不屈ノ爪〜The Iron Clow〜   作:明るい脳筋

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今週中に上げれないと言ったな。あれは嘘だ。
という訳で、投下します。
普段より長くなってますが頑張って読んでください。


第12話 威力偵察

5月16日

 

太平洋上を航行する第3艦隊に横須賀にいた第7艦隊の一部が合流した。彼らは、『レッド・スティングレー』作戦中手薄になるパラオ泊地を防衛すると同時に、これから輸送船団を離れるレイク・エリー、マッキャンベル、アーレイバーク、ステザムの4隻の穴を埋めることを目的としていた。

レイク・エリー艦長テレス・C・カーバー大佐は、腕時計に目をやり、部下たちに命令を出す。

「そろそろ時間だ。各艦に連絡、予定通り艦隊を離脱しFleet Girlsを援護しに行く」

部下たちから、了解の声が返ってくる。

艦首が向きを変え、後続の3隻もレイク・エリーに続く。

4隻は簡易的な輪形陣を組み、第3艦隊を徐々に離れていく。カーバーは、この4隻が無事第3艦隊に戻って来ることができるか少し不安になった。

確かに、我々は奴らに手痛い被害を与えた。

しかし、大勢に影響を与えるかというと残念ながら否と言うしかなかった。

『深海棲艦』全体からすれば、先の損害など取るに足らないものだろう。『深海棲艦』は、まるで養殖でもしているかのようにわんさか出てくる。叩いても叩いても現れる奴らにまともな損害を与える事は極めて困難だ。

普通、戦争というシステムにはどこかに必ず『重心』が存在する。つまり、作戦を左右する戦略的な価値のあるが打たれ弱いものである。

『重心』はその場合によって変わり、燃料であったり戦略的希少金属(レアメタル)であったりする。

一方、今回の危機の原因である『深海棲艦』には『重心』が存在しない。もちろん、『深海棲艦』にも輸送艦はいるがそれを撃沈したからといって戦力が低下することは今の所確認されていない。

人間が相手ならこれほど厄介であることはなかったはずだ。もちろん、人間同士の殺し合いも気が滅入るものではあるが、適切な火力で適切な場所を叩き潰せば早期に戦争を終わらせることが可能だ。

しかし、『深海棲艦』は違う。奴らとは交渉することもできないし、おそらく交渉が可能でも相入れる存在ではないだろう。

それは、これまでの戦闘から見て取れた。ほんの少しでも奴らと接すれば、価値観すら違うことが見えてくる。

…いかん。こんなことを考えるのはいいことではない。現場の軍人が決めれることはさほど多くない。我々は決められたことをすることが求められているのであって、勝手に敵の正体を見極めることは求められていない。

彼は部下に見られないようにため息をついた。

取り敢えず、今彼にできるのはこの4隻を無事に帰し、今前線で闘いを始めようとしている少女たちの背中を守ってやることだけだった。

 

第三艦隊は海上にいた。軽空母瑞鳳を中心とした輪形陣を組んだ彼女たちは、瑞鳳の放った偵察機とヴェラ・ガルフの放ったSH-60B、そしてこれまたヴェラの高性能なSPY-1Bフェーズドアレイレーダーによって、空と海中を警戒していた。

これまでの所、『深海棲艦』の偵察機は見当違いの場所を警戒しているようで、こちらに向かって来ることはなかった。

また、海中に潜む潜水艦もシーホークのソナー、そしてヴェラ本人のソナーにも反応は見られず、今までの所予定通りに進んでいるようだった。

当然、無線封鎖中であるため泊地から連絡が来ることはあり得ず、基地の者たちは今も悶々とした時間を過ごしていることだろう。

「ところで、いつまでこんなことやってるつもりだクマ?」

球磨が声を張り上げて聞いてきた。

ヴェラも同様に声を張り上げて返答する。

「夜になるまでですよ」

彼女たちの今回のプランは非常に単純だ。通常、威力偵察は昼間に行われる。そうでなければ、どれほどの敵がいるか正確に判断できないからだ。

第三艦隊のメンバーだけで行っているだけなら、セオリー通りにするだろう。

しかし、今この場にはヴェラがいる。彼女の搭載するシーホークは、夜間でも飛行が可能で優秀な夜でもよく効く目を持っていた。

彼女たちはレーダーに物を言わせ昼は敵の目を掻い潜り、夜間ECMを全力運用することで敵の最後の目を欺き夜戦を敢行。その映像は赤外線カメラを備えたSH-60が撮影する。

その後、十分にことを済ませたと判断した段階で敵が混乱している間に全速で戦域を離脱。シーホークを回収し、彼女たちの撤退の支援をするためにこちらに向かってきている米第3艦隊と合流。おそらく復讐に燃えているだろう『深海棲艦』の追撃を阻止しつつ、速やかに撤退する。

これが、昨日この威力偵察に参加する全員で話し合った結果考え出された最善のプランだった。

上手くいく可能性をほとんど運に頼っているプランだが、これ以上の作戦は全く思いつかなかった。

「ちょっと暇だにゃ」

多摩が欠伸をしつつ言った。相変わらず猫のような動作だ。ヴェラはあの艦娘が猫とのハーフではないかと疑いだしていたが、それを口に出すほど馬鹿ではなかった。

「も〜、多摩さんはもうちょっと緊張感を持ってください」

瑞鳳がたしなめる。旗艦としての仕事をこなしつつ、他の者たちに気を配る様はさすがは秘書艦かとヴェラは一人感心する。

多摩は頬を膨らませて不満を示すが、やがて諦めたかのように肩をすくめた。

瑞鳳はそれを見て、周りを見渡した。どうやら、他の面々も暇を持て余しているかのようだ。

索敵や対潜哨戒は全てヴェラと瑞鳳に委ねられておりすることがないのだ。

瑞鳳がヴェラの元に近寄り言った。

「確かに、あまりにやることが少なすぎるみたい。みんな敵の接近がなくて緊張感が少なくなってる」

「私も同意見ですが…あいにく打開策はありませんね。他の皆さんは退屈でも、こっちは色々してますから…。ですが、何か手を打たないといけませんね」

2人はしばらく黙って考え込んだ。やがて、ヴェラが一つの案を思いついた。

ヴェラから小声で説明を受けた瑞鳳は眉をひそめて難色を示したが、やがてその案を承諾した。

ヴェラはすぐに作業を開始し、あるプログラムを起動した。

暇を持て余し、すっかり緊張感を失くしたメンバーに喝を入れるのにぴったりなそのプログラムは、ヴェラの演技力も重要になる。

ひとつ息をついたヴェラは数分後にやって来るであろう『敵』が、彼女のセンサーにかかるのを待った。

 

来た。

彼女の脳内に映っているディスプレーに一つのブリップ(光点)が現れた。

方位208、距離1200、深度は不明、彼女に登録されている味方のキャビテーションノイズと一致せず。

戦時下での撃沈に必要な要素は十分に揃っている。

つまり、これを敵と認識し警告なしの撃沈が可能であるということだ。

彼女は周囲の者に聞こえるように言った。

「敵潜発見。方位208、距離1195、深度不明。5ノットでこちらに向かっています」

ヴェラは精一杯冷静さを装っているように努めた。ここでこの存在しない『敵』による『架空』の接敵、つまりヴェラの演習プログラムによる訓練であることを悟られてはならない。

これで、皆に緊張感を再び与え警戒を怠ってはならないと言うことをよく理解させなければならない。

それに、いくら架空の敵とはいえそれを沈めたとなると彼女たちの自信にもなるはずだ。

予想より演技が上手くいったようで一気に空気が張り詰めるのを感じた。

まず、一つ目の目的は達成した。次は、これが演習だと気付かれないようにしなければならない。

「敵はこちらの位置がわかってるようですか?」

瑞鳳が切羽詰まった調子で聞いてきた。ヴェラは笑いそうになるのをこらえる。なかなか迫真の演技だ。

「いえ、ですがすぐに気付くでしょう。こっちはそれなりの速度で動いてます。いくら耳がそれほど良くないやつでもすぐに気付きます。

その後のことは分かりません。無線で通報するかもしれないし、魚雷で攻撃してくるかもしれない。確率は五分五分ってところですね」

瑞鳳は考え込むような表情をしたのち言った。

「先制攻撃を仕掛けます。私の艦載機とヴェラさんの艦載機が敵を足止めしている間に爆雷を投下して撃沈します。攻撃は、 球磨さん、弥生さん、卯月さんの3隻でお願いします」

「了解クマ〜」

「分かったよ…」

「は〜い、了解でっす!」

「後の皆さんは周辺警戒をしてください。群狼戦術でもされたら厄介ですか」

瑞鳳はそれだけ言うとヴェラの方に顔を向け言った。

「えーと、しーほーく?を引き返してもらえますか?」

ヴェラは笑みを浮かべて言った。

「喜んで」

ヴェラは少し離れた所で声を潜めて会話を始めた。

「こちらヴェラ・ガルフ。シエラ(Sを意味するNATOのフォネティックコード)101きこえますか?」

《こちらシエラ01》

「こちらに戻ってきてください。敵潜です」

《見落としてましたか…》

シーホークの妖精が悔しそうな声を発したのでヴェラは急いで訂正する。

「違いますよ。ちょっとこっちの事情で演習をしているんです。もっとも、知っているのは私と瑞鳳さんだけですけど」

《…なるほど、ちょっと引き締めてやろうってところですね。すぐ戻ります》

「分かりました。通信終わり」

ヴェラは無線を切ると、瑞鳳に向かって言った。

「すぐ来るそうです」

瑞鳳はほっとしたような表情を浮かべ言った。

「分かりました。それじゃあ、始めましょう」

そう言うと、瑞鳳は矢を弓に番え放った。

放たれた矢はしばしの飛翔の後に、数機の航空機に分裂し旧式の九九艦爆に変化した。

九九式艦上爆撃機は言うまでもなく愛知航空機の生み出した航空機である。本機は、最盛期の帝国海軍を支えた爆撃機で、最も多くの連合軍艦艇を沈めた航空機で有名である。

対潜攻撃をする機体ではないが、どういう訳か妖精さんの力で可能になっている。

当然、SH-60の短魚雷のような精密誘導兵器を投下する訳ではないので命中率は限りなくゼロに等しい。が、敵の通信そして攻撃を阻止するには十分な能力を有している本機は、あくまでも敵潜の妨害に徹するのだ。

《こちらシエラ01、ETA(到着予定時刻)は5分後、以上》

ヴェラのシーホークが、到着時間を伝えてきた。彼女はその報告に合わせて攻撃開始時間を設定し、瑞鳳に伝えた。

「シーホークの到着まであと5分ほどあります。それから準備をして攻撃開始までさらに数分かかります。攻撃可能になるのは約10分かかる見通しです」

「それまでに敵が攻撃してこないといいけど…」

戦闘のイニシアティブ(主導権)は、基本としては先に攻撃した者が握る。瑞鳳が不安がり、早く攻撃したがっているのはこれが原因だろう。

ヴェラとしても、攻撃は早めに行いたい。そのため、ヴェラは瑞鳳に一つ提案をしてみた。戦争は常に思い通りには行かないものだ。

「シーホークの到着前に攻撃を始めたらどうですか?」

「でも、それじゃあ完璧に妨害しきれないかも…」

「それはそれで仕方ないです。それに、お分かりだとは思いますが…」

「分かってる。相手は存在しないし敵が攻撃してくることもない。だけど、作戦だと…」

「いいですか?作戦なんて物はその時の状態に応じて内容を変えるものなんです。あらゆる事態に冷静に対処する。それが戦いですよ」

瑞鳳からしてみれば、そんなことは言われるまでもないだろう。だが、ヴェラはそれをあえて言ったのだ。自分へ冷静だと思っていても他人から見ればそうではないこともある。今の状況がそれだ。

「…分かりました。あなたの意見を受け入れます」

ヴェラはホッとした表情が出るのを押し隠した。瑞鳳がヴェラの意見を受け入れてくれたおかげで、2人の小さな対立は終局した。だが、現在の状況が終局した訳ではない。貴重な数分間がこの間にも減っているのだ。

そのことは、瑞鳳にも分かっているらしく遅れた時間を取り戻すように素早く仕事を始めた。と、言っても九九艦爆に攻撃を始めるよう指示するだけだが。

瑞鳳の艦載機はヴェラの伝えた地点に向かい爆撃を開始する。九九艦爆は、どういう訳か搭載している対潜爆雷を数発ばら撒く。

深度が全く分かっていないため、爆雷の起爆深度はどれもランダムに設定してある。

爆雷は設定された深度に到達するまで重力に従いその黒い姿を沈めていく。

そして、予定の深度に到達すると同時に、炸裂。凄まじい爆圧が海中を駆け回り、そのエネルギーは海面に向かって上昇しやがて水上に水柱として噴き上がる。

それがあらゆる地点でほとんど同時に起こる。それは、壮観の一言であろう。ある人が見たら、まるで間欠泉が噴き上がったようだというかもしれない。事実、見た目は確かにそんな感じである。

だが、海上にいる彼女たちはそんなこと御構い無しに次なる攻撃を仕掛ける為に動きだす。

と、ちょうどその時シーホークが到着し、ミキサーされる海中が収まるのを待ってソノブイをばら撒く。

パッシブ式のソノブイはヴェラの演習システムに従い、擬似目標から発する架空のキャビテーションノイズを捕捉し、機上の妖精に伝える。

その情報は、さらにLINK11と妖精からの通信でヴェラに伝えられ、ヴェラはそれをその地点を航行している球磨たち対潜部隊に伝える。

「敵潜を捕捉。あなた方の場所から方位013、距離500、深度は45です」

「了解クマ!」

球磨たちはヴェラの示した地点に向かい爆雷を投射する。ほとんど完璧に深度と方位、距離が把握された潜水艦が生き残る道は、ほとんどゼロに近い。

その場を全速で離れるか、息を潜めて敵が諦めて去るのを待つか、敵を全滅させるかしかない。

しかし、そのどれもが現実的でないのは言うまでもない。特に洋上に高性能のソナーを持った艦がおり、上空に対潜に特化したヘリが飛んでいてはなおさらだ。

やがて、爆雷が炸裂し再び水柱が立ち上がる。ヴェラのソナーは掻き回され、ノイズだらけになったが辛抱強くそれが治るのを待った。

数分後、ノイズの消えたソナーには何の反応も存在しなかった。彼女の艦載機のソナーにも反応は存在していないとのことだ。

つまり…。

「目標の反応消失。状況から判断して、撃沈した模様」

空気が僅かに緩むのをヴェラは感じた。皆、極度の緊張感の元で戦っていたためその簡単な報告ですら彼女たちの張り詰めた緊張を解きほぐしたのだ。

ふと、多摩が気になったのか言った。

「そう言えば、浮遊物を見てないにゃー」

穏やかな空気が一瞬で凍る。

潜水艦を撃沈した場合、浮遊物や脂が海面に浮いてくる。これで敵を沈めたか仕留め損ねたかをある程度判断できる。少なくとも、浮遊物が浮いてこないと撃沈判定を出すことは難しい。

当然ながら、今海面には浮遊物は浮いていない。当然だ。相手は架空の敵。その存在は、ヴェラとシーホークのディスプレーにしか現れない。

そのため、瑞鳳を除く全員があたりを不安そうに見回した。

瑞鳳がこちらを見て訴えてきた。ヴェラも頷く。そろそろ潮時だ。

ヴェラはあまり乗り気でないように事実を皆に知らせたのだった。

この後、しばらくの間ヴェラの信用がガタ落ちしたのは言うまでもない。

 

陽は落ちた。

暗闇が迫る中、瑞鳳の艦載機が彼女の元へ戻ってきた。その一方で、ヴェラの艦載機は給油を受けて再び空に舞い戻る。ほとんど休みなく飛んでいる妖精の表情や声にも疲労の色が覗いている。

しかし、シーホークにしかできない仕事が多すぎて妖精たちに休みを与えてやる暇はなかった。こういった雇用(?)環境では、士気が下がってしまうがそれをどうこう出来るわけでもない。唯一、やれることがあるとすればこの作戦をさっさと終わらせて、妖精たちをゆっくり休ませやる。それだけだった。

「と、言うわけでこれから敵泊地突入作戦について最終説明を行います」

お〜、と言う声とパチパチという拍手の音が広がる。

ヴェラはその音が収まるのを待って続けた。

「作戦と言ってもそんな大それたことじゃありません。敵の哨戒を避けて、泊地に殴り込み、速やかに被害を与えるだけ与え、全力で逃げる。ただそれだけの非常にシンプルかつ馬鹿げたプランです」

ヴェラ自身喋っていてまともではないと思ったが、先ほども言ったようにこれ以上のプランを考えるのは残念ながら無理だった。

全員が厳しい表情を浮かべ、決意を込めて頷く。

ヴェラはそれを見て自分も頷き、瑞鳳に後を任せた。

瑞鳳はメンバーに激励の言葉を放った。

「皆さん、これは大変重要な任務です。当然、困難が予想されます。ですが、これまでの訓練、経験を活かせば必ず成功します。

私は、この作戦で何の役にも立てませんが私の力が無くてもきっとやってくれると信じています」

瑞鳳はそこで一息ついて、出会ってこのかた見たことのないほどゾッとする表情を見せて言った。

「奴らに目の物を見せてやりましょう。以上」

夜陰に乗じた第三艦隊は、敵の監視を予想しつつもサイパン海峡を抜け『深海棲艦』の泊地となっているラオラオベイに向かい進んでいた。

ヴェラのECMにより、敵のレーダーはジャミングされているはずだがいつまでも気付かれないとは思えない。やがて、このレーダーの異常が空電ノイズではなく人為的なもの、つまり敵の作り出した影であると気付かれるのも時間の問題である。

ここまで来ると、最早重要なのは隠密行動ではなく、いかに素早く敵の懐に潜り込むかによって決まってくる。

瑞鳳が最前線に出て砲撃戦に参加する訳にはいかないので、2隻の駆逐艦(弥生と卯月)を護衛に付けて離れた地点で待機している。

そのため、この夜襲に参加できる艦艇はさらに減少しただでさえ難しい攻撃をより困難なものに変えてしまった。

敵戦力をできる限り削らなければ、撤退中に手痛い損害を与えられかねない。運が悪ければ全滅の可能性もあり得る。

その戦力不足を補うため、砲撃戦を想定していないヴェラまでこの作戦に参加する必要があった。当然、12.7センチ単装砲が2門では砲撃戦においてほとんど役に立たない。それが、毎分16発から20発の砲弾をぶっ放せるMk.45であろうと関係は無い。通常艦ならいざ知らず相手は『深海棲艦』。まともに戦えるとは思えないが、艦娘の力ならばどうにかなるかもしれない。と、言うよりどうにかしなければ生き残れない、と言う方が正しいか。

頭に浮かぶレーダーディスプレーに慌ただしい敵艦隊の動きがあった。どうやらバレたらしい。

ヴェラはその旨を味方に告げると、敵にロックしておいたハープーンを発射した。

ハープーンは夜戦において空母より危険で、なおかつ硬い目標である戦艦に狙いを定め、各艦に2発ずつ突っ込んだ。

通常の炸薬の2倍の威力を持ったヴェラのハープーンは通常のハープーン4発分の威力に敵戦艦は瞬時に沈黙した。この攻撃により、ラオラオベイに展開していた4隻のル級フラッグシップのうち1隻が沈み、1隻が大破した。また、この攻撃の余波により駆逐艦2隻がル級の爆発に巻き込まれ沈み、軽巡1隻を含む数隻が損傷した。

これにより、『深海棲艦』の反撃に僅かな遅れが生じた。言うまでもなく、この僅かな遅れは致命的被害を彼女たちに与えることになった。

このハープーン攻撃のドサクサにまぎれ、ヴェラたち第三艦隊ラオラオベイ突入部隊は砲戦可能な距離まで接近した。

ヴェラのMk.45が先陣を切り、砲撃を開始する。レーダー、センサー等を駆使した射撃管制システムにより驚異的命中率を誇る現在の単装速射砲は、航空機やミサイルなどの飛翔物体を撃破するために作られている。当然、艦船に命中させることなど造作もないことなのだ。

ヴェラの放った砲弾はあらゆる環境特性、敵の動きを完璧に予想したコンピューターの計算通りの地点に撃ち込まれ、予想外通りに動いたヘ級フラッグシップに命中した。12.7センチ砲弾ではさほどの損害は与えられないが、間髪入れず被弾箇所に再び撃ち込まれれば十分な被害を与えられる。3発目の砲弾で、ヘ級は特に反撃することなく海に沈んでいった。

この頃になると、味方と敵の砲弾が入り乱れる乱戦となっていた。

敵のリ級フラッグシップから放たれた20.3センチ砲弾がヴェラのすぐ目の前に着弾した。瞬時に熱せられた海水がヴェラの体に降りかかるがそんなものに構っていられる時間はない。

ヴェラの後方にいた球磨たちが増速し、ヴェラの横を通り過ぎていく。砲撃を中止した彼女たちは搭載された魚雷を放つために突撃したのだ。

球磨型に搭載された九三式酸素魚雷(何故か八九式熱空気魚雷ではなくなっている)が放たれた。

53ノットで22000メートルの射程を持つこの魚雷は海外ではロングランス(長槍)と呼ばれている。あまりに長過ぎたために、実際の戦闘中に敵艦に回避された魚雷が、射程圏にいた友軍艦艇に命中してしまう事態が発生したほどだ。

また、酸素を利用するため各国の空気魚雷より航跡がない。空気と違い、燃焼に全て利用されるため排気によって生じる気泡が発生しないためだ。

夜戦において姿の見えない高速の魚雷は大きな脅威であると同時に、恐怖にもなる。

恐怖は混乱を煽り、敵が冷静な判断をできなくする大変重要な武器にもなる。今回のような夜襲は小規模な部隊で行うことが望ましい。ゆえに戦力不足を補うために。あらゆるものを武器として用いる必要があるのだ。

そして、今回もこの武器は非常に役立った。

静かに、しかし高速で接近して来た長槍は、徐々に構築されつつあった艦隊陣形をあっさり破壊した。

『深海棲艦』たちは、味方の被雷に恐れをなしできるだけ味方との間隔を開けようと好き勝手に動き始める。これでは、反撃に出るのにさらに時間がかかるだろう。

球磨たちが魚雷を再装填(どういう訳か、次発装填装置が付いていないにもかかわらず再装填ができている。後で聞いた話だが、艦娘は妖精の力によってそんなこともできるらしい)し、再び雷撃に入る。今回は各艦がばらばらに魚雷を発射していく。

この雷撃は、敵に被害を出すことを目的としたものではなく、敵の混乱をさらに煽るための時間差で放った散発雷撃だった。

これにより、敵にとっていつ来るか分からない目に見えない水面下を突き進む死神ができたも同然である。

これまでの所、ヴェラが必死に考えたプランは順調に推移していた。ここから少し離れた地点でホバリングさしているシーホークも、十分に撮影ができたことだろう。

ヴェラは頭の中にある時計を確認した。交戦開始すでに20分が経過している。散発雷撃により混乱しているがいずれ事態を収拾し、反撃に転じるはずだ。その前に撤退しなければならない。引際を間違えて壊滅した部隊は枚挙に暇がない。

ヴェラはシーホークに連絡を入れた。

「こちらヴェラ・ガルフ。シエラ101へ」

《こちらシエラ01》

「偵察は完了しましたか?」

《ええ、バッチリです。いつでも撤収できます》

「了解しました。回収地点は予定通りポイント・アルファで行います」

《了解》

「以上です。通信終わり」

ヴェラは一息つくといまだに交戦している友軍に連絡を入れた。

「ヴェラ・ガルフより各艦へ。全艦撤退。攻撃を中止して撤退してください。受領通知を」

すぐに連絡が来る。

「了解だクマ」

「分かったにゃ」

「は〜い。分かりました」

「分かったわ」

全員からの受領通知が来ると、ヴェラは『深海棲艦』に背を向け、全力で離脱を開始した。

時々目を閉じて頭の中に展開されているディスプレーを見て、敵の動きを確認する。

ようやく散発雷撃の恐怖から抜け出したらしく、反撃のために艦隊陣形を構築しようとしているが、ヴェラたちが湾外に出る方が先になりそうだ。脱出まであと5分。逃げ切れる。

が、ヴェラの希望は儚く打ち砕かれた。

後方よりかん高い音が聞こえたのだ。それが何か一瞬分からなかったが、目の前に巨大な水柱が立った瞬間に分かった。

大口径砲弾が落ちてきたのだ。水柱の高さから推測するに、40.6センチ砲弾だろう。最初に叩いた戦艦群が反撃を開始したのだ。

ヴェラは小さく舌打ちする。反撃が想定より早い。このままでは…。

すぐ後ろで激しい炸裂音が響いた。

ヴェラが後ろを向くと、球磨が被弾しているのが分かった。球磨の表情は、苦痛で歪んでいる。

ヴェラはすぐに球磨に呼びかけた。

「球磨さん、大丈夫ですか⁉︎」

大丈夫でないのはここから見ても分かるが、それでも言ってしまうものだ。

「大丈夫だクマ…。球磨をこんな姿にするなんて屈辱だクマ…」

その言葉からは怒りの念が感じられた。どうやら、あの歪んだ表情は痛みよりも怒りからきていたようだ。

怒ることができるほど元気なら十分だが、一応、聞いておいた。

「球磨さん、自力航行は可能ですか?」

「なんとか大丈夫クマ。でも、小回りがかなり効かなくなっているクマ。それに、足もかなり遅くなってるようだクマ」

当然だろう。あれほどの被害を受けたのだ。むしろ、自力で航行ができることに驚きを感じる。

ヴェラはすぐに対応策を出した。

「睦月さん、球磨さんの離脱を手伝ってください。多摩さんと如月さんは2人の支援をお願いします。できるだけ早くここから離脱してください」

「それは了解だけど…、ヴェラさんはどうするの?」

如月が疑問を呈した。

ヴェラはその疑問にすぐに答える。

「私は殿を務めます」

如月はその行動を止めさせようと口を開こうとしたが、ヴェラの目に決意の念が浮かんでいることに気付き、説得を諦めた。

彼女たちが離脱していくのを見ながら、ヴェラは敵の司令塔を探した。数秒で目当てのものを見つけた。

そこにいたのは、これまで交戦したことのない『深海棲艦』だった。

ヴェラは戦術データ・システムに記憶してあるデータからその『深海棲艦』が何者であるか突き止めようとした。

見つけた。飛行場姫と呼ばれる『深海棲艦』の中でも上位個体だ。

飛行場姫はアイアンボトムサウンド、つまり鉄底海峡付近に存在している個体しかこれまでのところ確認されていないが、第二次大戦時飛行場があった場所であればどこにでも出現する可能性がこれまでの研究から予想されていた。

言うまでもないが、第二次大戦時ここサイパン島にはB-29の飛行場、コンロイ飛行場(日本側公称アスリート飛行場)が存在していた。

学者たちの言った、飛行場姫の出現条件は十分に満たしている。

ヴェラは自分の不運を呪った。

まさかここにそんな奴が展開しているとは思わない。ヴェラたちは、お偉い学者たちの予想の裏付けを図らずもしてしまったのだ。

もっと味方が多い時に出てこればいいものをと、ヴェラは独りごちたが、それで今の状況が打開されるわけではない。

先に行くように命じた泊地攻撃のメンバーも、激しい砲撃によりあまり進めていない。

さらにマズイことに、飛行場姫と泊地内にいたヲ級フラッグシップから航空機が飛び立っている。

ヴェラはイージスシステムをフル活用し航空機に対処するが、多勢に無勢、何十機と飛び立つ航空機全てを1人で叩き落すには無理があった。

状況は芳しくない。いや、時間と共に悪くなる一方だ。

殿として残ったヴェラに砲撃が集中し始めた。どうやら、先に行った部隊には航空機が攻撃を加えるようだ。

本来ならば、味方のエアカバーをしなければならないが、今は自分に向けられる砲弾を回避するのに手一杯で、敵機来襲を警告することしかできなかった。

周囲に何本も立つ水柱に囲まれる中、ヴェラはどうにかこの危機から脱出する方法を考えたが、何も浮かばなかった。最新鋭の戦術データ・システムを持ってしても、この状況から自力で脱することは不可能だと判断されたのだ。

ヴェラはこの馬鹿馬鹿しい威力偵察が失敗しかけているのを悟ったが、ただでやられるほどお人好し出ないことを証明するつもりだった。

ヴェラは自身の搭載している飛行場姫に有効と思われる強力な対地兵器、ハープーンとトマホーク全弾を飛行場姫に向けた。

両兵器共、対艦兵器であるが、艦娘の力を使用すれば十分に対地攻撃は可能だ。

ヴェラは現在も飛行している彼女艦載のシーホーク2番機、シエラ102に飛行場姫レーザー照射させハープーンを、トマホークは標的地点の座標を入力して発射した。

ヴェラ最後の希望である8発のミサイルは、白煙を噴きながら飛翔を開始した。

『深海棲艦』艦隊から対空砲火が上がるが、亜音速で飛翔する両ミサイルを落とすことはできなかった。

十数秒の飛行ののち、ハープーンとトマホークはポップアップし、飛行場姫に向け45°の急角度で突き刺さり、轟然と爆発した。

どのミサイルも通常より2倍の炸薬が入っているため、その威力は計り知れないものになっていた。

ヴェラは微かな希望を見出した。もしかしたら、この攻撃で飛行場姫が撃破できなくても、かなりの損傷を与えられたかも知れない。

もしそうなら、脱出の時間を稼げるかも…。

しかし、現実は常によくない方に回るものだ。シーホークからの映像には、黒煙の中で蠢く飛行場姫の姿が映っていた。しかも、ほとんど損害はなく、ピンピンしているように見える。

それを見たヴェラは作戦が失敗に終わりかけていると感じた。先ほどの攻撃で僅かに乱れた敵の陣形はすでに回復している。

味方から連絡がくる。航空機の攻撃を受け前に進めず、無傷のものは1人もいないといった内容だった。通信の相手である如月の声には絶望の色が滲んでいた。ヴェラはこの通信の返答として、できる限りの努力をすると言ったが、それはなんの打開策もないことを告げているのと同じだった。

通信を終えたヴェラは普段は決して使わないような言葉で敵を、そしてこのような無茶な作戦をするように仕向けた軍の上層部の者たちを口汚く罵った。

他の人が聞けば眉をひそめるであろうことは確実な言葉を連呼し続けた。それほど怒りであったのである。

今の彼女の頭にあったのは、生きて帰れたら必ず復讐してやる、と言ったところか。

どちらにせよ、ヴェラのその罵りは突然きた無線で打ち切られた。

《こちらエスコート。ストライカー、応答せよ》

ヴェラは驚いた。エスコートとは、米第3艦隊の護衛部隊に与えられているコールサインだ。ストライカーは、ヴェラたちのコールサインである。

ヴェラはすぐに返答した。

「こちらストライカー、旗艦ヴェラ・ガルフ」

《良かった、まだ無事か。こちらはエスコート旗艦レイク・エリー。ポイント・アルファで貴艦隊の空母部隊と接触した。そちらの状況を報告してくれ》

彼女は無事なものかとひと言皮肉を言ってやろうかと思ったが、今はそんなことで時間を潰している暇はないと思い直し返答した。

「ストライカーは1隻が大破。本艦以外の全艦が何らかの損害を受けいている。支援攻撃を要請する」

《了解した。攻撃目標を伝えてくれ》

ヴェラは彼女を取り巻く状況を見て答えた。

「ネガティヴ。こちらからは伝えられない。が、現在飛行中の友軍機から目標の情報は得られるはずです。そちらに周波数を送ります」

数秒の沈黙の後、再び連絡が入った。

《目標を確認した。現在、支援攻撃の準備中。使用火器はトマホーク。弾頭は燃料気化弾頭》

燃料気化弾頭だと?ヴェラはその意味を悟ると、回避行動も止めてすぐに海域離脱を図った。

あの兵器の影響圏内にだけはいたくない。

再び連絡がきた。

《たった今発射した。着弾まで3分》

ヴェラはどうにか湾外に脱出していたメンバーに近くの岩陰に隠れるように告げた。

こちらの切羽詰まったような言い方が功を奏したらしく、全員が素直に従ってくれたようだ。

《あと2分》

再びきた連絡にヴェラはさらに急ぐ。すぐ目の前に砲弾が落ちたが、構っていられない。

ヴェラは2機のシーホークに早急に離脱するように命じたが、すでに2機は離脱を図っていた。シーホークの妖精も、サーモバリックの威力を確かめたくはないらしい。

《あと1分》

水平線から1本の光が見えてきた。光は徐々にこちらに近付いてきた。

ちょうどその時、ヴェラは湾外に脱出し味方たちがいる岩陰に勢いよく飛び込んだ。

《あと30秒》

ヴェラはその場にいる全員に、ショック体勢をとるように伝え自らがその見本を見せた。

耳を塞ぎ、目をきつく閉じて、口を開ける。この体勢を維持すれば、サーモバリックの衝撃を抑えることができる。

《残り10秒》

そして、永遠にも感じる数秒が続き最後のカウントダウンが始まった。

《5・4・3・2・1…インパクト‼︎》

目を閉じていても分かるほどの凄まじい閃光が、夜空を一瞬で真夏の真昼間に切り替えた。

 

燃料気化兵器。正式にはサーモバリック爆弾は、燃料を目標地点に撒き散らし、それが気化して周囲に広がったのちに点火し、瞬間的に空間を焼き尽くす気化兵器である。

某戦闘機ゲームでもその猛威を振るうこの兵器は、あらゆる目標に有効的だが特に地上の目標に凄まじい効果を見せる。

上空200メートルで霧状に燃料が散布され着火し、直径300メートルの巨大な火の玉を発生させる。この時の温度は2000℃〜3000℃で、この火球に触れたものは全て燃えて灰になる。

最初のこの火球で4平方キロメートル以上が焼き尽くされ消滅し、燃料と空気の混合して何度も起きた超過気圧によって7平方キロメートル以内の物体は全て破壊される。

もっとも、これは通常の地上目標に対して使用した場合だ。実際にこれだけの被害を与えることができるかは分からない。

しかし、いくら相手が『深海棲艦』といえどこれだけの破壊を受ければ損害被ることは確実だ。

サーモバリックは、生物に特に有効なのだ。この攻撃を受ければ、普通の生物は確実に死滅する。『深海棲艦』とて生物である以上、この激しい炎の嵐を耐えられないはずだ。

ヴェラは衝撃波と強い熱波が収まるのを待って、岩陰からラオラオベイを見た。

先ほどまで生い茂っていた木々は1本残らず焼き尽くされ灰となっていた。まだあちこちから煙と水蒸気の幕が空に向かって立ち上がっている。

が、飛行場姫はまだ存在していた。しかも動いている。

しかし、完全な状態でないことはすぐに分かった。いたるところに損害が確認でき、まるで巣を守る雀蜂のように飛び回っていた航空機(一部ではたこ焼きと呼ばれている丸い航空機)は1機残らず消し飛んだようだ。

また、泊地内の艦隊も同様に被害を受けたようだ。

爆心地に近い位置にいた『深海棲艦』の内、まともに生きていたのはル級フラッグシップ2隻とヲ級フラッグシップ3隻のみ。

その周りにいた護衛の重巡や軽巡、駆逐艦はどれもこれも完全に炭に変わってしまったようだ。

爆心地より離れた地点にいたこれらの艦艇は、損害を受けているものの、まだ無事に動いている。

サーモバリックは、想像より威力は低かったが、彼女たちの離脱の時間を稼ぐには十分だった。

ヴェラたちはすぐに動き始め、合流地点に向けて可能な限りのスピードで走り出した。

 

5月17日

 

1時間ほど走ると、味方の艦隊が見えてきた。ここからでも、レイク・エリーの雄姿が見える。

ヴェラは久しぶりに姉を見て、ほっと一息ついた。彼女が最後に見た姉の姿は、『やまと』の魚雷を土手っ腹に受けて炎を吹き上げているところだった。

艦隊の陣形は、瑞鳳たち艦娘を中心にした輪形陣で、前方にレイク・エリー、左右にアーレイバークとステザム、後方にマッキャンベルが配置されている。

護衛の米第3艦隊の4隻は、瑞鳳たちが回避行動で押し潰されないように間隔を大きく開けている。

ヴェラたちはその艦隊の間を縫って中心地点に向かい、瑞鳳たちと二言三言話したのち、パラオ泊地への撤退を開始した。

レーダーには敵の追撃部隊がラオラオベイから出撃してくるのが分かる。数は少ないがそれなりに規模の大きい部隊の筈だ。

さらに、ヴェラたちの奇襲時に泊地内にいなかったいくつかの哨戒部隊も彼女たちの追撃に参加しているようだ。

まだ生き残っていた敵側の偵察機があらゆる方向に向け飛んでいくのが、ヴェラのディスプレーに映る。

今のところ、見当違いの場所を飛行しているが、不規則に旋回しているためどの方向からいつやってくるか正確に予想することはなかなか難しいだろう。

ヴェラは米第3艦隊の各艦とデータリンクシステムで繋がっていた。こうすれば、敵部隊に対する攻撃も容易になるし、それぞれの持つ情報を効率的に戦闘に使用することが可能だ。

艦隊の前方と左右にSH-60Bが飛行し、海中にいる潜水艦に睨みを効かせる。各哨戒機には敵潜を見つけても攻撃しないように厳命されていた。攻撃をして、こちらの居場所を敵に知らせたくなかったからだ。

航空機に対しても同様で、回避困難な敵機の場合のみ、攻撃を行った。

これだけ徹底しておけば、十分に追撃を振り切れたが、こちらの想定通りにいかないのが現実であり、戦闘である。

どういう訳か、超低空を飛行する偵察機と遭遇したのだ。

ステザムが即座に叩き落としたが、時すでに遅く位置は通報された後だった。

すぐに全艦が転舵し、敵にこちらの行き先を誤らせようとした。

しかし、20分ほどして到達した敵編隊はその欺瞞に全く嵌まらないようだ。40機ほど敵編隊はまっすぐにこちらに向かって接近してくるのが、レーダーで分かった。

護衛の4隻も同様に把握し、攻撃の用意をしている。

各艦が発射するミサイルの振り分けはコンピューターが瞬時に行い、それぞれのCIC内のディスプレーに映し出す。

ヴェラの頭の中にあるディスプレーも同様で、彼女のSM-2の数基に諸元が入力される。

そして。

VLSが解放され、各艦より合計40発のスタンダードミサイルが発射された。白煙を噴き上げるスタンダードは、徐々に明るくなる空を駆け登り、水平飛行に移った。

その頃になると、すでに発射元からはその姿を肉眼では見えなくなる。それはおそらく目の良い艦娘、中でもヴェラは特に良いが、同じであった。

ディスプレーに光点として表示されたスタンダードは、順調に大気を切り裂きつつ敵機に向けて飛翔する。

戦闘はすぐに終わった。

敵編隊に飛び込んだスタンダードは、寸分の狂いもなく命中していく。敵機が大きな回避行動をとろうと、増速して逃げようと関係はない。

40発のSM-2は、1発残らず命中し、空にいくつもの爆炎でできた花を開かせた。

こうして、『深海棲艦』の攻撃部隊は僅か数分で全滅した。

幸運にも、そして『深海棲艦』にとっては不運にも、情報収集が遅れこの攻撃部隊の全滅が判明したのは、それから約2時間後、帰投時間になっても帰ってこない艦載機に気付いてからだった。

『深海棲艦』は血眼になって奇襲部隊を探し回ったが、その頃にはヴェラたちはすでに安全圏に離脱し、迎えに来た米第3艦隊の主力部隊と合流していた。

結局、『深海棲艦』は叩かれるだけ叩かれたのちに、追撃部隊は復讐すらできずに撤収するしかなかった。

こうして、困難を極めた今回の威力偵察はヴェラ以外の艦娘全艦が損傷するも、轟沈艦なしという好結果に終わった。

しかも、偵察自体も見事に成功しており、シーホークが持ち帰ったデータは極めて質の良いものだった。

また、米側も対『深海棲艦』用に装備されたサーモバリック弾頭のトマホークの実戦での使用で良いデータがとれたらしい。

不可能に思われた作戦は再び人類の勝利で幕を閉じたのだった。




まず最初に、お疲れ様でした。
こんな駄文が長々と続くと面倒くさいと思います。書いてて、自分でも面倒くさくなりました(笑)
以後、このような長文はできるだけ控えるようにします。
次に、艦これの小説のクセにほとんど艦娘が出てこないという悲惨な状態。どうにかしないといけませんね。
そして、サーモバリックについて。できるだけ事実を含めて書いたつもりですが、間違っている部分は多いでしょうね。
トマホークにサーモバリックは積めないはずですし。
まぁ、その辺はフィクションとして受け止めてもらえれば幸いです。

そうだ。現在進行中の秋イベは本作の主人公、ヴェラ・ガルフの名前の由来となった夜戦がモチーフです。非常に嬉しい限りですが…まだ攻略できてません。時間はまだあるのでジックリ攻略していきましょう。

最後にこのような作品を読んでいただきありがとうございました。
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