二つの精霊といるは一人の少年
盤を構える姿に気力は無く
ただあるものは
現実を見る眼のみ
『試験番号16番、
そろそろ、か……
どうせ楽勝だし、手を抜いたっていいよな?
[駄目ですよ、蓮
常に全力で行ってください]
[いやいいだろうが
雑魚相手に本気を出すまでもない]
……今回はティラスの意見を採用
楽勝でも確実に勝たないといけないからな
[ありがとうございます]
[ちぇっ、つまらねぇな]
黙れよ、アドレウス
今回はティラスの意見を採用しただけだ
普段ならお前の意見を採用してる
[蓮、アドレウスを甘やかしてはいけません]
ティラスもむきになるな
甘やかしてるわけじゃないから安心しろよ
[まぁとにかく、行くか!]
……だな
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
さて、説明をしないといけないな
事の発端はひと月くらい前だったか
詳しくは覚えていないが、何の違和感もなく、ナチュラルにこの世界へトリップしてしまった
ぶっちゃけ説明が面倒だからほとんど端折るが、大雑把に説明するとこんな感じだ
1、普通に睡眠
2、普通に起床
3、目が覚めたら……体が縮んでいた!
4、机の上にはデュエル・アカデミアの入試案内があった
5、仕方がないので受験
6、そして現在
俺の後ろにいる2匹の精霊――始祖の守護者ティラスと終焉の守護者アドレウス――の説明はまた今度でいいだろう
また説明する機会なんていくらでもあるだろうし
今の2匹は、所謂「天使」と「悪魔」そのもの
2つの選択肢を与えてきて、どっちかを選ぶ
基本的に自分の利益しか考えない俺だから、俺にとって都合がいい方しか選ばない
ちなみに、前世のカードとアニメオリジナルのカードとが全て家にはあった
トランクに詰めてあるから、いつでも配送OKだ
現在携帯しているデッキは10個で、あとは一応家にある
家にも10個ほどあるが、ネタの域を出られない代物だから放置
さすがにシンクロとエクシーズはやめるかとも考えたが、カードが肉体を乗っ取ったり、異世界に飛ばされたり、ダッシュしながらデュエルするような世界なので、万が一のために作っておいた
当然、ティラスとアドレウスの専用デッキもある
このくらいなら、だいたいご理解いただけただろうか?
ならば試験官を倒しに行かせてもらう
さっさと戦わせてくれ
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
「試験番号16番君、だね?」
「小暮蓮です
名前があるので番号はやめてください
囚人みたいで嫌です」
「口答えをしないでもらえるかな?」
「お断りします
さっさと始めてください」
「~~~~っ!
なら始めよう!
「
試験官LP4000
小暮蓮LP4000
よし、怒りを買うことに成功
これで行動が単調になって戦いやすい
「先攻はもらおう!ドロー!
《ブラッド・ヴォルス》を攻撃表示で召喚!
カードを2枚伏せて、ターンエンドだ!」
《ブラッド・ヴォルス》 ATK/1900 DEF/1200
社長のモンスターか
恐らくは一般的なビートダウンだろうが、一応【ビースト】警戒だな
[いや、そりゃないだろ]
保険だ、保険
想定外すらも想定の範囲内に留めておくべきだ
「俺のターン、ドロー」
このデッキで良かったのか?
まぁ今さら変えるのは無理だから割り切るか
「魔法カード、《一時休戦》を発動
お互いにデッキからカードを1枚ドローします」
そう説明した後に、お互いにドローする
ドローしたカードを見て試験官は笑っていたが……試験官的にいいのか?それ
「さらにフィールド魔法、《湿地草原》を発動します
モンスターをセットし、永続魔法、《スライム増殖炉》を発動します
カードを3枚伏せてターンエンドです」
「伏せカードばかりで……事故でも起こしたか!?」
うるせぇ
聡明な読者諸君ならお分かりの通り、このデッキは【スライム増殖炉】と【湿地草原】の複合型だ
《ブラッド・ヴォルス》程度じゃ傷一つ付かないデッキなんだが……
試験官は頭が残念だったかな
「ドロー!
私は《激昂のミノタウルス》を攻撃表示で召喚!」
《激昂のミノタウルス》 ATK/1700 DEF/1000
「《激昂のミノタウルス》が存在する限り、私の獣族・獣戦士族・鳥獣族は全て、貫通効果を得る!
バトルだ!《ブラッド・ヴォルス》でセットモンスターに攻撃!」
セットモンスター→《ペンギン・ソルジャー》 ATK/750→1950 DEF/500
小暮蓮LP4000
「《ペンギン・ソルジャー》のリバース効果を発動
フィールド上に存在するモンスターを2枚まで、持ち主の手札に戻す
この効果で《ブラッド・ヴォルス》と《激昂のミノタウルス》を手札に戻します」
《ペンギン・ソルジャー》は既に戦闘破壊されることが確定しているために選択できない
実に残念ではあるがな
「な、なぜ、ダメージを受けていない!?」
試験官が驚いた表情で聞いてくる
なぜダメージが無いのか?
……あ、《一時休戦》の説明を忘れていたな
「《一時休戦》はお互いが1枚ずつドローする他に、次の相手ターンの終了時までお互いにダメージを一切受けないという効果がある
つまり、今の試験官さんのターンが終わるまではお互いにあらゆるダメージを受けないんですよ
これにより、貫通ダメージも無くなったんです」
ここまで言って理解できない奴はアホだ
一回、果てたほうがいい
「た、ターンエンドだ……
(しかし伏せカードは《リビングデッドの呼び声》と《聖なるバリア―ミラーフォース―》
負けるはずがない……!)」
ニヤニヤしてるの、バレバレなんですけど
どうせ聖バリあたりでも伏せてるんじゃないの?
すぐに対処できるけどさ
「ドロー
私のスタンバイフェイズ時、《スライム増殖炉》の効果で《スライムモンスタートークン》を1体、攻撃表示で特殊召喚します」
《スライムモンスタートークン》 ATK/500→1700 DEF/500
「さらに伏せカード、《暴走闘君》を発動します
この効果で、トークンの攻撃力は1000ポイントアップし、戦闘破壊はされなくなります」
《スライムモンスタートークン》 ATK/1700→2700 DEF/500
「《スライムモンスタートークン》で試験官さんに直接攻撃」
「(かかった……!)
伏せカードオープン!《聖なるバリア―ミラーフォース―》!
これで試験番号16番君のモンスターはすべt……」
「リバースカード、《トラップ・ジャマー》を発動します
これでバトルフェイズ中に発動された《聖なるバリア―ミラーフォース―》を破壊します」
だんだんと青ざめていく試験官の顔
ポーカーフェイスを忘れちゃいけないだろうに
「攻撃は続行されます」
試験官LP4000→1300
「私はカードを1枚伏せ、ターンエンドです」
「私のターン、ドロー!
……《ブラッド・ヴォルス》を守備表示で召喚」
《ブラッド・ヴォルス》 ATK/1900 DEF/1200
「ターンエンドだ……」
「ドロー
スタンバイフェイズ時、《スライムモンスタートークン》を特殊召喚」
《スライムモンスタートークン》 ATK/500→1700→2700 DEF/500
「《スライムモンスタートークン》で《ブラッド・ヴォルス》に攻撃
もう一体の《スライムモンスタートークン》で直接攻撃」
スライムの突撃により、斧を携えた獣はポリゴンとなり砕け散った
そしてもう一体が試験官へタックル
試験官LP1300→0
よろめいてるけど、あれはキャラだろ
つーかこの世界の住人はどうかしてるぜ!
「ありがとうございました」
そう言った俺はそそくさとフィールドを降りる
……今さらだが、入試試験なのにこんなに観衆がいていいのか?
別に俺自身は気にしないが、見られることに慣れていない人間はどうする気だ
社長、そこは考えてあげましょうよ
[随分と甘いですね]
何がだよ
[俺もティラスと同意見だ
伏せていた残りの2枚、どっちも暴走闘君だっただろ?]
[最初に直接攻撃した際は300残りましたが、オーバーキルしても良かったのでは?]
なんだ、そんなことか
この世界じゃオーバーキルなんてしたら目立つじゃないか
だからやめただけだ
[[なるほど]]
さて、結果が楽しみだ
できることなら主人公とは関わりたくないからな
ラーイエローがいいや
さすがにオシリスレッドは無いよな
次回
期待をするは一人の少年
全てを悟るは二つの精霊
憎らしい笑顔を打ち砕くべく
ぶつかり合うは
第2話『英雄対決』