「お買い物ありがとうございますっと。いやー、レアなアイテムは手に入るし、当座の金は手に入るし、今日はいい日だな」
「こっちこそ、いい物が買えたよ。いい土産にになった」
ほくほく顔の魔理沙と同じく笑顔で購入したマジックアイテムを袋に入れる八雲。
「よかったらまた買い物に来てくれ。なんなら、遊びにくるだけでも歓迎するぜ」
「ああ、機会があったらそうさせてもらうよ」
「またね!」
別れの挨拶をかわし飛び立つ八雲とパイ。そして八雲は予定通りに次の目的地である守谷神社へ向かおうとする。しかし、そこで待ったをかける者があった。
「八雲、妖怪の山は止めて地底へ向かうぞ」
「えっ、三只眼?」
何時の間にかパイの額の目が開き、その人格がもう一人の彼女”三只眼”に代わっていたのだ。
「別にいいけど、パイはどうしたんだ?」
「言って代わらせた。……儂にとっても新婚旅行なのにあいつばかり楽しむのは不公平じゃろうが」
「えっ、今、なんて言ったんだ?」
後半の呟くように言った言葉が聞かず、それについて尋ねる八雲。それに対し三只眼は顔を赤くして叫んだ。
「うるさい。いいから行くぞ!」
「わっ、わかったよ」
こうして行き先を変更し地底へと向かう二人。しばし飛行した後、入り口となる洞窟を見つけ潜り抜け、そのまま地底を進む。その二人の姿をを遠くから見るものが居た。
「何あれ、やばい妖気」
釣鐘落しのキスメである。見た目に反しかなり危険で凶暴な妖怪である。しかし二人に対しては攻撃を仕掛けようとはしなかった。本能で悟ったからである。三只眼を迂闊に手を出すべきでは無い危険な相手だと。
「無視しよう」
こうして、キスメは八雲達をスルーし、そのまま他の妖怪とも出会うことなく二人は旧都へと辿りつく。その入り口にある橋を通り抜け、そのまま町へと入る二人だが、そこで彼らは自分達に集まる視線を感じ取った。
「どうやら、見られておるようじゃな」
「ああ、それもあんま好意的じゃない視線だな」
それは旧都の住人、当然のことながら妖怪達によるものだった。二人は取り囲まれ、その取り囲んだ妖怪の中から特に強い妖気の持ち主が二人向かって近づいてくる。
その頭部に見えるのは二本の角。それを見ればその妖怪の種族は容易にしれる。日本妖怪最強の種族、鬼である。
「おう、お前等見ない顔だな。地上から来たのか」
鬼はにこやかな表情で話しかけてくる。その態度に敵意は勘違いだったのかと思い、少しだけ気を緩め答える八雲。
「ああ、そうだけど」
「そうか、そうか、いい度胸してるじゃねえか!!」
しかしその答えを聞いた瞬間、鬼は態度を豹変させ、明らかな殺気を二人に向けた。
「地底と地上は不干渉。お前等はその取り決めを破ったってことだろうが!!我が物顔で地上の奴等に出歩かれちゃあこっちは不愉快なんだよ!!」
地底の妖怪は妖怪の中でも嫌われ者が多く、そんな彼等にとって地底は唯一の居場所。その居場所に余所者が入り込んでくることを歓迎しない者が数多く存在していた。故に無断で旧都に立ち入った二人に激しい敵意を向けたのである。
「すまない。俺達は外の世界から来たばかりでその辺のことを知らなかったんだ。直ぐに出てくよ」
鬼の言葉を聞いて自分達の非を認め謝罪する八雲。ところがそれを聞いて鬼や他の妖怪達は怒りを納めるどころか逆に強めたのである。
「知らなかっただあ!? 今更何とぼけてやがる!! ここに来るまでに橋姫にあってる筈だろうが!!」
「橋姫? なんじゃ、それは。誰とも会わんかったぞ」
怒鳴り叫ぶ鬼に対し、その非難される理由に全く覚えの無い存在を出され疑問と不快感を露にする三只眼。一触即発の空気が流れる。だがそこで、その場に割って入る者が現れた。それは金髪で体操着のような服を来た長身の美女。
「まった、一体、何を騒いでるんだい?」
「あ、姐さん!!」
その人物を見て慌てる鬼。新たに現れた人物の額にも一本の角があり、男と同じく鬼であることがわかる。ただ種族は同じでもその実力には開きがある。男の鬼も決して弱い存在ではないが、それを上回る妖気と威圧感、何より男鬼の態度から格上であることを感じさせた。
「そこの鬼が儂等に因縁をつけてきよってな」
「因縁ねえ。とりあえずちょっと話を聞かせてくれるかい?」
三只眼の言葉に女の鬼は地底の妖怪と八雲達、両者に説明を求める。そのことに特に異論を挟む者もおらず男鬼と八雲がここで起きた出来事を偽りなく正直に述べた。
「なるほどね。あんたの言う橋姫、パルスィの奴なら今、酔いつぶれてるよ。あたしがちょっと強引に宴会に誘っちまって、さっきまで酒飲んでたのさ」
「なっ!?」
話を聞き全て聞き事情を把握をした女鬼の口から飛び出した言葉に男鬼が驚く。パルスィは通常、旧都の入り口の橋かその手前の洞窟で地上からやってくる者達を見張るのがその役目であり、今日も当然そうだと思い込んでいたのだ。
「それにその二人は嘘をついてない。あんたも鬼なら嘘をついているかどうかくらい見分けるようになりな」
鬼は嘘を嫌い、それ故に嘘を見抜く力に長けている。その鬼の中でも最上級の力を持つ女の鬼が断言する以上、それに反論することは難しい。つまり八雲達が故意にルールを破った訳ではないことが証明されたのである。しかしそれを知っても男は納まらなかった。
「けど、知っていようが知っていまいが、こいつ等が勝手に地底に立ち入ったのは変わりないでしょうが!!」
「その取り決めだって例の異変以降緩くなってるだろ?」
「だからって、無くなった訳じゃねえ!!」
敬語も忘れて叫ぶ男鬼。少し前に地底で起きた事件以降、それまで断絶状態だった地上と地底の関係に変化が現れ、地上の住人が地底に入ってきたり、その逆も珍しくは無くなってきていた。しかし全ての住人がそれを歓迎してる訳でも協定が正式に撤廃された訳でもなかった。
「うーん、まあ、そりゃそうだけどね」
鬼は嘘が嫌い、つまりは基本的に筋を通す生き物であると言うことだ。男の鬼の言葉にはある程度の筋が通っている。彼女自身としては堅苦しくルールに縛られるのには否定的だが、自身の好みで正論を頭ごなしにそれを否定するのは鬼の矜持に関わる。それに周囲を見渡せば男鬼以外の妖怪も納得言っていない表情である。
この状況にどうすべきか悩んだ彼女は結論を出すよりも先に八雲達に対しても尋ねてみることにした。
「ちょっとあんた等の意見も聞こうか。あんた等はどう思ってる。このまま、あんた等が立ち去るならあたしが丸く治めるけど」
「ふん、気分に水を刺されたばかりか、ここまで侮辱されて素直に立ち去ると思うか?」
「まあ、そうだろうね」
答えたのは三只眼。そしてのその答えは女鬼にとっても予想通りのものであり、苦笑する。
妖怪と言うのは得てしてプライドが高い。特に力の強いものは。妖気の強さからして明らかに大妖である三只眼がここで黙って引き下がる可能性がほぼゼロであることは最初から分かっていたのだ。両者の意思を確認した女鬼はそこである決断をし、それを提案をする。
「だったら仕方ない。ここは地底の流儀で決着をつけるしかないね。つまりは強い物が正しい。あんた達のどっちか1対1で喧嘩をしてもらう。あんた達が負けたなら大人しく引き下がる。勝ったなら、こいつに謝罪させた上で地底を自由に出歩く許可を与える。これでどうだい?」
「俺は勿論、構わねえ!!」
「ふん、いいじゃろう」
その提案に男鬼と三只眼は同意を示した。しかしその後で三只眼の方が一つ異論を挟んだ
「じゃがその前に主の名を聞かせてもらおう。後から来て場を仕切っておいて名前も名乗らんような奴に従うのは癪なのでな」
その言葉を聞いて女鬼は一瞬、きょとんとした顔をし、その後直ぐに言われた言葉の正しさを把握し応えた。
「っと、こいつは悪かったね。あたしは勇儀、星熊勇儀、鬼の四天王の一人さ。折角だからそっちの名も教えてもらえるかい?」
「パールバティ4世、こっちは八雲じゃ」
「パールバティに八雲ね。覚えたよ。それでどっちが戦うんだい?」
勇儀の問いかけに対し、八雲が言葉より先に行動で応えた。一歩、前にでると三只眼を庇うようにして男鬼の前に立ちふさがる。
「俺が戦うよ。パイと三只眼を守るのが俺の役目だからな」
「役目ね。あんた等二人の関係は知らないがあんたが戦うのはそれが義務だからかい?」
「いや、彼女が俺にとって大切な女の子だからだ」
八雲の言葉を聞いて満足そうに頷く勇儀。
「惚れた女を守るか。いいね、そういう男は嫌いじゃないよ」
「おい、さっさとやるぞ!!」
一方不機嫌になる男鬼。目の前でのろけとも取れる言葉を発せられたのだから仕方ない。その上、八雲にかっこつけられては男鬼の立場は小物の悪役になってしまうのだから尚更である。
「ああ」
構える八雲。こうして、不死身の男対鬼の第1戦が開始されるのだった。
後2話で、一旦完結をします。
その後はDBの悟飯が真剣恋の学校に入学する話かゲート自衛隊とドラクエor地球防衛軍のクロスオーバーを書きたいなあと3つの候補を並べて悩んでいます。