシェラハがギドについていることについて、疑問に思うより怒りが先に湧いてくる。

 

「っと、今はシェラハの事なんてどうでもいいわ。さっさとこいつらを蹴散らしてラクサス達と合流しないと…!」

 

そう気持ちを切り替えながら、パメラはまた一体合成獣(キメラ)の首を斬り落としたのだった。

 

 

 

~~~~~~~~~~

 

 

 

「…メェ~ン、酷い目にあった…」

 

シェラハに思い切りぶん殴られた一夜は、ボロボロになりながらも何とか立ち上がった。

 

「しかしまずいですな。ラクサス殿たちとはぐれてしまった。パメラ嬢も別の方向に投げ飛ばされていたから、今は四人全員がはぐれてしまっていることに…!」

 

殺気を感じた一夜はすぐさまその場を飛び退く。次の瞬間、一夜のいた場所が巨大な爪で引き裂かれていた。

 

「むぅ…!先ほどと同じタイプの合成獣(キメラ)…!しかも五体ですか…!」

 

合成獣(キメラ)の数の多さに一夜に焦りが浮かぶ。自分一人では少々荷が重すぎるかもしれない。

 

『ゴアァッ!』

 

次々と襲い来る合成獣(キメラ)の攻撃を何とかかわし続ける一夜――だが、その時彼は合成獣(キメラ)の発する“香り”に気付いた。

 

(これは…苦痛の香り(パルファム)…!)

 

一夜は合成獣(キメラ)たちから一旦大きく距離を取る。そして静かに語り始めた。

 

「…そうか。お前たちは…今も、苦しんでいるのだな…当然か、勝手に様々な動物の因子を組み込まれ、魔術処理を施され…苦しくないはずがない…」

 

そう語りながら懐から筒を取り出す。

 

「私には想像も出来ぬ苦しみだろう…そして、その苦痛を取り除いてやることも出来ない。私に出来るのは…」

 

その筒の香気をゆっくりと嗅ぐ。

 

「せめて、その苦しみから最期に解放してやる事のみ…防壁の香り(ブロック・パルファム)…」

 

防壁の香り(ブロック・パルファム)”――香り魔法の効果を自分のみ無効にする香り(パルファム)。彼がこれを使うのは、普段仲間といるときは封印している“攻撃用香り(パルファム)”を使用する時である。一夜はその中から特に厳重に封印されている筒を取出し、香気を撒いた。

 

「安らぎの香り(パルファム)…」

 

その香りを嗅いだ合成獣(キメラ)たちは皆その場に座り込み、そのまま倒れ伏してしまう。

 

「…せめて最期だけは苦しみを忘れ、安らかに逝くがいい…」

 

“安らぎの香り(パルファム)”――その名前とは裏腹に、香気を嗅いだ相手を“安楽死”させるという極めて強力、かつ危険な香り(パルファム)である。この香気を嗅いだ合成獣(キメラ)たちは皆、眠るように死んでいた。異形の顔ながらその死に顔は何処か安らぎに満ちているように思える。

 

「………」

 

一夜は死した合成獣(キメラ)たちに静かに祈りを捧げ、ラクサス達と合流すべく移動を開始した。

 

 

 

~~~~~~~~~~

 

 

 

「ゼーレゲヴェーア!」

 

ティアが周囲から集めた魔力で弾丸を形成し、シェラハに向かって放つ。シェラハはそれを戦鎚でガードすると、そのままティアに向かってその戦鎚を振り下ろした。

 

「フッ!」

 

ティアはそれを大きくバックステップしてかわす。シェラハが戦鎚で地面を叩く度に地面が大きく揺れて足を取るが、宙に居ればひとまずその揺れから回避できる。

 

「これならどうかな!」

 

ティアが魔力弾を高速連打する。シェラハはそれに慌てずに即座に森の木々の間に紛れる。ティアの放った魔力弾はそのほとんどが木々に阻まれシェラハには届かない。

 

「クッ…!」

 

「フフフ、甘いわねぇティア。そんな低威力の魔力弾なんか、障害物の多い森の中じゃ何の役に立たないわよ?」

 

木々に隠れながら得意げに語るシェラハ。

 

「だったらチャージ弾で木々ごとなぎ倒すまでだよ!」

 

そう言ってティアは魔力をチャージし特大の魔力弾を放つ。それは森の木々を容易くなぎ倒すが、その跡には既にシェラハの姿はなかった。

 

「ボーっとしてちゃ、ダメでしょう!」

 

いつの間にかシェラハは天高く跳躍しており、その落下の勢いのままにティアに戦鎚を叩き込もうとする。

 

「ボーっとなんてしてないよ!」

 

その攻撃を紙一重でかわしたティアはそのままカウンター気味に魔力弾を叩き込む…が、超重量の戦鎚を持つシェラハは大きくは吹き飛ばず、逆にそのままその戦鎚をフルスイングしてくる。

 

「うひゃあ!」

 

直前の地響きで体勢を崩されていたティアだが、何とか体勢を立て直してその一撃をギリギリで回避する。シェラハの戦鎚による攻撃はスピードは凄まじいものの、動き自体は大振りなので回避しやすいのが救いだ。

 

「ほらほら!どうしたの!?」

 

シェラハが再び戦鎚で地面を叩くのでそれに合わせてティアも跳躍する。が、突如としてティアの足元の地面が隆起しティアを狙う。空中にいたティアはそれを回避できずまともに喰らってしまう。

 

「かはっ…!」

 

たまらずにえづくティア。間髪を入れずにシェラハが得物を手放し、猛烈な勢いでティアに迫り跳び膝蹴りを打ち込む。強烈な一撃をもらいよろめくティアに対し、シェラハはさらに追撃の手を緩めずティアに鉄拳を叩き込もうとする。

 

「…いつまでも好き勝手にはやらせない!」

 

ティアはその拳を大きくスウェーバックしてかわす。同時に魔力弾を猛連射してシェラハを牽制する。

 

「フフフ!盛り上がってきたわねぇ!」

 

その魔力弾を何発か喰らうもまるで意に介さず、シェラハはまっすぐ戦鎚の下に駆けより拾い上げる。そしてその勢いのまま戦鎚を思い切り振りかぶり――

 

「せーのっ…カキーーーーーン!!!

 

近くに立っていた樹を思い切りぶっ叩いた。その一撃を受けた樹は容易く折れそのままティアのところへ飛んでいく。

 

「なんて滅茶苦茶…!」

 

予想外の攻撃に面食らいながらも何とか飛んできた樹をかわす。しかしシェラハは全く気にせず次々と近くの木々をティアのところに打ち続ける。

 

(相変わらず破天荒というか、出鱈目な戦い方をするねシェラハは…!)

 

飛んでくる木々を避けつつティアはチャージしておいた魔力弾を繰り出す。シェラハはその魔力弾を戦鎚によるガードで防ぐと同時に、近くにある樹を無理矢理引っこ抜いてティアに叩きつける。

 

ティアはその一撃を潜り抜けてシェラハの下へ一直線に駆け寄る。シェラハも予測済みとばかりに戦鎚を構え直す。

 

「ほぅら、そこでしょう!」

 

シェラハが戦鎚を思い切り叩きつけ、ティアの足元の地面を隆起させる。しかしティアはその勢いを利用して天高く跳び上がり、真下のシェラハに向けて特大の魔力弾を撃ち込んだ。

 

「ぐはぁっ…!」

 

その直撃を受けたシェラハは流石にたまらずよろめいてしまう。しかし次の一瞬には心底楽しそうに豪快に笑って見せた。

 

「アハハハハ!流石はスピリティアね!やっぱバトルってのはこうじゃなくちゃ面白くないわ!」

 

そんなシェラハの様子を見ながら地面に降り立ったティアは、懇願するような顔つきでシェラハに言った。

 

「…ねぇ、もうこの辺でやめようよ。私たちが戦うなんて不毛だよ…」

 

そんなティアの様子を見たシェラハは、小馬鹿にするような声で言い返した。

 

「はぁ?何言ってんの?ここまで盛り上がってんのにここで終わりなんてありえないでしょ?そんなの不完全燃焼もいいとこだわ」

 

「…元々私たちは帝国では数少ないマギ…同志だったじゃない…なのに同じマギ同士で争うなんて、伯爵の理想に反してるよ…」

 

その言葉を聞いたシェラハは眉をピクリと動かし、嘲りを込めた声でこう言い放った。

 

「何それ?ひょっとしてあなたたち、まーだマギがどうだの迫害がどうだの言ってんの?戦えもしない無能共がどうなろうと知ったことじゃないじゃないの。あなた達もあんな狂人の絵空事をいつまでも真に受けてちゃこの先進歩無いわよぉ?」

 

今度はその言葉にティアの眉がピクリと動いた。先ほどの懇願するような顔つきから一転、鋭い目つきでシェラハを見据える。

 

「…狂人ってひょっとして、伯爵の事…?」

 

「そうよぉ?マギ達が迫害されることのない世の中を創る、だっけ?無理無理、少なくとも帝国じゃそんな世の中なんて作れっこないって。そんなことを真顔で実現させようとしてる奴なんてどう考えても狂人でしょう?それでその実現のために帝国ぶっ潰そうとしたんだから語るまでも無くイかれてるわよねぇ。アッハハハ!」

 

突如ティアの魔力が大幅に膨れ上がる。髪の色が金から銀に変わり、漏れ出た魔力の残滓が森一帯を深い闇に包みこむ。

 

「…これは、確か伯爵の使ってた魔法…だったかしら?」

 

「イーヴィゲンダンケルハイト…炎と光、闇を操る魔法。その膨大な魔力はその残滓だけで周囲を永遠の闇へと誘う…」

 

静かな声で淡々と語り始める。シェラハはその様子を見ながら次の瞬間を心待ちにしているようだった。

 

「伯爵は確かに誤ったよ…娘を守るために帝国に反乱を起こし、帝国の罪のない国民を混乱の渦に落とし込み、最後は用済みとばかりに始末された…それは過ちを犯した伯爵の運命だったのかもしれない。だけど…」

 

そう言って顔を上げたティアの瞳には、静かな怒りと決意が秘められていた。

 

「伯爵の――ミヒャエル・ゼッペリンの掲げた理想は、決して間違いなんかじゃない!それを狂人の絵空事と罵るあなたを、私は許せない!だから、この伯爵の魔法で、あなたを倒す!」

 

そう強く言い放つティア。シェラハはその顔に最高に楽しそうな笑みを張り付けてこう言った。

 

「フフフ…ようやく本気になってくれたわねぇティア…さぁ、存分に楽しもうじゃないの!」

 

「楽しい勝負になんてならないよ。一方的に蹂躙するだけ…覚悟して、シェラハ!」

 

そうして両者は再び激突する。決着は近い――




思ったより長くなったので分割。このエピソードもちょい長くなりそうだなぁ…

ところでキャラの設定とかいります?FAIRY TAILキャラはともかくRKSキャラの場合は馴染みがない人も多いだろうし、三人出てきたわけだから設定とか必要な人もいるかなぁと思いまして。後書きに軽く載せるか設定として新規に枠を用意するかはともかくとして、とりあえず意見だけ頂けたら幸いです。
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