巡洋艦矢矧戦記~宇宙戦艦ヤマト完結編外伝   作:筑波

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約一年ぶりとなってしまいまいたが、ついに発進です。


第四章 発進

2205年 3月29日 月基地第7ドッグ「矢矧」艦内

 

「全艦、発進準備にかかれ」

「矢矧」第一艦橋内に西山の声が響き発進命令が下された。同時に「矢矧」とその指揮下にある各艦の艦内では発進準備に伴う各部署の総チェックが行われ、艦長席正面に設けられているディスプレイに表示されている「矢矧」の艦型図に続々と問題が認められない事を意味する緑色のランプが点灯していく。

「こちら戦闘班。火器管制システム及び魚雷発射管異常無し」

「こちら通信班及び生活班。コスモレーダー及び亜空間ソナーに異常は認められません」

「こちら航海班、航法システム及び次元羅針盤に異常無し」

「艦長、艦内全機構に全て異常はありません。七宙戦各艦も全艦発進準備完了致しました」

艦内全部署から「異常無し」の言葉を聞き、飯田が西山にそれを報告した。

「よし、補助エンジンスタート。艦を出撃用バースへ入れろ。それから今はこの地球圏でさえも.敵がいる可能性が十分に考えられる。全艦戦闘配置のまま出港、発進準備を行ってくれ」

「了解。補助エンジンスタート、メインエンジンへエネルギー注入開始。シリンダーへの閉鎖弁オープン」

西山の号令と共に艦内では総員戦闘配置を意味するアラートが鳴り響き、艦底部近くに位置する機関室からマイクを通して機関長の松本信二二佐の声が聞こえ、それから機関が無事に起動した事を意味する機械的な作動音が唸り始めた。

 

「七宙戦旗艦『矢矧』より月基地発進オペレーターへ。発進、出撃用バースへのアクセス許可を求む」

 

「こちら月基地出港管理局。了解しました。発進バースへのアクセスゲート進入を許可します。」

 

通信班長の前田とオペレーターのやり取りが終わると共に艦橋の正面窓から見えるドッグの閘門がゆっくり開いていくのが分かった。

 

                セブンス・ゲート オープン セブンスゲート・オープン…

 

機械的な英語のアナウンスがドッグ内に響くと共に 「矢矧」を載せた船台がゆっくりとした速度で前方へ移動して行く。

やがて暗く狭かったドッグから出撃用バースへ出ると大きく開けた空間が現れる。艦外に設置されている小型ビデオカメラを通してメインパネルに投影されている映像から「矢矧」の左右両弦にそれぞれ位置するドッグから七宙戦各艦と土星沖の生き残りの駆逐艦二隻の姿が引き出されている姿を確認できた。

「出撃用バースへ進入。発進エレベーター上昇開始」

それぞれのドッグから出撃用バースに引き出された艦はそのままバース底面に埋め込まれているエレベーターが発進口となる月面へと運んで行く。頭上を覆う荒廃した月面を装った偽装は発進の障害にならないように左右に大きく展開されるのがメインパネルから確認できた。バースから地上までの距離はおよそ10㎞。15分もすれば到着するだろう。

「メインエンジン内圧力上昇、続けてメインエンジンへの接続準備。フライホイール始動」

艦が上昇して行く中発進シークエンスは滞り無く進められ、しんと静まり返った艦橋内ではマイクを通した松本のダミ声だけが響く。もう間もなく月面の筈だ。

「波動エンジン点火10秒前、9、8、7、6…」

エレベーターは地上へ到達し、広大な漆黒の宙海と荒涼な月の大地が眼前に広がった。軍人生活約30年、発進は幾度となく経験してきたが一隻の軍艦の艦長として始めてとなる実戦下での発進だ。艦を固定するガントリーロックが次々に解除され、ついにその時は来た。

 

「抜錨!『矢矧』発進!」

 

西山の大音声と共に航海長である青木義彦二佐が目一杯操縦桿を引いた。艦尾のメインノズルが徐々に光を増し、限界まで明るくなったと思われたその刹那、艦底部の姿勢制御スラスターをわずかに吹かし艦首を若干上にもたげた「矢矧」は噴射炎をたなびかせ猛然と月面を飛び出した。第一世代型戦艦並みの巨躯を誇る「矢矧」だが、その質量は戦艦のそれよりも遥かに小さい。高出力を誇る波動エンジンにより発生する加速Gは西山を始めとした第一艦橋要員が各々の席で踏ん張らなくては耐えられない程の物であった。月面を飛び出した「矢矧」の少し後ろでは七宙戦の各艦も単縦陣で続いて行く。月基地地下司令部のモニターに月面に設置されているカメラを通して司令部幕僚に見つめられながら「矢矧」と七宙戦は敵が待ち構えている暗闇の宇宙へと旅立っていった。

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