ラブライブ! A Return Hero A Return Legend   作:リベリオン

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 スクフェスイベント終了まで残り3日。そろそろ本気出す(ポイント消化的な意味で

 結構のんびり話が進んでるけど、中々μ's全員を出す事が難しい……。本編の合間合間に閑話を入れて掘り下げてみようかなと合間に1つ差し込もうか考えていたり。


第3話 ペットボトルは凶器です

第3話 ペットボトルは凶器です

 

 

「……………」

 

 外で鳥のさえずりが聞こえ、もそもそとベッドから這い出た。

 

「……全然寝れなかった」

 

 寝不足な上に疲れが抜けた感じがしないし、なんとなく身体の調子が悪い。恐らく時差ボケだろう。

 昨日は幼馴染みたちと再会して盛り上がっていたからなぁ……時差ボケなんてすっかり忘れ去っていた。

 おまけに今日は……えっと、μ'sだっけ? の練習を見学すると昨日の内に約束までしてしまった。完全にやらかしたな俺。

 鈍っている思考の中で俺は充電を終えたスマホを手に取り、Siriを起動する。

 

「『時差ボケ』」

 

 とりあえず対処法を調べておこう。

 

 

 幸いと言うかなんと言うか、日光を浴びるのが効果的という解消方法が出てきて俺は着替えてから顔を洗って外に出た。

 ちなみに母さんはまだ寝ている。俺が早起き過ぎるだけなんだけど。

 穂乃果と待ち合わせしていたんだが、こうなったら先に集合場所の男坂に向かおう。メッセージは飛ばしてあるし。

 途中、コンビニでコーヒーを買いに寄って、その後は真っ直ぐ目的地へ。

 さすがにこの時間帯からだとまだ人は居ないだろうけど……居ないなら日光浴に費やせるからいいか。

 そんな事を考えながら目的地に到着。やはりと言うか、俺以外人の姿は見えない。平日の6時前なら当然か。

 そのまま階段に腰を下ろしてしばらくの間ボーっとしていると、「あーっ!」と言う声が下から聞こえた。

 下を見れば2人の女の子が俺を見上げており、片方の活発そうな子が俺を指差してる。

 

「昨日来た穂乃果先輩たちの幼馴染みの人だにゃ!」

「い、いきなり指差したら失礼だよ凛ちゃん……」

「えっと……君たちは昨日の……」

 

 片方の大人しそうな子は良く覚えている。転入先を答えたら突然食いついてきた子だ。大人しそうな印象を抱いていただけに、あんな熱の入り様は強烈に焼きついている。

 

「凛は星空凛! 音ノ木坂の1年生だよ!」

「こ、小泉花陽…です。凛ちゃんと同じ1年生です……」

「うん、よろしく。天城羽鐘です」

 

 階段を上ってきた2人と簡単に自己紹介。一応、今日俺が練習を見に来ると穂乃果がメンバー全員に伝えておくと言っていたので、俺がここに居る事にそれほど驚いている様子ではなかった。

 

「今日から練習を手伝ってくれるんだよね?」

「うん。と言ってもアイドルのダンスとかはよく知らないからまずは見学だけど。もちろん何かあればアドバイスはするつもりだよ」

「あ、ありがとうございます……」

 

 うん、こっちの星空さんは見た目どおりの元気娘で穂乃果を思わせる。逆に小泉さんは対照的に大人しそうで……と言うか、星空さんの後ろに隠れてないか?

 

「えっと……小泉さん? 気のせいかもしれないけど俺のこと怖がってない……かな?」

「すっ、すみません……歳の近い男の子と話した事はあまり無くって……」

 

 おい、それでいいのかスクールアイドル。本番は人が大勢来るのに。

 そう言えば海未も男が苦手(幼馴染みの俺は除く)って部分があるからなぁ……大丈夫なのかこの2人は?

 えーっと……何とか普通に話せるようにしたい。そう言えば小泉さんは確か……。

 

「いや、気にしないで。面識ないんじゃ気後れするのも当たり前だから。そう言えば俺、μ'sの活動……と言うか、ステージを見たことが無いんだけど、どんな感じなのかな?」

 

 昨日のアレを見る限り、彼女はアイドルに強い関心を抱いていると見た。

 それに俺も昨日は彼女たちのグループの活動について聞きそびれてしまったし。協力すると受け持った後、母さんが皆連れて回転寿司行ったんだ。久しぶりの日本食に俺もテンションが上がって、さらには穂乃果も寿司を前にテンション上がって食べるのに夢中だったんだよなぁ。

 その時に興奮して英語で喋っていたんだけど、それを聞いた穂乃果が『おおっ、外国人みたい!』って……いや、俺純粋な日本人だから。この場合帰国子女だろ。

 ……とまあ帰ってから自分の醜態に反省していたんだが。

 そんな事より、今は小泉さんたちとの話だ。

 

「あ、それならネットに動画を上げていますよ」

「本当に? 今見れるかな」

 

 俺のスマホはインターネットに接続しているし、今からでも見れるはずだ。

 そのことを伝えると、小泉さんはアクセス方法を説明して、俺は説明どおりにμ'sの公式サイトにたどり着く。

 出てきたサイトはいかにも手作り感が満載で、コンテンツも殆ど無い。このあたりも後々手を加えないといけないんじゃないだろうかと考えながら、とりあえず1番最近にアップロードされた動画を閲覧する。

 動画のタイトルは「これからのSomeday」――。

 曲調は明るいポップチューンで舞台は学校の校舎全体、だろうか。曲を聴きながら無意識の内にタップでリズムを取っていた。

 

「……あれ?」

 

 けど、見ていて違和感を覚える。映像を見ていて何かが足りない気がした。

 えっと、見た限りで出ていたのは穂乃果、海未、ことり。そして星空さんと小泉さん、あと赤毛の子と黒髪の子……全部で7人?

 

「あのさ、μ'sって何人なんだっけ?」

「9人だよ? それがどうかした?」

「このPV、7人しか出てないけど……」

「あ、それはですね……」

 

 俺の質問の意味に納得し、小泉さんが説明してくれる。

 μ'sとは元々穂乃果と海未、ことりの3人で最初に結成され、その後星空さんと小泉さん、そして西木野真姫さんたち1年生が加わり、その後さらに矢澤にこさんが加わって、最後に絢瀬絵里さんと東條希さんの2人が加わって現在の形になったそうだ。

 1番最初のステージを見てみれば……なるほど、確かにこの時は穂乃果、海未、ことりの3人しか出ていない。

 

「それで、凛たちのダンスはどうだった?」

「率直な意見が……聞きたいです…!」

「うーん……」

 

 期待に満ちた2人に困って曖昧な笑みを浮かべる。

 

「結構辛辣に評価するけど……あと、俺が踊り専門だってこと、このジャンルに関して知識が乏しい事を前提で聞いてくれるかな?」

「「はいっ!」」

「はっきり言って――全然なっていなかったね」

 

 キッパリと簡潔に、μ'sと言うグループについて俺はそう評価を下した。

 

「ダンスだけ見ても動きは揃っていないし、フォーメーションも単調。キレだって悪い。特に動きに統一ができていないのは重大だと思う。グループで踊るならやっぱり動きの統一性が重要になるから。

 あと歌に関しては専門外だったけど、音程のズレとかもあったよね。アイドルの場合は歌と踊りどちらか一方じゃなくて、両方を高いレベルでこなす技術が必要になるんじゃないかな」

「「……………」」

 

 辛口な俺の意見に星空さんたちはしゅんと肩を落とす。

 残念だけどこればかりは友達がやっているからと擁護はできない。何より彼女たちの目的を考えるならハッキリダメ出しをしたほうがいいだろう。

 歌も未熟、踊りも未熟、予想よりはマシだったが、それでもマシと言うだけだ。もちろん経験など複数のファクターに配慮するべきだろうが、見ている人には関係ない。ギャラリーには『今見たもの』が全てだから。

 それでも俺は、「けど――」と前置きして、言葉を紡ぐ。

 

「なんて言うかな……言葉では言い表せない、何かひきつけられる様な不思議な魅力があったよ」

 

 落ち込む2人へ、俺は優しく笑いかけながら口にした。

 歌も踊りもお世辞にも上手とは言えなかった。けれどそれを補って余りある不思議な魅力が動画から感じ取れた。

 多分それは、多くのトレーニングを積んでも身につけることは難しいだろう。それを最初から持っているというのは、あるいは凄い事ではないだろうか。

 最初は幼馴染みたちの頼みだから……って考えていたが、これは思いのほか期待できるかもしれない。

 俺がそのことを口にすると、さっきまで落ち込んでいた2人の顔がぱあっと輝き出す。

 

「それにこれは過去の物だからね。現段階ならよりレベルアップしているはずだし、9人になった事でまた色々と変わってくるはずだ」

「あ、ありがとうございます!」

「いいよお礼なんて。思ったことを口にしただけだし。ところでこの……『START:DASH!!』、だっけ? 作詞と作曲は誰がしたの?」

「えーっと、その曲は真姫ちゃんが作曲してー……」

「海未先輩が作詞をした、って聞いてます」

「ぶっ!!」

 

 思わぬ人選に思わず噴出してしまった。

 う、海未がこの曲の作詞をしたって? あの海未が!?

 

「ぶふっ、ふふふっ、くはっ! だ…ダメだっ、ツボ、ツボった……くひひっ!」

「え、ええっ!? そんなにおかしい事ですか?」

「だってあの……ひひひっ! 大和撫子な、くふっ、海未…海未がバリバリの横文字歌詞書くって! シュールじゃごはぁっ!」

「にゃー!?」

 

 腹を抱えて笑っていると、シュンッと何かが風を切る音が。次の瞬間、結構な質量を伴う物体が下から飛んできて、額に直撃すると衝撃でひっくり返った。

 それを見てびっくりする星空さんと、何が起こったのかわからず目を白黒させている小泉さん。

 

「はぁ~、がぁ~、ねぇ~~~~!」

 

 こ、この地の底から響くような声は……。

 ズンズン足音を響かせて何かが階段を上ってくる。それを見た小泉さんたちはビックリして逃げるように俺から離れた。いや、逃げるようにじゃなくて逃げたんだ。

 脳内で3つの星が回ってくらくらしていると、顔に人影が差す。逆光でシルエットのみしか窺えないが、声とシルエットだけで十分分かる。

 

「お……おはよう海未」

「――おはようございます、羽鐘」

 

 海未だった。やって来たのは噂をすれば何とやらで、先ほどまで俺が笑っていた海未だった。

 にっこりと上品に笑っているんだが、どうしてだろう。その笑顔に凄みがあって怖い。

 

「先ほど花陽たちと楽しそうに話していたようですが……何を話していたのでしょう?」

「い、いや……μ'sというグループについて少々……」

 

 金縛りにでもあったように身動きが取れないまま、俺はどうにか声を絞り出す。

 ちらっと視界をずらせば隅っこで星空さんと小泉さんが身を寄せ合って震えていた。

 

「ちょ、超音速ペットボトル投げ……」

「怖いにゃぁ……」

 

 なぜか地面に転がっているスポーツドリンクのペットボトル(500ミリリットル)。多分それは海未の物で、それを全力投球したらしい。

 

「そうですか……。メンバーと早く打ち解けてくれるのは嬉しいですが、具体的に何を話していたのですか? なにやら、『大和撫子な海未がバリバリの横文字歌詞書くってシュールじゃないか』と聞こえたのですが」

「声真似してるつもりだけど似てない……いや、ごめん」

 

 律儀に突っ込もうとしたが、ジロリと睨んできた海未に即座に口を閉ざす。

 

「さて、全員集まるまで少し時間もありますし……ゆっくり、じっくりお話をしましょうか?」

「……はい」

 

 慈母のような笑みを浮かべて言った海未に俺は拒否する事ができなかった。

 とりあえず、練習が始まる前までに仲直りしておかないと。

 

 

「で、海未ちゃんにこってり絞られちゃったんだ……」

「言い訳しようもない……」

 

 海未との『お話』から暫く経って、後からやって来たことりに経緯を話すと呆れたように苦笑いしていた。

 言葉にした通り言い訳のしようもないくらい全面的に俺が悪い。けど海未が作詞をしたという事実は昔の海未を知っている俺からすれば本当に予想外で、それでつい笑ってしまったんだ。

 

「いくらなんでも笑うなんて酷いです」

 

 そう言って海未は未だにご機嫌斜め。腕を組んでぷいっとそっぽを向く。

 

「いや、だから本当に悪かった。けど海未が作詞をしたって言うのが本当に意外だったからさ」

 

 と言うより意外な事だらけだ。幼馴染みの4人の中で、1番変わったのは海未じゃないだろうか。アイドルを始めたり作詞もやったりなんて、昔の海未しか知らない俺からしたらそれほどまでにインパクトが大きかった。

 

「羽鐘だって変わったと思っていたら、根っこは変わっていないようで安心したような残念なような気分です。大人びて素敵な人になったと思ったら……」

「素敵? 俺が?」

「も、物の例えですよっ!」

 

 意外な評価に少し驚くと、顔を真っ赤にして否定してしまう海未。俺と海未のやり取りを見ていたことりはくすくすと笑っている。

 

「……で、穂乃果はずっとふくれっ面でどうしたんだよ」

「だって酷いんだもん」

 

 とりあえずあっちの方はそっとしておくとして、もう1人ご機嫌斜めな幼馴染みに声をかけた。

 来てからずっと穂乃果はふくれっ面で、俺を見ようともしない。今日は会ったばかりで特に何もしていないんだが、酷いってなんなんだ。

 

「せっかくだから一緒に行けるなーって思ってたらとっくに先に行ってたでしょ! 酷いよ!」

「ちゃんとメッセージは飛ばしていただろう? 『早く起きたから先に行くぞ』って」

「一緒の学校に行けないんだから朝練くらい一緒に行きたいの!」

 

 いや、なんだそれは。穂乃果の謎な理屈に俺は呆れかえった。

 

「わかった、わかった。じゃあ明日からはちゃんと一緒に行こう。約束する」

「ほんとーに~?」

「本当だ」

「うんっ、ならいいよ!」

 

 あっという間にご機嫌になった穂乃果。こうした切り替えの早さもこいつらしい。

 そうして話していると、パンパンと手を叩く音が響いた。

 

「さあ、休憩は終わり! 次はパートレッスンよ!」

『はーいっ!』

 

 金髪の、まるでモデルのようなスタイル抜群の人――絢瀬絵里さん。3年生で生徒会長をやっている――の声で皆が動き出す。

 ようやくダンスの練習か……さっきは基礎体力やバランス感覚を中心にしたトレーニング内容だったし、思ったよりも本格的でしっかりしている。それもこれも絢瀬先輩がダンス(ロシアにいた頃バレエをやっていたらしい)の経験者だからこそだろう。

 

「天城くんも気になった所があったら、遠慮なく言ってもらって構わないから」

「わかりました」

 

 そうは言うもののこれほどしっかりした人が指導しているなら俺が口を挟む必要もないんじゃないか、と内心抱いている。

 まあ、ブレイクダンスとバレエ、お互いまったくジャンルが異なるから自分に無いものを補えるんじゃないかと言う考えがあるんだろう。

 とは言っても新顔があれこれ口を出すのも不味いし、少し大人しくしていようか。

 

「へえ……」

 

 やがて3人ずつのパート練習が始まって、見学していた俺は思わず声が漏れた。

 結構出来ている。動きのばらつきは減っているし、キレも格段に良くなっている。

 動画で見た映像が過去の物とはいえ、2ヶ月かそこらだ。あそこからここまで来たと言うことは、それだけ毎日練習を欠かさなかったのもあるだろうが、絢瀬先輩の指導も加わったからだろう。

 絢瀬先輩の手拍子に合わせて踊る彼女たちの動きを目に焼きつけ、頭の中で動きを模倣する。実際に踊るとなると抵抗も若干あるが、イメージでだったら問題ない。それに激しい動きは自重していると言うのもあった。

 

「(なるほど……こういう感じか)」

 

 当日のセットリストも聞かせてもらったが、全体的に明るいポップな曲をメインにしていると言うのが印象的だった。

 ブレイクダンスで使用される曲にはこう言ったジャンルの曲は使われることが少ないからなぁ……。

 

「……ん?」

 

 観察と思考に没頭していて気付くのが遅れたが、隣から視線を感じた。

 振り向く……と、あれ。見られていた気がするのに人影もない。

 

「下よ、下」

「え?」

 

 下から声がして、少し視線をずらす。リボンでツインテールに結った黒髪が揺れ、小柄な女の子がジト目で見上げていた。

 

「えーっと……YAZAWA先輩、でしたっけ」

「どこの日本の至宝よ!」

「いや、すみません。ついあの人が思い浮かんで」

 

 はは、と悪びれる様子もなく笑いながら謝ると、矢澤先輩こと矢澤にこさん(3年生)は「まったく……」とぶつぶつ小言を呟く。

 

「それで、俺に何か?」

「別に。本当に協力してくれるのかと思ってね」

「信用無いのは承知しています」

 

 この場では俺がアウェー、異端児と言うのは最初から理解していた。

 アイドルに関する知識は乏しく、踊りのジャンルも共通点はまったくないブレイクダンス。そんな人間がアドバイザーと言うのはあまり信用できないだろう。

 信用があるのは幼馴染みの3人。けどそれも「幼馴染みで昔からダンスをやっていたから」と言う理由が大きい。

 こうして見ている限り、「俺必要か?」って首を傾げるところだけど……。

 

「自覚はしていたのね」

「ええ。だから口ではなくて行動で示したいと思ってます」

「あっそ……まあ、ちょっとは信用してあげるわよ」

 

 これは意外な評価だ。今のところ何の疑いも持たない穂乃果たち3人は例外として、あとは練習前にちょっと話した星空さんと小泉さんくらいしか打ち解けていなかったのに、自己紹介した程度の矢澤先輩からそんな言葉を聞けるとは。

 

「少なくともアンタがダンスを見ている目は真剣そのものだった。それで少しは認められたわ」

「……恐縮です」

「いい? やるからには手抜きなんて許さないわよ。にこたちもちゃんと付いていくから覚悟しなさい」

「……わかりました」

 

 なるほど。彼女も俺と同類か。

 アイドルとダンサー、立場は違っても同じように真剣に向き合っているんだ。

 ……OK、だったらそれに応えて見せようじゃないか。

 次のパートの人たちが練習する番になると、俺は絢瀬先輩の隣に立った。

 

「天城くん?」

「気にしないでください。もっと近くで見てアドバイスをしたいだけですから」

「……分かったわ。お願いね」

 

 少し驚いて俺を見る絢瀬先輩に言うと、先輩はすぐ納得して前を向いた。

 

「さあ、彼も見てくれているし、張り切っていくわよ!」

 

 絢瀬先輩の言葉に穂乃果と星空さんが「はい!」と気合十分に返事をした。

 そして今度は俺も加わってパート練習が始まる。

 

 

「ひぃ~……今日の朝錬は今まで以上に大変だったねぇ」

「羽鐘が参加してからはすぐに問題点を指摘してくれましたからね」

 

 帰り道、今にもとろけそうな穂乃果はふらふらしていて見ているこっちが危なっかしい。

 理由は俺がちょっとのミスも見逃さず指摘したから。急に難易度が2段飛ばしで難しくなって穂乃果と星空さんは顔を蒼くしていた気がしなくもない。

 

「でしゃばり過ぎだって今では反省してるよ」

「羽鐘くん、ダンスのことになると目つきが違ってたよね~。こぉ~んな風に」

 

 そう言ってことりは目尻を引っ張って釣り上げる。その時の俺の真似のつもり、だろうか。ことりがそんな風にやっても全然似ていない。

 

「皆はこの後学校だろ?」

「ええ。羽鐘は確か――」

「転入先への挨拶だな」

 

 諸手続きの方は母さんが既に済ませてある。今回は挨拶と説明を受けるのが主になるはずだ。

 希望先として「地元でダンスをやれる環境のある学校」って言っておいたが、そう言えばUTXはどんな所だろう? 俺がいた頃はなかったはずだが。

 

「UTXってどんな所なんだ? 俺がいた頃はなかったと思うけど……」

「あそこは比較的最近に出来た学校なんです。一言で言えばマンモス高……ですね」

「マンモス高?」

「凄い人気で、遠くから通う子も多いんだよ。おかげで周りの高校も入学希望者が減ってて……」

 

 なるほど……ある意味彼女たちにとってはライバルと言う事になるのか。

 けど新しいという理由だけで周囲の学校が影響を及ぼすものか?

 

「そこでA-RISEが出てくるの」

「A-RISE?」

「うん。UTXに所属しているスクールアイドルで、スクールアイドルのトップ。穂乃果ちゃんがスクールアイドルを知ったきっかけなんだよ」

「安直だな、おい……」

「む~。けどこれだ! って思ったんだもん!」

 

 呆れて肩を竦める俺に穂乃果は頬を膨らませた。

 けど結果的に穂乃果の目論見は功を奏して、こうして少しずつではあるが注目を集めているってことか。

 しかし穂乃果にそこまで衝撃を与えたスクールアイドルがいる学校……ねえ。

 

「あ。羽鐘くん、雪穂がUTXのパンフレット持ってるから借りてこようか?」

 

 どんな場所なのかとイメージを膨らませていると、ふと穂乃果がそんな事を提案してくれた。

 雪穂とは穂乃果の2つ下の妹で……そう言えばあの頃はまだ小学校に入りたての1年生だったっけ。今は中学3年生ってことか。

 

「雪穂ちゃんUTXに受けるのか?」

「えーっと、最初はそのつもりだったみたいだけど、今は音ノ木坂にしようか悩んでるみたい」

 

 穂乃果としては同じ音ノ木坂に進学してほしいんだろう。気持ちはわからなくもない。

 まあそれはさておいて、借りられるのならぜひとも借りておこう。俺は穂乃果の申し出に2つ返事で受けることにした。

 

 

 ――学校ってなんだっけ。

 目の前に聳え立つ超高層ビルを前に、俺はふとそんなどうでもいい疑問を抱く。

 アキバ駅前から徒歩数分。UTX学院はそこに堂々建っていた。

 ちなみにニューヨークにいた頃に通っていた高校は、日本の建築と異なれど向こうでは一般的な様式だったりする。

 けど、このUTXは違う。予想を斜め上にぶっ飛んでいた。

 

 全22階建て。地下にも施設があって実質25階建て。

 

 ビル全体が校舎。グラウンドやプールは全て屋内。この他フィットネスクラブ、シアターホール、スパ、カフェスペースなども完備。

 

 コンサートホールも備え、毎日2回芸能科の生徒によるステージ公演もあり。

 

「あ……頭が痛くなってきた」

 

 激しくツッコミどころ満載なマンモス校の内容に俺は頭を抑えた。ただでさえ時差ボケで寝不足に頭痛が重なっているのに、余計悪化しそうな気がする。

 

「もうちょっと普通の場所はなかったの……?」

「なに言ってるの。ここだったら羽鐘のご希望にピッタリの所なのに。まあ私も初めて来た時は驚いたけど」

 

 そりゃそうだ。世界ひろしと言えどこんな全25階建ての超高層ビルが学校だって言うのは中々ないだろう。むしろこの規模だと商業ビルじゃないのか。

 

「それとも今からでも音ノ木坂に変える? はとちゃんも案外ノリノリで準備してくれるかもしれないけど」

「それって俺に女装でもしろと?」

「それもそれでアリよねぇ、羽鐘ちゃん♪」

 

 むすっとしながら返すと、楽しそうに笑いながら母さんはからかって来る。

 ちなみに「はとちゃん」とはことりのお母さんの愛称で、高坂家同様に家族ぐるみで親しい。これは園田家にも当てはまり、母さんがスタイリストと言う事もあって子供たちのカットは全部母さんがやってくれていた。

 

「勘弁してよ……残念だけど母さんの息子はそこまで神経図太くないよ」

「ふぅ~ん……?」

「…なにさ?」

 

 ニヤニヤ、と言うよりもニマニマ笑う母さんに少々警戒心を抱く。いい歳して茶目っ気があるのがある意味この人の問題点だ。

 

「言い忘れてたんだけど、このUTXって共学だけど女子の比率が多いのよ。ここのスクールアイドルの影響でね」

「なっ……!」

「おかげで男子は全学年でギリ3桁くらいだったかしらね~。肩身狭いと思うけど頑張りなさい」

 

 思いもよらぬカミングアウトに俺は絶句してしまう。なんでそんな重要な事を言わないんだこの人は!

 これならまだ音ノ木に行く方がマシだ。少なくともあっちには知り合いがいるから。いやでもダンスをやれる環境も捨てがたいし……。

 

「どちらにせよもう手続きはしてあるんだから諦めなさい。ほら行くわよ」

「はあ……わかったよ」

 

 結局こうなったのはきちんと調べたりしなかった自分に非があるわけで。

 冤罪なのに実刑判決を受けた気分で、俺は母さんの後を追い来客用窓口に向かうのだった。




 UTXが共学って言うのは漫画版の設定を取り入れてみました。と言うことはあの人たちとの絡みも……?

 次回はなにやらラブライブの二次で劇中にカレーを出している作者さんが増えているような気がする中、自分もカレーを出します(爆

 いや、スクフェスのサイドストーリーを取り入れたりした結果なんですけど、結論から言って野菜やBBQは……面白そうだしやってみようかなぁ。
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