黒十字と雷の妖精   作:ジェネクス

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誇りと正義

「ククッ…まずは小手調べと行こうか…」

 

ジオウは水の刃を生み出し、放つ。ラクサスはそれを難なく回避する。

 

「水使いか。残念だったな、水は電気を通す。俺とは相性悪りぃぜ」

 

「クク…さぁて、そいつはどうかな…?」

 

ラクサスの指摘にもジオウは不敵な笑みを浮かべる。そこにガルヴァが割って入った。

 

「兄貴にばかり気ぃ取られてんじゃねぇ!砂の刃(サンドリパー)!」

 

そのガルヴァの攻撃もかわすが、そこにヒレンとミストラルが襲い掛かってきたため、いったん大きく距離を取る。

 

(流石に4人もいると攻め手が見つけづらいな…まずはさっさと一人潰す!)

 

ラクサスは狙いをガルヴァに定め、渾身の魔法を放つ。

 

「雷竜方天戟!」

 

「…無駄だ…」

 

ジオウがガルヴァの眼前に水の盾を作りラクサスの魔法を防ぐ。そのことにラクサスは驚きを隠せない。

 

「俺の雷を受け止めただと…!」

 

「ククク…水が電気を通す、なんて思わない方がいい…世の中には『電気を通さない水』ってもんがあるんだよ…」

 

水の盾がそのまま無数の水の針に変質しラクサスを襲う。それを何とか回避したところに間髪入れずガルヴァが砂の嵐を叩き込んできた。

 

「グオォッ!」

 

流石に避けきれなかったラクサスは気合を入れてそれに耐える。しかし相手は攻撃の手を緩めない。

 

「クク…ハイドロ・キャノン…」

 

ジオウが放つ強烈な水砲。受け止めるのは危険と判断したラクサスは自身を雷に変換してそこから脱出する。

 

(チッ、流石にやるな…だが、さっきから妙な違和感が…なんだ…?)

 

「どうした…もう抵抗を諦めたのか…?」

 

「…はっ、なに言ってやがる。本番はこれからだ!」

 

嘲りを込めたジオウの言葉を切り捨て、ラクサスはジオウ達との戦闘を再開するのだった。

 

 

 

~~~~~~~~~~

 

 

 

「む、村の外に山賊達が!今まで見たこともないような大群だ!」

 

村民の放ったその一言は村を騒然とさせた。たちまち村全域に混乱が広がっていく。

 

「みんな!落ち着いて!慌てずに避難場所に避難して!」

 

パメラや村長たちが必死にそう呼びかけるも、度重なる山賊の襲撃に怯えきった村民たちの混乱はなかなか収まらない。

 

(全員をスムーズに避難させるのは不可能に近い…!もしもの時は私が…!)

 

今の自分に出来るのか?という考えを必死に振り払い、パメラは村の入り口に向かって行くのだった。

 

 

 

「今日はあの村での最後の略奪タイムだ!遠慮はいらねぇ!奪って奪って奪いつくしてやりな!」

 

山賊の一人が全体にそう呼びかける。山賊達は大いに沸き上がった。

 

「ヒャッハァ!今日もガンガン奪ってやるぜぇ!」

 

「ハン!てめぇなんぞに後れは取らねぇよ!今日のタイトルは俺が頂くぜぇ!」

 

勝手な事を言いながら次々に村に向かって行く山賊達。だが

 

「ガッ!」「ギャア!」「シビィッ!」

 

村に向かって行った山賊達は次々に雷に撃たれて倒れていく。あまりの事態に山賊達の足も止まる。

 

「なっ、なんだこりゃあ!トラップか!」

 

「えぇい!他に侵入できるところはないのか!」

 

山賊達は侵入できるところを捜索するも、悉く雷に撃たれていく。侵入できる場所は皆無のようだった。

 

このトラップはラクサスが前日の内に仕掛けておいた地雷式のトラップである。ラクサスも自分が討伐に出ている最中に山賊の襲撃があることを予見してなかったわけではない。ゆえに万一に備えてこのような仕掛けを施しておいたのだ。意気揚々と村に侵入しようとしたところにこのような出迎えを受けて、山賊達は右往左往してしまっている。

 

「クソッ!誰だ、こんな小癪な真似をしやがったのは!」

 

そう毒づく山賊。そこに二人の男がやってきた。それは…

 

「やれやれ、無駄な抵抗をしてくれますねぇ」

 

「時間稼ぎとしちゃあ中々だが、生憎俺たちにはこんなもん通用しねぇよなぁ!」

 

今現在アジトでラクサスと戦っているはずの、ヒレンとミストラルの二人だった。

 

 

 

~~~~~~~~~~

 

 

 

「っ!」

 

戦闘の最中、違和感の正体に気付いたラクサスは、ヒレンとミストラルに向けて素早く電撃を放つ。それを受けた二人の体がサラサラと崩れ落ちる。

 

「ククク…気付いたか…」

 

「ハッ!今更気付いても遅せぇがなぁ!」

 

「この二人…偽物の人形だったのか…!」

 

ラクサスが嵌められた、とばかりに呟く。ジオウは心底愉快そうに肯定した。

 

「ククク…そうだ…ガルヴァの力で砂人形を作って、そいつを身代りに仕立てておいたのさぁ…ただの人形じゃあ魔力が空っぽだから、俺の魔力を込めた水を内部に埋め込んでおいてなぁ…」

 

その言葉通り、崩れ去った砂の中から水球が二つ現れる。

 

「じゃあ…後の二人は何処に居やがる…!」

 

「クク…白々しい。わかってるんだろう…?」

 

「兄貴たちは今頃もうギブロックの村に着いてる頃だ!あの村は直に阿鼻叫喚の地獄絵図になるぜぇ!」

 

「てめぇら…!」

 

睨みつけるラクサスを尻目にジオウが水球を取り込む。途端にジオウの魔力が膨れ上がった。

 

「さぁて…魔力も元に戻ったことだし…ここからが本番だぜぇ…ククッ」

 

 

 

~~~~~~~~~~

 

 

 

ヒレンとミストラルがラクサスの仕掛けたトラップに近づいていく。

 

「成程…この上空を一定以上の質量が通過すると雷撃を落とすトラップですか…」

 

「しかも術者本人が解除するか一定時間が経過しない限りは作動し続けるとはなぁ…例の雷野郎、結構レベル高けぇじゃねぇか」

 

「えぇ、足止めとしてはかなり優秀なトラップですね…我々がいなければ、ですが」

 

ヒレンが引き抜いた剣を前に出して念じる。と、剣が不気味に赤く輝き始めた。

 

「ルーンセイバー…解呪(ディスペル)

 

ヒレンがそう呟いて刃を地面に突き立てる。辺りに乾いた音が響き渡った。

 

「これでこのあたりのトラップは解除されました。突入しましょう」

 

「あの村での最後のお楽しみタイムだ!存分に楽しんでこいや!」

 

ミストラルの号令と共に山賊達が一斉に入口に群がっていく。突入は目前であった。

 

 

 

~~~~~~~~~~

 

 

 

(…来た!)

 

パメラは入口の陰で待ち構えていた。元々不意を衝いて連中のトップの首を獲る事を目的としていたのだが、その二人は自分たちからは動こうとしない。このままでは山賊連中に良いように村に突入されてしまう。

 

(…そんなことはさせられない!)

 

覚悟を決めたパメラは、山賊達が村の入り口に辿り着いた直後に飛び出し連中を迎撃する。

 

「なっ、なんだこのクソアマがぁ!」

 

「村には突入させない…あなた達は私がここで食い止める!」

 

悲壮な決意を胸に秘め、パメラは山賊達を斬り伏せていくのだった。

 

 

 

~~~~~~~~~~

 

 

 

ヒレンとミストラルはその様子を下から眺めていた。

 

「なんだぁ?雷野郎の他にもあんな女が居やがったのか。…そこそこ腕は立つようだな、俺たちが行かなきゃ被害が増える一方だな」

 

そう言ってミストラルが前に出ようとする。その時

 

「………美しい」

 

ヒレンがボソリと呟いた。その瞬間ミストラルが大きく震える。

 

「あ、兄貴?まさかまた悪い癖が…」

 

「…実に美しい女性だ…あの女性が苦痛に泣き叫ぶ姿はもっと美しいでしょう…フフフ、想像しただけで昂ぶりが収まりませんねぇ…」

 

陶酔した口調でヒレンが呟く。そのままゆっくりと前に進み出た。

 

「…まぁいいか…お前ら!兄貴があの女を嬲っている間に村に突入するぞ!」

 

そんなヒレンの様子に引きつつも、ミストラルは部下に対して号令をかけるのだった。

 

 

 

「フフフ…お嬢さん、一手、お手合わせお願いできますか…?」

 

奮闘を続けるパメラにヒレンがそう問いかける。

 

(敵のリーダーね…正攻法で勝てる…?)

 

相手を警戒しパメラの動きが止まる。その隙をついて山賊達がパメラに襲い掛かるが

 

「ルーンセイバー…火炎(フレイム)

 

その山賊達をヒレンが斬り捨てる。斬られた山賊達の体が一瞬で燃え尽きてしまう。

 

「私の獲物です…手を出さないように…」

 

(こいつ…自分の部下をあっさり…!)

 

身内にも容赦のないヒレンにパメラが憤る。迎撃の体制をとるパメラにヒレンが尚も語りかける。

 

「どうしました…?来ないならこちらから行きますよ」

 

そう言ってヒレンがパメラに向かって斬りかかる。

 

(速い…けど、この程度なら充分対応できる!)

 

その一撃を受け流し、返しざまにパメラがヒレンの首を狙う。ヒレンは軽くバックステップしながらそれを躱す。

 

「いい腕です…が、私は別に剣戟の腕を競いたいわけではありませんので…腐食(コローション)

 

続けざま放たれたパメラの一撃を受け止めた瞬間、パメラの剣が朽ち落ちてしまう。

 

「これは…!」

 

「私の魔法…ルーンセイバーの効果です。剣に魔力を込めることにより斬りつけた物に対して様々な効力を発揮する。先ほどのは斬りつけた無機物を腐食させる効果。そしてこれが…」

 

ヒレンが剣を振りかぶり、呟く。

 

「ルーンセイバー…痛み(ペイン)

 

パメラの体に軽く斬りつけた。その途端、パメラの体に想像を絶する激痛が走る。

 

「うあああああああああああああああああああああああ!!!!!」

 

「これが痛みを数十倍に増幅する効果…私はこの効果が大好きでしてね…相手の体の負担は小さいまま、激痛のみを与えられるんですよ…!」

 

恍惚とした声を上げながら次々と剣を振るう。僅かな傷がつけられるたびにパメラの絶叫が響き渡る。

 

「うああああ!ああ!ああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!」

 

「ハハハハハ!いいですねぇ!実に良い声で鳴いてくれる!あなたのその美しい声をもっと聴かせてください!!」

 

完全にトリップした様子でヒレンは剣を振るうのだった。

 

 

 

「あ~ぁ、やっぱりこうなっちまったか。贅沢とかには興味無い癖にあぁいう事は嬉々としてやりたがるんだもんなぁ」

 

その様子を伺っていたミストラルは呆れた声を上げる。

 

「とにかく邪魔者は排除した。村に突入するぞ!間違っても兄貴の近くには近寄るなよ!今の兄貴に近づいたら容赦なくぶっ殺されるぞ!」

 

部下たちに号令をかける。山賊達はヒレンの様子に戦々恐々としながら村に侵入するのだった。

 

 

 

~~~~~~~~~~

 

 

 

(――やっぱり、私は偽物――何も救えはしない――)

 

 

―――本当にそうか?―――

 

 

(――そうよ――黒十字の誇りも、栄光も、すべて偽物――)

 

 

―――ならばそれを本物に変えればいい―――

 

 

(――無理よ!だって私は――本物を知らないのよ!――周りに振り回されてばかりの私には、本物は何もない!――)

 

 

―――ならばなぜお前はここまで来れた?偽物だけのお前がこれまで戦い続けられた理由は?―――

 

 

(――教皇様を、お守りするため――違う、ただそう命じられただけ――操られていただけ――)

 

 

―――それは違う。ただの操り人形に私を振るうことはできない―――

 

 

(――わからない――そんなことはわからない――)

 

 

―――思い出せ、お前の戦ってきた意味――お前の、原点を―――

 

 

(――私の、原点――)

 

 

―――お前が挙げた戦ってきた理由――それらはすべて後付だ――本当の理由はもっと純粋―――

 

 

(――教皇様をお守りする――守る――誰かを、守る――!)

 

 

―――そう、それがお前が戦ってきた理由――そして、今もまだ戦っている理由―――

 

 

(――私は、守りたい――!村を、みんなを――!)

 

 

―――その思いがお前の誇りとなり正義となる――そのための力を欲するならば、私の名を呼ぶがよい――私の名は―――

 

 

 

~~~~~~~~~~

 

 

 

すっかり反応がなくなったパメラを見て、ヒレンも少し気分が落ち着いたようだった。

 

「…ふぅ、どうやら泣き叫ぶ力も無くなりましたか。ではそろそろトドメと行きましょうか」

 

パメラの首を刎ねようと大きく剣を振りかぶる。

 

「…………めよ…」

 

パメラがボソリ、と何事か呟いたがヒレンは気にしない。その剣がパメラの首に触れた瞬間

 

 

 

「ヴァイスジルバー!!!」

 

 

 

聖剣が煌き、首を落とそうとしたヒレンの腕を断つ。ヒレンは一瞬呆気にとられた後

 

「ぎぃやああああああああああああああああああああ!!!!!」

 

と絶叫を上げる。その絶叫を尻目にパメラは立ち上がる。その姿は今までの物とは違い、誇りと自信に満ち溢れていた。

 

「…思い出したわ。私の誇りを、私の正義を…虐げられている人たちを守るため、私はこの剣を振るう!」

 

白銀の名を体現するかのごとく白く輝く聖剣を掲げ、山賊達に高らかに宣言した。

 

「さぁ!このパメラの正義の剣を受け、ここに果てなさい!!」




書いてて何度ギップリャと叫びそうになったことか…
そんな展開の末、ようやくパメラ復活!雷野郎の出番はもうないぜ!(フラグ)
冗談はさておき、次回は真・パメラ無双。今まで活躍できなかった鬱憤を晴らします。ご期待ください。
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