ONE PIECE ~探しもののけ物語~   作:紅卵 由己

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 こういう物語があっても、良いと思います。


~探す少年~

 世の中には、色々な『探し物』をしている人たちがいると思う。

 

 見る目に輝きを放つ先人の遺し物-―財宝とか、自分が尽くしたいと思える人間――異性同士なら恋人とか、他にも色々あるとは思うけれど、そのどれもが何らかの『望み』を叶えるための物である事が多い。

 

 その中でも一番の筆頭とされる物は、やっぱり時代を大きく変えた『とある人物』の死と共に告げられ、同時に多くの『海賊』を生み出したとされる『ひとつなぎの大秘宝』だと思う。

 

 人と人を繋ぐから『ひとつなぎ』なのか、それとも何かを確実に薙ぐことが出来るから『ひとつなぎ』なのか、どういう意味で『ひとつなぎ』と付けられているのかは、きっと大秘宝を見つけた(かもしれない)死んだ人間しか知らないのだろう。

 

 知らないからでこそ、人はそれを知りたがり、やがては欲し、そして奪い合う。

 

 きっと、その秘宝の正体が明るみに出たら、好奇心(ロマン)を失った一部の『海賊』は意欲を失う可能性だってある。

 

 全ての謎を含めて遠く遠い海の向こう側に置いてきた男が作り上げた、ある意味においては人間の知的好奇心や欲望を扇動する仕組み。

 

 だけど、それは世界中の中の一部の人間の中に爽快感や刺激を求める心があって、それを発散させる一番単純な手段が『自由を得る』事だったから、世界には『海賊』が蔓延したのだろう。

 

 もしかしたら必然かもしれないし、もしかしたら偶然かもしれない。

 

 元々『そうなる前』の時点でそういう『海賊』を捕まえて閉じ込める『海軍』……そして、世界中の政治(ルール)を総括する事で治安を維持している『世界政府』が存在していたらしい。

 

 その力は強大で、実際のところ先人の作り上げた仕組みに反抗してでも悪名を轟かせようとする人間が増えた理由も、僕には想像も出来ない。

 

 でも、きっとそれが『人間』なのかもしれない。

 

 みんながみんなで自分の望むことをやって、ある時には幸せになってある時には苦しんで……そうやって世の中っていうのは回っているんだから。

 

 自分が生まれるよりも先の時間で生まれたルールに反抗しようとするのも、ただ普通に生きているだけでは何も満たされないと感じてしまったから。

 

 仕方無い、と納得出来るほど軽いものでもないとは思う。

 

 だけど、僕だって最低限の『一線』を越えてしまわないようにしているけど、きっと自分が抱く『目的』を果たす過程で『悪行(それ)』が必要になってしまったら、どうしてしまうのかが分からない。

 

 他人を批難したり出来るほど立派な人間なのかと問われたら、きっと首を横に振る。

 

 そもそも、何をもって『立派』なのだと呼ばれるのかさえ想像が付かない。

 

 ……結局、そうして分からない事だらけの自分を受け入れながら、それでも行くしか無いんだろう。

 

 そうしないと、きっと、死ぬ事以上の後悔に苛まれる事になってしまう。

 

 そう、思ったから。

 

 だから。

 

 

 ◆ ◆ ◆ ◆

 

 

 世界の7割ぐらいは蒼い『海』で構成されているらしい。

 

「……うむぐぅ……」

 

 此処は、世界地図にて西側に位置する区域――『西の海(ウエストブルー)』に浮かぶ島々の内の一つで、数刻前ほどから『彼』が困り顔で呻きにも似た奇怪な声を漏らしながら突っ立っているのは、その端に見える港に船を寄せておくための橋の上だった。

 

 港というキーワードが出ている時点で当然とも言えるが、この島には列記とした人間の住まう『街』が存在していたりするのだ。

 

 そして『彼』が困っている理由は、どちらかと言うとその『街』の方ではなく、地平線の向こう側よろしくな『海』の方にあって。

 

 つまるところ、とてもとても間抜けっぽいのだが。

 

「……まさか、思いっきり寝過ごして乗船時間を取り逃すなんてなぁ……」

 

 よくある『指定の時間に間に合わない』事に対する、ある意味でベスト4ぐらいに入りそうな理由だった。

 

 それでも、現代の機器を上手く使えば回避出来る出来事ではあるので、ほぼ完全に『彼』の自業自得なのだが。

 

(……どうしようかな。特に目的があるわけでも無いし、適当に野山とかで食料を確保していくのがいいと思うんだけど……)

 

 正式名称で『ヒマリ王国』と呼ばれるこの島は、名前に似た――というよりはそれに順ずる形で付けられたのだろう向日葵(ひまわり)が自然増殖されていて、緑色もそうだが黄色の比率がかなり多めで、島らしい。

 

 尤も、この島を『通過点』としか見ておらず、特に居住まい続ける理由も見当たらなかった『彼』は、着いて早々に体を休め、次の島に向かう船に乗せてもらう予定だったのだ。

 

 それが、思いっきり狂ってしまった(主に当人が原因で)。

 

 幸運とも言える事は、『彼』自身が時間に対して然程重要性を感じておらず、特に急いでいるわけでも無かった事。

 

 そして何よりの不幸は、そもそも『彼』が()()()()()()()に当たって大したお金を持っているわけでも無く、そんなわけで当然自分で扱える『船』を保有していなかった事だろう。

 

 今の世の中、広く大きな海原を渡る術と船を持っている人間は、然程珍しいわけでも無いのだが……。

 

(……どっちにしてもお金が掛かり過ぎる。だからと言って『危ない橋』を渡るのも嫌だし、今の残金で島と島を行き来するためにはあの船に乗る必要があったんだけど……)

 

 面積の関係からか小さな村や街だけで独立した島もあるらしいが、一般的には800年ほど前に設立されたらしい『世界政府』と呼ばれる国際組織に加盟、援助を受ける事によって食料や物資を供給してもらっている『王国』が世界の多くを占めている。

 

 なので当然、物資や食料などの供給源として貿易船、そして民間人や旅人をお金と引き換えに旅客船が存在しているのだ。

 

 生身で海を泳ぎ切ろうなどと考える輩はまず居ない。泳ぎ切る前に体力が尽きて溺れ死ぬか、そもそも海に生息している『怪物』たちのエサにされてしまう可能性の方が圧倒的に高く、誰もが安全性の確保された『船』を調達してから海に出る。

 

 実際は『船』の他にも必要とされる物が大量にあるのだが、それを取り扱えるだけの技術も『彼』には無い。

 

 青い海が延々と広がるこの世界で一人旅をするには、足りない物があまりにも多すぎる。

 

 それでも『彼』には、旅を続けないといけない特別な『理由』があった。

 

「……一人旅って上手いこといかないものだなぁ。ちょっとのうっかりで、こんな事になっちゃうんだから」

 

 そんな事を言った折、一人で海を眺めながら突っ立っている事か、あるいはその服装に珍しさでも覚えたのか、一人の太めな男が近付いてきた。

 

 ちなみに『彼』の服装は上が薄緑色で袖無しのシャツに、下が薄い茶色の半ズボン――材質を見るにどちらかと言えばカットジーンズという常夏の砂浜に出没するおっさんとかが着ていそうな組み合わせである。

 

 それ自体はそんなにおかしいわけでも無いのに目立っているのは、やはりその衣服自体が何日も使い続けているからなのか、使い古しというか貧相なイメージを浮かべやすい状態だからだろう。

 

 袖無しのシャツはよく見るとハサミか何かで切ったのか、縫って補正した跡も無い切断面が存在している。

 

 カットジーンズの方も、何故か大事な部分を隠すためのチャックが付いている前面の方を、何故か後方になるように履いている。

 

 手荷物はポーチバッグやリュックサックに入れてるわけでもなく、黒い布で包んで丈夫そうな木の枝の先端に括り付けているらしい。

 

 ……そして、何より特異なのは、そんな格好をしている『彼』の容姿が成人もしていないただの子供だという事だ。

 

 旅をしている人間の容姿としては、少しばかし幼すぎるような気がする。

 

 だから、男はこう問いを出した。

 

「坊主、親は一緒じゃねぇのか?」

 

「一緒じゃないよ。顔も思い出せないぐらいだし」

 

 問答は続く。

 

「そんなナリで旅なんてしてると、命がいくつあっても足りねぇぞ」

 

「知ってるよ。でも僕はここにいる」

 

「見るに十代前半ってところか。『海賊』とかは怖くねぇのか?」

 

「怖いよ。でも、それで諦められる事では無いから」

 

 されど、シンプルな問いにはシンプル――と言うよりは必要最低限の返答しか来ず、そもそも『彼』は海の方だけを見ていて男の方へは一度も振り向こうともしなかった。

 

 だから男も、反抗期の家出少年かなと適当な判断で結論を導き出し、持ち場に戻るその直前に一つだけ質問した。

 

「お前さん、名前は?」

 

「カザミ。どうせ近い内にこの島からも去ると思うし、忘れてくれてて構わないよ」

 

 その少年――カザミは男との会話を終えた後も、しばらく青い海の向こう側を眺めていた。

 

 ただ立っている事に疲れでも感じたのか、やがて座り込むと待ち遠しそうに溜め息を吐き、そして。

 

 

 

「……僕の『記憶』は、何処に行けば戻るのかなぁ……」

 

 

 彼の求めているものは、何よりも誰よりも身近にあったはずのもの。

 

 かけがえの無い思い出の欠片(ピース)を探すために海を渡り続け、やがては辿り着きたい場所がある。

 

 例え困難だと理解していても、ちっぽけで下らない願望以上の価値が無くとも、それが『自分』には必要なものだと思ったから。

 

 

 

 

 




 どうも、とある筋で頂いたメッセージを真に受けて『ちょいと書いてみるか~』みたいな軽い気持ちで事前に構想していたストーリーと設定で書き始めたら止まらなくなって後には戻れない所に来てしまった系の作者です。

 ……率直に言うと『ONE PIECE』という作品で二次創作小説を書く事を、当時は現存している連載作品の数から遠慮していました。

 他に書いている作品のジャンルにハマるよりも、実際は中学の時とかにはワンピ関連のゲームとかにハマっていたんですけれど、そもそもその頃はこうして二次小説を書こうとした事さえありませんでしたし、ワンピの二次小説に関しても当時存在していた『にじファン』というサイトで主に読んでいたぐらいでしたので。

 何より、自分は『原作キャラ』を扱う事が苦手なタイプの作者です。

 だからと言いますか、原作沿いだったり神様転生からチート無双の流れとかの話よりも、『もしかしたら居るかもしれない』という発想で作ったオリジナルのキャラで、それでいて『原作の設定』だけを借りて書く事の方が書きやすいんです。

 ……ここまで弱気なコメントを書いて置いてなんですが、文才がどうのとか、下手なのでご了承くださいなんて、野暮な事を述べるつもりはございません。

 自分が書きたいと思った話を、自分で悔いが残らないように書いていこうと思ってます(他の作品と同時連載という関係から更新速度はお察しになりそうですが)。

 なので感想・質問・批評などは常に歓迎しております(むしろ参考になりそうなコメントとか本当に助かります)。

『ONE PIECE』の二次創作小説としては主人公が『海賊』では無いって時点で少し変わった物語になりそうですが、実際のところ『探し物』というキーワードは原作の時点で題材に上がっているんですよね。

 あ、ちなみにこの話はプロローグですが、既に次の話は完成しているので、直ぐに投稿致します。

 では、また次のお話で。
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