黒十字と雷の妖精   作:ジェネクス

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アジト攻撃

白蛇の牙(サーペントファング)”の襲撃を退けたラクサス達はそのまま村長宅へと招かれた。

 

「この度はこの村を救って頂き、誠にありがとうございます…!」

 

部屋に通されるなり村長は深々と頭を下げる。ラクサスは気にすんな、と一言返してから尋ねた。

 

「あいつらは一体何者なんだ?ただの山賊連中にしちゃやることが派手すぎる」

 

そう問われて村長は少しずつ語り始めた。

 

「奴らは“白蛇の牙(サーペントファング)”と言いましてな…元々は別の場所で拠点を構えておったらしいのですじゃ…」

 

「奴らは1年ほど前にこの近辺に根城を構え、もともとこの近辺に構えておった山賊を皆殺しにし、それから度々この村に襲撃をかけてくるようになってきました…」

 

「目的などは知りません…奴らは略奪のためというよりもただゲームとしてこの村を襲っているようでして…」

 

「…ゲームだと…?」

 

この場には似つかわしくない単語にラクサスは眉をひそめる。

 

「はい…たまたま奴らの会話を聞いた村民の言うには、奴らはこの村から奪った物を点数に変え一喜一憂していたと…」

 

「…何よそれ…ふざけてる…!」

 

パメラが怒りを滲ませてそう呟く。もともと正義感の強い彼女は連中の蛮行に対する怒りも人一倍強いのだろう。

 

「気持ちはわかるが押さえろパメラ…だが村長、そんだけ派手にやってる山賊ならもう国軍案件じゃないか?」

 

そんなパメラを宥めつつそう尋ねる。村長は苦渋に満ちた顔で答えた。

 

「無論最初は国に申し立てて討伐軍を編成してもらいました…ですが最初と、その次と討伐軍は奴らに壊滅させられ、国の方はこれ以上の大規模な軍勢を出すことは隣国を刺激しかねないと遠まわしに断られてしまいました…」

 

そこでパメラが怒っているような申し訳なく思っているような複雑な表情を浮かべた。村長の言う隣国はパメラの本国である神聖バルディア帝国であり、ここ一年の帝国は“魔女の夜”により必要以上に過敏になっていたので、国のその判断も仕方ないと思ったのかもしれない。

 

「…まぁ大体事情は分かった。で、奴らのアジトとかトップの5人兄弟とかの情報はないのか?」

 

「アジトの位置は後ほど地図をお渡しいたします。ですが連中のトップの5人兄弟の情報となると、先のガルヴァとゾッドという男以外だと、ミストラルなる男が植物を使うということくらいしか…上の二人に関しては、ジオウとヒレンという名前しかわかりません…」

 

「…ま、仕方ねぇか。そこは例の赤髪に吐かせるとするか」

 

対して期待はしてねぇが、と付け加えてラクサスは村長宅を後にした。

 

 

 

 

「ヒャハッ!俺が吐くと思ってんのか雷野郎!」

 

予想通り小馬鹿にしたような表情で答えるゾッド。ラクサスはやっぱりか、と嘆息しながらこう言った。

 

「答えないんなら答えたくなるまでぶん殴る」

 

ゾッドは一瞬ビクリ、と震えるもののすぐに気を取り直してこう言った。

 

「へ、へん!デカい口叩けんのも今の内だぜぇ!なにしろジオウの兄貴は俺たち兄弟が束になってかかってもかなわねぇ程強えぇんだ!てめぇ如きジオウの兄貴の足元にも及ばねぇよぉ!ヒャハハハハ!」

 

どうやら兄弟の中でもジオウという男の実力は別格らしい。とりあえずそれだけ聞ければ十分か、と考えたラクサスは、宣言通りゾッドを気絶するまでぶん殴っておいた。

 

 

 

~~~~~~~~~~

 

 

 

「…お前さんはこの村に残ってろ。連中のアジトへは俺一人で行く」

 

その日の夜、ラクサスはパメラに向かってそう切り出した。パメラは意外にもさほど狼狽しなかった。

 

「……私じゃ、足手まといなのね……」

 

「…あぁ、あの5人兄弟の実力は俺でも油断は出来ねぇレベルだ。おまけに連中には一人別格の奴がいるらしい。お前を守ってやれる自信は正直あまりない」

 

「…私は、別に守ってもらおうとは…」

 

「別にそれだけの理由で言ってんじゃねぇ。俺がアジトに向かってる最中に連中がまた襲撃をかけてこないとも限らんからな。一応こっちでも手は打っておくが、万一に備えて一人は残っておくほうがいい。頼めるか?」

 

パメラはしばらく押し黙っていたが、やがて小さく頷いた。

 

「…ねぇラクサス、一つ聞いていい…?」

 

「あん?なんだ一体」

 

「自分の信じていたもの…縋っていたものが崩れ去った時、あなたならどうするのかしら…」

 

「…さてな。俺にはそういった経験がねぇから、お前さんの答えのヒントになれるようなことは言えねぇ。だが…」

 

ラクサスはそこで一言区切った後、うまく言葉を選び出すようにして言った。

 

「…そういった時は、何でもいいから自分を信じてみることだ。それが傍から見たらどれだけ滑稽な事でも、自分のこれまでは紛れも無く本物だったと、そう自分に言い聞かせる。自分が正しいか間違ってるかなんて、それこそ他人が判断するこっちゃねぇからな」

 

「…でも、私は、自分のやってきたことは間違っていたとしか思えないのよ…?」

 

「何でもいいんだよ。自分のやってきた中で、これだけは絶対に正しい、って思える事を見つけておくんだ。そうすりゃそれを誇りとしてまた立ち上がれる。俺はそう思ってる」

 

ラクサスはそう言った後、頭をガシガシと掻き毟る。

 

「…クソッ、やっぱ俺はこういうのは駄目だな。どうにも言葉が軽く感じられちまう…」

 

「……絶対に正しい、と思える事……」

 

そう呟いてパメラは考え込んでしまった。ラクサスは最後に一言付け加える。

 

「気休めになるかどうかはわからんが、俺にはお前が“偽物”だなんて思えないぜ?少なくとも俺なんかよりずっと中身がある人間だと思ってる。……俺は本当にどうしようもない人間だったからな…」

 

最後に自分の犯した過ちを思い出し、ラクサスもそれきり黙り込んでしまった。

 

 

 

~~~~~~~~~~

 

 

 

翌々日の朝、やってきた憲兵にゾッドの引き渡しを行った後、ラクサスは白蛇の牙(サーペントファング)のアジトに向けて出発した。村民たちには、自分が戻るか二日経つまで村から出るな、とキツく言い含めておいて。

 

(とはいえ、出来る限りさっさと片付けねぇとな…)

 

あまり時間をかけるわけにもいかないだろう。ラクサスは急いで連中のアジトに向かった。

 

 

 

~~~~~~~~~~

 

 

 

「兄さん、例の雷使いが村を出たそうですよ」

 

頬に傷を持つ男――ヒレンが痩身の男に向けてそう報告した。

 

「…クク、ならば手筈通り奴をこのアジト内に誘い出せ…ヒレン、ミストラル…」

 

「はい」「おうっ!」

 

「お前たちも『手筈通りに』な…」

 

痩身の男――ジオウはそう言って薄く笑った。

 

 

 

~~~~~~~~~~

 

 

 

白蛇の牙(サーペントファング)のアジトにはさしたる抵抗もなく辿り着いた。

 

(…不気味なぐらい何も無かったな…連中、何か企んでやがるのか…?)

 

無抵抗でここまで辿り着いたことがラクサスの警戒を呼ぶ。ラクサスは少し周囲の魔力を探ってみる。

 

(…デカい魔力の持ち主が4人固まってやがんな…全員で俺を袋にするつもりか…だが、元々アジトに乗り込むつもりなんてねぇよ)

 

ラクサスは大きく息を吸い込み、極限まで魔力を高めて放つ。

 

「雷竜の咆哮!!」

 

雷属性の強力なブレス攻撃。咆哮系は滅竜魔法の基本となる技だが、ラクサスほどの魔導師が全力で放ったとしたらアジトの一つ程度軽く吹き飛ばせる。その一撃の後には白蛇の牙(サーペントファング)のアジトは跡形もなくなっていた。

 

「ククク…まったく容赦のねぇ野郎だなぁ…」

 

しかし、吹き飛んだアジトの下から4人の男が平然と現れた。

 

「…とりあえずはじめまして、だな…俺の名はジオウ…この二人はヒレンとミストラルだ…ガルヴァは…もう知ってるよな…」

 

淡々とした口調で語るジオウ。そのことがラクサスには少々苛立たしく感じた。

 

「…お前の名を聞いておこうか…弟たちが一杯食わされたほどの男の名…知っておきたいなぁ…」

 

隣でガルヴァが軽く震えるがラクサスは気にしなかった。

 

「…わざわざ答えてやる義理はねぇよ」

 

「…クク、そいつは残念だ…せめて墓の一つでも作ってやろうかと思ってたがなぁ…」

 

のらりくらりと語る。業を煮やしたラクサスはこう言い放った。

 

「ゴチャゴチャ抜かしてねぇでこいよ。全員まとめて叩き潰してやるよ」

 

ジオウが顔に浮かべた笑みを深くして、言った。

 

「ククク…それじゃあお言葉に甘えて…“全員で”袋叩きにさせてもらおうかぁ…!」

 

そしてラクサスとジオウ兄弟との戦いが始まった。

 

 

 

 

 

 

―――その頃、ギブロックの村に向けて動き出した一群には気付かぬままに―――




本当は今回でパメラが復活する予定だったんだけどね、出来なかったね。
なんでだろね、わしにもわからん。
ともあれ次回こそパメラ復活!…すると思う、多分、きっと。
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