ラブライブ! A Return Hero A Return Legend   作:リベリオン

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 今回はオリジナルエピソードで、早々に身バレ&ドライバーやロックシード入手の経緯についての説明回。


第7話 バレました

第7話 バレました

 

 

 週が明け、オープンキャンパスから2日が経った。

 あの騒動は連日ニュースで取り上げられるほど注目され、音ノ木坂学院の職員たちは対応に追われている。

 警察からも事情聴取があったがあんな事は説明できるはずもなく、かと言って現実に起きた出来事のため『新手の無差別テロ行為』と言う方向で捜査が進められているらしい。

 学校の方はグラウンドの一部が爆発で吹っ飛び、陸上トラックは使えないものの校舎は無事ということで生徒たちは通常通り登校。一部授業の調整と言う形で修正したそうだ。

 被害の割りに死傷者は無く、怪我人こそいたが避難中に走って転んだといった程度なのは不幸中の幸いだろうか……。

 そして音ノ木坂学院の存続については、あんな事があったせいで今回のオープンキャンパスでは見送り、別の機会に改めてアンケートを取ることになったらしい。

 即座に決定しなかったのは騒ぎでアンケートを取る機会を逃した事や、見学に来た中学生たちが大勢いたことから少し様子を見ようという意見からだそうだ。

 

「辛うじて首の皮1枚繋がった……か」

 

 皮肉な事にあの騒ぎで音ノ木坂は注目を浴び、さらにはμ'sというスクールアイドルの存在もあって知名度はかなり上がった……素直に喜べないが。

 

「はあ……」

 

 溜め息をついてスマホをカードリーダーの上に翳し、認証させるとゲートを潜る。

 人間の順応性とは中々のもので、編入した当初は戸惑っていたがすっかり慣れてしまった。

 いつも通りエレベーターに乗って2年のクラスがある階に上ると、自分のクラスに入る。

 

「あ、天城!」

「おはよう新導……どうかした?」

 

 クラスに入ってくるとそれに気づいた1人が慌てて声を掛けてきた。

 新導光一。何よりも特徴的なのが逆立てた赤い髪で、当人曰く「セットして無い生まれつき」。少々騒がしい所はあるけどUTXでは数少ない男友達だし、見かけに反して意外と品行方正とギャップが大きい。

 

「音ノ木坂のテロ騒ぎ、聞いたか?」

「テロ…? ああ……」

 

 テロと聞いて一瞬眉を潜めるけど、すぐに納得した。

 あの騒ぎは無差別のテロ行為として扱われていて、テロリストの目的・正体すらも謎に包まれていると報道されているんだっけ。

 UTXと音ノ木坂は隣同士(と言っても1キロ以上離れているが)だから、こんな近くでテロなんて起きれば他人事じゃないだろう。

 そんな大事件だと言うのに淡白な反応をされ、新導は意外そうな顔をする。

 

「「ああ……」って随分素っ気ないな」

「まあ、その話に若干うんざりしてるから」

「あっ……そう言えばお前、この間音ノ木坂のオープンキャンパスに行くって言ってたっけ。じゃあ……!」

「巻き込まれたよ。もちろん」

「うっひゃぁ……災難だったな」

 

 同情するように肩を叩く新導。多分俺がその時怖い思いをしたから思い出したくもないとか、そんな風に思っているのかもしれない。

 けれど実際にはあんな結果を招いてしまった自身の不甲斐なさに憤っている。

 自分の席について程なくし、朝練を終えた所の綺羅さんも教室に入ってきた。

 

「おはよう。綺羅さん」

「……おはよう」

 

 いつも通りに挨拶すると、彼女は一瞬こっちを見て眉間に皺を寄せた後、素っ気なく挨拶を返すとそっぽを向いてしまう。

 

「……お前、綺羅さんに何かしたのか?」

「いや……?」

 

 その態度に俺も新導も驚き、顔を見合わせた新導にももちろん心当たりなんて無いから戸惑いながら答える。

 編入し、隣同士になってから彼女がお喋り好きと言うのも手伝って色々話したこともあるが、特に嫌われたり避けられるような事を言った記憶なんて無い。

 実は気付かないうちに……なんてことも考えられるけど、先週末までは普通に話していたからそんな事はなかったと思う。

 

「(たまたま虫の居所が悪いだけかな……)」

 

 だとしたらそっとしておく方が良いだろう。そう考えると俺は授業の準備を始めた。

 

 

 キーンコーンカーンコーン……。

 

 午前の授業の終わりを告げるチャイムが鳴り、とたんに教室が一気に活気づく。

 

「今日はどうしようかな……」

 

 弁当なんて家事スキルの低い俺にとっては作るのも億劫で、いつも購買もしくは学食をその日の気分で選んでいた。

 

「天城~、メシどうする?」

「う~ん……」

 

 昼休みに入ってすぐに新導がやって来て声を掛ける。

 まだどうするか決めておらず、唸っていると別の声が掛けられた。

 

「……ちょっといい?」

「え…綺羅、さん?」

「一緒に来て」

 

 突然綺羅さんに声を掛けられ、戸惑っている俺を他所に彼女は俺の腕を掴むとそのまま引っ張ってどこかへ連れて行こうとする。

 

「えっ? ちょっと、綺羅さん!?」

 

 わけも分からず慌てて新導に助けを求めようと振り返るが、新導だけでなくクラス中が綺羅さんの行動に目を点にしていた。

 そしてそのまま、俺は教室から連れ出され、腕を引く綺羅さんは無言で廊下を進んでいく。当然すれ違う人たちは俺たちを見て目を丸くし、足を止めて振り返る。

 けど綺羅さんはそんな事気にも留めずに早足で歩いていき、エレベーターに乗り込むと行き先のボタンを押してドアを閉じた。

 

「あ…あの……?」

「……………」

 

 一体彼女の何がこうまでさせるのか皆目見当もつかず、俺は恐る恐る声を掛ける。

 けど俺の呼びかけに綺羅さんは無言を貫き、目的の階である15階にエレベーターが到着するとドアが開いた瞬間踏み出した。

 もちろん腕を掴まれた俺はそのまま引きずられるように歩かされ、小柄な割りに力が強い彼女に内心少し驚かされている。

 きっと毎日欠かさずに基礎体力練習を続けているんだろうな……と感心はしたけど、それでも性別の差と言うものは覆しがたいもので、同様に基礎体力練習も欠かしていない男の俺なら容易に振りほどく事が出来る。

 それが出来ないのは綺羅さんへの戸惑いと困惑が大きく、何故彼女がこんな事をするのか頭の中で思案するがやっぱり思い当たる事はない。

 そうこうしている内に綺羅さんは1つの部屋のドアを開ける。ドアにかけられたプレートには英語が書かれていて、訳すと「特別スタジオ A-RISE専用 ※メンバー以外入室禁止!」と書かれてある。

 A-RISE専用のレッスンルーム……しかもメンバー以外使っちゃダメって、それじゃあ不味いんじゃないかと若干顔を蒼くするが、構わず綺羅さんは部屋の奥まで歩を進めた。

 全面ガラス張りで日光が降り注ぐそこは、確認用の姿身などもあるが間取りそのものは俺たちも使うレッスンルームと変わりは無いだろう。

 けど、A-RISE専用……つまり当代以前のメンバーも使っていたと言う事はそれだけかなりの重みがあると言う事で、若干の息苦しさを覚える。

 

「あの……綺羅さん? 俺がここに入ったら不味いんじゃないかな?」

 

 ようやく立ち止まった綺羅さんに恐る恐る声を掛けると、ようやく彼女は振り向いて険しい顔をこちらに見せた。

 

「……どういうこと?」

「な……なにが?」

 

 開口一番詰問口調。けど肝心の質問内容が分からず、俺は若干顔を引き攣らせながら問い返す。

 しかし彼女の目にはそれがとぼけている風に見えたのか、目尻が釣りあがった。

 

「とぼけるつもり?」

「だから何のこと? 俺、綺羅さんを怒らせるようなことした?」

「そう……しらばっくれるわけ」

「ッ…だからどういうことか話してくれよ! いきなりこんな所まで引っ張ってきて、いきなりわけの分からない事聞いてきて! 俺が君を怒らせるようなことをしたのなら謝るけど、何の説明もなしにそんな事言われたら分かるわけないだろう!?」

 

 つい苛立ちの余り俺も声を荒げて問い返し、互いに睨み合う。

 冷静に考えてみても彼女の言っている事は支離滅裂で、言いがかりも良いとこだ。そんなものをぶつけられては俺も冷静でいられなかった。

 

「――ツバサ! 天城!」

「やっぱりここにいた!」

 

 今にも一触即発な雰囲気の中、誰かが部屋に入ってきて俺たちの間に割って入る。

 入ってきたのは統堂さんと優木さんの2人で、俺たちの姿を見たとたん慌てて互いを引き剥がした。

 

「統堂さん……優木さんも、どうしてここに」

「君達のクラスに行ったら、「ツバサが険しい顔で天城を引っ張っていった」と聞いて、もしやと思って急いでここに来たんだ。ここなら私たち以外入れないからな」

「ツバサちゃん、とにかく落ち着いてよ。ね?」

「……………」

 

 優木さんに宥められ、今にも飛び掛ってきそうな勢いだった綺羅さんも少しだけ落ち着きを取り戻す。

 けど、俺とは目を合わせようとせずわざとらしく目を逸らした。そんな彼女に他の2人は肩を落とし、彼女に代わって話しかけた。

 

「すまない天城。ツバサが失礼な事をした」

「……だったら説明してくれないかな? いきなり喧嘩売られる覚えはないんだけど」

「ああ……ちゃんと説明する。音ノ木坂のオープンキャンパスで起きたテロは知っているだろう?」

「まあね。俺もその場にいたから」

「私たちもね、そこに居合わせたの」

「……え?」

 

 憮然としながら答えていると、優木さんから予想外の言葉が飛び出して意表を衝かれる。

 彼女たちもあそこにいた? けどそれらしい姿は見えなかったし、いればすぐに分かったはずだ。

 

「私たちが不用意に近づいたら騒ぎになるから、陰から覗いていたんだ。μ'sのステージを」

 

 優木さんの言葉を統堂さんが引き継ぎ、当時の事を語ってくれた。

 

「曲が終わって、ツバサが帰って練習だって燃えていたすぐ後に……会場の様子が何かおかしいと気付いて、見たらいつの間にか銀色のオーロラのようなものが降りていた」

「最初は学校側で用意したイベントなのかなって思ったけど、会場の様子からどうも違うみたいだったし、私たちもそれを見て驚いていたら、突然オーロラが消えて少ししたら爆発音が聞こえて、皆が慌てて逃げ出していたんだけど――」

「私たちは見たわ――天城くんがあそこに残って、現れたロボットやマスクつけた変な人たちと戦っていたのを」

 

 はぐらかすのは許さない――綺羅さんの目がそう語っていた。

 まさか彼女たちがあの場にいたなんて全然気付かなかった……もしかしたら俺が変身する所も見ていた?

 

「(けど、仮にそうだとしても物的証拠は何もない……)確かにみんなの逃げる時間を稼ぐために囮になったけど、その後すぐに助けられたんだ」

「助けられた? ずっと戦っていたでしょう。アレは…そう、『変身』して」

「な、何を証拠に……」

 

 『変身』と指摘されて一瞬動揺するが、何とか押さえ込み知らない風を装う。

 だけど俺がその反応をするのも綺羅さんには予想済みだったらしく、優木さんの名前を呼ぶとどこか申し訳なさそうに優木さんはスマホを取り出して何か操作すると、画面を俺に見せるように前に出す。

 

「……!」

 

 一瞬で血の気が引いていくのが分かった。

 スマホで再生された動画は画質こそ悪かったが、そこには俺が奴らと戦い、変身する瞬間をはっきりと捉えているのが映っている。

 

「たまたまスマホを使っていたあんじゅが撮影したの。これでも知らないって言い通せる? なんだったら証拠映像として警察に提出してもいいのよ」

 

 まさしく決定的な証拠を突き出され、俺は言葉を失ってしまう。

 これを警察が見れば確実に俺に事情聴取をしにやってくるだろう。画像処理をして画質をクリアにすればはっきりと俺だと確認できるはずだ。

 

「答えて。天城くんは何を知っているの?」

「……事情を話せばその映像を警察には見せないでくれる?」

「……内容によるわね」

「分かった……話すよ。ただ1つだけ分かってほしいのは、俺自身も全部を知っているわけじゃない。むしろ知らない事の方が多いんだ」

「……どういうこと?」

 

 真意を図りかねて綺羅さんは眉を潜めた。

 「言葉通りだよ」と俺は簡潔に答え、『あの時』の事を思い浮かべる。

 あれから3年経ち、目の前で同じで事が起きていてもまだあの時のことは夢じゃないかと思うときがある。

 それほどまで現実離れした光景で、だからなおさら強く記憶に焼きついている。

 一呼吸間を置き気持ちを落ち着かせると、静かに切り出した。

 

「いきなりだけど、3人はパラレルワールドって知ってる?」

「…? それってSFとかで出てくる、今ある世界とは異なる歴史を辿っている世界の事?」

「そう。今から話すことはそのパラレルワールドが深く関わってくるんだ」

 

 俺の言葉に3人は顔を見合わせ、いかにも半信半疑そうに顔を見合わせた。

 無理も無い。いきなりパラレルワールドなんて突拍子もない。

 

「信じてくれないならそれでもいい。けど、これから話すことは全部事実だと言う事はわかってほしい。全ては3年前だ。俺がこれを譲り受け、いつか奴らがこの世界にやって来ると忠告を受けたのは」

 

 

 その日はいつもと変わらない日になるはずだった。

 まだニューヨークにいた頃、ちょうどその日はダンスの大会があり俺も参加していた。規模こそ世界大会と比べれば小さいのは否めないが、それでも定期的に開かれて有名な大会で、参加者のレベルも軒並み高い。

 順調に駒を進めて、決勝戦まで行ったけど……力及ばず結果は準優勝。表彰式に移った時……。

 

「あの銀幕……君たちの言うオーロラが現れたんだ」

 

 オーロラは会場を透過した時には会場とはまったく別の場所、怪人に取り囲まれてしまっていた。

 逃げ惑う人たちが次々に怪人に捕らえられて行って、諦めかけたその時……。

 

「幻武が現れた」

「幻武?」

「……俺が変身したあの姿の名前だよ。仮面ライダー幻武」

 

 突然オーロラが降りて幻武が現れると、捕まった人も怪人たちも動きを止めた。

 幻武はそれに構わず怪人たちと戦い、圧倒的な力で倒してしまうと捕らえられた人たちを解放する。

 助け出された人たちは困惑していたが、あのオーロラが現れて過ぎるとその場からいなくなっていた……俺だけを残して。

 1人残されて戸惑う俺に幻武は向き直ると、変身を解き中身を露にした。

 その姿に俺は言葉を失いただ見つめる。なぜなら変身していたのは……。

 

「変身していたのは天城羽鐘だったんだ」

「えっ……? どういうこと?」

「だから、目の前に俺と瓜二つの姿をした人間がいて、そいつが幻武に変身していたんだ」

 

 当時の俺も混乱し、狼狽していた事を思い出して目を点にしている3人につい苦笑してしまう。

 ……閑話休題、話を戻そう。

 理解を超える出来事の連続に頭がパンクしてしまいそうな所を、目の前に経つ俺が手で制し、ゆっくりと言葉を紡いだ。

 

『混乱する気持ちは分かる。けど時間がないから落ち着いて俺の話を聞いてほしい』

 

 そう言った目の前の俺の身体が光りだして徐々に輪郭を崩していくのに気づき、俺は目を見開く。

 どうなってるんだ、と問うと目の前の俺は苦笑いした。

 

『分岐点を破壊したからな。俺の居た世界との繋がりが切れかかっているんだ』

 

 分岐点? 首を傾げて口にすると、目の前の俺は頷く。

 

『この出来事が俺の世界へ続く道だったんだ。だがそれを俺自身が破壊した事で、俺の存在は消え、お前は俺とは別の時間を生きる事ができる』

 

 目の前の俺が語る話はその時の俺には全てを理解する事はできなかった。

 ただ分かるのは……目の前の俺がもうすぐ消えると言う事。それだけは理解できて……。

 

『俺は未来のお前だ。奴らに捕まり、あの世界から連れ去られた時間の』

 

 その言葉に俺は奴らは何なんだと問いかける。

 

『奴らは世界を越えてやって来る。今は“楔”も破壊され、あの世界に現れたと言う痕跡も無くなっただろう……だがいつか、奴らはまたやって来るかもしれない。だからこれをお前に託す』

 

 そう言って目の前の俺は腰に装着していたベルトのリリースボタンを押してドライバーを外すと、錠前と共に俺に差し出した。

 

『これは戦極ドライバーとロックシード……いつかこれが必要になる時が来る。その時はお前が使ってあいつらを守れ』

 

 あいつら……? 戸惑いながら差し出されたそれを受け取りながら聞き返すと、目の前の俺は答えずにフッと微笑む。

 

『俺がなれたんだ。お前もきっとなれるさ……仮面ライダー幻武に』

 

 そう言った目の前の俺は身体の殆どが消えかかっていて、もう腰から下は完全に消滅していた。

 気づいた俺がそれを指摘すると、目の前の俺は首を横に振る。

 

『良いんだ。こうなると分かってやったんだから……あいつらを――穂乃果たちを頼んだ』

 

 そう言って目の前の俺は満足そうに、それでいて泣きそうな笑みを浮かべて消えていった。

 

 

「その後無事に俺は元の世界、元の場所に戻る事ができて3年後……アイツの警告が現実になり、俺は幻武となって戦った……これが俺の知っていること全てだよ」

 

 話を終えて大きく息を吐き出す。

 この話を誰かにするなんてな……ずっと胸の内に仕舞い込んでおくつもりだったのに。

 ちなみにその後の余談だが、無事にもとの世界に帰れたが起きた内容が内容だけに警察・救急車沙汰になり、だが痕跡も何も残っていないためガス漏れによる集団昏睡事故……という形で処理されたらしい。

 

「で……少しは納得してくれた? それとも納得できないから映像を警察に渡す?」

「……1つ、聞かせて。天城くんと奴らはグルじゃないの?」

「まさか。奴らと結託するなんて死んでもゴメンだね」

 

 嫌悪を隠さずに吐き捨て、改めて綺羅さんを見る。

 変わらずその表情は険しい。親の敵を見るような……ってこういう事を言うのかな。

 無言で綺羅さんの真っ直ぐな目線を受け止めていると、ややあって綺羅さんは口を開いた。

 

「最初は天城くんがグルなんじゃないかと思ってた。音ノ木坂の知名度向上のために、オープンキャンパスやミニライブを利用して一芝居打ったんじゃないか……って」

「……そう思われても仕方ないかな」

 

 否定も肯定もしない。彼女の言い分は一理ある。

 第3者があの場面を目撃していれば関わりを疑うのは当然のことだ。

 

「もしそうなら、絶対に許せなかった。注目を集めるためとはいえ、あんな卑怯な方法で一生懸命頑張っていた人たちを巻き込んだなら……引っ叩いて警察に引きずって行ってやるって」

「……随分過激な事するんだね、綺羅さんって」

「だってスクールアイドルが大好きだから」

 

 一切の迷いも無くはっきり言った綺羅さんに、むしろ感心さえ覚える。

 けど俺も綺羅さんと同じ立場だったらそうしていたと思う。……いや、きっとその場で捕まえて警察に引き渡していたかもしれない。

 

「……けど考えてみれば、天城くんはそんなことする人間じゃなかったよね」

「どうしてそう思うの?」

「だって楽しそうだったから。μ'sのことを話している天城くんが。それに友達の舞台を壊してまで有名になるなんて、目的のためなら手段を選ばないような人じゃないでしょ?」

 

 まあ……そう言われればそうだけどとしか言いようがない。

 けどそうまではっきり断言できるとなると、何か根拠でもあるのだろうか?

 

「根拠? 無いけど」

「は?」

「強いて言えば勘、って所ね。これでもステージの上から色んな人たちを見てきたんだから、人を見る目は確かだって自負してるわ」

 

 えへん、自信満々に綺羅さんは断言すると胸を張る。

 ……ただ悲しいかな。矢澤先輩並みに低い背のせいで子供が大人ぶっているようにしか見えない。

 隣に居る統堂さんと優木さんはいつもの事で慣れているのだろう、片や呆れ、片や微笑ましそうにしている。

 俺は反応に困って微妙な顔をしていると、それが気に入らないのか綺羅さんはむっとした。

 

「なによ。私が認めてあげてるのに不満なの?」

「いやいや、そんな事はけして」

「ふぅ~ん……まあ、そっちの事情は分かったし……この件は私たちだけの秘密にしておいてあげる」

「ほ、ほんとに?」

「うん。ただ……彼女たちにも黙っておくの?」

「彼女たち?」

「μ'sのみんなよ。その……仮面ライダー? のこととか、黙っておくつもり?」

「……………」

 

 真剣に、それでいて俺を気遣うような目を向ける綺羅さんに俺は押し黙ってしまう。

 

「……あいつらが知る必要はないよ。関係のない話なんだから」

 

 被りを振り、素っ気なく答えた。

 綺羅さんに答えたとおりこの件はあいつらに関係のないことだ。

 奴らが穂乃果たちに手を伸ばすようならその前に潰す。俺の手が届く範囲で奴らの好き勝手には絶対させない。

 

「……そう。わかったわ」

「……ちょっと、意外だ。もう少し何か言ってくると思ったのに」

「目を見れば意思は固いって分かるから。――うん、この話はもう終わり。強引につき合わせてごめんね」

「うん……まあ、分かってくれれば良いんだけど」

 

 何か釈然としないものがあるが、話が終わりならこれ以上ここに留まる必要はないだろう。

 それに忘れているがここはA-RISE専用の部屋だ。部外者がいつまでも居座るわけにも行かない。

 3人に軽く会釈すると、俺は部屋を後にした。

 

 

「いいのか? ツバサ」

 

 天城くんが部屋を出たのを見計らって英玲奈が問いかけてくる。

 

「なにが?」

「天城のことだ。本当にこれでよかったのか?」

 

 わざとらしく惚ける私だったけど、そう簡単に見逃してはくれないみたい。

 だから惚けるのはやめて、真面目に答える事にした。

 

「……正直に言えば、わからないかな」

「そうだよねぇ……平行世界とか、聞いてもまだ現実味がないって言うか」

 

 英玲奈の問いにそう答えると、あんじゅも溜め息交じりに同調してきた。

 天城くんの話に嘘はないんだろうけど、それでも私の中ではまだ理解しきれていない部分がある。

 けどそれは天城くんも同じなんだと思う。そうであっても、1つだけハッキリしている事があるとするなら……。

 

「あいつらに対抗できるのは自分だけで、他の人を巻き込みたくない……って思ってるのかも」

「だがそれは……」

 

 英玲奈が懸念するのはもっともだと思う。

 こうして私たちは天城くんから話を聞いたから、天城くんは私たちの敵じゃないと納得できたけど……世間はどう思うのだろう。

 この先戦いが起きれば、その都度仮面ライダーとして戦う天城くんとあいつらの光景を誰かが見るかもしれない。

 今の世の中、情報と言うものは簡単に拡散しやすい。SNSの存在からすぐに噂は広まっていくと思う。

 その時、人々は彼をどう捉える? 正義のヒーロー? それとも悪の手先?

 もし後者なら……それでも天城くんは戦えるの?

 

「(そんなの……悲しいじゃない)」

 

 どうしてもう1人の天城くんが今の天城くんに託したのか、どうして天城くんで無ければいけないのか……私には分からない。

 ただ、その道を自ら進んで歩こうとする天城くんには一抹の不安を抱いていた。




 もう1人の羽鐘との出会いは劇場版仮面ライダーカブトのシーンをヒントにしています。

 んでもって何気に男キャラとしては2人目となる新キャラ、こっちは名字からなんとなく分かりますかね。

 次回はミナリンスキーが登場です。
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