とはいえ、基本的に幻想郷を周るだけの話なので作者が力尽きた所で、
『その後、八雲とパイは幻想郷のあちこちをまわり、旅を満喫して元の世界に帰りました』で終了となりますw
もし優先して行って欲しい場所等がありましたら行っていただければ参考にさせていただきたいと思います。一応、ほぼ全ての箇所に対してエピソードは考えてあるので。
幻想郷。それは忘れられし者達の楽園。今より語るのはその楽園を訪れた一組の男女の旅の物語である。
「あー、暇だね」
「あんたは何時もそんな感じじゃない。まあ最近は異変も無いし確かにやることもないけどね。参拝客も来ないし。って、あれ?」
博霊神社、幻想郷の中核を担い、外と隔てる結界を司るその場所の境内でそれぞれお茶と酒を飲みながら日向ぼっこしている二名の姿があった。巫女の博霊霊夢と鬼の伊吹萃香である。その内、霊夢の方が何かに気づいたような仕草を見せる。
「んっ、どした?」
「何か、結界に反応があったのよ。誰か外の世界から入って来たみたい」
博霊結界に何かが触れた感触。それは進入の気配だった。その感覚を証明するかのように程なくして、神社の階段を登り、境内に上がってきた一組の男女の姿が霊夢の視界に入る。両者とも黒髪で見た目は人間ならば中高生位に見えるが、その見た目が実年齢に当てはまるとは限らない。何故ならば二人からはあるものが感じ取れたからだ。
(二人とも妖気が感じられる。妖怪の夫婦かしら?)
「こんにちは、ここの巫女さんですか?」
「ええ、そうよ。二人は移住希望かしら?」
挨拶し尋ねて来た男に対し、回答すると共に質問を投げ返す霊夢。今の時代、幻想郷の外の世界に人外の居場所は少ない。そのため日本国内の妖怪は勿論のこと、海外から移住者が訪れることは珍しくなかった。特に最近は幻想郷のパワーバランスに影響を与える程の実力者が数多く移住してきている。目の前の二人もそんな移住者、ただし実力はそれ程でも無い。霊夢はそう判断する。
ところがそこで彼女は予想に反する言葉を受け取ることとなった。
「いえ、こっちには旅行のつもりで来ました。俺は藤井八雲。こっちは……」
「藤井パイだよ!! 八雲の奥さん!」
「えっ?」
妖怪の夫婦であったことは予想通りであった。しかし二人は驚いたことに『旅行』でこの幻想郷を訪れたと主張したのだ。
幻想郷の周りに張られた結界は幻想と現実を区別する。その構造上、外の世界で非現実と思われている妖怪が進入するのは簡単だ。しかしその逆に中から外にでることは結界に干渉できるものでなければ不可能となる。
そして幻想郷を囲う結界は極めて強力なものだ。つまり原則として妖怪に取っては一度立ち入れば二度と外へは出られない場所であり、例外的な存在を除けば気楽に行き来したりはできないのである。
(教えた方がいいかしら? まあ今更教えた所で手遅れだし、別に私から伝えなくてもいいか)
目の前の二人が結界を自由に出入りできる程の力を持った存在とは到底思えなかった霊夢は内心でご愁傷様とだけ言って切り捨てる。
しかし、彼女とは異なる判断をしたものが居た。霊夢が気づかなかったあることに気づいた彼女は霊夢の前にでて訪問者の二人に話しかける。
「もしかすると新婚旅行かい?」
「うん、そだよ」
萃香の問いに満面の笑みで答えながら男に両腕を絡める少女。その行動に顔を赤くする男と幸せ一杯と言った表情を浮かべ続ける少女。それを見て霊夢はやや呆れたような、あるいはうんざりしたような表情になり、萃香は内心のよく読めない笑みを浮かべて言葉を続ける。
「そうかい。だったらおめでとうと言わせてもらうよ。それと自己紹介が未だだったね。私は伊吹萃香、こう見えても鬼の四天王の一人だよ。こっちは博霊霊夢、ここの管理者の人間。さて、こっちも挨拶したことだし、そっちも自己紹介願えないかな?名前位は教えてもらってもいいと思うんだがね」
「? 何、言ってるのよ。藤井さん達の名前はもう聞いたじゃない?」
萃香の不可思議な発言に訝しげな表情を浮かべる霊夢。訪問者二人も困惑した様子である。
「自己紹介を受けたのは二人だけだろ。私は”三人目”に向かって言ってるんだよ。それとも二人の呼び名は同じなのかな?」
「!!」
「?」
萃香の発言に驚愕の表情を浮かべる八雲。ますます意味の分からない様子の霊夢。
そして最後の一人、パイには大きな変化が現れる。何とその額に第三の目が開き、その雰囲気がガラリと変わったのだ。そしてそれ以上に大きな変化として、余程注意してみなければ人間と見間違えてしまう位の小ささだった妖気が大妖怪も驚く程強いものへと膨れ上がったのである。
「ほう、儂の存在に気づくとは流石は鬼と言ったところか」
「他の鬼だったら気づかなかったかもね。けど、私は『密と疎を操る程度の能力』を持っているからね。あんたが二つの人格を中核とした多数の意思の集合体だってことは直ぐにわかったよ」
「なるほどな。さて、聞かれたのは儂の名前じゃったな。パイと言う呼び名でも間違ってはおらんが、紛らわしいので儂を知るものからは『パールバティ』、『聖魔』、『三只眼』等と呼ばれておる。好きなように呼ぶがよい」
現れた少女のもう一つの人格、『パールバティ・藤井』、通称『三只眼』は納得した表情を見せる。一方、彼女の突然の変化に対して霊夢は冷静に彼女を観察していた。
「パールバティってのは長くて呼びづらそうだから変な呼び名だけど三只眼って呼ばせてもらうわ。それにしてもほんと凄い妖気ね。これなら幻想郷に旅行に来たってのも納得できるわ。萃香、下手すりゃあんたよりも上なんじゃない?」
三只眼の強大な妖気を感じ取っても霊夢の態度は変わらない。何時もどおりの調子で応対し、その力を分析する。
「妖力の強さだけなら確かにそうだろうね。けど、実際にどっちが強いかはやってみなけりゃわからないもんさ」
霊夢に比較対象にされた萃香は、その誇りを誇示するように語って見せる。しかし自身の力を誇示するその発言と口調と表情は、挑発的とも感じられ、今度は三只眼のプライドに触ったようであった。彼女は眉を揺らすと鬼を睨み付けて言う。
「なんじゃ、鬼が儂に喧嘩を売るつもりか? 生憎、今はそのような気分にはなれんが、降りかかる火の粉であれば、容赦等するつもりはないぞ」
「お、おい三只眼!!」
「ちょっと、私の目の前で揉め事を起こす気じゃないでしょうね!!」
軽く殺気を放ち始めた彼女に対し、慌てる八雲。霊夢も警戒態勢を取る。しかし殺気を向けられた萃香は平静のままである。
「火の粉とは言ってくれるじゃないか。まあ、心配しなさんな。興味が無いって言っちゃあ嘘になるけど、新婚さん相手に邪魔をする程、無粋じゃないさ」
「……そうか」
萃香の答えにしばし沈黙、やがてその言葉に嘘偽りが無いと納得したのか殺気と妖気を消す三只眼。そのまま額の目が閉じ、表に出る人格がパイへと変わった。
「ふぅ、どうもすいません。三只眼が迷惑をかけちゃって」
「いいさ、私は別に気にしてないよ」
「まあ、何も無かったからいいわ。けど、お賽銭位はしてってよね」
ほっと息をつくと妻に代わって謝罪をし、頭を下げる八雲。
それを二人はあっさり受け入れ、揉め事は回避されることとなった。
そして、その後、八雲は霊夢に言われた通りに賽銭を入れ、落ち着いたところで、改めて二人に対し話しかける。
「それで、俺達これから幻想郷の色々な所を回ってみようかと思ってるんですが、どこかお勧めの所とかあれば教えてもらえませんか?」
「お勧めねえ。ちなみに藤井さん達は空とか飛べるの? 後、希望の条件とかはある?」
「パイは飛べないけど、フェイオーやタクヒ、空を飛べる魔獣は呼べるよ。行きたいところは、おいしいものが食べれるとこ!!」
「食べるものとなると人里の店と夜雀がやってる屋台、後は紅魔館のメイドの奴が結構な腕前だね」
『妖怪 くっちゃね』ぷりを見事に発揮するパイに対し、思いつく限りの場所を上げる萃香。その中で唯一固有名詞であった紅魔館と言う単語に八雲は興味を示す。
「紅魔館? それは一体どういったところなんです?」
「吸血鬼の屋敷よ。名前の通り、全体が真っ赤な趣味悪い建物だから見れば直ぐにわかるわ」
「吸血鬼の館か。また、随分危なそうな感じだな。よし、とりあえず人里に行ってみることにします」
目的はあくまで旅行なので、無理に危険を冒すことは無いと無難な場所を選ぶことにする。
「そだね。それがいいんじゃないかい。あっ、方向は向こうに真っ直ぐ行けばいい」
八雲の選択に賛同し、指をさして人里の方向を伝える萃香。
行き先が決まったことで移動をするためパイが魔獣、フェイオーを召還する。
「ふーん、全身がほぼ口で出来てるのね」
「案外かわいいじゃないか」
普通なら不気味と感じる姿を見ても特に怯える様子も無く興味深そうに見るだけの二人。その反応を見て幻想郷を旅行先に選んでよかったかなと思う八雲。
そしてパイと二人でフェイオーの背に乗り込む。
「それじゃあ、どうもありがとうございました」
「ありがとね」
「別にいいわよ。あっ、でもよかったら帰る前にはもう一回お賽銭入れてって頂戴」
「新婚旅行楽しみなよ」
空中に浮び礼を行って飛び立っていく八雲達と見送る霊夢達。
そうして彼等が飛び去って行き、その姿が見えなくなった頃に霊夢が呟く。
「それにしても凄い妖気だったわね。あれじゃあ、旦那さん尻にしかれてるんじゃないかしら」
「んっ、霊夢、気づいてなかったのかい。今日は珍しくにぶいね。あの夫婦。戦闘力だけ見れば上の方なのは多分、旦那の方だよ。まっ、戦う力の強さなんて関係せずに尻にひかれてそうな気はするけどね」
「へぇー、とてもそうは見えなかったけど、あんたがそういうならそうなんでしょうね」
萃香の言葉に対し、霊夢は意外そうな表情を浮かべながらも疑っては居ないようだった。そして、ふと思いついたように言う。
「そう言えば藤井さんの名前って『八雲』よね。もしかして紫の奴と何か関係あるのかしら?」
今更ながらに思い当たる、妖怪の賢者の異名を持つ大妖怪『八雲紫』の姓と一致する名前を持つという点。そこになんからの関連性があるのではないかと考える。
「んー、可能性が無い訳じゃないだろうけど、多分偶然じゃない? 見た目も雰囲気も全然似てなかったしね。少なくとも近い関係じゃないでしょ」
「……そうね。言っては見たけど私の感もそう言ってるわ。後、何かあの二人行き成り厄介毎に巻き込まれそうな予感がするわ」
「うわー、八雲。幻想郷っていいとこだね」
「ああ、確かにこの景色は最高だな」
フェイオーの背に乗りながら眺める幻想郷の風景、それは現代の日本ではなかなか見られない雄大で、何よりも日本の原風景を感じさせてくれるものだった。
ゆっくりと飛行しながら周囲を見渡して、しばしその風景を楽しむ二人。
そこで有る場所に目が行く。
「あっ、八雲見て!! 綺麗な向日葵が沢山」
「おっ、ほんとだ。近くで見たらもっと綺麗そうだな。昼飯にするにもまだ早い時間し、人里に行く前によって見るか?」
「うん!!」
頷くパイに答え、フェイオーに指示して行き先を変える。行き先は向日葵畑、通称『太陽の花畑』。この選択が霊夢の予感通り、二人に災難を与えることとはこの場所が幻想郷有数の危険地帯と呼ばれていることは、この時の彼等には未だ知る由も無いことであった。
八雲に行き成り死亡フラグ。
しかし八雲は不死身である。