俺はあの後、大騒ぎしているプレイヤーを尻目にとりあえず、別の拠点に向かうことに決めた。
薄情だといわれればそれまでだが、これは自分が生き残るためには仕方がないことだと割り切って、《ホルンカ》の村への移動を敢行した。
アズサはサービス開始直後の大量イノシシ狩りで既にレベル3。
《はじまりの街》近辺に出てくる
彼はただホルンカを目指してひたすらに走り続けた。
割と高頻度でモブが出現し襲っては来たが、すべてソードスキルで一撃だった。
アズサはもともと剣道をやっていて腕が悪いわけでもない。
和人と親しくなったのも実は剣道という共通点があったからだ。
もっとも、和人は剣道をやめてしまったが。
あ、一応俺はまだやってるぞ?
まぁ、いろいろあるがな。
とにかく生き残らなければ元も子もないんだ。
精々格好悪く足掻いてやるよ。
◆ ◆ ◆
─── 約一ヵ月後
俺は第一層《トールバーナ》に来ていた。
今日俺がここに来たのは、第一層のボスの攻略会議があるからだ。
というわけで、その会議が開かれるすり鉢状の野外劇場のような場所にいるのだが・・・。
「和人!?」
「って梓!?」
まさかの再会。
「お前この野郎!俺のこと置いていきやがって!」
「仕方がないだろ!あの時は必死だったんだ!」
まぁ、そんなことを言っていると。
「はーい!!それじゃっ!そろそろ始めさせてもらいまーす!!!」
元気の良い声が聞こえ、会場は静かになった。
その声を発したのは青髪のイケメン。
いかにもモテそうな爽やかな印象を与える青年だ。
「今日は、俺の呼びかけに応じてくれてありがとう。俺はディアベル、職業は気持ち的に
ディアベルさんというのか。
それにしても・・・。
いきなり笑いを取ってみんなの心を掴んだか・・。
こういう人が他の人の上に立つのが一番いいのだろうな。
やべっ・・。
超まぶしいぜディアベルさん!
すると彼は突如、真面目な顔になった。
「今日、俺達のパーティがあの塔の最上階で、ボスの部屋を発見した!」
おお!という声があちこちから上がる。
「俺達はボスを倒し、第2層に到達して…このデスゲームもいつかきっとクリア出来る事を……はじまりの街で待っている皆に伝えなきゃならない! それが、今この場所にいる俺達の義務なんだ!――そうだろ、皆!」
まぁ、そうだな。
俺は自分の為にやっている節があるが、結果として彼らのためになっているのだろう。
会場の全体から拍手と歓声が贈られる。
「OK。それじゃあ、早速だけど、これから攻略会議を始めたい思う。まずは6人のパーティを組んでくれ!」
「・・・・・!?」
俺は今までソロでやっていた。
パーティなんてまともに組んだことはない。
周りの皆はそれぞれでパーティーを組んでしまっている。
「・・・・あぶれた・・・だと・・・。」
ちょっと泣きそうだった。
そこで思い出した。
横にもあぶれてそうな奴がいるではないか・・。
「なぁ和人?」
「ここではマナーでキリトと呼んでくれ。んで、なんだった?」
「悪いキリト。パーティーを組まないか?」
「・・・あぁ。」
「なに。あそこに一人でいる奴も誘って三人で暫定的に組めばいい。」
「そうだな。」
俺と和・・キリトは未だ一人でいるプレイヤーに声をかけにいった。
雰囲気的に女か。
彼女を誘うと彼女は暫定的に・・という条件でパーティ申請を承諾した。
彼女は《Asuna》・・アスナというらしい。
なんでわかるかって?
書いてあったからだ。
「よ~し、そろそろ組終わったかな?じゃあ――「ちょっ待ってんかーー!!!」」
ディアベルが話を進めようとしたところで後方から声が上がった。
声のしたほうを振り返ると妙に頭がトゲトゲしたおっさんが立っていた。
・・・・背中に太陽の光を背負って。
彼は階段を三段飛ばしで降り、着地すると口を開いた。
「ワイはキバオウってもんや。ボスと戦う前にいっぺん言わせてもらいたい事がある!」
けったいな関西弁なんか使って。
・・・・・やかましい・・・。
「こん中に、今まで死んで逝った2000人に! 詫びいれなあかん奴らがおるはずや!」
キバオウは全員を指差すようにしていった。
キリトの表情が微かにだが険しくなった。
「キバオウさん、君の言うアイツらとはつまり、元βテスターの人達の・・・こと・・・・かな?」
キバオウの言い分はこうだった。
βテスター達が初心者を置いて先に進み自分達だけ甘い蜜を吸い、初心者を助けず見殺しにしたと。
さらにその謝罪として土下座と手に入れた金品を全部差し出せ、そうでなければパーティメンバーとして命を預けたくないし、預かりたくないと言った。
「(心配すんな。俺もお前さんの命は預かりたくない。)」
単に関わると面倒くさそうだから。
「発言いいか?」
俺たち三人よりも前列、中段あたりに座る屈強そうな禿頭が手を上げた。
あ、禿って言ったら失礼か・・?
「オレの名前はエギルだ。キバオウさんはβテスター達が初心者を助けず見殺しにした。だからその謝罪と賠償をしろって言ったんだよな?」
「そ、そうや。」
怖いよね。
だってめちゃくちゃでかいもん。
エギルはその後、ガイドブックという情報の載せられた本が、無料配布されていること。
また、そのガイドブックが元βテスターの手によって製作、配布されていることを告げた。
そしてエギルは続けた。
「いいか、情報は誰にでも手に入れられたんだ。なのに、沢山のプレイヤーが死んだ。その失敗を踏まえてオレ達はどうボスに挑むべきなのか、それがこの場で論議されると、オレは思っていたんだが・・・な。」
それを聞いて会場の雰囲気が変わったことを悟ったキバオウはふてぶてしく、どかっと腰掛けた。
ちなみにエギルはその横に腰掛けている。
そして俺の隣では、キリトが小さくため息をついていた。
「良し、それじゃあ再開してもいいかな?」
ディアベルの言葉に全員が頷き、その無言の肯定に対し、ディアベルもエギル同様腰からガイドブックを取り出した。
「ボスの情報だが・・・実は先程、例のガイドブックの最新版が配布された。」
会場にどよめきが起こる。
そしてディアベルはガイドブックの情報を読み上げた。
「ボスの名前は《イルファング・ザ・コボルトロード》。それに、《ルインコボルト・センチネル》という取り巻きがいる。武器は斧と
ボスの説明はこれくらいで、キリトもβのときと同じだといっていた。
まぁ俺だけでも、武器が違うという可能性を考えておくか・・・。
何事も常に最悪を考慮しておくべきだしな。
「OK、では一先ず解散しよう。僕のパーティは摸擬戦の場所と鍛冶屋を探す。君達は各自パーティ内で十分に親睦を深めてくれ!そして、明日のこの時間にまたここに集合! では――解散!!」
というわけで、第一層ボス攻略会議は幕を閉じた。