ラブライブ! A Return Hero A Return Legend   作:リベリオン

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 初戦闘&本作におけるボス連中ちょっとだけ登場。

 ちなみに「オンステージ」じゃなくて「リターンズ」なのにはちょっとした理由があったり。


第6話 波乱のオープンキャンパス ~幻影・リターンズ~

第6話 波乱のオープンキャンパス ~幻影・リターンズ~

 

 

「離してよ海未ちゃん! 羽鐘くんが……っ!」

「いけません!」

 

 ぐずる穂乃果を海未ちゃんが強引に引っ張っていく。

 もう…わけが分からなかった。

 せっかく最初の曲が成功して、お客さんたちが喜んでくれて穂乃果たちも凄く嬉しかったのに……。

 それはあまりにも突然の出来事で、それに初めて見る出来事で穂乃果にもよく分からない。

 ただ、銀色の幕のような物がお客さんたちの背後にいきなり出現して、その中から特撮アニメとかで出て来そうな『怪人』みたいな者が現れて暴れだした。

 間一髪、羽鐘くんが囮になって皆の逃げる時間を稼ぐと言い出して……誰も追ってこないのを見ると、本当に羽鐘くんが時間を稼いでいるみたいで……。

 

「皆さん、慌てないで! 落ち着いて避難してください!」

 

 絵里先輩と希先輩が声を張り上げて逃げ惑う人たちを誘導していく。グラウンドでの騒ぎを聞いて他の場所に居た一般の人たちも逃げ惑っているみたいで、そこは大混乱だった。

 

「なんなのっ! アレってなんなの? 新手のドッキリ!?」

「私に聞かないでよっ!」

「うっ、うぅっ……ぐすっ」

「かよちん…泣かないで、凛がついてるよ」

 

 にこ先輩が当り散らすのを真姫ちゃんも八つ当たり気味に言い返し、せっかくのステージを台無しにされたショックで泣き出した花陽ちゃんを凛ちゃんが慰めている。

 

「……っ!」

「穂乃果!」

「穂乃果ちゃん!?」

 

 いてもたってもいられず、海未ちゃんの手を振りほどくと穂乃果は駆け出した。

 戻るのは危ないって分かってる。でも羽鐘くんが心配で我慢できなくて、校舎に駆け込むとグラウンドが見える場所までやって来て、乗り出すように外を見た。

 そこには――――。

 

『クウガアームズ! 超・変・身! ハッハッハッ!』

 

 そんな音を響かせて頭上から降ってきた『頭』を被り、割れて中身を現した人が怪人たちに向かい合っていた。

 

 

『クウガアームズ! 超・変・身! ハッハッハッ!』

 

 エレキギターのロックテイストなBGMに、変わったサウンドを響かせて『変身』を終える。

 頭上から降ってきた頭のパーツは割れて上半身を保護するアーマーとなり、ボディをマッシブな赤いアーマーが、肩は『頭』が割れて肩当に、背中は後頭部に当たる部分が降りて保護する。

 招かれざる来訪者たちはその姿を見てかなり動揺しているのかどよめいていた。

 

「その姿は……仮面ライダーだと? バカな!」

 

 ロボットであり、本来恐怖心なんてないであろうシュバリアンがうろたえて吠える。

 『仮面ライダー』……か。アイツもそう言っていたな。この姿の名前なのか。

 

「たった今この瞬間、この世界に誕生したのさ。いや……『再誕した』、と呼ぶほうが正しいか?」

「なに……!」

「今この瞬間から俺も名乗らせてもらおう。俺は幻武(げんむ)……仮面ライダー幻武。意味は知らないから俺に聞くな」

「小ざかしい! やれ!」

 

 シュバリアンの一言で取り囲んでいたマスク集団が飛び掛った。

 ……大丈夫だ。アイツに出来て、俺に出来ないはずがない。戦う覚悟も、心構えだってあの時にしてある。

 

「……さあ、一緒に踊ってもらおうか!」

 

 その一言を皮切りにマスクたちを相手に大立ち回りを演じる。

 マスクたちの動きを冷静に動きを見切り、金属棒をいなして流れるように蹴りを叩き込む。

 変身前の状態では殆ど効いた様子はなかったが、変身して力が増したおかげか確実にダメージを与えている事を感じ取れた。

 

「何をもたついている! 相手は1人だぞ!」

 

 ただの1人に翻弄される部下の情けなさにシュバリアンは苛立ち発破をかけるが、そう簡単に出来れば苦労しないだろう。

 この形態には武器らしい武器はなく、文字通り肉体が武器と言う事か。シンプルゆえに戦いやすい。

 戦いなんて、それこそダンスバトル中に起きた乱闘に巻き込まれてやった程度しかない俺だが、自分でも驚くほど戦う事ができる。

 それはこの姿で戦うアイツを間近で見たからかもしれない……更に言えば、どう戦えばいいのかをこの錠前が感覚的に伝えてくれている気がした。

 けどこの数を前にすれば数の暴力には抗いきれず、マスクの1人に羽交い絞めにされ、更に他のマスクたちに組み付かれ覆いかぶされる。

 

「っ……邪魔…だあ!!!」

『クウガスカッシュ!』

 

 身動きが取りづらかったが、どうにかブレードを倒して錠前のエネルギーを解放する。

 両足にエネルギーが溜まり、そのまま逆立ちするように跳ね上がった。火山の噴火のように盛大にマスクの山が崩れ、開脚して背中や肩で回転する『ウィンドミル』の動作で蹴散らす。

 冷やりとしたがどうにか脱出できた……けどこの姿じゃ数の多さに対応できないか。

 

「だったら、こいつだ!」

 

 飛び掛ってきたマスクをアッパーでカチ上げ、中段蹴りでストライクをかますと同時に錠前を外し、代わりにマゼンタとレッドのフェイスが特徴的な錠前を取り出す。

 

『響鬼!』

 

 サウンドが響き、今まで装着していたアーマーパーツが元の『頭』の形に戻ると頭上に開いた裂け目に吸い込まれ、新たなアーマーパーツが降りてくる。もちろんこれも『頭』だ。

 構わず手に持ったそれをバックルの窪みに装着。掛け金を押し込んでロックし、ブレードを倒す。

 

『ロック・オン! 響鬼アームズ! 叩き込め、清めの音!!』

 

 激しいエレキギターのBGMと共にキャストパッドが開き、同時に頭上のアーマーパーツも降って来て『頭』を被る。パーツはすぐに分割して展開され、内部に収納されていたボディアーマーと肩当などが定位置に収まった。

 そして両手には先端に赤い石を埋め込んだ2本の棒。同時に錠前からこの姿の戦い方が感覚的に流れ込んでくる。

 なるほど、これでひたすらぶん殴るってことか。1対の棒を手の中でクルリと回し、俺は納得する。

 

「分かりやすくて結構だなっ!」

 

 一閃。裏拳のような動作で振り返りつつ背後から襲ってきたマスクを棒で殴りつける。

 変わらずリーチは短い方だが、徒手格闘よりはずっと戦いやすくなった。

 9人居たマスク集団が俺1人にバッタバッタと殴り倒される。闇雲に殴るわけでなく、頭部や下半身を狙って棒を叩き込んで行く。

 

「ロックシードで他のライダーの力を纏うライダーだと……!? そんなライダー聞いたこともないぞッ!」

 

 その力に激しく動揺し、シュバリアンは右腕と一体化した鎌の先端からビームのようなものを撃って来た。

 

『響鬼スカッシュ!』

 

 辛うじてかわし、ブレードを1回倒す。

 そして鋭く息を吸い込み、大きく吐き出した。

 口から紫の炎が噴出し、そのまま回転して周囲のマスク集団を焼き尽くし、一斉に爆散する。

 

「フッ……後はお前だけだ」

「ぬぅぅ……っ! 舐めるな!」

 

 残り火を吐き捨てながら言うと、怒りに震えるシュバリアンはそのまま鎌を俺に向けてビームを撃つが、俺は寸前で避けて連射されるビームを掻い潜りながら間合いを詰め、両手の棒を上から叩きつけた。

 が、見かけどおり頑丈な装甲はあっけなく俺の攻撃を弾き、カウンターで左手のクローを振り上げる。

 

「がっ!」

「フンッ!」

 

 衝撃で僅かに浮き上がり、無防備を晒した俺にシュバリアンは容赦なく鎌で斬りつけた。アーマーに火花が散り、衝撃が生身の肉体にも伝わってくる。

 けど…この程度の痛みなんて耐えられる! 追撃を転がって避け、一旦距離を取った。

 あの怪力に装甲……雑魚のマスクとは比べ物にならないほど強い。どうやって倒す!?

 

「どうした、威勢がいいのは最初だけか!」

「ふざけろ!」

 

 どうにか距離を取って接近戦だけは回避するが、これじゃあジリ貧だ。何か逆転の一手は……!

 策が浮かばず顔を歪めたその時、不意に頭に何かが流れ込んできたような気がした。

 今のは……けど、これに賭ける!

 

「これが……俺の切り札だ!」

『ブレイド!』

 

 ビームの雨を避けながらスペードを思わせる銀色のフェイスデザインが特徴的な錠前を取り出し、開錠。

 響鬼に代わってバックルにセットし、ブレードを倒した。

 

『ブレイドアームズ! ソード・オブ・スペード!』

 

 纏っていた鎧が弾けて消え、代わりに頭上から降ってきたアーマーパーツが被さって展開すると右手に幅広の長剣が出現する。

 

「どんなにパワーと装甲が優れていても……」

『ブレイドスカッシュ!』

 

 展開を終えた瞬間、俺はさらにブレードを1度倒した。

 すると背後に2枚の青いカードのようなものが浮かび上がり、手にした剣に取り込まれると刀身が激しい電流を帯びる。

 

「機械なら高圧電流はご法度だろう!」

「させん!!」

 

 シュバリアンもその危険性を感じ取りいっそう激しい射撃を行ってくる。

 それでも構わず俺は突撃し、何発か食らいながらもシュバリアンの装甲の隙間に切っ先を突きたてた。

 

「がああああっ!」

「っ…! うわっ!」

 

 シュバリアンの身体から激しいスパークが起こり、全身を襲うダメージにシュバリアンが叫ぶ。

 決して離れまいと踏ん張る俺だったが、シュバリアンの左手が俺を掴むと力任せに引き離して投げ飛ばした。

 叩きつけられ、何度も転がりながら俺は意識を繋ぎ止め、無我夢中で別の錠前を取り出す。

 

『フォーゼ!』

 

 ブレイドの錠前をバックルから外し、白い……例えるならイカみたいな外見の頭をした錠前を代わりにセットし、起き上がりながらブレードを倒した。

 

『フォーゼアームズ! 青・春・スイッチ・オン!』

 

 出現したアーマーパーツが頭に被さり、展開する。

 同時に右腕は形成されたオレンジ色のロケットと一体化し、腕を引いて構えるとブースターが点火。その突進力を利用して文字通り『ロケットパンチ』をシュバリアンに叩きつけた。

 

「ぐっ……! バカな……大ショッカー最強の戦士である俺が……1人のライダー如きに……!」

「ああ、確かに。最強の戦士が聞いて呆れるな」

 

 悔しげに呻くシュバリアンに嘲るように吐き捨てながら、俺はブレードを3度倒す。

 

『フォーゼスパーキング!』

「あいつらの最初で最高のステージを邪魔したお前を……俺は絶対に許さない」

 

 氷のように冷たい声に、俺がそれを発したのかと思うと自分でも驚いた。

 いいや……、俺はずっとこいつらを許せずにいたんだ。

 3年前のあの日をぶち壊したこと、そしてアイツに課せられた悲しい宿命。そして今、穂乃果たちの頑張りを無にしようとした事。

 それでも俺は怒りに……いいや、怒っているな。怒っているけれど頭の中は至極冷静を保っていた。

 

「死んで――いやジャンクになって償え……!」

「きさ、まああああっ!!!」

 

 最後の悪あがきのようにシュバリアンがビームを闇雲に撃つが、ロケットを点火して一気に加速するとシュバリアンをロケットの先端で捕らえ空高く飛び立った。

 ロケットの推力にシュバリアンも俺も振り回されるが、雲の上まで飛ぶと捕らえていたシュバリアンを投げ落とす。

 

「ハアァァ……ッセイ!!!」

 

 落ちていくシュバリアンを見据え、一瞬噴射を停止して体勢を入れ替えて再度点火。今度はシュバリアン目掛け落下し、左脚に高速で回転するドリル状のエネルギーを纏ったキックを叩き込んだ。

 ドリル状に回転するエネルギーがシュバリアンの強固な装甲を穿ち、文字通り『蹴り抜いた』。

 上空で激しい爆発が起き、それを背にどうにかロケットの出力を調整しつつ地上に着地する。

 

「……………」

 

 勝った……俺が『幻武』として戦う初めての戦い。

 恐怖で竦んでしまうんじゃないか……そんな不安よりも怒りの方が勝っていて不思議と怖くはなかった。

 けどこれはまだ序の口……始まりに過ぎないんだ。

 ――けどその前に……。

 

「怖い人たちが来る前に退散するか」

 

 遠くから聞こえるサイレンの音を聞いて、俺はロケットを使って逃げ出した。

 あまりにも情けない姿だし、本当ならボロボロになったステージの片づけを手伝いたいという気持ちもあったけど……警察が来たら確実に面倒になるし、事情聴取とかされた所で多分答えられないし、知っていることを全部話した所で信じてもらえないだろう。

 一旦離れた場所で変身解除して、穂乃果たちに会いに行こう。そう考えて俺は身を潜められそうな場所を探した。

 

 

「……………」

 

 目の前で起きた出来事を受け止めるのに、穂乃果はかなり時間が掛かった。

 

「な……なんだったんでしょうか」

「なん……だろう?」

 

 いつの間にか海未ちゃんとことりちゃん……ううん、他の皆もそこにいて、皆抱いているものは同じだったみたい。

 あれは一体なんだったんだろう――?

 ロボットとそのロボットが引き連れていた戦闘員っぽい人たちを相手に頭を被って戦った人。

 遠目から見てもそれはかなりシュールな光景で、次々に『頭』を取り替えては色んな姿に変わっていた。

 けどその基本となる人の部分は、どこか和風と言うか、昔の戦国武将みたいな雰囲気があって。

 紺色の鎖帷子風のアンダースーツや、額の2つの三日月が交差した(『W』をちょっとデフォルメした感じ?)の額当てとか、海未ちゃんの家に戦国武将の鎧が飾られていたから、なんとなくそんな風に見えたんだけど。

 

「なにアレ……意味わかんない」

 

 目の前で起きた非現実的な出来事に真姫ちゃんは軽く頭を抑えていた。

 そうだよね。あんなのわけわかんないよ。いきなりロボットや戦闘員が現れて暴れだして、それを鎧武者っぽいヘンテコな着せ替え人形(着せ替え頭?)が戦って倒してくれた……うん、イミワカンナイとしか言えない。

 

「でも……」

 

 ただ、見ていて1つだけ分かった事がある。

 

「あの武者っぽい人、悪い人じゃないのかな?」

「……少なくともあのロボットたちと戦っていたなら、仲間ってわけじゃないんでしょうけど」

 

 真姫ちゃんもそれだけは分かっていて同調してくれた。

 結局あの武者っぽい人はどこかに飛び去ってしまって、何も聞けなかったけど……。

 

「――そうだ! 羽鐘くん!!!」

 

 肝心な事を思い出して思わず声を張り上げた。

 そうだよ! 羽鐘くんがどこにもいない! 穂乃果がここであれを見たときにはどこにもいなかった!

 

「早く羽鐘くんを探しに行かないと!」

「ちょ、待ちなさいよ!」

 

 駆け出そうとした穂乃果の肩を寸前でにこ先輩が掴んで引き止める。

 

「今は外の方も混乱してるのよ。アイツを探すのは難しいと思うわ」

「で、でもっ! 羽鐘くんあそこにいなかったし、どこに行ったか……」

「心配なのは分かるけど、それで穂乃果まで迷子になったら元も子もないでしょ?」

 

 本当ならすぐにでも探しに行きたかったけど、落ち着いたにこ先輩の言うとおりだったから何も言い返せない。

 沈み込んだ穂乃果の姿に見かね、にこ先輩は「もしかしたらだけど」と前置きして、穂乃果にとある方法を提案してみた。

 

「この騒ぎで電話回線が混んでいるかもしれないけど、電話なら通じるんじゃない?」

「電話……そうだ!」

 

 なんでその事に気付かなかったんだろう!

 ぱっと顔を上げ、すぐに走り出す。後ろから海未ちゃんが何か言ってたけど、話はあとで聞こう!

 

「(確かスマホは部室に置いてきたから……)」

 

 脇目も振らず全力疾走。すぐに部室にたどり着いて扉を開けると、誰かのスマホが鳴っていた。

 きっと羽鐘くんからだ! 確証なんてなかったけど穂乃果のスクールバックに飛びついてスマホを取り出すと、やっぱり羽鐘くんから着信が来てた!

 

「羽鐘くん大丈夫!?」

《わっ!? いきなり大声出すなよ……》

「だって……だって……」

 

 いつも通りの明るい声がスピーカーから聞こえて、そこで穂乃果はようやく安心できたら思わず涙ぐんだ。

 

《何も泣く事はないだろ?》

「泣くよ! 穂乃果、すっごーーーーく心配したんだよ!?」

《……悪い。心配かけた》

 

 すすり泣く音が聞こえたのか、申し訳なさそうに羽鐘くんが謝ってくる。

 その時、背後から足音が近づいてきて、振り返ると皆が部室に転がり込んできた。

 

「穂乃果! あなたと言う人は……」

「ど、どうしたの? 転んでどこか怪我しちゃった?」

 

 海未ちゃんがいつものお小言を言おうとして、涙ぐんでいた穂乃果を見て目を丸くする。ことりちゃんは座り込んで泣いていた穂乃果を見て、怪我をしたと思ったみたい。

 

「ううん、穂乃果は大丈夫だよ。……羽鐘くんが無事だって電話してくれたから安心して、つい……」

《そこに皆いるのか?》

「ううん。絵里先輩と希先輩は外で逃げてきた人たちを誘導していて……ちょっと待ってて、今スピーカーに切り替えるね」

 

 穂乃果だけ話すのも不公平だと思って、スマホを耳から話すと表示されたスピーカーをタップする。

 

《そっか……皆は大丈夫?》

「『大丈夫?』じゃないでしょっ!」

 

 スピーカーに切り替え、羽鐘くんが言葉を発したとたんにこ先輩が怒鳴りつけてきた。

 

「自分がどれだけ危ないことしたのか分かってる!? 1歩間違えれば死んでいたかもしれないのよ! そしたら悲しむ人がどれだけ居ると思ってるのよ!」

《矢澤先輩……》

 

 電話越しに羽鐘くんが驚いているのが分かる。穂乃果たちもまさかにこ先輩が羽鐘くんを怒るなんて思っても見なかった。

 でも、にこ先輩の言うとおりだよね。羽鐘くんがやったことは多分褒められた事じゃない。自分を投げ出したんだから。

 1歩間違えればにこ先輩の言うとおり……。

 

《……すみません。軽率な行動でした》

 

 羽鐘くんも自分を思って怒ってくれた事を感じて、申し訳なさそうに謝ってくる。

 

「フン。分かればいいのよ……けど、一応お礼は言っておくわ。アンタのおかげで助かったから」

《いえ……》

「……と、ところで羽鐘くん! 今どこにいるの? どうやって逃げられたの?」

 

 話題を変えようとことりちゃんが慌てて尋ねてくる。

 それに羽鐘くんは少し口篭った。……なんでだろう?

 

《実は……助けられたんだ》

「助けられた? それってあのロボットたちと戦っていた鎧武者みたいな人?」

《見てたのか!?》

「う、うん。校舎からだったけど……」

《そ、そうか……いや、そうなんだ。突然その人が助けてくれて、今学院の外にいる》

「無事ならそれでいいんだけど……何者なのよ、あのロボットたちと戦っていた人って」

《……仮面ライダー》

「仮面…ライダー?」

 

 真姫ちゃんの疑問に、一瞬間を置いて羽鐘くんが独白するように呟く。それに聞き返すと、羽鐘くんは「ああ」と肯定した。

 

《あの人、仮面ライダーって……そう名乗ったんだ。仮面ライダー幻武って》

「仮面ライダー…幻武」

 

 その名前を穂乃果は反芻していく。

 言われて見ると確かに鎧武者に見えたけど仮面をつけているように見えたし、間違ってはなさそうだけど……ライダーってどういう意味なんだろう?

 

《俺もよく分からないんだけどな……合流――けど………して――》

「羽鐘くん…? もしもーし!?」

 

 突然雑音が入ったかと思うと、次の瞬間ブツリと音を立てて電話が切れた。

 一瞬ぽかんとして、慌ててかけ直そうとするけど「現在電波が混み合っております」とアナウンスがされて通じなくなる。

 呆然としちゃったけど……でも羽鐘くんが無事ってだけでも確かめられたんだから、それで良かったけど……。

 

「(そう言えば……)」

 

 羽鐘くんと話していてふと思い出したけど……。

 

「(あの仮面ライダーって人も、ブレイクダンスをしていたのかな)」

 

 仮面ライダーが怪人たちと戦っている一部始終を見ていたけど、一瞬、本当に一瞬だけ穂乃果の脳裏に踊っている羽鐘くんの姿が掠めたんだ。

 両足を開いて、回転の遠心力を使って手を使わないで肩や背中で回る『ウィンドミル』って呼ばれるテクニック。

 ブレイクダンスでもヘッドスピンと同じくらい有名な技で、昔羽鐘くんが見せてくれたことがある。

 ……まあ、多分関係ないと思うんだけど。

 

 

《現在電波が混み合っております――》

「……………」

 

 突然回線が遮断されてしまい、掛け直そうとしたが混み合っているらしく通じなくなり、俺はつい顔を顰める。

 学院から少し離れた所で降りて、変身解除して戻ってくると警察や救急車、消防車だけでなく野次馬や果てはテレビ局の人間らしき姿までいてごった返していた。

 学院に入るのは無理だと諦めると、俺は踵を返して家路に着く。すぐに届くかは分からないが、先に家に帰っているとメッセージは送っておいた。

 歩いてから暫くして人の気配が無くなると、徐に拳を握り締めてコンクリートの塀に力いっぱい叩きつける。

 

「……クソッ」

 

 溜め込んでいた苛立ちを吐き出すように俺は吐き捨てる。

 戦いには勝ったがオープンキャンパスは完全に失敗。どうしようもなく完全な敗北に終わってしまった。

 叩きつけた拳がヒリヒリと痛むが、それでもこの苛立ちは紛れない。それは奴らにステージをメチャメチャにされた怒りと、自分自身に対する怒りだ。

 

「もっと俺が上手く戦えていれば……」

 

 自分を責めるなという方が無理な話だった。そう簡単に割り切れるほど潔くなんてない。

 防ぎようがないのは分かる。あんな方法で出て来られたらどうしようもないと頭では理解できていても、感情は不甲斐ない自分を責めずにはいられなかった。

 

 

 

 光源は巨大なモニター1台のみと言う暗闇の中に複数の人影があった。

 影は一様にモニターで流されている映像を注視している。

 それは、シュバリアンとそれと戦う仮面ライダーの戦闘映像だった。

 戦闘は決着を向かえ、仮面ライダーの放ったキック――通称として『ライダーキック』と呼ばれている――にシュバリアンは文字通り風穴を開けられ、木っ端微塵に爆発して映像が途切れる。

 

「……これがシュバリアンがやられる直前に送って来た映像だ」

 

 白いスーツを着こなした中年の男性が見計らったように呟いた。モニターから視線を外し、その場にいた他の人影に目をやる。

 

「仮面ライダー幻武。他のライダーの力を宿したロックシードを用い、変身するライダー。だが腑に落ちない点が多い」

「と言うと……どういう事かな?」

「それは貴様自身が分かっているはずだ、プロフェッサー。あのドライバーも、ロックシードと言う存在自体も『鎧武』の世界にある技術。だがあの世界にはヘルヘイムの森との繋がりは無く、そもそもライダーと対になる存在すらいない」

 

 スーツの言葉にもう1人の男性は「ふむ」と興味なさ気に応じ、手にしたタブレット型端末を操作している。

 白いスーツを着た男性よりもずっと若く、白のメッシュにピアスと派手な出で立ちをしているが、何よりも目を引くのは口元を覆う金属製のマスクだった。

 

「確かに……戦極ドライバーとロックシードを開発したのは僕だ。だからこそあの仮面ライダーが使っているロックシードが通常の入手方法とは異なる経路で入手したものだと分かる。と言うより、アレは君たちが計画し、僕が研究を進めているシステムに相似していると思うけど」

「……まさかとは思うが、我らを裏切りあれを他へ流したのではないだろうな?」

「ははっ。まさか、そんな事できるはずもないだろう? まだ実物すら出来上がっていないのにどうやって横流しするのさ」

「……………」

 

 話し合う2人に今まで会話に参加していなかった3人目は、徐にモニターに背を向けて歩き出した。

 それに気付いたメッシュを入れた男が、顔を向けることなく声を掛ける。

 

「どこに行くんだい?」

「下らん話に興味はない。私の邪魔をするならば倒す。ただそれだけだ」

 

 それだけ言うと3人目は立ち去ってしまう。

 その姿は異質で、赤みを帯びたオレンジの上半身鎧を身につけ、鎖帷子に似た紺色のアンダースーツ姿のそれはまさに「鎧武者」であった。

 立ち去った鎧武者にメッシュの男はやれやれと肩を竦め、端末を操作すると再度大型モニターに先ほど流した映像をもう1度再生させる。

 

「しかし『大ショッカー最強の戦士』なんて大きく言った割には、あっさり倒されてしまったね。これじゃあ最強(笑)だよ」

「我々も1枚岩ではない。それにクライシス帝国は自信過剰な奴らが多いのだ」

「それは難儀なようで……じゃあ僕は研究に戻らせてもらうよ。――あの仮面ライダーには少々興味が沸いたから、もう少し情報が欲しい所だけどね」

「良いだろう。今後あの仮面ライダーとの戦闘で得た情報はお前に回そう」

「ん。よろしく」

 

 意見交換を追え、中年の男が部屋を出て行くとメッシュの男は仮面ライダーの姿が大きく写ったところで映像を停める。

 そしてタブレットを操作すると、そこには図面らしきものが描かれ、更に操作するとそれを用いた計画の名称らしいものが表示され、このように書かれていた。

 

『仮面ライダー殲滅計画』

 

 ――と。




 メッシュにスーツに鎧武者……いったい何者なんだ(棒

 これでひとまず物語が本格的に開幕ってことで、暫くは日常がメインになっていくと思います。

 けど次回は予想外(?)の人物に早々に身バレされたり…?
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