宇宙警備隊長・冴子   作:EF12 1

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交わる前から朱は朱

      ――『ヤマト』居室――

 

 

(‥‥やっと落ち着いてきた、けど‥‥)

 

スターレット・タランティーノの手術が成功した事で少し心理的余裕ができたのか、フェイトはようやく落ち着いて周囲を見られるようになった。

信じられない事だが、この艦で飛び交う言葉は紛れもない日本語であり、乗組員の左胸についたネームプレートは英語と漢字で表記されていた。

 

(‥‥フェイトさん?)

(何?ティアナ)

 

丁重に扱われているとはいえ、この艦は軍艦であり、自分達は監視されているだろう。

個室とはいえ不用意な発言は禁物なので、フェイトとティアナは念話で会話していた。

骨折したシャリオは鎮痛安定剤の作用で寝息を立てている。

 

(この艦は、私達が見た『ヤマト』なんでしょうか?‥‥そして、本当に地球の軍艦なんでしょうか?)

(‥‥即答はできないね)

 

フェイトも、『ヤマト』を判断するには余りにネタが少なすぎた。

 

(もうすぐ事情聴取だから、その時に確認するしかないよ。情報が欲しいのは向こうも同じだろうからね)

(そうですね‥‥それにしても、この艦も若い人が多いんですね)

(そうだね)

 

自分達の世話を焼いてくれている森という女性は、どう見ても自分と同年代だし、すれ違う乗組員も見たところ20代の者ばかりで、明らかな壮年者は今のところ佐渡医師くらいだった。

 

ふと、フェイトの眼に壁埋め込みの時計らしきディスプレイが映る。

 

(――え??)

 

それを見たフェイトは我が目を疑う。

 

ディスプレイに、『17:43 2201-11-29』と表示されていたのだ。

 

「――2201年って、西暦!!??‥‥この艦は私が知ってる地球の200年後の艦だと言うの!?」

 

確かに200年もすれば、第97管理外世界も宇宙に乗り出していてもおかしくはないが、自分が過ごした地球は21世紀初めだ。

 

(私達タイムスリップしちゃったの!?‥‥それとも、もう1つの地球が存在しているというの?)

 

――あり得ないものを目にしてプチパニックに陥るフェイトだったが、ちょうど同じ頃、TF13の各艦首脳もモニター越しに渋面を並べていた。

 

「これ、ホントの事なんですよね‥‥」

 

ガトランティス戦当時、時空管理局とやらの艦船が難破状態で太陽系内に突然転移し、乗組員1名が救出された事は各艦の艦長と副長までには知らされていたが、その後の戦闘拡大で詳細は知らされていなかった。

そこで、嶋津と真田は時空管理局についての資料をTF13各艦の艦長に公開したのだが――。

 

『魔法云々はいいとしても、年端もいかない子供まで危険な任務につかせるなんて‥‥。こっちの常識を当てはめるべきではないと、頭ではわかっていますが‥‥』

 

『クズリュウ』のナーシャ・カルチェンコが呆れた表情を浮かべた。

地球の現代国家では、15歳に満たない者を、教育機関を含めた軍組織の一員にする事を禁じており、それは国連宇宙軍~地球防衛軍でも同じだ。

管理局には管理局の事情があるのだろうが、とても賛意を示す事はできなかった。

 

『何より、魔法以外の武力保持を否定しているという事は、我々のような魔力に依らない武器兵器と軍組織を保有する国家とは共存できない、と解釈できますね』

「――記録を見た限り、時空管理局はガトランティスみたいな勢力と遭遇した事はなかったようだ。だからこそ優位でいられたとも言えるがね」

 

コーヒー魔人の異名を持つ『チョウカイ』の塩江龍一はカフェタンブラー片手に冷静な口調で、管理局の武力論にツッコミを入れ、嶋津が補足する。

 

『彼女たちの身柄を引き渡す時に、先方が我々の組織に説明を求めてきたら、どう対応しますかぁ?』

 

些かのんびりした口調で管理局への対応を嶋津に質したのは『アシタカ』のフランベルク・シルヴィア夏美。またの名を白き砲撃魔。

それへの回答は決まっている。

 

「‥‥隠し立てはしないさ。ただ、時空管理局と武力論を闘わせる気はないし、万一投降勧告されても『バカメ』と返すだけさ」

『ですよね~』

 

広域治安維持組織と国防宇宙軍ではバックボーンからして違う。そもそも議論以前の問題だ。

 

「‥‥ま、その時はその時さ。まずは収容した乗組員との話が先なんだが‥‥。彼女らの映像を出せるか?古代」

『無事に収容できた3人のなら』

「それでいい」

 

嶋津の求めに応じ、『ヤマト』からフェイト・ティアナ・シャリオの画像データがアップロードされる。

 

『‥‥え??』

(おいおい‥‥)

 

画像を目にした艦長たちは瞠目した。

 

『‥‥嶋津艦長。妹さんていらっしゃいましたっけぇ?』

「魔法世界にはいない。と思うが?」

 

砲撃魔と残念隊長のとんちきなやり取りを向こうに、他の面々は3人。特にフェイトの画像を見て講評していた。

 

『髪と瞳の色を黒っぽくして、強気な表情にすると、確かに少し前の嶋津さんの顔になるわね』(カルチェンコ)

『‥‥というか、歳の離れた妹、の方が簡単じゃないのか?』(塩江)

『‥‥お前らな‥‥』(確かに、歳の離れた妹で通じない事はないか‥‥)(真田)

 

『朱に交われば赤くなる』と言うが、皆自覚がないだけで、れっきとした朱だった。毒入りの。




ドナルドさんとバーニーさん。要は『ア○リカをぶっ壊す!』と言ってるんですね。
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