また2ヶ月以上も音沙汰なしでやってしまいました。皆様はいかがお過ごしでしょうか?
私は今、免許の取得に勤しんでいます。可能なら乗りたくないのですが…。仕事をするにあたってどうしても必要でして…。
今年はまだ学生ですが、同時に就活生でもあります。
今後はさらに投稿が遅れる可能性があります。出来る限りの事はしますのでよろしくお願いします。
また、今回はこれまで以上の駄文になっているような気がします。申し訳ありません。
それでは、始めます。
その日の夕方。
キングたちはサイパン島に上陸していた。夕焼けに輝く海面はさざ波により乱れて見えたが、その自然にしか作ることができない景色は、息を飲むほど美しい。
もっとも、そう感じているのはキングだけで他の艦娘たちは世間話を楽しそうにしながらコンクリート製の波止場を足早に歩いていく。
彼女たちにとっては見慣れた光景のようだ。
キングはその少女たちのことを羨ましく思った。贅沢な生活を続けていれば、その贅沢も贅沢に感じられなくなるのと同じように、当たり前の日常の中にあるかけがえのないものは、普通に生活しているだけでは気付くことは少ない。
そして、それを失ってしまったその時に気付いたのでは遅過ぎることもある。
そう、あのくだらない監視任務すら、今の彼女には懐かしく忘れることのできない貴重な『日常』。もう二度と戻ることのできない『日常』だ。
キングは微かな憎しみと哀しみを思い出して、その場に立ち止まりその穏やかな景色を眺めた。
少しずつ冷静さを取り戻していく。
大丈夫だ。私はやっていける。
ふと気付くと、先を歩いていた少女たちが心配そうにキングのことを見ている。
そうだ。ここには、自分と同じ者たちがいる。
彼女は笑顔を浮かべて、少女たちの元へ歩み寄った。
キングたちが波止場をしばらく歩くと、一台の高機動車が走って来た。キングは身構えるが、陸に揚がった河童に何が出来るかは自分でもよく分かっていない。
幸運にも、これが杞憂に過ぎないことはすぐに分かった。
周りの艦娘たちは特に警戒している様子はないし、むしろこれを歓迎しているようにさえ見える。
高機動車は彼女たちの目の前に止まった。車体には日の丸と『マリアナ守備隊』と書かれている。
彼女は眩暈を感じた。よもや、この島が再び日本の手により統治される日が来るとは。
そんなことを考えるキングをよそに、しおいは日本製ハンヴィーとでも言うべき高機動車の運転手と何やら話をした後、全員に乗り込むように言った。
艦娘たちは嬉々として車内に乗り込んで行く。
キングもしばしためらった後、仕方なく高機動車に乗り込んだ。
高機動車の車内は彼女の知る(彼女は米軍で使用する軍用車両の基本的なデータを全て把握している)ハンヴィーとは違い、座席が広く、大人数が乗れそうだ。
すでに他の艦娘たちは硬い座席に座っている。キングは空いていたニムの隣に座る。
と、同時に高機動車は発進し、まだしっかりと座っていなかったキングは危うく頭を金属製の柱にぶつけそうになった。
いや、ぶつかった。確かに妙な音がした。ガッ、と言うおおよそ普通の生活をしている限り聞くことはないだろう音が。
しかし、その音が他の艦娘たちに届く前に高機動車は喧しいエンジン音を発しながら進み始めたため、キングの負傷は気付かれることはなかった。
数秒経たずに、キングは左側頭部に鈍い痛みを感じ始めた。彼女は手で患部を触った。
どうやらたんこぶができているようだ。
キングは突然、自分が情けなくなった。人の体を得て初めての負傷がこれなどとは。
世界最強の潜水艦の名が廃る。
彼女はまだ知らない。
かつて、世界最強の洋上艦と呼ばれた艦娘が、彼女と同じようにどうでもいい負傷をしたことに。
この事実に気付いた時、彼女は随分とホッとすることになるのだが、それはまた別の話である。
高機動車に揺られることおよそ10分。
キングたちが来たのは埠頭から少し離れた飛行場だった。
場所を考えるとおそらく、サイパン国際空港、つまり第二次大戦当時米軍はイズリー飛行場と呼び、日本軍はアスリート飛行場と呼んだ施設だろう。
基地の門にはただ『サイパン飛行場』としか書かれていないのを見ると、日米両国にとって問題のない名前が選ばれたようだ。
サイパン飛行場は空軍と海軍による共同運用がなされているようで、両軍の司令部が作られている。
さらにそこに米海軍の施設が入っているので、この基地には少なくとも3つの指揮系統があることになる。
実に複雑だ。
幸運にも、陸軍と米海兵隊はチャラン・カノアに司令部を置いているのでまだマシと言えばマシではある。
どちらにせよ、この施設で迷うとかなり厄介なことになるだろう。ほんのちょっとしたミスで基地全体を巻き込む大騒動になりかねない。
…いや、もう何か起こっているようだ。
やたらと将兵たちが走り回っている。
車内の艦娘たちはもちろん、運転手と助手席の男たちも何やら困惑しているようだ。
と、突然施設の横道から現れた保安要員らしき兵士数人が高機動車を取り囲んだ。
助手席の男が、保安要員の指揮官らしき人物に何事かと問いかけた。
指揮官は簡潔に説明を済ませる。助手席の男はしばし考えたのち、指揮官に何か伝えた。
指揮官は男に敬礼すると、部下の一人に何かを伝え、行くように指示をした。
助手席の男が、こちらを向いて言った。
「施設内で不審物が発見されたらしい。詳細は不明だが、危険物であることも考えられるため、施設を封鎖したらしい。
取り敢えず、君らは通してもらえるそうなんで迎えを寄越してもらった。
迎えが来たら付いていくといい」
しおいが感謝の意を伝える。
「ありがとうございます。お手数をおかけしてすみません」
「なに、いいってもんよ。お嬢ちゃんたちに戦わせてるんだ。これくらいはしないとな」
先ほど立ち去った保安要員が1人の男を連れて戻って来た。
ニムとイクの2人は、その男が見えた途端車内を飛び出して男に体当たりを喰らわせるように飛び付いた。
男はそれを予想していたように、ヒラリと躱すと2人に軽くチョップを喰らわせる。
中間管理職を思わせる小太りの男は軍人には見えないが、着ている服は紛れも無い軍服で、襟には少将を表す襟章が見える。
車内に残っていた艦娘たちも高機動車を降りて男の方に向かって行く。
最後に残ってしまったキングは、ここまで送ってくれた2人の男に代表して(と言うより誰も言わなかったので仕方なく)礼をしてから降りた。
男は帰って来た少女たちが無事に帰って来たことに心底ホッとしているようで、嬉しそうに会話をしている。
ふと、キングの存在に気付いたのか、男は頭を少し掻きながら近付いてきた。
「君か?しおいたちの言ってる『スゴイ新人』って言うのは?」
キングは少し考えたフリをした後答えた。
「ええ、多分そうだと思いますよ。シーウルフ級原潜2番艦のキングです。あなたは?」
「私はマリアナ守備隊の艦娘たちの指揮をしている上野渥巳だ。よろしく頼む。ようこそ、太平洋解放の最前線へ」
上野と名乗った男は穏やかな笑みを浮かべながら、キングに手を差し出した。
キングはどう応えるべきか迷った。
握手をすべきなのか、否か。
キングの迷いを察したのか、上野は肩を竦めながら言った。
「そう畏まらないでくれ。軍人ではない私にそのようなものは無用だよ」
キングは困惑する。軍人じゃない?どういうことだ?
彼女の疑問を察してか、上野は続けた。
「私は民間の人間でね。最近は一般人も素質があれば徴用されるようになっている。嫌な世の中だよ、全く」
「つまり、あなたは素質があると言う理由だけでここに来たと?」
「まぁ、そうなるが、軍歴?ってのはそれなりに長いぞ。もっとも、正規のものではないが」
キングは再び困惑した。頭痛がする。色々と訳の分からないことが連続して起こったせいで頭は完全にパニック状態だ。
ちょうどそこへ、しおいが話に入ってきた。どんな話をしていたかも理解しているようで、キングに補足説明をしてくれる。
「上野提督は元々民間軍事会社の幹部をしていたんだって。なんでも、名の売れた会社だったとか」
「PMC?」
「正確にはPMSCだ。それも、随分と昔に辞めたからな。ざっと、10年ほど前だったか」
なるほど、確かに正規のものではない。1980年代に誕生し以来、『国家』に代わってテロとドンパチする『企業』と言えるPMSCは、国家による、冷戦で肥大化した軍隊の削減の煽りを受けた退役軍人の受け皿となり、戦うことで生計を立てていた多くの人々を吸収し、その数を増やしている。しかし、日本人が『それ』をするのは珍しい。何かあったのだろうか?
「過去のことはどうでもいいさ。さて、そろそろ行こうか」
キングの疑問をよそに、上野は少女たちを引き連れて歩き出した。
上野は特定の相手に言うでもなく、独り言のように話し始めた。
「しかし、パラオからお客さんが来てるってのに…面倒を起こしてくれたもんだな。
これじゃあ、ここの基地の面子も丸潰れってやつだな」
「お客さんって誰のことでち?」
上野は右へ左へ駆けて行く将兵を半ば嘲笑気味に見つつ答えた。
「もちろん、パラオの英雄殿さ」
江田はサイパン飛行場横の海軍司令部の応接室で盛大なくしゃみをした。
彼は ズルズルと音をさせつつ、共にパラオから来ていたヴェラ・ガルフに呟く。
「誰か噂話でもしてるのかもな」
ヴェラは冷めて目で彼を見つめて答える。
「そーかもしれないですねー」
「随分な棒読みだな、お前」
「すみません、少しイラついているので」
「何にだ?」
「もちろん、長々と私たちを待たせてるこの施設の人間にです」
江田はため息をつく。そこには、ある程度の同意と、サイパン基地の将兵たちの苦労の理解が滲み出ていた。
当選、ヴェラも彼らの苦労を理解しているし、ある程度なら温厚(?)な彼女も我慢できる。
が、それにしても2時間も全く人の出入りが無いことには流石に我慢しきれない。
仮にもこちらは客、しかも一応は太平洋奪還の流れを作った英雄である江田が来ていると言うのに、この扱いでは。
それとも、上はまだ江田の事をどうでもいい男と見ているのだろうか?
もし、まだそう思っているのであれば、そのつまらない考えを正してやらなければならない。
もちろん、力尽くで。
彼女のその考えは、幸運にも実行されることはなかった。
応接室の扉がノックされたためだ。
「ようやく来たか」
江田が小声でヴェラにだけ聞こえるように呟いた。
彼女も、それに頷いて返答する。
江田が誰何の声を出す。
「誰か?」
「護衛の者です。もう間も無く上野提督が参ります」
「分かった」
江田は簡潔に答えた。
ヴェラは長時間椅子に座っていて凝り固まった体を伸ばしつつ言った。
「やっと来ましたね」
「ああ。どうやら、お外のゴタゴタは一段落したらしいな」
江田も肩を鳴らしながら立ち上がり、テーブルの上に置かれている数枚の地図を見ながら呟いた。
「さて、仕事の時間だ」
数分後、ドアをノックする音が聞こえた。
そのドアは中の者の許しも得ずに開かれた。
ヴェラは開いたドアを睨み付ける。全く、礼儀知らずにもほどがある。
入って来た男は、小太りで軍服がお世辞にも似合っているとは思えない。どちらかと言うと、何処かの中華料理屋ででも働いていそうな見た目だ。
が、男から独特な雰囲気が発せられていることに、彼女はすぐに気付いた。
そう、『こちら側』と同じ雰囲気だ。
元民間人だと聞いていたが、ただの民間人ではないようだ。
男は入って来るなり、頭を掻きながら憎めない笑顔を浮かべながら言った。
「いやいや、お待たせして申し訳ない。何分、最近は物騒でしてね。少し神経質になって調べていましたので遅れてしまいました」
「いえいえ。少しも待っていませんよ、少しもね」
ヴェラは皮肉混じりに言う。
男は特に何も感じていないように彼女の皮肉をスルーして、江田に手を差し出すと言った。
「上野渥巳です。お目にかかれて光栄です、江田提督。噂は聞いていますよ」
「悪い噂ばかりでしょう?」
「いいえ、とんでもない。頭の固いお偉方が扱いに困っていると言う愉快な噂ですよ」
「でしょうね。あなたの噂も聞いています。元はあの『クラックス』の幹部だったとか」
ヴェラは話の中に出て来た単語を聞いて目を見開いた。
『クラックス』だと。
あの民間軍事会社のことか。
『クラックス』はオーストラリアで誕生した世界最大の民間軍事会社だ。主な仕事は、テロリストの制圧、麻薬カルテルの制圧、過激派の制圧、要人の護衛、果ては害獣駆除までと、PMSCの仕事とは思えないようなことまでしている。
もちろん、金さえ払えば何でもしてくれると言う訳ではない。
テロや、麻薬と言った反社会的行為には一切手を出さないと社長自らが宣言している。
そう言う意味では真っ当な会社と言えるだろう。
しかし、そんなこの世界にいる人間ならば知らない者はいないほど有名な企業に日本人がそれも幹部としていたとは驚きだ。
ヴェラのこの思考の間にも話は進んでいた。2人の男は互いに相手を探っているようだ。
「昔のことですよ。…そうだ、先ほどウチの子たちが1人艦娘を保護しましてね。どうやら、転生艦のようでして」
転生艦。ヴェラたちのような存在の総称だ。普通の艦娘と分けるための命名らしく、現在にヴェラを含めた4人が確認されている。
いや、今この瞬間から5人か。
上野はさらに話を続ける。
「彼女にもここに来てもらっている。ちょうど、転生艦の1人がいるようですしね」
上野はヴェラの方を見る。その眼にはこちらに対する親しみが込められていた。が、さらにその奥にはいくつもの修羅場を見てきた者特有の諦観にも似たものがあった。
上野の過去に何があったのか気になるものがあるが、それも上野が呼んだ艦娘の名前を聞くまでだった。
「キング。入ってくれ」
キング?まさか…。
1人の少女が呼びかけに応えて部屋に入って来た。米海軍潜水艦クルーの制服にドルフィン・マークを胸に付け、これまた米海軍の制帽を被った出で立ちだ。
艦娘の見た目は艦だった頃の艦種によってある程度特徴が出てくるというが、彼女が元潜水艦であったことは疑いようがない。
そして、現在の米軍に潜水艦と言えば原子力を動力とした艦はない。
また、原潜でキングと名の付く艦は、当然ながら唯の1隻だけだ。
ヴェラの考えが正しかったことは、少女自らが教えてくれた。
「シーウルフ級2番艦、キングです。よろしくお願いしますね」
ヴェラは思わず口走る。
「狼の片割れが、なんで…」
キングがヴェラの方を見て、何やら観察を始めた。が、それも数秒で終わり、キングはヴェラに話しかけた。
「私のこと知ってるってことは、あなたもあの世界にいたってことだよね?」
「ええ、私はヴェラ・ガルフ。知ってるとは思いますが…」
「もちろん。『鉄の爪』に実際に会えるとは思ってなかったわ。あの『クソ原潜』のせいでね」
キングの言う『クソ原潜』は明らかに『やまと』のことだろう。そして、『クソ原潜』の部分に凄まじいまでの憎しみが込められたところを見ると…。
「あなたも、私と同じですか」
「そうよ。ヤツに沈められたわ」
これで、『やまと』による被害者(あるいは被害艦?)は4隻に増えたと言う訳だ。
ふと、ヴェラは思い出した。
「アレキサンダーは?」
「…姉さんは多分生きてるわ。多分ね。私が最後に置き土産を残してやったけど、あいつに勝てるとは思えないわ」
キングの憎々しげな口調で答えた。
「さて、ただでさえ遅れてるんだ。そろそろ始めようか」
嫌な空気になり始めたことに気付いて、江田が話を本題に戻す。
「そうですね。それでは、早速始めましょう」
上野も江田の考えと同じらしく、机の上にある地図のところに向かう。
キングは一瞬だけ不満そうな顔をしたが、現在の情勢を知るためにここは引くことにしたようだ。
ヴェラもこの話をこれ以上掘り下げることはあまりいいことでないことに気付いていたのと、この仕事をさっさと片付けたいという考えから机の元へ向かう。
4人が集まると、すぐに情勢の説明をヴェラが始めた。この時のために最近の情勢は全て頭の中に入っている。
しかし、なぜ客である自分がしなければならないのか?
まぁ、やるからには完璧にしよう。それが、私の主義だ。
「えー、それでは説明に入らせてもらいます。
約3週間前に『深海棲艦』による『正式』な宣戦布告後、各方面で『深海棲艦』による被害が続出しています。
特に、これまでほとんど行われていなかった沿岸部への襲撃回数が急増し、各国軍も酷く混乱している状態です。当然、日米も例外ではありません。
この3週間の被害は、死者1058名、負傷者3226名と開戦当初とほぼ同等の増加を見せています」
「軍も沿岸部の防衛に戦力をほとんど割いていないのが現状だったからな。今回のこの犠牲者数も、そのツケが回って来たと言ったところだろ」
江田が呟く。ヴェラもその呟きに頷きつつ、さらに進める。
「はい。沿岸部の襲撃は開戦直後の数回しか記録がありませんので、上層部が沿岸部防衛を軽視していたことはある意味では仕方ありません。
しかし、彼らの行動パターンの変化はあまりにも大き過ぎます。まるで、指揮官が変わったように」
「その件ですが…」
上野の発言に全員が反応する。
「むしろ、これまでが異常だったと考えるのが妥当なように思えます」
確かにその通りだ。沿岸部への襲撃は、戦争における常套句。特に、『深海棲艦』のように圧倒的優位にある者は敵に精神的なダメージを与えると言う意味ではよく実行に移される。
第二次大戦終戦前の米軍による日本本土への艦砲射撃等がその好例と言えるだろう。
しかし、『深海棲艦』はそれをしなかった。
まるで、民間人への被害を恐れているかのように。
そして、この3週間で『深海棲艦』たちは、打って変わって沿岸部への襲撃を開始した。
異例とも取れる行動から、定石への転換。
その全ては、3週間前のあの日から始まった。
『Hello Humans,Good-by』。
あえて訳すなら、『こんにちは、人間共。さようなら』だろうか。このさようならは、この星から消し去られる人間に対する別れの挨拶だろう。
つまり、『深海棲艦』から『人類』に対する明確な、そしてこれまで発表されなかった『正式』な宣戦布告だ。
ここで出てくる疑問は、『では、これまでの戦闘は何だったのか』ということだ。
どこかのSF小説のように『深海棲艦』は、『人類』とではなく『機械』と戦っていたのか。それとも、別の者の意思で戦わされていたのか。
結論を出すにはあまりにも情報が足りなさ過ぎる。
江田が静まり返った場で発言した。
「ヤツらが何を考えているかは重要ではあるが、今は必要ない。今必要なのは、これ以上の犠牲が増える前にヤツらを倒すことだ。
そのために、そちらは我々を呼んだのだろう?」
その問いに、上野は答えた。
「その通りです。これ以上被害が出る前に、こちらから手を出します」
さて、ようやく本題に入った。すでに、上は新作戦案を準備し終え各部隊に通達済みだ。
当然、その通達先の中にパラオ泊地も入っている。
今回、ここに来たのはそのためだ。
パラオとサイパンは共同でこの作戦に当ることになっている。
両部隊の指揮官による会談は、相互理解に繋がり、実戦の際はそれが役に立つだろう。
「今回、我々に下されたミッションは『ダブル・ブルー』作戦の前段階、敵本拠地襲撃前の陽動作戦です。
我々、つまりサイパンとパラオに展開している艦娘、及び通常艦艇、米軍部隊による大規模攻撃を行い、敵の防衛部隊を分散させることが我々の目的です。
これにより、本隊による敵目標の撃破を容易にならしめることができると考えられます」
上野は一気に言った。
随分と重要な役を任されたものだ。
大役を任されるのは悪くはないが、その代わりに大きな被害がでることはあまり嬉しいことではない。
その時、ほとんど空気になりかけていたキングが手を挙げて発言した。
「あの〜」
「どうした?」
江田が首を傾げてキングを見る。
キングは少しモジモジした後言った。
「陽動作戦って、どこを攻撃するんですか?」
そう言われてようやく、3人はキングが何の情報も持っていないことに気付いた。
上野が頭を掻きながら言った。
「あ〜、すまん。忘れていた。君にも参加してもらうかも知れんからな。…場所はソロモン方面」
上野は一息ついてから言った。
「鉄底海峡。英語で言うところのアイアンボトムサウンドだ」
また新キャラ登場です。上野渥巳さんです。何人だせば気がすむんでしょうかね私は。
この人のイメージは、アーマードコアのファットマンです。ACファンの方、申し訳ありません。
たまに出てきます。…たぶん。
えー、次回はキングとヴェラのあっちの世界での思い出話やらを書いてみようと思っています。戦闘シーンはまだまだ先になりそうですね。
最後にこのような作品を読んでいただきありがとうございました。