ラブライブ! A Return Hero A Return Legend 作:リベリオン
いつか繋がるどこかの未来 南ことり編
「お出かけ?」
受験勉強のためにいつものように羽鐘くんの家に集まっていたことりたち。
休憩と、もうすぐ晩御飯の時間だからと言うことで勉強は一旦切り上げて羽鐘くんとことりで夕食を作ってみんなで食べていた時の事だった。
「ああ。最近はずっと勉強ばかりだっただろ? たまには息抜きしたほうがいいよなーって思ってたんだ」
提案した羽鐘くんは頷き、お手製のカレーピラフ(しかも結構美味しい)をスプーンで掬って口へ運ぶ。
確かに最近は勉強ばかりで、どこかに出かけた記憶は無かった。
「この調子だったら穂乃果もどうにか俺と同じ大学に受かりそうだしな」
「ほんとっ!?」
「だからと言って浮かれてはいけませんよ、穂乃果」
羽鐘くんの評価に穂乃果ちゃんは嬉しそうに顔を輝かせるけど、すぐに海未ちゃんが釘を刺して「はぁ~い」、と渋々と言った感じで頷いた。
――穂乃果ちゃんは学院を卒業後、羽鐘くんが志望している大学を一緒に受けようとしている。
海未ちゃんは進学するけど2人とは別の大学で、ことりは――。
「ことりの方もだいぶ上達したし、卒業までには日常会話くらい大丈夫だろ」
「……うん」
羽鐘くんの言葉に、ことりは少し間を置いて頷く。
ことりだけは、1人で海外の大学に留学するつもりだった。
1年前にも誘われていた海外留学。あの時は土壇場になって断ってしまったけど、お母さんの口添えもありまた誘ってくれたのは正直有り難かった。
流石に今度こそは穂乃果ちゃんと海未ちゃんにも相談して、2人ともことりの夢を後押ししてくれて、今はこうして海外留学に向けて、羽鐘くんから英語を教わっている。
意外だったのは……羽鐘くんがプロを目指すんじゃなくて、進学を選んだ事かな。当然周りからも考え直すよう言われたけど、羽鐘くんは進学の道を選んだみたい。
穂乃果ちゃんと一緒だからかな……なんて思ったけど、羽鐘くんが進学を決めた後に穂乃果ちゃんも同じ大学を志望したから、多分違うよね。
プロに転向してもすぐに活躍できそうなのにどうして進学しようとするのか……その理由は未だに聞けないけど。
「次の休みにでもどこか遠出して羽根伸ばさないか?」
「羽鐘くんだけに……ごめんなさい」
たぶん『羽』同士をかけたんだろうけど、そんな穂乃果ちゃんのジョークに羽鐘くんがジロリと一瞥するとみるみる小さくなった。
うん、羽鐘くんが本気で怒ったら変身しちゃうもんね。特に穂乃果ちゃんは勝手に戦極ドライバーで変身して羽鐘くんに迷惑かけたことがあるし。
「で、話は戻してどうする?」
「すみません、次の休みには用事が……」
「穂乃果も雪穂と買い物に行く約束してて……」
ことりは特に予定がなかったけど、穂乃果ちゃんと海未ちゃんは都合が悪いらしくて申し訳なさそうな顔をしていた。
「そうか……どうすることり?」
少しだけ残念そうにして確認して来た羽鐘くんに、「ことりは2人だけでも良いよ」と答える。
すると羽鐘くんは「じゃあ2人で出かけるか」と言って、ご飯を食べながらどこに行こうか話し合った。
結果的には2人でデート……になったのかな。みんなには悪いけど、たまには独り占めしてもいいよね?
/
同じ東京なのにまるで別世界だな……なんて、空を見つめながら思わず呟いてしまった。
地面にレジャーシートを敷いて、俺はそこに寝転がってことりはちょこんと座っている。
何度か電車を乗り継いで、俺たちは高尾山までハイキングに来ていた。
この間、どこかに出かけようと提案して話し合った時に海未が薦めてくれて、ならば行ってみるかなんて軽いノリで来たけど……結構悪くない。
定番と言う1号路という長いコースを歩いていって、道中天狗信仰で有名な薬王院に参拝したり、お釈迦様の遺骨を納める仏舎利塔などの観光スポットを回り、ゴール地点の山頂についた頃には昼を回っていた。
そこで昼食を食べようと空いているスペースを探し、ここを発見して2人で少し遅めの昼食を取った後こうしてのんびりしていると言うわけだ。
「来て良かったな」
「……うん」
少し沈んだトーンでことりが相槌を返してくる。
久しぶりに体を動かして疲れている、と言うのもあるかもしれないが最近はこんな調子でいることが多くてずっと気になっていた。
何か悩みがあるなら相談してくれればいいのに……と考えて、そう言えば去年の夏休みのことを思い出す。
夏休み終盤、ことりから突然デートに誘われて遊園地に遊びに出かけたことがあった。
あの時は海外留学の事で相談されたっけ……と思い返してもしかしてと思い口を開く。
「留学の事、まだ迷ってるのか?」
「……………」
返って来たのは沈黙だった。
けれど更に表情に翳りが差して、俺はやっぱりかと息をついた。
「せっかくもう1度チャンスが巡ってきたのに、何を迷ってるんだよ? 穂乃果たちだって後押ししてくれたじゃないか」
留学の誘いが来たとき、すぐにことりは俺たちに話してくれた。もちろん俺たちはことりにもう1度夢を追いかけてほしいと思い、背中を押した。
俺たちだけじゃない。凛ちゃんたちだって応援してくれているのに、どうしてまた迷ってるんだよ……?
「ううん、迷ってるんじゃないの……」
「じゃあなんで……」
「……不安なの」
不安? ことりの口から出た言葉に俺は身体を起こしながら聞き返す。
「羽鐘くんは分かるでしょ? 知らない人、知らない場所で暮らす事がどれだけ不安な事か」
「……そういう事か」
ことりの不安の意味を理解し、俺は納得して頷いた。
ことりが辿ろうとしているのは俺が通ってきた道に似ている。
ただ引っ越すのならまだしも、海外だ。人種が違えば言葉も文化も何もかもが違う。
そんな場所でやって行けるのか……そう考えると不安になるのも分かる。自分が知らない土地で頑張っている中、俺たちが仲良くしている事を考えれば余計不安だろう。
「だからって、また諦めるのか?」
「それは……嫌だよ」
「だよな。じゃなきゃことりはずっと呪われたままだ」
「呪い……?」
ああ。と俺は頷き、ポケットからロックシードを取り出す。
他の南京錠型と違う、鍵の形をしたこれはかつてハガネが仮面ライダーとして世界に認められて手に入れた証だった。
「言ってなかったけど、こいつを初めて使った時俺はハガネの残留思念と会ったんだ」
その時にハガネから色々なものを託された。
夢を、願いを、存在した証を。
「『夢を持つと時々凄く切なくなるけど、時々凄く熱くなる。けれど同時に呪いをかけられ、途中で挫折したらずっと呪われたままになる』……ハガネが世界を旅していた時に知り合った人から言われた言葉だ。それを聞いて確かにって思ったよ」
「……うん」
だからこそことりには諦めてほしくない。
昔からの夢を。例え未知の世界に踏み入れるとしても、その先にことりの夢が待っているなら。
「でもことりは羽鐘くんや穂乃果ちゃんのように積極的になれないし、1人でやっていけるか不安で……」
確かにその不安はあるだろう。
実際俺も3人の事を引きずっていたし、何より英語だって殆ど使えなかった。
不幸中の幸いと言うか、向こうにいる7年来の腐れ縁とも言うべき親友がすぐに声をかけてくれたことをきっかけに、周りとも少しずつ仲良くなって、言葉も喋れるようになったが。
「離れているからこそ、近くに感じるって事だってあるんじゃないか」
「離れているからこそ……?」
「ああ。考えても見ろって。たかが日本から1万キロ程度だ。異世界に行くわけじゃあるまいし」
「でも……」
「寂しくなって、会いたくなったら帰ってくればいい。もし帰れなかったら、その時は俺から会いに行ってやるさ」
「羽鐘くんが? ことりの所に?」
「ああ。そのくらいなんてこと無いさ。いざとなればワープドライブ使って宇宙から飛んできてやる」
自分でもなんて無茶苦茶だと内心突っ込むが、実際それを可能に出来るから困る。
俺の無茶苦茶な理屈にことりは唖然として口を半開きにしていたが、やがておかしそうに笑い出した。
「ふ、ふふっ……無茶苦茶だよ、それって」
「かもな。けどことりが望むならやってやるさ」
笑うことりにニヤリと笑みを返してやる。そんな事のために変身するな、なんて他の仮面ライダーに言われるかもしれないだろうが、知ったことじゃない。
大事な人が悲しんでいる時に手を差し伸べてやれないのならヒーローなんてやってられるか。
これを士さんや霞さんはなんて思うだろうか……前者は呆れるか、後者はいいぞもっとやれ、なんてからかうかもしれない。
「昔からそうだよ。羽鐘くんは穂乃果ちゃんと一緒になって無茶苦茶やって、ことりたちを困らせて……でも立ち止まりそうなことりたちの背中を何度も押してくれた」
「結果はご存知の通り、だけどな」
「うん…でも楽しかったんだよ。今だってこうやって迷って不安になることりの背中を押してくれる……そんな羽鐘くんだから、ことりは大好きになったの」
囁くような告白と共に、ことりは俺の肩に頭を乗せて、手を重ねてきた。
ああ、知ってるよ。去年もこうやって告白してたからな。
でも相変わらず俺はことりの気持ちに応えることが出来ない。あの時は戦いが激しくなってそんな余裕が無かったから。
誰かを選べば当然他の人を傷つけるって分かっているし、答えを出さない今の俺はただ逃げているだけだって理解もしている。
ことりの告白に黙り込んでいると、暫くしてことりが再び口を開いた。
「……分かってたんだ。羽鐘くんが答えてくれないことは」
「……ごめんな」
「ううん、気にしないで。むしろことりが卑怯なの。みんながお互いの事を大切に思っているのに、こうやって抜け駆けしてるから。でも向こうに行ったら頻繁に会えなくなるから……」
「……………」
でもことりをこうさせたのは俺の責任だ。いつかは誰かの気持ちに応えなきゃいけないのは分かってたのに。
「ずっと考えていた事があるんだけど……」
「うん?」
「ブレイクダンスには3大世界大会って呼ばれているものがあって、『UK B-Boy Championships』とBOTYって略される『Battle of the year』の2つは一致してるんだけど、人によっては『Red Bull BC One』か『Freestyle Session』が入るんだ」
「ちなみに俺はBC Oneを入れて3大って解釈してるのな」と言葉を紡ぐ俺に、ことりは「うん」と相槌を打つ。
「で、俺の目標は『BC One』と『UC B-Boy』のソロ部門でそれぞれ優勝する事」
「…? 『BOTY』は入れてないの?」
「あれってチーム戦なんだよ。俺基本ソロだし」
2on2の『Juste Debut』ならニューヨークにいるジークと参加するのを考えるけど、あの大会ブレイクダンスが参加部門に入ってないからなぁ……EXPERIMENTAL(いわゆる創作的なオリジナリティダンス)だったらお互いに変身して殺陣っぽい感じのアクションが出来そうだけど、「マジ危ないから考え直せ」って釘刺されたから。
それに3冠まで目指していたらどうやっても時間がかかってずっとことりたちを待たせることになるし、もう1つ最近になって生まれたやりたいこともやれないし。
「とにかく、『BC One』と『UC B-Boy』の2つを優勝したら……きっと、答えを出すから。その時にどんな答えを出すのかはまだ分からないけど……必ず答える。約束する」
誰かを選んだその時にどうなるかなんて分かりきった答えだ。その時には俺の全てをもって謝らないといけないだろう。
お前は歴史に名を残す大バカだ、なんて笑われても仕方ないかもしれない……でもみんなが支えてくれたから俺は今まで戦い続けることが出来た。考えてみれば俺は貰うばかりで、彼女たちに何も返していない。
返す方法は恐らく、たった1つ……彼女たちが待ち続けている答えを出す事だけだと思う。
「……絶対、約束してくれる?」
「ああ。いつまでもお前たちから逃げるわけにも行かないからな。もう少しだけ……待ってくれるか?」
それが今の俺に出来る精一杯の答えだった。
こんなんじゃ呆れられるかな……そんな風に考えていると、重ねられた手がきゅっと握られる。
「いいよ。ことりはいつまでも待ってるから……けどその代わりに、1つだけお願い聞いてくれる?」
「お願い……?」
聞き返す俺に、ことりは頷くと静かにその「お願い」の内容を語って――。
/
「――で、その結果がコレなの?」
「そうだよ」
アルバムに目を落としていた『彼女』が呆れたように訊いてきた。
そこに収められた写真は高校3年生の時に撮った物ばかり。何気ない普段の出来事や何かイベントがあった時の写真が全て入っている。
その写真全てに共通しているのは、必ず羽鐘くんが写っていると言うことだ。
『卒業して、留学するまでの間一緒に沢山の思い出を作って』――それがあの時ことりが頼んだ『お願い』。
「はぁ~……お母さん、お父さんにゾッコン過ぎでしょ。今もだけど」
「だって世界で1番大好きな人だから、当たり前だよ♪」
「ハイハイご馳走様。あー、ブラックコーヒーおいしーなー」
適当にあしらいながら『彼女』はコーヒーに口をつけてそんな感想を口にする
自分から「2人はどういう経緯で付き合ったの?」なんて聞いてきたのに……。
きっかけは学校から帰ってきたこの子が男の子から告白された、との一言からだった。ちなみにすぐに断ったらしい。
「――それで、お母さんから公開処刑同然の羞恥プレイを食らって頭抱えて身悶えているお父さんから感想を一言どうぞ」
「……穴があったら入りたい」
冷ややかな視線を伴う『彼女』に問われ、リビングのソファに座っていた羽鐘くんはボソリと呟いた。
「酷いよ羽鐘くん~。ことりたちの大事な思い出なのに」
「だからって嬉々として娘に語るなよ! 見ろ、この反応! 思いっきり呆れられてるだろ!」
「うん。そうだねー、今もラブラブなのは良いことだと思うし結構な事だけど、ちょっとは自重してもらおうか。これでも多感な年頃で複雑だから」
淡々とツッコミをすることりと羽鐘くんの愛娘。
真面目で冷静なその性格は、みんなからも「あんまり似てないよね」ってよく言われる。
けれど間違いなくことりたちの子供で、顔立ちはことりに似てるけど羽鐘くん譲りの運動神経と影響でヒップホップを踊ってる。
「…あ、もうこんな時間か。それじゃあ私レッスンに行ってくるね」
ふと壁にかけた時計を見た彼女は傍に置いていたカバンを掴むと、さっさと出て行ってしまった。
こうした行動力の高さはきっと羽鐘くん似なんだろうな……と思うとつい笑みが零れる。
「ったく……昔の話を掘り返されるこっちの身にもなってくれよ。って言うかよく子供の頃の話まで覚えていたな」
「忘れないよ、羽鐘くんとの思い出なんだから。いじめられたりからかわれたりした事も含めて、ね?」
「女の恨みって怖い……」
少しだけ含みを持たせて言うと、隣に座ってきた羽鐘くんは乾いた笑みを浮かべていた。
相変わらず子供の頃の自分を恥ずかしがっているけど、あの頃から羽鐘くんが大好きだったんだよ?
「ふふっ……羽鐘くん♪」
「おわっ……なんだよ突然」
急に抱きついてきたことりに羽鐘くんは目を丸くしながらことりを見返した。
正直に言うと、今でも夢みたいって思う時がある。
羽鐘くんがことりを選んでくれたこと。それが凄く凄く嬉しすぎて、これって実はことりが寝ているときに見ている夢なんじゃないかなって。
でもこうして触れ合うたびに、羽鐘くんのぬくもりを感じる度に夢なんかじゃないんだって実感できるんだよ。
だからことりは、ことりを選んでくれた羽鐘くんのことを――。
「ずっとずーっと……ことりは羽鐘くんを愛してます♪」
ってなわけでことりちゃん誕生日おめでとう! 最初は没にした穂乃果誕から繋げるイメージでやってたんですけど、変更してきわどい描写とかも考えましたけど、なるべくプラトニックな方向性で! ってことでこんな感じになりました。
まあ、本編はまだ序盤だからこんな展開になるよー、とは限らないので可能な限りネタバレとか今後登場予定キャラは最小限に抑えてます。世界の破壊者とか紛れてますけど。
それにしてもこの子は本当に恐ろしいですね、書いていく内にどんどん引きずり込まれるんですもの。次があるとするならばもっとこう日常系で生々しい感じでもチャレンジしてみるかな……(えー
あらためてことりちゃんおめでとう! 夏休み編でもまた出番あるからね!
そしてアイデアを提供してくれたアリアンキングさん、ありがとうございます!
次回からは夏休み編。少し人物関係が揺れ動いたり、物語が進んだりするかも……?
まずは書き溜めるかぁ(遠い目
Twitterなるもの、始めました。
https://twitter.com/vividreadhearts