── 準惑星マケマケ ──
──『ヤマト』が発進してから2時間後。
『──という次第です、現状は。全く訳がわからない船ですな、こいつは』
「了解。調査を続けてくれ、砲雷長」
『ヤマト』+GF666によってマケマケ守備隊は全滅こそ免れたが、施設は壊滅。
そして空間騎兵隊の人的被害も甚大で、大隊規模が駐屯していた人員は中隊も維持出来ぬまでに討ち減らされ、さらに無傷~軽傷者に至っては小隊規模に留まり、守備隊は全滅と判定されたのだが、さらなる問題が起きた。
軽傷以下で済んだ斉藤 始中尉以下66名が『ヤマト』への乗艦を希望したため、全員の収容と後送を指示したGF666隊長の嶋津、遅れて救援に駆けつけた天王星艦隊司令代行エンリケ准将と激論になり、ついには藤堂幕僚長が仲裁に出、斉藤以下の無傷39名のみを『ヤマト』に乗艦させ、負傷者は全員後送となった。
ちなみに、直接顔を合わせた斉藤と嶋津のやりとりは、掴み合い寸前の口喧嘩にしか見えなかったらしい。
しかし、問題はもう一つあった。
先ほど突然空間転移してきた物体だ。
衝突で残骸同然になったそれは、紛れもなく大型宇宙船だったが、その形状は、これまで地球自身やガミラス、今回交戦した連中とも違っていた。
少し深い皿を2枚合わせにしたような船体から長いブレード状の構造物が突き出し、反対側にメインスラスターらしき開口部があった。
それだけでも十分驚いたが、ブレードの根元に英語に似た文字があった事も関心を呼び、地球防衛軍はこの難破船を、件の文字を英語と解釈して『エスティア(仮)』と呼ぶ事にした。
『エスティア』には『テシオ』砲雷長・篠田 巌大尉を指揮官とした『テシオ』『ヒルガオ』『ナデシコ』クルーが移乗して船内調査と要救助者捜索に取りかかったのだが──。
有人船である事はすぐわかったのだが、居住区らしき場所の設備は明らかなヒューマノイド用で、什器備品等は地球人でも支障なく使えそうだった。
問題は、発見された本らしき書物にあった。
何冊かのタイトルはどう見ても『魔導』『魔術』と記載され、内容も大真面目な魔法もの。
「映画やアニメの世界が突然リアルになって迫ってきたみたいですね」
「リリカルマジカル~‥‥」
「誰か、艦長にデッキブラシかモップを」
「箒じゃないと飛べないじゃないか!」
「魔法少女はそうでしょうけど、艦長はとうに少女じゃないですから出来ますよ。多分」
「····泣いていいよね?」
指し棒を頭上に掲げてくるくる回し始めた嶋津に、カルチェンコは即座にツッコんだ。
「‥‥ま、工作隊に大山も同行してるというから、解析はヤツに任せるさ」
月面基地からこちらに向かっている工作部隊には、真田と同期の大山敏郎も同行していると聞いた。
大山はこういう非科学的な事象にも興味を示すから、調査役としては適任だろう。
「真田技師長は悔しがるでしょうね」
「あいつはこれから否応なく忙しくなるさ」
そこに、篠田から緊迫した声が飛び込んできた。
『こちらロック1(篠田)! ブリッジで要救助者発見!生命反応あり。メディックの受け入れを頼む!顔立ちと肌の色は我々と寸分違わぬ男だ!』
「了解、直ちに収容だ」
嶋津の横で、カルチェンコが医務室を呼び出していた。