─── 十二月某日
いつもと変わらない適度に天候の整った冬の日だった。
もっとも、死のゲームとなった《SAO》に天候の善し悪しという概念があるかどうかは些か不明瞭ではあるが・・・。
そんな空を見ながらステータスの確認をしていたアズサはふとある所に気付いた。
「あぁ?
アズサには全く持って見覚えの無いスキルが二つほどあった。
アズサに見覚えが無いのも仕方が無い。
彼は二ヶ月ぶりにこの《スキルウィンドウ》を開いたのだから。
「普通のスキルじゃないみたいだし・・・。」
ここで彼は、《ユニークスキル》を疑った。
確かにユニークスキルであれば、見たことの無い名前でも納得できる。
ユニークスキルとは、とある条件をその時一番初めに満たした者が
現在、アズサ・・というかプレイヤーが知っている中ではこのゲーム最強のギルド《血盟騎士団》のギルドマスター、そしてこのゲームで最強のプレイヤーといわれている《ヒースクリフ》が使用しているユニークスキル《神聖剣》。
このスキルが、ゲームマスターにより管理されているのか、一定の基準に従ってゲームシステム・・・このゲームの場合の《カーディナル・システム》がその基準に達したものに自動付与しているのかは分からないが、ユニークスキルの二種同時獲得している時点で、アズサは明らかに普通では無いだろう。
彼は考えた。
まず《瞬光剣》なるものは恐らく、その名の通り純粋に
そして、アイコンの左右一対の剣が交差している様から
そうすると、スキルポイントを敏捷性一択で無いにしろ、かなりあげてあったアズサがこのゲーム中で最も高い敏捷値を備えた上で、双剣を用いているおかげでこのスキルを得ていたとしてもなんら不思議ではない。
そしてこのスキルは、プレイヤーの速度に関係するものだと考えられる。
が、問題は《星弓》。
仮に《弓》のスキルだとして、このゲームには、
あったとしたらそれは大問題。
それは、大前提として存在するこの世界の存在意義そのものを揺さぶるものである。
なぜなら、剣と己の心身しか存在しない《
剣の間合いに入りきる前に、胸や頭を矢で射抜いてしまえばよいのだから。
そして疑問はどういった経緯でアズサがこのスキルを得たのか?ということも・・・
まぁアズサは大方投擲スキルだろうとあたりはつけているが。
ぶっちゃけ反復練習こそ全てだから、新しい技を使いこなすためにはとにかく使ってみないことにはどうしようもないと、アズサは第45層へと向かった。
◆ ◆ ◆
というわけで、俺は第45層に来た。
草原エリアに到着した俺は早速一対の双剣、《双刃 剛・柔》を抜き放つ。
まず、《瞬光剣》の双剣下位ソードスキルである、《フェイタル・ピアッシュ》を発動させるため、左腰に2本を揃えて剣先が正面を向くように構える。
まず突っ込みたいのが、なぜ刺突技・・?
・・・・まぁ、どうでもいいけど。
すると藍色のエフェクト光を放ち、システムアシストにより俺の腕は正面へと狂い無い動きで放たれた。
「なるほどなぁ・・・。」
決して悪くは無いが、いまいち決定打にかける気が・・・。
単発重攻撃ソードスキルを使うことなんてそんなに無いと思うからいいか・・・?
次いで、中位3連撃ソードスキル《デルタ》を放つ。
《デルタ》は左上、右上から交差するように切り下ろし、次にそれを跳ね上げ、最後にまっすぐ下に切り下ろすという技だ。
ただし、最初の切り下ろしがヒットしなければ、途中で中断可能という掟破りなスキルでもある。
通常、スキルはいったん発動すると、システムアシストにより最後まで強制的に体が動かされる、という常識を覆すものである。
「まぁこんなもんか・・・・。」
その後も俺はソードスキルの練度を上げることに没頭し、気付くとあたりには夜の帳が訪れていた。
◆ ◆ ◆
─── 2024.2.23
アズサは第35層、迷いの森にいた。
理由は後で分かるはずだから、今は省略する。
迷いの森はこの層の北部に広がる森林地帯。
『迷いの森』という名前の通り、立ち並ぶ森は碁盤目状に数百のエリアに分割され、1つのエリアに1分いると東西南北の連結がランダムにされてしまうという仕組みがある。
彼は何度もここに(レベル上げに)来たことがあるので、余程のことがなければ迷うことは無い。
その迷いの森の中を歩いていると、どこからかモンスターの雄叫びが聞こえてきた。
「なんだ・・?」
アズサは声のしたほうに走る。
と、そこにはちょうど消滅する瞬間の小さな青い竜と、それを泣きながら抱えている少女、そして今にも襲い掛からんとするゴリラ?がいた。
よくみると、少女のHPは既に
アズサはそのゴリラもどきに接近して背後から三匹をほぼ同時に切り裂いてHPゲージをゼロにした。
そして、ポリゴンとなって消滅。
ゴリラのほうを振り返っていたその少女は目を丸くしてソードスキル発動直後の藍色に輝く双剣を携えた彼のほうを凝視した。
そして、明確な《死》の恐怖から開放されたことによるものか、今まで溜めるとどめていた涙が堰を切ったように溢れだし、泣き出してしまった。
「ピナ・・・・。私を一人にしないでよ・・・・。ピナぁッ・・!」
アズサは座り込んだ彼女のひざのところにある一枚の輝く羽に気付いた。
「その羽は・・?」
「・・・ピナです・・・・。私の・・・大事な・・・・。」
彼はふと思い出したことを口にする。
「・・・ビーストテイマーだったのか。」
そして申し訳なさそうにこう告げた。
「すまない。・・・君の友達を・・・助けられなかった。」
「いえ・・・。私が思い上がっていたんです・・・。一人で森を抜けられるって・・・・・。」
「・・・・ッ。」
「助けていただいて・・・・・ありがとうございます・・・。」
アズサは少女に歩み寄る。
「その羽にアイテム名は設定されていないかい?」
「え・・・?」
彼がそういうと少女は羽に視線を落とす。
── ピナの心
それを見た瞬間、また少女は泣き出してしまう。
「・・ちょ!泣かないで!」
「・・・・・。」
「それならまだ、ピナには蘇生の可能性がある。」
少女は勢いよくこちらを振り向いた。
「!?本当ですか!」
「うん。47層の南に《思い出の丘》というフィールドダンジョンがある。その天辺に咲く花が使い魔蘇生用のアイテムになっているらしいんだ。」
実際は確証ある情報だ。
その手の情報屋で、価格はかなりあれだが間違いない情報を仕入れる奴を俺は一人知っていた。
この情報はその人物から大分前に教えてもらった情報である。
「よかった・・・・。でも、47層・・・・。」
「別に俺が行ってきても全然かまわないんだけど・・・・。君が行かないと、意味が無いんだよなぁ・・・。」
「いえ!情報だけでもありがたいです。いつかきっと・・・・」
「蘇生可能なのは死んでから三日間だけなんだ・・・。」
「そんな・・・。私のせいで・・・。」
俺は立ち上がる。
「いや。まだ三日もある。」
そしてアイテムストレージを操作し始めた。
少し前にキリトと会って、「これはお前にやるよ」といわれた装備が一式あった。
・・・・・何故かほとんど女性用装備だったが・・・。
確かに俺もお前に負けないくらい女顔だし、身長はお前より1cm低いけどな・・・!
なんかイラッと来たから、ひとしきり《
もちろん装備は全ていただいた。
そこそこいいものだったし、あって困るものでは無いだろうと思い、ずっと取ってあったのがこんなところで役に立つとは・・・・。
俺は黒い刀身のイーボンダガーをはじめに送る。
あとはまぁ、全てレアアイテムとだけいっておこう。
「なんで・・・そこまでしてくれるんですか?」
少女が立ち上がり怪訝そうな目を俺に向ける。
・・・まぁ疑う気持ちは分からんでもない。
もともと女性プレイヤーが少ないこのゲームで、男達が親切にしてくれるときは大体裏がある。
ましてここはハラスメントコードなどの《アンチクリミナルコード》が発動しない《圏外》だ。
女性プレイヤーからしたら恐怖の対象でしか無いだろう。
だがな・・少女よ・・・・。
俺をその辺の有象無象と一緒にしてもらっては困る。
「いっても笑わないって約束してくれるなら言う。」
「笑いません。」
「君が・・・その・・・・。」
「??」
「友人の妹と俺の妹に似ているから・・・。」
しばしの沈黙の後・・・
「ふっ・・。はははっはははっ!」
言わんこっちゃ無い・・・。
俺は視線をそらして後ろを向く。
「ごめんなさい。」
その後彼女はお金を払おうとするが、俺は止める。
「いいよ。俺が来た目的もあるし。」
「そうですか・・?・・・あ、私はシリカって言います!」
「俺はアズサ。」
「アズサさん。」
これがシリカと俺の出会いである。
ユニークスキルが、一つ限定・・という前提がある場合は矛盾してしまっていますが、ここは見逃していただきたく思います。
ちなみに、主人公の妹は現実世界の
直葉とは違い、ブラコンでは無いですが、大切には思っており、傷つける人は許しません。
名前は
登場は後日。
・・・さぁ、勘のいい人もそうで無い人も、ヒロインの正体が分かりましたかね。