黒十字と雷の妖精   作:ジェネクス

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救出、そして決戦

「アッハハハ♪こりゃあ見事に負けちゃったわねぇ。降参だわ」

 

倒れたまま豪快に笑うシェラハ。自身が負けたことに関してまるで斟酌していないようだ。

 

「…とか言って不意討ちとか仕掛けてこないでしょうね…」

 

そんなシェラハをジト目で睨みつけるパメラ。

 

「大丈夫だと思うよ。一度負けを認めた以上、シェラハがそれを覆すような行動はとらないと思う」

 

ティアはそう言ってパメラを宥める。パメラは本当に大丈夫なのかといった視線を送っているが、ティアは大丈夫、と手を振ってシェラハに話しかける。

 

「シェラハ、あなたの道楽に付き合ったんだから、今度はこっちの質問に答えてほしいんだけど」

 

「いいわよぉ。何でも答えてあげるわ。好きなものは戦いとお酒。嫌いなものは面倒事と退屈。身長は173cmでスリーサイズは…」

 

「そういうのはいいからさ…」

 

こんな状況でもいつもと変わらない様子のシェラハに苦笑しながら、ティアは聞きたいことを尋ねる。

 

「あなたとギドは一体どういう関係なの?正直言ってシェラハが接点持つような人には思えないんだけど…」

 

「ん~?大した関係じゃないわよ?私がたまたまこの森をうろついてた所を変な連中…ギドの兵隊たちに絡まれてね。まぁそいつらは軽く蹴散らしたんだけど、その時にギドに声をかけられたのが始まりよ。合成獣(キメラ)の性能テストの相手として私を使いたいってさ」

 

「…あなたはそれにホイホイついて行ったわけ?」

 

パメラが呆れた顔でシェラハに問いかける。シェラハは当然、といった顔で答える

 

「だって色んな化け物相手に好きなだけ暴れられるんだもの♪そりゃあ一も二も無く飛びついたわよ♪」

 

「性能テストだったら好きなだけ暴れちゃ駄目でしょう…」

 

パメラは頭を抱える。シェラハが戦闘狂なのは彼女も知る所だったのだが、予想の斜め上の理由でギドについていたことを知って心底呆れ果てているようだ。

 

「もう一つ、あなたは私の事をどこで知ったの?私は()()()はフロイとズィヒテにしか話した覚えはないんだけど…」

 

「ん~……勘?」

 

「真面目に答えて」

 

飄々と答えるシェラハにティアが真剣な表情で問いかける。シェラハは手をひらひらと振りながら答える。

 

「そんな怖い顔しなくてもいいじゃない。実際のところはあなたのその力と、()()()があなたに随分とご執心だったことを受けて推理しただけよ?」

 

「推理って…あんな事は普通想像も出来ない事だと思うんだけど…」

 

ティアが尚も疑わしそうな目でシェラハを見る。その視線を受けてもシェラハはニヤついた笑みを崩さない。

 

「フフン、お姉さんの洞察力ってば結構鋭いのよ?」

 

どうやらこの件に関してはこれ以上話す気は無いらしい。ティアは嘆息しながら改めて言葉を投げかける。

 

「…最後に一つ、これが本題。……リリィは本当にまだ無事なんだね?」

 

ティアがこれまで以上に真剣な表情でシェラハに問いかける。そんなティアの顔を受けてもなおおどけた様子でシェラハが答える。

 

「それも間違いないわね。ギドはかなりの慎重派だから、妖精みたいな希少な研究材料は簡単に消費したりはしないわ。特に外部からの攻撃を受けている今のような状況ではなおさら、ね」

 

「リリィを物みたいに言わないでほしいんだけど…」

 

「私じゃなくてギドの主観よ。私は可愛い妖精だと思うわよ?ちょっと生意気ちゃんな感じはするけどねぇ?」

 

非難するような目で睨むティアを手をひらひらさせながら受け流すシェラハ。そこにパメラが割り込んで質問する。

 

「ギドが既にそのリリィって子を連れて脱出している可能性は?」

 

「それも無いわねぇ。まだネガ・マジックゾーンが展開されたままだから。あれってかなり高度な魔法だから、ギドがその場にいないと維持できないのよ」

 

「わかった。それだけ聞ければ充分だよ」

 

そう言って先に行こうとするティア。しかしパメラはまだ何かを言いたげにシェラハを見ている。

 

「あら、どうかしたのパメラお嬢様?」

 

そんなパメラをシェラハはニヤニヤとした顔で見ている。やがてパメラが口を開いた。

 

「……私は、まだ黒十字を諦めたわけじゃないわ」

 

「……?」

 

「確かに以前の私は舞い上がっていたかもしれない。思い上がって黒十字のみんなの事なんて知ろうともしていなかった。それは確かにあなたの言うとおりだったと思う。でも今後はそれを改めるわ。そして私は新しい、ただの道具じゃない誇りある黒十字を作り上げる」

 

「……それで?」

 

シェラハが意地の悪い笑顔でパメラに聞き返す。パメラはその重圧をはねのけてシェラハに言う。

 

「…だから、その時はあなたにも仲間になってほしい。今度はあなたにも認められるような隊長になって見せるから、私の作る新しい黒十字、その一員に…」

 

そう言うパメラの表情は、かつての隊員を顧みない傲慢な態度は何処にも無い、毅然とした顔をしていた。

 

「……ふ~ん、ちょっとは成長したみたいね。世間知らずのお嬢様がようやく周りに目を向けることを覚えたってところかしら?」

 

感心したかのように目を閉じるシェラハ。いつも傍若無人な彼女が、この時は妹の成長を喜ぶ姉のような顔をしていた。

 

「シェラハ……」

 

「……ま、考えといてあげるわ。あなたに本当にそんなことが出来るのか、お手並み拝見と行きましょうか」

 

そう言って起き上がるシェラハ。ダメージは既に回復したらしく、既にしっかりとした足取りをしている。そのまま出口に向かって歩いて行った。

 

「…えぇ、見ていなさいシェラハ。このパメラの力、あなたにも認めさせてあげるわ」

 

そのパメラの言葉を受けて、振り向かぬまま手を高く上げて振るシェラハ。彼女らしいと言えばらしい別れ方である。

 

「…何よスピリティア」

 

そんなパメラをティアが微笑ましそうに見ている。パメラはバツが悪そうに目を細める。

 

「うぅん、何でもない。さ、急ごう」

 

そうして二人は洞窟内を先に進んでいくのだった。

 

 

 

~~~~~~~~~~

 

 

 

「…やれやれ、あなた達もしぶといですねぇ。私もそろそろ研究に戻りたいので、いい加減に潰れてもらえませんか?」

 

ギドが呆れたようにそう呟く。ザッハークとの戦闘でラクサス達も大分消耗していたが、これまで二人ともうまく致命打を避け続けていた。

 

「…ハッ、生憎そっちの都合に合わせてやる義理なんざ無いんでな…!」

 

「全くです…寧ろそちらこそ、大人しく捕まって頂けた方が、今後の処分がまだ軽くなるものと思いますがね」

 

ギドの言葉に二人とも強気の言葉を返す。消耗はしていてもまだ気力は充分にあるという事がそこからも見て取れる。

 

「追い詰められている状況でそんなことを言っても惨めなだけですよ。……仕方ありません。あまり派手にやるのは好みではありませんが…」

 

ギドのその言葉に応えるように、ザッハークの甲羅の棘が一斉に外れる。

 

「…こいつで一気に仕留めさせて頂きましょう!」

 

ギドの号令を合図に棘が生体ミサイルと化して一斉にラクサス達に襲い掛かる。

 

「…散れっ!」

 

ラクサスの言葉に二人が散開する。しかし…

 

「ギャザー」

 

着弾の瞬間、ギドの魔法によって着弾地点にラクサス達が集められてしまう。二人は回避する術も無く生体ミサイルの直撃を喰らう。

 

「ぐおおおおおっ!!」

 

二人は咄嗟にガードを固めるがダメージは大きい。爆発にふらつくラクサスだが、その瞬間嫌な予感が走った。

 

(…まだ何かきやがる!)

 

ふらつく体を無理矢理叩き起こしながら、その身を雷に変えその場を脱出する。

 

「ほぅ、なかなか勘がいいですね。ザッハークの石像化睨み(スタチュードグランス)から逃れるとは…」

 

感心したようにギドが言う。煙が晴れた先には石像と化した一夜の姿があった。

 

「一夜…!」

 

「ザッハークの魔眼に睨まれた者は皆石像と化してしまうのです。そしてその石像は二、三分で砂へと帰る…そうなると最早いかなる手段を以てしても蘇生は不可能です」

 

(あの煙の中にいた一夜が奴の目を見れるわけがねぇ…目を合わせなくても睨みつけるだけで相手を石に変えられるってのか…!厄介なんてもんじゃねぇぞ…!)

 

ギドの説明にラクサスが戦慄する。ラクサスの予想が正しければ、ザッハークの方を見なくとも奴の視界に入るだけで石に変えられてしまうという事だ。

 

「残念ながらまだ試作段階ですので、一度石像化睨み(スタチュードグランス)を使用した目は潰れてしまうのが難点ですが、ザッハークの頭はまだまだありますからね」

 

ギドのその言葉と同時にザッハークの瞳が赤く輝く。ラクサスはその視界から脱出を試みるが

 

「シャットアウト」

 

ラクサスの周囲に見えない壁が張り巡らされ動きを封じられる。

 

(やばい…っ!)

 

「フフフ…これでもう脱出は不可能。今度こそ終わりですね」

 

絶体絶命の状況。ラクサスが一瞬覚悟を決めて自身の周囲に防御陣を展開し――

 

 

「――解除(はら)え!」

 

 

ラクサスの眼前に魔法陣が現れザッハークの瞳の輝きを阻む。いつの間にかラクサスの隣でパメラが聖剣を構えていた。ラクサスはパメラの姿を確認して安堵の溜息を漏らす。

 

「パメラ、無事だったか!」

 

「流石に少々手こずったけどね。それと、無事なのは私だけじゃないわよ」

 

パメラの言葉と同時にティアが駆け込んでくる。

 

「ラクサスさんに一夜さん!大丈夫!?」

 

「ティアも無事か…俺は問題ねぇが、一夜のおっさんが石に変えられちまった!早く解除してやらねぇと砂に変わっちまう!何とかならねぇか!?」

 

「問題ないわ。私に任せて!」

 

パメラはそう答えると石となった一夜のそばに駆け寄り、彼の周辺に魔法陣を描く。

 

「聖剣ヴァイスジルバー!我が意に従い彼の者を縛る呪を祓い賜え!」

 

パメラの力強い言葉に魔法陣が光り輝き、石となっていた一夜の体が軽い音を立てて元に戻る。

 

「む…?私は一体どうなって…?」

 

困惑した様子で周囲を見渡す一夜を尻目に、パメラが得意気な顔でラクサスに近寄る。

 

「ヴァイスジルバーは邪悪なる魔を祓う聖なる剣。この手の呪いの解呪はお手の物なのよ」

 

「成程、やっぱ大したもんだなお前さんは。頼りになるぜ」

 

「…そんな風に素直に褒められると、なんだかこそばゆいわね…」

 

ラクサスの素直な賛辞に、パメラは若干顔を赤くしながら頬を掻く。

 

「それよりもラクサス、あいつがギドってことで間違いないのかしら?」

 

パメラが気を取り直してラクサスに尋ねる。ラクサスはギドの封印を強引に破りながら頷いた。

 

「あぁ、どうやら間違いないらしい。あいつのそばにいる悪趣味なデカい亀は、奴の作った最強の合成獣(キメラ)らしいな。流石に手強くてこっちも大分苦戦してる」

 

と、ここで今まで問答を眺めていたギドが口を開いた。

 

「ふむ、あなた方がここにいるという事は、シェラハさんは敗れたという事ですね。全く、大きな口を叩いておきながら、実際はこんなものですか」

 

「…ま、シェラハのビッグマウスは別に今に始まったことじゃないけどね…そのデカい口に見合うだけの実力があるのがまた厄介なんだけど」

 

ギドの言葉に呆れ気味にそう答えるパメラ。そんな言葉を遮りティアが強い剣幕でギドに尋ねる。

 

「それよりもギド!リリィは何処に居るの!?」

 

「リリィ…?私が捕らえたあの妖精の事ですか?彼女なら私の研究室の鳥籠の中で今もやかましく騒いでるはずですが」

 

相も変わらず淡々とギドが答える。ティアはその言葉を聞き、白銀の魔力刃を構えてギドに言い放った。

 

「なら、すぐにあなたに案内してもらうよ。ちょっと痛い思いをしてもらうことになるけど我慢してね!」

 

「フフフ…残念ですがあなたにそれは不可能ですね」

 

ティアの恫喝を受け流しながら、ギドが軽く手を振る。その手にはリリィの入った鳥籠が握られていた。

 

「…ティア!」

 

「リリィ!無事なんだね!よかった…」

 

リリィの無事な様子をその目で確認できてティアは安堵する。と同時にギドを鋭い目で睨みつけた。ギドはそんなティアの視線を気にも留めずにこう言った。

 

「ククク…どうやらこの場は随分と不利なようですからね。この場は退散させていただきますよ」

 

「てめぇ…逃げる気か!」

 

ギドの言葉を聞いたラクサスが憤慨する。

 

「えぇ、勿体無いですがこの研究所は廃棄する事にします。まぁあては他にもある事ですし、妖精などという望外の研究材料を手に入れられたのですから充分ですよ」

 

「私たちが逃がすと思って!?」

 

パメラが咄嗟にギドに斬りかかろうとするが、ギドはリリィを眼前に突き出して牽制する。

 

「フフ…あなた方はこの妖精がある限り私には手を出せない。まぁもっとも、そんな暇も無くなるでしょうが…」

 

(まずい…!今奴に逃げられたらもう追う術がねぇぞ…!)

 

ラクサスの危惧を尻目にギドはやはり淡々と言い放つ。

 

「それでは皆さん、ご機嫌よ――ッ!」

 

突如としてギドがその場に頽れる。先ほどまでの余裕の態度が嘘のように苦しげに息をつく。そんなギドに向けてどこか底冷えのする声が向けられる。

 

「…あなたの魔力、奪わせてもらったよ。あなたはもう空間を自由に操れない。この空間は既に私の支配下にあるからね」

 

そう言い放ったのは、これまでにないほど鋭い視線を向けているティアだった。その威圧感はギドはおろか、ラクサス達も背中に冷や汗をかくほどだった。

 

「私は怒ってるんだよ…友達を研究材料だなんてぬかして、逃げるために盾にして、変な化け物に改造しようとするあなたの事を…」

 

「ひ…ぃっ…!く、来るな…!来たらこの妖精を…っ!」

 

恐怖に駆られたギドはリリィの首に手をかける――が、一瞬の後にはリリィの姿は消えうせ、ティアの手のひらの上に載っていた。

 

「さっきまでは随分と得意気だったみたいだけど、支配者気取りはこれでおしまい…あなたは私がここで――」

 

ギドは尻餅をついてティアから逃れようとする。そんなギドにティアは強く拳を握りしめて

 

「――断罪してあげるよ!!」

 

途轍もない威力の鉄拳をギドの顔面に叩き込んだ。それを受けたギドは信じられないほどに大きく吹っ飛ばされていった。

 

 

 

~~~~~~~~~~

 

 

 

「よ…っと、これで大丈夫でしょう」

 

一夜が失神したギドを縛り上げる。その後ろでリリィがティアの顔に思いっきり抱きついていた。

 

「ティア~、助けに来てくれてありがとぉ~!」

 

「よしよし、もう大丈夫だからね。でももう珍しい物を見かけても勝手に飛んでいっちゃ駄目だよ?」

 

泣き崩れるリリィを慰めながら、ティアはリリィの頭を撫でる。そんな二人をラクサスは興味深そうに眺めていた。

 

(ふぅむ、こいつは……)

 

と、ここでラクサスが二人に歩み寄ると、未だティアに抱き着いているリリィの背中をひょいと無造作に掴み取った。

 

「ふにゃっ!?ちょっと、はなして~!」

 

手の中でじたばたと暴れるリリィの抵抗を感じながら、ラクサスはリリィの腰回りをまじまじと眺める。

 

(……尻尾は…生えてねぇな……)

 

「ちょっと!どこ見てるのよこのむっつり!」

 

「…ねぇラクサスさん?女の子の、その……お尻のところをそんな風に見るのは、ちょっと感心しないかなぁ…?」

 

二人から思い切り非難の目を向けられ、ラクサスもリリィを手から放した

 

「あぁ、悪りぃ……妖精に尻尾があるのかどうか、ちょっと個人的に気になったもんでな…気ぃ悪くしたんなら謝る」

 

「…むか~!森妖精に尻尾なんてはえてないよ!乙女のおしりをそんな目でみるなんてきょっけいだよ!しけいだよ!」

 

「いやだから本当に悪かった。詫びになんでもしてやるからその怒りを鎮めてくれ」

 

怒り冷めやらぬといったリリィに平謝りするラクサス。そんな様子を呆れ顔で眺めていたパメラが声をかける。

 

「はいはい、そんな漫才はおいといて、とりあえずあのデカブツはどうするの?さっきからほとんど動かないんだけど…?」

 

パメラがザッハークの方を指し示して言う。ザッハークはこちらを警戒するように睨み付けてはいるが、こちらに攻撃を仕掛けてくるような気配はない。

 

「あいつか…動かないのは多分ギドが待機命令を出してそれっきりだからだろうな。とは言えこっちから手を出すと流石に反撃してくるだろうし…」

 

「動かないのならとりあえずそのまま放置でいいのでは?アレに関してはこちらで後ほど専門の制圧班を組織してもらいますよ」

 

「ま、確かにそれが一番現実的かねぇ」

 

一夜の提案にラクサスも頷く。しかしその瞬間

 

『グオオオオオオオオオオオオオオォォォォォォォォォ!!!!!!』

 

ザッハークがこれまで上げることのなかった巨大な方向を上げる。同時にザッハークの棘が切り離され、生体ミサイルとなってラクサス達に襲い掛かる。

 

「…っ!ガイスターヴァンド!」

 

ティアが咄嗟に周囲にバリアを展開しその生体ミサイルを防ぐ。その中でパメラが非難の声を上げる。

 

「ちょっと、いきなり動き出したじゃない!どうなってんの!?」

 

「知らねぇよそんなの!何か奴の気に障る事でも……ってひょっとして…!」

 

ラクサスが縛り上げられたギドの方へ目を向ける。ギドはいつの間にか意識を取り戻しており、その顔に虚ろな笑みを浮かべていた。

 

「…フフフ…そう、先ほどザッハークの制御を完全に手放したのですよ…あぁなったらもう止められません…エネルギーが切れるまでこの辺り一帯を破壊しつくす、恐怖の魔獣となるでしょうね…」

 

「なんという事を……!」

 

一夜が怒りのままにギドに掴みかかる。しかしギドはその笑みを崩さない。

 

「…フフフ…死なば諸共、ですよ…止めたければこの場でザッハークを倒すことです…それが出来れば、ですがね…」

 

一夜はそう笑うギドを投げ捨てる。ザッハークは尚も生体ミサイルを乱射し続けており、ティアのバリアもそう長くは保ちこたえられなさそうであった。

 

「クッ…魔力が足りない…!さっきちょっとだけ補充したけど、これだけ滅茶苦茶に乱射されると…!」

 

ティアは歯を食いしばりながらバリアの維持に努める。そんな時、ラクサスが静かに口を開いた。

 

「…ティア、さっきギドの魔力を奪ったよな?なら俺たちとヤツを全員、洞窟外部に転送できるか?」

 

「え?…うん、多分出来るけど…」

 

「どうするつもりなのラクサス?」

 

パメラの疑問にラクサスがやはり静かに答える。

 

「ヤツに俺の最強の技を叩き込む。だがこいつは屋外でしか使えないうえに、仕込みにやたらと時間がかかる。それが終わるまで俺は戦闘に参加出来ねぇ。だからそれまでお前らに奴の足止めを任せたい。やってくれるか?」

 

静かな、しかし決意に満ちたラクサスの声。その言葉にパメラが何を今更、といった感じで答える。

 

「……フン、それで私が怖気づくとでも思ったのかしら?ちんたらしてるとその前に私が倒しちゃうわよ?」

 

「無論、私も全力で協力させていただきますぞ」

 

一夜もラクサスに応と答える。ラクサスは頼もしげに二人を見つめる。

 

「…よし、ティア、俺たち全員外に転送してくれ!」

 

「わかった!行くよ………イジェクト!」

 

ティアの魔法にラクサス達とザッハークが全員洞窟外部に転送される。最後の戦いが始まろうとしていた。




久しぶりの投稿。お待ちしていただいた皆様、申し訳ありませんでした。リアルが忙しくてなかなか時間が取れない……

いろいろ詰め込んでたら前回以上に長くなってしまった。でもこれでようやく次回で終わらせられます。このエピソードの後でようやく本編合流となります。こちらも随分とお待たせしてしまいましたね……

という訳で次回最終戦。アニメだったらここで処刑用BGMが流れる頃合ですね。FAIRY TAILならタイトルコールのあの音楽になるのかな?あのBGMは勇壮な感じでなかなかいいですよね。それでは皆様、次回もよろしくお願いします。
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