宇宙警備隊長・冴子   作:EF12 1

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ヤマト2199の続編《ヤマト2202 愛の戦士たち》が明日(3.31)18時に正式スタートします。

こちらでは留守番側に新たな顔ぶれが?


任務再開

    ――『テシオ』――

 

「‥‥タイムリミットです」

 

観測士席の三沢の声が響く。

時空管理局からのコンタクトを待っていたが、予想どおり何もないまま時間切れだ。

我々は予定どおりの任務に戻らねばならない。

 

嶋津は頷いて立ち上がった。

 

「戦隊全艦発進準備!『ヤマト』に打電。“置き手紙と花束を”とな」

「わかりました」

 

嶋津の指示はすぐに『ヤマト』に伝わる。

 

「『テシオ』から入電。“置き手紙と花束を”!」

「了解‥‥榎本さん、坂本!」

『おう、準備はできてますぜ』

『据え付けます!』

 

嶋津の指示を受けた古代は、変わり果てた『タイタンⅣ』近くで待機している榎本掌帆長とルーキーパイロットの坂本達に指示を転送する。

榎本の指揮の元、ガトランティス艦の残骸で作ったメッセージボードと、プリサーブドフラワーの白い花束が『タイタンⅣ』の舷側に取り付けられた。

 

それとほぼ同時に、

 

「『タイタンⅣ』乗船者の御霊に黙祷!」

 

『ヤマト』では古代、他の艦は副長の号令の元、クルーは作業の手を止め、『タイタンⅣ』の方角に向けて黙祷する。

 

「‥‥‥‥」

「‥‥‥‥」

「‥‥‥‥」

 

『ヤマト』の右舷展望室では、フェイト・シャリオ・ティアナが沈痛な表情で黙祷し、病室ではスターレットが静かに涙を流していた。

スターレットはもちろんの事、フェイトら年長の3人にとっても、『タイタンⅣ』で遭難し、九死に一生を得た事はショックだった。

いかな過酷な任務でも、9割以上の同僚が殉職したという事はなかったからだ。

 

一方で、エネミーAとしていた敵対勢力がガトランティスという専制国家である事と、自分達を助けた地球防衛軍がガトランティスを退けるだけの能力を持ち合わせ、かつ交渉可能である事と、自分達の帰還についても便宜を図ろうとしている事がわかったのは不幸中の幸いだった。

 

指揮官の嶋津冴子と交渉し、TF13を帰路『タイタンⅣ』遭難現場に立ち寄らせてくれるとの事なので、それまでの間は地球防衛軍や地球連邦の事、あるいはこの宇宙の事を学ぶ事にしよう。

フェイト達はそう決心した。

 

――20分後、真田達を乗せたランチと周辺監視のコスモタイガーが『ヤマト』に着艦する。

 

「全機着艦しました!」

「戦隊全艦、左110度回頭、所定航路に戻る!」

「左110度回頭、とーりかーじ!」

 

各艦は舷側のバーニアをふかして左に回頭する。

 

その様子にフェイトは瞠目した。

展望室からの景色が変わる速度が異常に速い。

 

(こんなに機敏な機動ができるなんて‥‥!)

 

『ヤマト』の回頭速度は、明らかにXV級より速い。

そして、足元から新たに微かなノイズと振動が伝わってきた。

 

(これが、タキオン粒子エネルギー‥‥)

 

重力制御が完全なのか、加速Gは殆ど感じない。

『ヤマト』に限らず、この世界の宇宙艦船の最大巡航速度は光速の99%だという。

 

その時、古代の声で艦内一斉放送が響いた。

 

『本艦は1時間後にワープを行う。総員準備にかかれ!‥‥繰り返す、1時間後にワープを行う。総員準備にかかれっ!』

 

ワープと聞いてフェイト達に緊張が走った。

同一次元における空間跳躍航行技術は、管理局には存在しない。

少し前に森船務長から基本的な説明を受けていた。

実質1分にも満たず、子供や病人でも危険はないと聞いているが、やはり緊張は隠せない。

早めに準備しておくに限る。

 

「‥‥さ、皆、部屋に戻ろうか」

「はい!」(×2)

 

 

   ――60分後――

 

「全艦、ワープ!」

 

TF13は、大マゼラン銀河に向けて跳躍していった――。

 

 

 

 

     ――地球、新横須賀市――

 

過激な謳い文句が書かれた幟やモニターボードが林立し、行進していく。

 

「ガミラスを討てー!」

「デスラーを処刑しろー!」

 

‥‥この位のシュプレヒコールは穏やかで、もっと過激かつ差別的なコールを口にする者も10人や20人ではない。

 

21世紀初めに跋扈したものの、後の世代から恥部と断罪された集団も真っ青なヘイトスピーチがここかしこで叫び上げられているが、その周囲には警察官が貼り付き、要所にはライフルを手にしたMPも立っていた。

 

「‥‥‥‥」

 

その様を、高町雪菜は冷淡な表情で見ていた。

彼女がお冠なのは至極簡単。

デモ隊のせいで商店街への道が塞がれ、買い出しが出来ずにいるから。

 

――連邦政府から、ガミラス本星消滅とイスカンダル星の暴走の報せがもたらされたのは3日前。

 

憎きガミラスの本星消滅と、『ヤマト』を含めた複数の地球艦が特務隊としてイスカンダル救援に赴いた事には多くの地球人が快哉を挙げたが、イスカンダルの危機を伝えてきたのがガミラスのデスラー総統である事と、特務隊がデスラー率いるガミラス軍と、一時的とはいえ協力する可能性が高い事に、世論は沸騰した。

 

特に『ヤマト』がガミラスと舳先を並べる事に対する反発が強く、ヤマトや特務隊を売国奴・裏切者と声高に叫ぶ者さえ出ていた。

 

《ガミラス憎しの気持ちはわからないでもないがな。いかな『ヤマト』も、大小マゼラン銀河は地理不案内だろうよ》

(‥‥さすがに艦長(嶋津)やヤマトの人達を売国奴呼ばわりするのは、家族や一知人としては不愉快だね。あんなの歩く公害集団だよ)

《ふむ、愛国心を声高に叫んでいた者ほど、真っ先に逃げ出していたしな》

 

雪菜の脳内に直接話しかけてくるのは、彼女が秘かに保有している自律人格付特殊媒体――時空管理局はインテリジェントデバイスと呼称する――“ピュア・ハート”だ。

雪菜自身が持つ特殊な能力を制御するため、やはり同様の能力を有していた彼女の亡母が死の直前に譲渡した。

 

今は嶋津冴子の保護下にいる雪菜も、ガミラスとの戦争で肉親全てを失った。

ガミラスを許せるかと問われれば、首を縦に振る事はできない。

だからといって、地球連邦が再びガミラスと戦争するなど、愚挙以外の何物でもない事くらいは理解している。

――と、そこで雪菜は重要な案件を思い出した。

 

(“リニス”の餌も買わなくちゃ、だった)

《‥‥私も失念していた》

 

――つい数日前に若い雌猫を拾った。

毛並みはすこぶるよかったのだが、実に胡散臭かった。辺りに人気がなくなるや、いきなり人目の女性の声で話しかけてきたのだから。

 

出自を質すと、どうやら何者かの“使い魔”だったが、“契約”が終わったので、どこか人気がないところで消えようとしたら、ここに転移してしまったという。

 

雪菜とピュア・ハートは盛大に溜め息をついたが、目の前で消えられるのはいい気分ではないと、雪菜はその場でリニスと名乗った猫を自らの使い魔―― ネズミ避け兼ペット ――としてなし崩しに“契約”し、そのまま自宅(嶋津家)に連れ帰っていた。

 

(後で服も買わないとね)

《‥‥リアル猫娘は予想外だったな》

 

――新たな同居者リニスがちょっとした騒ぎの一端を担うのは、少し先の事になる。

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