宇宙警備隊長・冴子   作:EF12 1

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予告どおり『兄貴』(PSゲーム版キャラ)登場です。


邂逅

2年前は数ヶ月かけて来た14万8千光年を、今度は半月余でやってきた。

技術的には格段に進歩したのだろう。

しかし、我ら人類にとって、果たしてこれは進歩といえるのだろうか?

退化していないと断言できるのか――?

 

 

  ――大マゼラン雲・サンザー恒星系内、『テシオ』艦橋――

 

「‥‥‥‥」

「‥‥‥‥」

「‥‥‥‥」

 

そこに星はなく、星だったもののかけらが漂うだけだった。

 

「古代、ここがガミラス星の位置で間違いないのか?」

『はい、間違いありません』

「そうか‥‥(話で聞いたのと、実際に見るのでは大違いだな)」

 

これが強制された星の死というものか。

寿命が尽きかけていたとはいえ、そっとしておけば、人間より遥かに長生きできただろうに。

 

 

「艦長、黙祷しましょう。かつての敵の本星とはいえ、こんな最期を強いられる事はなかったはずです」

「‥‥そうだな」

 

大村の進言を受け、嶋津は立ち上がった。

 

他の『テシオ』乗組員、TF13各艦乗組員も倣って、しばし頭を垂れる。

 

「‥‥‥‥」

 

それは、食客のフェイト達も例外ではなかった。

 

黙祷を終え、イスカンダル追跡に戻ろうとした時だ。観測士席の三沢が緊張した声を張り上げる。

 

「左舷、9時半の方向から艦隊接近!速力24宇宙ノット!!」

「艦種は特定できるか?」

 

質す嶋津に、三沢がややあってから答える。

 

「ガミラス艦です! 駆逐艦30、巡洋艦8、戦艦2!距離、50宇宙㌔!」

「総員警戒体制Cで待機せよ!」

 

すかさず大村が指示を出す。

 

とはいえ、既に警戒体制に入っており、休憩中の者も3分で全員が配置についた。

 

ガミラスとは休戦状態だ。こちらから攻撃するわけにはいかない。

件の艦隊は速度を変えず、隊形も変えずに接近してくる。

 

(この距離でも攻撃隊形に移らない‥‥?)

 

嶋津がそう感じた時、

 

「ガミラス艦隊から部隊指揮官宛で通信が入っています!

 

通信長のパクが声を上げた。

 

「よし、繋げ」

 

ビジュアルスクリーンが切り替わり、1人の男が映し出された。

 

見るからに歴戦の老兵然とした人物で、頭部には大きな傷痕、左眼には義眼と思しき大きなレンズがはめ込まれていた。

後ろに控える部下達も大半が老兵だが、肌の色はガミラス人よりも地球人に近い。

 

(肌の色は我々に近いが、ガミラスも多民族国家なのか?)

 

 

地球防衛軍の面々がそう思った時、老指揮官が口を開いた。

 

『私は大ガミラス帝国軍、ダブス駐留艦隊司令官、コルサック・シュルツ大佐。‥‥貴官が指揮官か?』

「いかにも。地球防衛軍、独立第13戦隊司令官代行、嶋津冴子」

 

嶋津に睨むような視線を送りながら、コルサックが問う。

 

『貴官らが我がガミラス星の墓所にいる理由を聞かせて欲しい』

 

下らぬ事をぬかしたら、この場で討ち果たしてやるぞというところか。

まあ、当然だろう。

 

「コルサック司令、我々はデスラー総統からの緊急電を受けた軍司令部の命令を受け、暴走したイスカンダルの救援に最短ルートで赴く途中、ここに通りかかった。

我々はかつての敵手の母なる星に哀悼の意を捧げただけだ。すぐにこの場を立ち去り、イスカンダルに向かう。ここを荒らす意思は一切ない」

『‥‥‥‥』

 

嶋津とコルサックは、しばらくメンチを切り合うように互いから視線を離さなかったが、コルサックは僅かに表情を緩めた。

 

『‥‥そうか。その事も含めて感謝する。

我々も総統のご命令を受け、イスカンダルを追跡する途中に立ち寄ったところだ。

『ヤマト』やその友軍との戦闘は禁じられているので、我々も貴官らと戦うつもりはない』

 

コルサックは咳払いをして話を続ける。

 

『‥‥もう一つ、それはそうと、《ヤマト》艦長と話がしたい。繋いでもらえるか?』

「了解した。しばしお待ち願いたい」

 

やり合う意思はないようだ。『テシオ』艦橋にホッとした空気が流れる。

 

 

すぐに『ヤマト』に回線が繋がり、『テシオ』艦橋のビジュアルスクリーンにはコルサックと古代、真田が映し出される。

 

『私は「ヤマト」戦術長兼艦長代理の古代 進。

当時の艦長はあの航海中に病に倒れ亡くなったが、特例で私が職務代行を命じられたので、それ以来、指揮を代行している』

『‥‥そうか。貴官らも我が弟と戦っていたのだな?』

「弟?」

 

瞑目するコルサックの一言を地球側が聞き咎めた。

 

やや置いて、コルサックが答える。

 

『プラード‥‥貴官らが言う冥王星にあった我が軍の基地を預かり、地球に遊星爆弾を撃ち込み、そして『ヤマト』と戦って死んだのは、我が弟、ヴァルケ・シュルツだ』

「『!!??』」

 

こんな偶然があるのか――?

ガミラスの地球侵攻作戦で、最前線の指揮をとっていたのが、目の前の人物の肉親だとは。

 

 ――『ヤマト』医務室――

 

スターレット・タランティノは軽い眠りに入ったので、フェイト達3人は佐渡、アナライザーと卓袱台を囲んでいる。

嶋津、古代らとコルサックのやりとりは医務室にも流されていた。

 

「人の縁とは奇妙なもんじゃな‥‥」

「宇宙ハ広イヨウデ狭ク、狭イヨウデ広インデスネ」

 

緊張が解け、いつものやり取りを始めた佐渡とアナライザーの傍らで、フェイト達は絶句していた。

 

ちなみに彼女達がいるのは、佐渡の私室に設えたコタツである。

アナライザーと初対面した時は言葉を失ったフェイト達だったが、すぐ打ち解けた。

 

――敵対していた者と和解するのは、かつてのフェイト自身と高町なのはやヴォルケンリッターがそうだ。

最近ではJS事件後のナンバーズ(一部を除く)やルーテシア達とで経験済みだが、この世界の地球はガミラスによって滅亡寸前まで追い込まれたという。

 

一方、『ヤマト』はイスカンダルへ行く為とはいえ、結果としてガミラスの首都バレラスを破壊し尽くしたという。

 

互いの母なる星を破壊したのだから、自分達よりも遥かに重苦しい話だ。

 

「驚いたかね?嬢ちゃん達」

 

佐渡がフェイトに尋ねる。

 

「はい…、互いに同胞の仇同士だったわけですよね」

 

復讐戦が勃発しても何ら不思議ではないのに、緊張状態ではあるが、爆発する様子はない。

フェイトの問いに、佐渡は

 

「もちろん、共に相手に言いたい事は山ほどある。

しかし、自分の言い分ばかり主張しても何も始まらん。

『ヤマト』も彼らも、自らの故郷の存亡を賭けて戦い、ひとまず決着はついたのじゃ。

敵対した者を全否定し続けたら、いつまで経っても平和は来ないからのぉ」

 

――その後も両者の交渉は進み、イスカンダル又はデスラー率いるガミラス本隊と合流するまで同航することになったのだが、会話が進む中で嶋津達は新たな事実を知らされた。

 

「シュルツ提督、一つ質問したいんだが、よろしいか?」

『ふむ、何かな?』

「我々が直にまみえたガミラス人は皆青い肌をしていたが、貴方がたのそれは我々に近い。

我々の地球は祖先の出身地域によって肌の色が異なるが、ガミラス星もそうなのだろうか?」

『なるほど、その事か』

 

嶋津の問いにコルサックは苦笑して答える。

 

『純血ガミラス人は生まれた地域の別なく青い肌をしている。

我々はガミラス本星出身ではなく、編入された惑星ザルツの出身なのだよ』

『「!!?」』

 

コルサックの言葉に、地球側の空気が凍りついた。

 

「え‥‥?」

 

フェイトも言葉を失った。

 

「‥‥シュルツ提督、差し支えなければ、あなた方の故郷がガミラスの傘下に入るに至った経緯を伺ってよろしいか?」

 

言葉を選びつつ、嶋津はコルサックに尋ねる。

被征服地の軍人を最前線に投入するのは、かつて地球でもやっていたことだ。

 

コルサックは苦笑しつつ答えた。

 

『我が故郷ザルツは、群雄割拠の時代を経て成立した統一王朝によって統治されておったのだが、その末期――私が軍人になった頃は王族も貴族も腐敗しきっていてな。国民は王朝に憎しみすら抱いていた。

遂には内戦に発展してしまって、軍すら分裂する始末だったのだが、そこに介入したのが、国交を結んでおったガミラス大公国の若き摂政、アベルト7世大公‥‥現在のデスラー総統なのだ』

『「!??」』

 

地球側は言葉もなく聞き入るだけだった。




地球側はコルサックを『シュルツ提督』と呼びます。
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