八雲とパイの幻想入り   作:史上最弱の弟子

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霧雨魔法店

「聖さん、どうもありがとうございました」

 

「いえ、こちらこそ色々と参考になるお話を聞かせていただきました。よろしければまたいらしてくださいね」

 

 命蓮寺に宿泊した翌朝、出立する八雲達を寺のメンバーが見送る。

 

「うん、またくるよ!!」

 

「お前達の話面白かったし、まっ、来てもいいよ」

 

 八雲とパイのことを以外に気に入ったらしいぬえのぶっきらぼうな言葉。それを見て八雲は三只眼に少し似てるかもとふと思う。こういう素直でない優しさを持った相手を最近ではツンデレと言うらしい等とぬえと三只眼どっちに知られても照れ隠しに吹っ飛ばされそうなことを考えた。

 

「勿論私達も歓迎しますよ」

 

「うん、またカレーをご馳走するね。いやー、昨日の食べっぷりは驚いたけど、あそこまで美味しそうに食べてくれるとつくりがいがあるね」

 

「いやー、ほんと凄かったね。まあ、噂に効く亡霊姫とかみたいに規格外って訳じゃないけど」

 

 カレーを5杯近くお代わりしたパイを思い出して笑顔の村紗と苦笑する一輪。こうして和やかな雰囲気で別れた八雲達は次に魔法の森にあるというマジックアイテムを売っている店を目指すことにした。

 

「教えられた場所だと……このあたりかな?」

 

 魔法の森の中にはきのこの瘴気があり、一般人が吸うと体調を崩すことになる。不死身である八雲は勿論、パイもその程度であれば問題無いだろうが、念のため空から目的値を探すことにした。そして探し始めて数分でそれらしき建物を見つけた。

 

「あれかな? よし、パイ、フェイオーを下ろしてくれ」

 

「うん!!」

 

 地面に着陸し、改めて近くから建物を眺めると『霧雨魔法店』と書かれた看板が見つかった。横には『なんかします』と注意書きが書かれている。

 

「なんか適当だけど、販売以外の仕事もしているなんでも屋みたいな感じなのか?」

 

 かなり胡散臭い店だが、それを言えば八雲達が働いている『妖撃社』だって胡散臭い。それよりも寧ろ気になることがあった。

 

「これ、霧雨道具店さんと同じ名前だね」

 

「そうだな。もしかして親戚の人がやっている店なのかも」

 

 そう考えながら入り口の前に立ってノックをして呼びかける。

 

「すいませーん」

 

「んっ、誰だ?」

 

  応答は直ぐにあった。ドアが開き、中から見るからに魔法使いと言った格好をした金髪の少女が出てくる。

 

「えっと、このお店の子?」

 

「子って言うか、私が店主だぜ」

 

 見た目十台半ば位の姿に店主の子供か、精々が従業員かと思って尋ねてみたところ、少女は店の主だと答える。

 

「そいつはゴメン。ところで、商品を見せていただきたいんだけど。マジックアイテムならここで良いものが手に入るって霧雨道具店の店主さんに聞いたんだ」

 

「えっ、親父が!? あっ、いや、何でもない。まあ、確かに内には珍しいアイテムが揃ってるのは確かだな。研究し終わったものや、魔法の修練を兼ねて作成したものだけど、人里じゃあ手に入らないような貴重な品が揃ってるぜ。是非、見てってくれよ」

 

 霧雨道具店の店主のことを聞いた時、驚いた顔を浮かべるが、それを誤魔化すように手を振る。そのまま捲くし立てるように話す少女の姿を見て八雲は何か訳があるのだろうと察し、深く追求しないことにした。

 そしてその代わりに少女のすすめに乗って店の商品を見せてもらうことにする。

 

「えっと、ちょっと待っててくれよ」

 

 店の中はかなりごちゃごちゃしており、どれが売り物でどれが私物であるのか見ただけでは分からない状態であった。その中から、少女は幾つかの品物を取ってきて順番に机の上に並べていく。

これらは魔理沙が研究用に手に入れ、調べ終わったもの、もしくは彼女が自作したアイテムだ。

 

「今、売れるのはこの辺だな。どれでも好きな物を買っていってくれ」

 

「好きなものと言っても。実はあまりマジックアイテムに詳しい訳じゃないんだ。秘術商人をやってる知り合いに珍しい物があったら土産代わりに仕入れてきてくれって頼まれただけでさ」

 

「土産? なあ、さっきから思ってたけどもしかして二人は外の世界から来たのか?」

 

 八雲達の格好と土産という言葉から推測し少女が尋ねる。

 それに対し、パイが笑顔で尋ねた。

 

「うん、パイ達、幻想郷に遊びに来たの!」

 

「へえ、ちょっと興味があるな。外の世界では魔法とか妖怪はもうほとんど存在しないって聞いたのに、秘術商人なんてやってる奴がいるのか。なあなあ、二人のこととか、その土産を頼んだ人のこと教えてくれよ。っと、そういや、未だ名前も知らないな。私は霧雨魔理沙、見ての通りの魔法使いだぜ」

 

 好奇心を露にする少女。その態度に八雲は少し勢いに押され、パイは笑顔で応じる。

 

「藤井パイだよ。よろしくね、魔理沙ちゃん」

 

「魔理沙でいいぜ。あっ、パイだけじゃなくて、そっちの……」

 

 呼び捨てを許可しようとしてまだ八雲の方の名前は聞いていなかったことに気づく魔理沙。八雲は苦笑して自己紹介をした。

 

「俺は八雲、藤井八雲だ。職業は何だろう? 雑誌社勤務兼妖怪退治かな」

 

「妖怪退治ってことは霊夢と同じか。ますます興味が湧いてきたぜ!!」

 

 八雲の答えを聞いてますます好奇心を強める魔理沙。

 その後、八雲は彼女に請われ、しばし外の世界での話しをした。

 

「へえ、二人は世界中を旅して回ってたのか。だったら、もしかして外の世界の珍しいマジックアイテムとか魔法書とか持ってないか?」

 

「アイテムか。今、見せられるのはこの位かな」

 

 魔理沙に尋ねられて八雲は呪文の刻まれた黒い立方体の石を見せる。

 

「これは? 見たところ強い霊石みたいだけど、刻まれてる術式は見たことないな」

 

「スペルキューブって言って。術士じゃなくてもこれがあれば術が使える」

 

 答える八雲。このスペルキューブに刻まれた呪文は月の龍皇城で見つけたデータ。つまりはベナレスが開発した術で、それだけにその威力も高い。しかも、一つのキューブで4つの術が使え、中には転移のようなかなり高度な術も含まれていた。

 

「へえ!! なあなあ、それ、私にくれよ!!」

 

 その凄さが魔理沙を刺激した。無遠慮にキューブを譲ってくれと言い出す。

 

「勿論、ただとは言わないぜ。くれたら、私のとこの商品、何でも一つ半額で売ってやるよ」

 

「いや、そこはせめて交換って言うべきとこじゃないか?」

 

 あまりに厚かましい魔理沙の言葉に呆れた表情を浮かべる八雲。その言葉に流石の彼女も罰の悪そうな顔をする。

 

「うっ、そう言いたいとこだが。実は今、金欠で、ここで金を稼いでおかないとまじでやばいんだ」

 

「そうなのか。だったら……」

 

 人のいい八雲はそんな彼女を見て同情心を抱く。とはいえ、流石にただでくれてやる程にはお人よしでは無い。何か、いい妥協点を考えようとするが、そんな彼の善意を魔理沙はぶち壊した。

 

「よし、だったら弾幕ごっこで勝負だ!! 私が勝ったらそのアイテムをもらうぜ!! 八雲が勝ったら商品を半額で売ってやる」

 

 もの凄く自分に都合のいい条件を突きつけてきたのである。

 

「いや、ちょっと待ってくれ。流石にそれは……。それに、弾幕ごっこってのは何なんだ?」

 

「あっ、そっか八雲達は外から来たから当然知らないか。えっと、弾幕ごっこってのはな……」

 

 弾幕ごっこ及びスペルカードルールについて説明する魔理沙。それを説明を聞き、少し考えた八雲が質問を投げかけた。

 

「なあ、その弾幕ごっこって言うのはもしかして空を飛びながらやるのか?」

 

「そうだぜ。あっ、もしかして八雲は空を飛べないのか?」

 

「いや、一応飛べることは飛べるけど、高速では無理なんだ」

 

 假肢蠱を翼にするのは本来の使い方から外れた余技のようなもの、その速度は期待できず、空中戦を行うには心許ない。ましてや弾幕ごっこのように回避を基本としたルールだと尚更だ。

 

「フェイオーやタクヒだと大きすぎて避けられないよ」

 

 パイも意見を言う。自分で飛ぶ以外に何かに乗って戦う手段もあるが、フェイオーだとやや遅い上的が大きくなってしまう。タクヒはサイズからして論外である。結局の所、二人は弾幕ごっこに応じる手立てがなかった。

 

「うーん、そいつは困ったな」

 

 流石にまともに勝負できない相手に戦いを吹っかけて、アイテムを奪い取るのは気が引けるらしく悩む魔理沙。

 

「スペルマウスが使えればな……」

 

「スペルマウス?」

 

 そこで八雲が呟いた言葉にまたもや食いつく魔理沙。

 

「ああ、それがあれば高速で飛行できる魔獣が呼べるんだけど、今は使えなくちゃってな」

 

「それもちょっと興味あるな。どういうものだったんだ? 術なのかアイテムなのか?」

 

「うーん、どっちかって言うと術なのかな。コネリー、俺の師匠みたいな人か引き継いだ知識と力の塊で、前はこう、マウスってやれば……あれ?」

 

「八雲の手に何か、光の球見たいのがでてきたけど、それがマウスって奴じゃないのか?」

 

 魔理沙の質問に答えようとマウス使用時のやり方を再現しようとした八雲の掌に、クーヨンによって失われた筈のスペルマウスが復活していたのだった。

 

「い、一体どうして!?」

 

「うーん、もしかしたらここが幻想郷だからかもしれないな。ここは忘れられたものの集まる場所だから。そのマウスって奴、コネリーって人の知識の塊なんだろ? だとしたら失われたってのはつまり忘れられたって解釈もできるんじゃないか?」

 

 突然の事態に対し、魔理沙が推理を披露する。

 

「うーん、パイよくわかんない。でも、よかったね八雲。コネリーさんの遺産戻って来たってことでしょ」

 

 マウスの復活を単純に喜ぶパイ。しかし魔理沙の推測が当たっているとしたら懸念すべき点もある。

 

「確かによかったけれど魔理沙の予測があたっているとするとこれってこの先ずっと使えるのかな? 幻想郷から外の世界に戻っても使えるんだろうか?」

 

「そこまでは私もわからないな。まあ外で使えなかったら幻想郷の中で知識を引き出してちゃんと覚えればいいんじゃないか。私も協力するぜ。勿論、お礼はしっかりもらうけどな」

 

 知識を盗む気満々で言う魔理沙。八雲はその意図を察するが、折角残してくれたコネリーの知識を手に入れられるならいいかと考える。

 

「まあ、何はともあれ、これで弾幕ごっこできるんだろ?」

 

「……そうだな」

 

 何時の間にかやること前提にすすんでいた流れに今更断ることもできず、こうして八雲と魔理沙は弾幕ごっこで対決することになるのだった。

 

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