不屈ノ爪〜The Iron Clow〜   作:明るい脳筋

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いやー、長らくお待たせしました。なにぶん、試験やらAO入試やらで忙しいかったもので。

あっ、私事ですが無事合格しました。

はい?そんなことはどうでもいいから早くしろ?
分かりました。すみません。

まぁ、いいや。サア続きを書くか。


第2話 接触す

ヴェラ・ガルフは、天井を見ていた。天井には、小さな蛍光灯が一つあり、彼女の寝ている部屋を照らしている。

彼女から見える範囲に装飾はなく、飾り気のない清潔感のある部屋のようだ。

しかし、彼女にとって部屋の状態はほとんど問題ではなかった。

最大の問題は、彼女の身体がヒトになっていると言うことである。この問題を解決するために、彼女は、かれこれ30分は悩んでいた。

今のところ、一番しっくりくるのは自分が夢をみているということだ。艦である彼女が夢を見ていると言うのは少しおかしいが、今現実に起こっているこの事態に比べると、あまり気にはならなかった。

が、この考えが間違っていることはすでに証明されている。

夢か夢でないかを確認する最も確実な方法は、自分の頬を引っ張ることである。夢と言うのは、痛みがないと言われている。そのため、頬を引っ張っても夢ならば痛みはないのである。

と、彼女の乗員の1人が言っていた。

彼女は、その乗員の言った通り自分の頬を思いきり引っ張った。

幸か不幸か、彼女の身体に痛みが走り、彼女は引っ張るのを止めた。頬が熱を帯びている。鏡はなかったが、今引っ張った部分は赤くなっているに違いないなかった。

それが、約10分前の出来事。

再び考え出した彼女だが、答えは出ない。

彼女が、この10分間で得た答えは、分からないことはいくら考えても分からないと言うことだった。

一つの結論にたどり着いた彼女は、どこか晴々しい顔をした。あまり良い答えでないことは分かっていたが、今の彼女には、それで充分満足だった。

問題が一つ片付いた彼女は、とりあえず今得たこの身体を動かしてみることにした。

まず、体を起こしてみよう。

……なかなか上手くいかない。が、徐々にコツを掴んだ彼女は、数分の格闘の末、身体を起こすことに成功した。

寝転んでいるときは見えなかったものが、いくつか見えた。

思っていた以上に部屋は狭く、こじんまりとしていた。室内の調度品と言えば、壁際にある数冊の本が入った本棚と小さなラック、窓際の花瓶に今彼女がいるベッドの横に木で出来た椅子があるだけだった。

ずいぶんとサッパリした部屋だと思ったが、ふと、人間の病室と言うものがこれぐらいサッパリした部屋だったことを思い出した彼女は、自分がどこにいるかようやく気付いた。

もちろん、そんなことに気付いてもあまり意味はないのだが。

彼女は、窓の外に目を向けた。

今まで気付かなかったが、外はバケツをひっくり返したような大雨だった。

彼女は、その陰鬱な天気に生きている実感を感じたのだった。

 

雨でビショビショに濡れた軍服を洗濯に回し、汗をシャワーで流した江田は、自室の軍服を着直して数時間前に出た執務室に戻ってきていた。

あの見知らぬ艦娘は、ひどく傷ついておりすぐにドックに送る必要があった。江田は、彼女を抱きかかえてドックまで連れて行こうとした。何度か駆逐艦娘を抱きかかえた(断じてセクハラではない)ことはあったし、今目の前にいる艦娘も駆逐艦サイズである以上、1人ででも担いで行けると思っていた。

が、その艦娘は見た目以上に重く、1人で担げばそろそろ運動不足と足腰の弱さが目立ってきた彼の腰がキマってしまうのは目に見えていた。

そこで、彼は一旦戻り、助けを呼びその艦娘をドックまで運んだのだった。

ドックまで連れてくると、残り少ない高速修復剤を利用し、彼女を医務室に運んだのである。

それが、この数時間の江田の行動である。

すっかり疲労した彼は、瑞鳳が見ている目の前で椅子にドカッと座り、煙草に火をつけた。

瑞鳳が、こちらを睨みつけてくるが、彼にとってはどうでもいいことだった。とにかく今は、この疲れきった体を楽にしたいと言う気持ちが強かった。

そんな気持ちが分かったのだろう、瑞鳳はため息をついて自分の仕事に戻った。

そのまま煙草を吸い続け、もうすぐ1箱開くまで来たところで、江田は執務室の室内が煙たくなっているのに気付き、吸っていた煙草を灰皿に押し付け、消した。

まだ強い雨が降っているが、このままでは執務室が煙たいままになるので、彼は窓を開けた。

雨の音が一層強くなる。

しばし外を見ていた彼は、ふと思い立ちドアに向かって歩き出した。

「どこにいくんですか?」

瑞鳳が言った。

江田の答えは至極簡単なものだった。

「見舞いだ」

彼はそう言うと、ドアを開けてた

 

雨の中を歩くこと数分。江田は、目的の場所に到着した。木造のこじんまりとした平屋で、一応診療所の役割を帯びている。

彼は中に入り、1時間ほど前にいた病室に向かった。

あの艦娘の病室は、奥から3番目の部屋だった。そこに向かう途中、いくつかのドアの前を通ることになる。

どこの部屋も空いておらず、今も負傷者達がそのドアの向こうにいた。時々聞こえる呻き声を聞きながら、彼は歩き続ける。

今の状態では、人類はそういつまでも持たないだろうと、彼は考える。その根拠がどこから来るかは分からなかったが、なぜかそう思えるのだった。

そんなことを考えていると、いつの間にか目的の部屋を通り過ぎていた。しっかりしないといけないなと、思いながら彼は、ドアを開けようとした。

ふと、ドアの真ん中あたりにあるガラス窓から中が見えた。

江田は、少女が起き上がり窓の外を見ているのに気付いた。

と、視線を感じたのか、少女がこちらに顔を向けた。その顔は、どこか悲しげに見えたが、気のせいかも知れない。

今の少女の顔は、完全に警戒の表情に変わっていた。彼は、ため息をついて中に入った。

どちらにせよ、話さなければならなかったのだから。

 

視線を感じたヴェラ・ガルフは、瞬時にそちらに顔を向けた。外を見続けていたため、時間の経過がほとんど分からなかった。まぁ、そんなことはどうでもよかった。今は、こちらを見ている男が危険か危険でないかを見極める必要がある。

男は、室内に入ってきた。鯨のような顔をした男だ。どこかで会ったことのある雰囲気だ。おそらく、日本人。軍服らしき制服や物腰、そして腹の据わったような目つきを見ると、この男がいくつもの戦場を経験した軍人であることがすぐに分かった。

それだけ分かれば、相手とどのように話せばいいか充分に分かった。彼女は、使用言語を英語から日本語になおし、言った。

「凄い雨ですね」

男は、少し驚いたらしく、しばしためらってから言った。

「そうだな」

彼女はこの物言いから、この男が彼女と同じような存在を指揮していることを把握した。彼女は、再び言う。

「この雨では、視界も悪く戦いにくいのではないですか?」

男は言う。

「ああ、こんな天気の時に彼女らを派遣する訳にはいかないからな」

これにより、この男が前線に出ることがないことを彼女は知った。

彼女が、次の言葉を発する前に男が言った。

「さて、君の質問はここで一旦切って、こちらの質問に答えてくれるか?」

「もちろん、構いません」

「では、まず最初の質問だ。君は何者か?」

それは、こっちが聞きたいと彼女は考えたが、普通に答えた。

「今の私が何者であるかは、私にも分からない。…ですが過去、私だったものなら言えます。

私の名は、ヴェラ・ガルフ。タイコンデロガ級打撃巡洋艦26番艦ヴェラ・ガルフです。…これでいいですか?」

男は、頷きながら言った。

「ああ、それでいい。さて、君の名前が分かった以上、こっちも名乗らなければならないな。

私は、日本国国防海軍中将、江田 四郎だ。よろしく頼む」

聞き覚えのある名前だと、彼女は思った。そして、気付いた。沖縄沖のあの闘いの時の雰囲気、江田 四郎という名前、鯨のような顔。

全てが、同じ人物のことを指すように思える。

その人物の名は、海江田 四郎。

彼女を沈めた張本人である。もちろん、同じ人物ではないだろうが、何かしらの関係があるとしか思えないほどだった。

彼女は、ここで1つの結論にたどり着いた。

つまり、今自分がいる世界は、前にいた世界とは違うパラレルワールドと呼ばれる世界であると言うことだ。

彼女は、皮肉に感じ笑みを浮かべた。まさか、自分を沈めた人間と話が出来るとは。

「何か面白いことを言ったか?」

江田が尋ねてきた。

彼女は、その笑みを浮かべたまま言った。

「いえ、ただ皮肉だっただけですよ」

「どういうことだ?」

「いずれ分かります」

「ふむ、まぁいいだろう。さて、こっちの質問はだいたい終わった。と言う訳で、君の聞きたいことに答えよう。もっとも、答えられる範囲でだが」

「それでは、早速。おそらく、あなたは私と同じような存在を知っているでしょう。それなら、この質問にも答えられはずです。私のような存在をなんと呼ぶか?そして、なぜそのような存在がいるのか?

差し当たって重要なのはこの2つです」

江田は、その質問を予想していたらしく、こう答えた。

「君のその質問には答えられる。しかし、完璧ではない。実は、我々にも君たちがどのような存在か理解しきっていないのだ」

「それでも構いません。今よりも知識を得られるならそれで充分です。恐怖とは、無知からくるものなのですから」

「分かった。少し長くなる」

そう言うと江田は、部屋の少ない調度品である椅子に腰掛け、話し出した。

「2012年の夏。ハワイにヤツらは現れた……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

歯車が動き始める。

 

停滞した時を動かすために。

 

『神はサイコロを振らない』

アルバート・アインシュタインの言葉だ。

宇宙を含む世界の仕組みは完璧なる神の設計図に基ずくハズであると言うことだ。

 

彼女の存在は、イレギュラーであることは言うまでもない。

 

しかし

 

神は、それすらも見越してこの世界を創った。

 

だから、彼女が来るまで時が動くことはなかった。

しかし、彼女がきた以上、時が止まる必要はなくなった。

 

時は動く

 

そして、世界を戦闘へと誘うのであった。

 




あ〜、終わりました。
相変わらず短いですね…。すみません。
今度はもつと長くできるよう頑張ります。
戦闘シーンはもう少し先になりそうです。あまり楽しみにしないように待ってください。
最後に、このような作品を読んでいただき、ありがとうございました。

ミスの訂正をしました。本当、ダメですね
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