── 『ニムカ』 ──
ラスコー級最後の1隻が爆散するのを、ナスカと幕僚は言葉もなく見詰めていた。
「直衛艦、全滅‥‥!」
「くっ····」
ブリッジクルーが泣きそうな声で部隊壊滅を告げる。
ナスカは己の足下が崩れていく感覚に襲われた。
それは、順調に昇進してきた軍での地位が失われる事を示していたから。
我が帝国は全能なる大帝の決定が最終結論だ。
大帝は絶対的な支配者だが、武人の思いにも理解を示して下さる懐深い方だから、一度の失敗ですぐ粛清するような事はなさらないが、問題はサーベラー丞相だ。
あの女の優秀さは認める。粛清された前丞相とは打って変わって、実務面は順調に進んでいるのだが、失敗した者に対する処遇が冷酷過ぎるのだ。
このままでは間違いなく俺は処罰か粛清だ。
(‥‥一時の恥辱を忍んでも、奴にとりなしてもらうか)
ナスカはそう考え付いた。
デスラーは大帝が対等の相手と認めた客将。彼の口添えならサーベラーも黙るだろう。
そう決心したからには直ちに実行すべし!
「作戦中止!退却して予備部隊と合流する!揚陸隊も反転させよ!!」
ナスカは続航中の揚陸艦にも退却を命じ、予備戦力たる数隻の駆逐艦・潜宙艦との合流を決意した。
(デスラーに頼むにしても手ぶらでは侮られる。戦力をすりつぶしても『ヤマト』を葬らねば)
太陽系外縁に舳先を向けた『ニムカ』の前方で時空震が発生したのはその直後だった。
── 『テシオ』 ──
「敵空母、退却します!」
「守備隊の救護が優先だ。救命艇降下用意!」
「了解!」
嶋津が救命艇の準備を命じた直後、観測士が驚いた声を上げた。
「敵空母のすぐ前方で時空震発生!」
「敵の増援か!?」
「‥‥ワープアウトとも違う反応です。規模は単艦レベル!このままでは衝突します!」
果たせるかな、敵空母の進路上に大型艦船らしき反応が現れた直後、小さな閃光が煌めいた。
「敵空母と新たな艦船らしき目標が衝突した模様」
「‥‥間違いないか?」
一体何が起きたのか。にわかには理解できなかったが、やることはかわらない。
「敵空母の進行方向が変わっています。このままでは1時間足らずでマケマケの守備隊の真上に落着する確率が40ないし50%です!」
「操舵不能か····闖入者の方は!?」
「こちらはマケマケに落ちる可能性はありません。ゆっくりですが冥王星軌道に向かっています」
何があったかわからないにせよ、1時間以内に守備隊員全てを収容するのは無理だ。
!
「守備隊員の救護と収容が最優先だ、敵空母を破壊する! 部隊全艦、主砲及び艦首砲一斉射撃用意!!」
先が長い『ヤマト』に、太陽系内でこれ以上消耗させるわけには行かない。
「撃て!」
敵空母に引導を渡したのは『ナデシコ』の二射目だった。
「敵サン、きっと理不尽だと叫んだでしょうね」
「まあな。でも日頃の行いの報いさ」
「‥‥‥‥(あなたがそれを言いますか?)」
カルチェンコの無言ツッコミをスルーし、嶋津は関心を切り替える。
「闖入艦に呼び掛けろ。接舷準備!」